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プログレッシヴ・ロック・バンド・ベスト50:黎明期のグループから現代の猛者まで
プログレッシヴ・ロック・バンド のベスト50をリストアップすることは、野心的なプロジェクトである。もっとも、優れたプログレッシヴ・ロックは常にある種の野心を描いているのだが。
このリストでは、プログレッシヴ・ロックとその主要なサブジャンルを描き出すことに挑んだ。だが、これは厳格な“バンド”のリストであり、ソロ・アーティスト(あるいは、通常自身の名前で活動していたアーティスト)は含まれていない——申し訳ない、ザッパとオールドフィールドの両氏。次の機会にはぜひ。モダン・バンドも、そして70年代が終わると消えてしまったバンドもいくつか選出しているが、上位にしたのは複数の創造的時代を股にかけて活動したバンドだ。
何がプログレッシヴ・ロックで何がそうでないかを線引きするのは少々難問だった。ヨーロッパ的なアプローチをしつつ、基本的にブルースを基調にしていないバンドを優先した。つまりはレッド・ツェッペリンやウィッシュボーン・アッシュ、トラフィック、ディープ・パープルといったバンドは除外している。これらはいずれもブルースをルーツにしつつ、プログレッシヴ・ロックと交差してきたバンドだった(とはいえ、R&Bバンドとしてスタートしながらもそこから枝分かれしていったプロコル・ハルムは外さなかった)。
モダンなバンドの選出に関していえば、70年代プログレッシヴ・ロックを明らかなルーツとしていればメタルやオルタナティヴ・ロックも対象とした。同様に、多くのバンドを対象外としているスティーリー・ダンから10cc、XTC、レディオヘッドに至るまでその多くはプログレッシヴ・ロック・ファンからも愛されているが、多分に他の領域に生息しているものだ。最終的には我々はもうお手上げで、プログレッシヴ・ロックか否かを規定する最もシンプルな方法は「聴けば分かる」と言うしかなかった。
*プログレッシヴ・ロックのベスト30曲プレイリスト展開中(Apple Music / Spotify)。
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50位:アフロディーテズ・チャイルド
元々はヘヴィなサイケデリック・サウンドを鳴らしていたギリシャのバンド、アフロディーテズ・チャイルドは、2枚組大作『666』でプログレッシヴ・ロックの幻想的なコンセプト・アルバムを世に問うた。世界の終末に上演される巡業サーカスを軸にした、波乱に富んだマインド・トリップである。驚くべきことではないが、あの高名な視覚芸術家サルバドール・ダリは彼らの熱烈なファンだった。
アフロディーテのリーダー、ヴァンゲリス・パパサナシューには映画のサウンドトラックを制作するという壮大な夢があったが、最終的にはそれで大成功を収めることとなる。だが、この作品の独創性に匹敵するものを生むことはほとんどなかった。
49位:タンジェリン・ドリーム
クラフトワークと並んで、タンジェリン・ドリームほどシンセサイザーの可能性を広げたバンドはいないだろう。その全盛期にはほぼそれしか使用しておらず、ライヴでは即興演奏に興じながら音風景と空気感の見事な組み合わせを紡ぎ出していた。
48位:フラジャイル
ヨーロッパを拠点に古典的なサウンドを鳴らすモダン・バンド、フラジャイルは、オリジナル曲を書き始める前はイエスのトリビュート・バンドとして活動していた。彼らの2022年のオリジナル・アルバム『Beyond』は、A面1曲・B面2曲というお馴染みの構成で、まるで幻のイエス・アルバムかのような様相を呈しているが、クレア・ハミルの歌唱によってそこから一段も二段もステップアップしたものとなっている。
ウィッシュボーン・アッシュとの活動やスティーヴ・ハウのソロ・アルバムへの参加といった経歴を持つ彼女は、フラジャイルでまさに本領を発揮しているがゆえに、どうしてイエスが彼女をスカウトに来なかったのか不思議でならない。
47位:ネクター
フランク・ザッパに賞賛された(1973年ザッパのオープニング・アクトに起用)ネクターは、作曲のセンスを高めつつ、初期ピンク・フロイドの覚醒的な側面を拡張していった。全盛期の2枚のアルバム『A Tab in the Ocean』『Remember the Future』は、トリップ感覚を纏いながらも美しい旋律に溢れていた。
46位:キャメル
初代キャメルは、ギタリストのアンディ・ラティマーとキーボーディストの故ピーター・バーデンスという2人の世界水準のソロイストを中心にサウンドを構築しており、多分に彼らのインタープレイの発射台といった様相を呈していた。
バンドは徐々に歌モノへと移行していき、バーデンスが離脱、そして、数名の元キャラヴァンの面々を含め、次々とプレイヤーが入れ替わった。変わらないのはラティマーのみで、スパーリングの相手が務まるパートナーを常に見つけてくるのだった。
45位:カンサス
AORラジオに歓迎され、ドン・カーシュナーの庇護を受けていたカンサスは、プログレッシヴ・ロックの中でも商業的だとしばしば判定される。そして、初期のアルバム(少なくとも1982年にオリジナル・ラインナップが瓦解するまで)には心に染みる音楽が数多くあったが、その一方で彼らは「Carry On Wayward Son」「Dust in the Wind」のシングル・ヒットが偶然の産物であると常に主張してきた。いずれにせよ、ヴァイオリン、あるいは、ほんの少しの素朴なアメリカーナを、これほど効果的に使用するプログレッシヴ・ロック・バンドは珍しい。
44位:スポックス・ビアード
ほぼ時代遅れとなっていた伝統的スタイルのプログレッシヴ・ロックを復活させたスポックス・ビアードは、ニール・モーズの才能を世に知らしめ、そこから彼はプログレッシヴ・ロック界で最も多作で最も独創的なメロディを書く作曲家の一人(そして、最終的にはキリスト教をテーマにしたプログレッシヴ・ロックの創始者)となった。
モーズを軸としたラインナップは、2枚組大作『Snow』を最後に終焉を迎えたが、彼が脱退した後もいくつかの秀作をリリースしている。
43位:スカイ
世界有数のクラシック・ギタリストがロック・バンドを結成しようとしたら何ができるのか? それがスカイだ。カーヴド・エアのキーボーディスト、フランシス・モンクマン、ルー・リードの「Walk on the Wild Side」を印象的なものにしたベーシスト、ハービー・フラワーズというラインナップに、高名なクラシック・ギタリストのジョン・ウィリアムスが加わったバンドだ。
多くのプログレッシヴ・ロッカーたちがクラシック音楽に食指を伸ばしていた中、スカイはその正反対だった。彼らのほとんどがクラシック音楽を熟知しており、ロックは刺激的な新しい領域だったのだ。
42位:ベイブ・ルース
この70年代初期のバンドはいくつかの意味でユニークだった。彼らは強力なフロントウーマンを擁しており、ジャズ/ブルースへと大きく傾倒したプログレッシヴ・ロックを鳴らし、そのファースト・アルバム『First Base』のアルバム・カヴァーはロジャー・ディーンが野球選手を描いた唯一のものとなった。
ギタリストのアラン・シャックロックは80年代にプロデューサーとして成功することとなった。彼とシンガーのジェリー・ハーンは再結成ラインナップにも名を連ねている。
41位:プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(PFM)
歴史の長いこのイタリアのバンドには、短いながらもELPのマンティコア・レーベルで英語アルバムを作った輝かしい期間があった。この時期の5枚のアルバムで、彼らはその柔らかで牧歌的なサウンドをよりハードでアグレッシヴなものへと徐々に変化させていった。
米国でリリースされたライヴ盤『Cook』は、その大半がELPと共に出演したセントラル・パークでのライヴからの音源で、プログレッシヴ・ロック屈指の熱狂的なライヴ・アルバムとなっている。
40位:ストローブス
UKのフォーク・ロックは幾度かプログレッシヴ・ロックへと越境してきたが、ストローブスは、バラッド詩の伝統に根差しながらも野心に満ちた大作を綴るなど、そのまさに最前線に身を置いていた。バンドのギター・ヴォーカル、デイヴ・カズンズはいずれのジャンルにおいても極めてドラマティックなシンガーであることを証明した。
彼らの最も評価の高いアルバム『Hero & Heroine』のタイトル曲は、依存について歌われた数少ないプログレッシヴ・ロック名曲の一つで、最終的にバンド内のリック・ウェイクマンのポジションを引き継ぐこととなったジョン・ホーケンが奏でる、空へと舞い上がるようなメロトロンがフィーチャーされている。
39位:パイナップル・シーフ
シンガー/ソングライターのブルース・ソード率いる、このサマセットの4人組は、熱気溢れる楽器演奏よりも内省的な曲作りに重きを置いている。とはいえ、曲のムードに応じて思う存分演奏することもできるが。
本領を発揮した時の彼らは、いにしえのポリスやピーター・ガブリエルのスピリットを宿しており、また近年もキング・クリムゾン、ポーキュパイン・トゥリーのドラマー、ギャヴィン・ハリソンが加入したことで新たな刺激を得ている。
38位:タンジェント
タンジェントは、モダン・プログレッシヴ・ロックの最も独創的な作詞家の一人であるシンガー/キーボーディスト、アンディ・ティリソンの創造物というべきものだ。彼はここ何年もの間、幾人かの旧プログレ重鎮を含め、数えきれないほどのコラボレーターたちを迎えてきた。
2020年のアルバム『Auto Reconnaissance』は、示唆に富む2つの大作を誇る。一つはニューヨーク旅行について、もう一つは英国の社会政治情勢についての曲だ。
37位:マリリオン
80年代よりプログレッシヴ・ロックの旗を掲げ続けてきた数少ないバンドの一つ、マリリオンは、常に耳をオープンにし(レディオヘッドの曲をカヴァーしている)、しばしば歌詞に時事問題を取り上げ、その一方で古き良きプログレのドラマ性を忠実に再現し続けている。
初代シンガー、フィッシュの演劇的アプローチを好むファンもいるが、長年フロントマンを務めてきたスティーヴ・ホガースの伝統的な英国流アプローチを支持するファンも多い。いずれにせよ、バンドは常に高水準の作品を作り続けている。
36位:ビッグ・ビッグ・トレイン
もしもプログレシヴ・ロックに印象深いメロディの伝統的ブリティッシュ・サウンドを求めるのなら、ビッグ・ビッグ・トレインがモダン・バンドでの選択肢となるだろう。2020年までにバンドは、長年のプログレ愛好家であった元XTCのギタリスト、デイヴ・グレゴリーを迎えており、また、現在のドラマーはスポックス・ビアードやジェネシスでの活動で知られるニック・ディヴァージリオだ。
悲しいことに2021年末の事故によって、モダン・プログレ最高峰の叙情的シンガー、デヴィッド・ロングドンは帰らぬ人となってしまった。
35位:ホークウィンド
多くのプログレッシヴ・ロック・バンドがサイケデリック・サウンドから進化していったが、ホークウィンドはサイケデリックであることをやめなかった。彼らは自由自在の宇宙旅行で知られていたが、同時に地球に帰還した印象深い時間もあった。
例えば、パンクのプロトタイプのごときシングル「Silver Machine」(当時のベーシスト、レミーが歌っている)、そして、実りある方法でニューウェイヴと戯れる1977年の「Quark, Strangeness & Charm」。創設メンバーのデイヴ・ブロックは今なおバンドを空高く飛行させている。
34位:UK
最後の伝統的プログレッシヴ・ロック・バンドと言われるUKには、2つの異なるラインナップがあったが、そのいずれもがキーボーディストのエディ・ジョブソンとシンガー/ベーシストのジョン・ウェットンから成る強力コンビを擁していた。
最初のラインナップには、バンドをジャズへと傾倒させるべく全力を尽くしたドラマーのビル・ブルーフォードとギタリストのアラン・ホールズワースがいた。ドラマーにテリー・ボジオを迎えたトリオのラインナップでは、ジョブソンは本格的なキーボード・ヒーローとなり、その一方でウェットンは後にエイジアに持ち込むこととなるポップのノウハウを発展させていた。
33位:プロコル・ハルム
プログレッシヴ・ロックは大抵の場合R&Bを基調としていないが、プロコル・ハルムは偉大なる例外である。主要メンバーの大半が生粋のR&Bバンド、パラマウンツの出身だった。そして彼らが最初に生んだ名曲「A Whiter Shade of Pale(青い影)」は、オーティス・レディングとバッハとサイケデリックを繋ぐものだ。
だが彼らは、アルバム片面を使った組曲、壮大なアレンジ、そして哲学的な歌詞の先駆者でもある。この3つの要素全てが1968年の名曲「In Held ‘Twas In I」で大きな役割を果たしている。今は亡きゲイリー・ブルッカーの荘厳な歌声はプログレッシヴ・ロック最高級のものと言えるだろう。
32位:ザ・フラワー・キングス
シンガー/ギタリストのロイネ・ストルト率いるこのスウェーデンのバンドは、モダン・プログレ屈指の名曲をいくつも生み出しているが、しばしばロマンティックな方向へと傾きつつも、それらのアレンジには少々奇抜なザッパ風タッチが維持されている。
彼らはまた極めて多作である。2021年末の2枚組アルバム『Islands』はパンデミックを扱った特筆すべき最初のプログレッシヴ・ロック・アルバムであり、彼らはその6か月後にもこれまた強力な2枚組アルバム『Royal Decree』をリリースしている。
31位:マーズ・ヴォルタ
アット・ザ・ドライヴインの元メンバー2人という意外な面々を起源とするマーズ・ヴォルタは、独特の熱狂を帯びた明らかにモダンなプログレッシヴ・ロックの未来像を浮かび上がらせていた。
そこには音楽要素、メタルのエッジ、奇妙な物語、そしてゾッとするようなユーモアがたっぷり詰まっていた。それは1969年にキング・クリムゾンの音楽がもたらした響きに匹敵する衝撃的なサウンドを鳴らしている。
30位:キャラヴァン
カンタベリー・ミュージック最重要バンドの一つであるキャラヴァンは、長尺の即興演奏だけでなく純粋なポップをやることで進化してきた(そして最初期には一風変わったサイケも少々)。
多くのファンにとって『In the Land of Grey and Pink』を生んだ初代ラインナップこそが至高なのは変わらない。だが、唯一の不動メンバー、パイ・ヘイスティングスは今なおプログレッシヴ・ロック最高峰のソングライターであり、他のメンバーにも常にそれに相応しい面々が揃っている。彼らは近年もキャラヴァン最高級のアルバム(2021年『It’s None of Your Business』)を作っているのだ。
29位:ドリーム・シアター
プログレッシヴ・メタルの王者ドリーム・シアターは、ここに挙げられた中では唯一のバークリー音楽大学卒業生から成るバンドである。彼らはあまりに音楽技術に恵まれているため、時として聴き手を疲労困憊させることもあるかもしれない。幸いなことに彼らは、深い意味のない刺激の価値も分かっている。そしてオリジナル・ドラマーのマイク・ポートノイのドラミングはそれ自体がまさに驚愕以外の何ものでもない。
28位:クラック・ザ・スカイ
このウェストバージニアのバンドは、インストゥルメンタル・パートのトリッキーな転換、ひねくれたザッパ風ユーモア、そして幅広いラジオで支持されるサビがユニークな形で組み合わさった1975年のデビュー作で、短期間メディアの話題となった。
商業的成功は収められなかったが、彼らはこの特異な道のりを何十年にも亘って歩んできた。2022年の時点でバンドはオリジナル・ラインナップのコア・メンバーを維持している。
27位:マグマ
グランド・オペラとフュージョンと宇宙旅行が融合し、そこに再構築された教会音楽が投げ込まれる。しかも言語は全てこの風変わりなフランスのバンドが創作したものだ。才気溢れるドラマー、クリスチャン・ヴァンデ率いるこのバンドは、最も抽象的なプログレッシヴ・ロックであった。長年を経た今もこんなサウンドを鳴らす者は他にいない。
26位:フォーカス
ポップ・チャートに限って言えば、フォーカスは「Hocus Pocus」のみの一発屋である(英国にお住まいであれば「Sylvia」もご存じかもしれない)。だがこのオランダの4人組は、2004年に再結成し、ジャズの即興演奏とクラシックから影響を受けた楽曲とロックのエネルギーの融合という当初からのミッションを真摯に遂行しながら、プログレッシヴ・ロック・バンドの中で最も頑強であることを証明してきた。
マルチ・インストゥルメンタリスト、タイス・ファン・レールが依然として指揮を執り、黄金期のドラマー、ピエール・ファン・デル・リンデンも相変わらず推進力となっており、スリルに満ちたインストゥルメンタルは今なお躍動し続けている。
25位:ソフト・マシーン
ソフト・マシーンのアルバム群は2つのカテゴリーに分けられる。ファーストとそれ以外だ。あのセルフタイトルのデビュー作は、今なお英国屈指のサイケ/プログレ・アルバムとして君臨しており、シンガー/ベーシストのケヴィン・エアーズとシンガー/ドラマーのロバート・ワイアットがそれぞれ唯一無二の奇抜さを発揮していた。
エアーズが離脱すると、楽曲の大半がインストゥルメンタルとなり、キーボーディストのマイク・ラトリッジは分厚いホーンが配され、時にアヴァンギャルドへと傾くジャズ・ロック・バンド、という彼のソフト・マシーン像を具現化している。彼らの3rdアルバムは、各面1曲収録2枚組LPの草分けとなった。
24位:ビー・バップ・デラックス
眩いばかりのシンガー/ギタリスト、ビル・ネルソン率いるビー・バップ・デラックスは、プログレッシヴ・ロックとグラム・ロックの交差点に立ちつつ、独創的なアレンジとボウイ由来の未来派スタイルを結合させていた。
彼らは、名ライヴ盤『Live! In the Air Age』や、プログレ界からのパンクへの最も説得力のある回答の一つとなったそのスタジオ後続作『Drastic Plastic』をリリースした頃には、独自のグルーヴを発見していた。ネルソンの創造性は今なおとどまることを知らず、ビー・バップ・デラックス後にリリースしたアルバムもゆうに100枚を超えている。
23位:ユートピア
そもそもはリーダーであるトッド・ラングレンの壮大な野望を表現するためのバンドであったユートピアだが、ポップなメロディとマハヴィシュヌ・オーケストラ風のインストゥルメンタルとの思いも寄らぬ融合体を生み出していた(そして、しばらくの間ルーサー・ヴァンドロスがバック・ヴォーカルを務めていた)。
4人の黄金のラインナップが固まると、ラングレンはバンドを誰もがフロントマンになれる段階にまで引き上げ、それにより一筋縄ではいかない大作と甘美なポップ・ナンバーとを同じ強度で鳴らすことが可能となった。
22位:エコーリン
多くのモダン・バンドがプログレッシヴ・ロックのラウドで過激な側面へと傾倒する中、ペンシルヴァニア出身のエコーリンは、メロディと楽器が高らかに鳴らすテーマに重きを置いている。そのいずれもがとりわけ効果を発揮しているのが2002年のアルバム『mei』だ。数多の叙情的なトーンと、連結された楽曲とが1曲45分の作品で展開されている。
21位:リターン・トゥ・フォーエヴァー
同じく宇宙的なマハヴィシュヌ・オーケストラは例外となるかもしれないが、これほどプログレッシヴ・ロックに影響を与えたフュージョン・バンドはおらず、またその逆も言えるだろう。アルバム『Romantic Warrior』なくして成立するプログレッシヴ・ロック集は皆無に等しい。その功績の一部はリーダーであるチック・コリアのものだ。キーボードの派手なプレイを望む向きもあるかもしれないが、彼はそれを控えている。
またチック・コリアは、シンセサイザーを導入した最初のジャズ・プレイヤーの一人だった。とはいえ、リターン・トゥ・フォーエヴァーのファンタジーやSFイメージも彼らにプログレ親和性を生じさせている。そして目も眩むようなソロしかり。イエスを聴いてみるがいい。彼らの『Relayer』は間違いなくリターン・トゥ・フォーエヴァーに恩義がある。
20位:アングラガルド
このスウェーデン・バンドのスタジオ・アルバムは数少なく、リリース間隔も長い。2作目と3作目の間にはおよそ20年の時が流れている。だが、そのいずれもが精巧に作られており、待った甲斐があるものだった。
彼らは時にヴォーカルを迎えることもあるが、バンドの真価はそのクラシックに通じた複雑なインストゥルメンタルにある。それは、クリムゾンのより美しい瞬間や、ジェネシスのよりドラマティックな作品を彷彿とさせるものだ。
19位:ヘイケン
このモダン・バンドはメタルの要素を取り入れているが、本質的にはプログレッシヴ・メタルではない。むしろ彼らは、サウンドの多彩さが活かされた壮大かつ圧倒的な大作を得意としている。テーマに繋がりがある2つの2枚組作品『Vector』『Virus』は、ここ10年でプログレッシヴ・ロック・バンドが作った最も濃厚な作品と位置付けられている。
18位:カン
カンが真のプログレッシヴ・ロックか否かは議論の余地があるが(このリストのどのバンドとも似ていないことは確かだ)、彼らがプログレッシヴだったことは間違いなく、彼ら探ったリズムと音の可能性は数十年経っても世界各地のバンドに影響を与えている。
アヴァンギャルドにどっぷり浸かってはいたものの、カンはダンサブルにもなれた。とりわけ「I Want More」がUKチャートで正真正銘のディスコ・ヒットとなったバンドの後期には。
17位:ムーディー・ブルース
ムーディー・ブルースは、彼らが80年代にポップ・ミュージックへと移行していった時期には、プログレッシヴ・ロックとしての信頼をいくらか失っていたかもしれないが、ファンが「クラシック・セヴン」(『Days of Future Passed』から『Seventh Sojourn』まで)と呼ぶアルバムは、あらゆる意味で革新的なものだった。その淀みない流れ、そして内包する夢想的でスピリチュアルなテーマ。マイク・ピンダーがメロトロンという言葉の定着に大きく貢献したことは言うまでもない。
16位:ゴング
実に多くのゴングが存在していたが、さて、どれについて話そうか? もちろんそれら全てだ。初代リーダーのデヴィッド・アレン指揮のもと、彼らは幻覚をもたらすような斬新さと並外れた演奏技術とを融合させた。
過渡期のアルバム『Shamal』(後に大御所プロデューサーとなるマイク・ハウレットがリード・シンガーを務めた唯一の作品)のリリース後、ドラマーのピエール・ムーランが、パーカッションを核に据え、ロックやガムランを混ぜ合わせたインストゥルメンタル・バンドへとゴングを変貌させた。アレンは後に復帰したが、たとえこの世を去ろうともゴングの精神的支柱であり続けている。
15位:レ・オルメ
この息の長いイタリアのバンドは、60年代末に野心に満ちたサイケ調バンドからスタートし、プログレッシヴ・ロックの歴史を全編に亘って体現している。1974年まではシンフォニック・ロックへと大きく傾倒。その年には、彼らの転機となったSFをテーマとしたコンセプト・アルバム『Felona e Sorna』を、ピーター・ハミルの手掛けた歌詞でリリース(ハミルはリード・シンガーとして短期ツアーにも参加していた)。
80年代のよりポップなフェーズへの突入を前に、レ・オルメはまた一つ転機となる名盤を作り上げている。1979年の『Florian』は、初めての全編アコースティックで作られたプログレ・アルバムと言われている。
14位:ジェントル・ジャイアント
今では典型的なプログレッシヴ・ロック・バンドの一つに数えられるジェントル・ジャイアントは、その活動期間中、商業的成功にはあまり恵まれなかった。決して掴もうとしなかったわけではない。彼らは悪魔の如くトリッキーになることを好んでいたが、親しみやすくなるのも、大いに楽しむのも好きだった(レイとデレクのシャルマン兄弟は、それぞれプロデューサー、A&R重役として後に成功を収めることとなる)。
彼らの最盛期、とりわけ今なおタイムリーな政治的コンセプト・アルバム『The Power & Glory』をリリースした頃には、彼らはその両面で成果を上げていた。
13位:ジェスロ・タル
プログレッシヴ・ロックは、ジェスロ・タルが通過してきた多くフェーズの一つに過ぎない。彼らがそれを全面的に取り入れた(そして若干パロディーにした)のが、アルバム全編を使用した大曲「Thick As a Brick」と「A Passion Play」であった。
その後イアン・アンダーソンは、フォーク・ロック三部作、物議を醸したシンセポップ時代、無駄を削ぎ落としたブルース・ロックへの原点回帰など予想外の変貌を幾度も遂げている。だが、2022年のアルバム『The Zealot Gene』では、彼らのプログレ魂が再び沸々と湧き出ている。
12位:オーペス
このスウェーデンのバンドは、そのデス・メタル時代でさえ、デスヴォイスを出し入れしながら大曲を書くなどプログレッシヴ・ロックと親密な関係を築いてきた。だが、それが本格的に開花したのは2001年の『Blackwater Park』であり、2つの世界を同等に位置付けた転機となったアルバムだ。
これはまたスティーヴン・ウィルソンとの初のコラボレーションとなった作品でもあり、彼はポーキュパイン・ツリーにメタル成分を持ち帰っている。オーペスは、激しさは維持しつつ、その後のアルバムでもプログレ要素を維持している。
11位:ルネッサンス
最も華麗でクラシック要素の強いプログレッシヴ・ロック・バンド、ルネッサンスがブルースを鳴らすヤードバーズの副産物としてスタートしたのは不思議な運命の巡り合わせである(元ヤードバーズの創設メンバー、キース・レルフとジム・マッカーティはいずれもバンドが軌道に乗る前に去っているが)。
ルネッサンスといえばフロントに立つアニー・ハズラムが連想されるが、その天使のような歌声はプログレッシヴ・ロックの女性シンガーの雛形となった。たが「Ashes Are Burning」といった曲での彼女の果てしなく響くヴォーカルは他の追随を許さないものだ。
10位:ポーキュパイン・ツリー
他のどのバンドにも劣らず、ポーキュパイン・ツリーはオルタナティヴ・ロックやスラッシュ・メタルを、スティーヴン・ウィルソンの書く極めて陰鬱な楽曲と組み合わせることによって、抵抗するプログレッシヴ・ロックに新時代への突入を促した。
彼らの最高傑作と称される『Fear of a Blank Planet』は、現代社会の不安を断固とした表現で綴っているが、それでもそのルーツがプログレッシヴ・ロックにあることは明白である。
9位:エマーソン、レイク&パーマー
エマーソン、レイク&パーマーはスーパーグループだったからこそ成立したと言われている。華やかで並外れた才能を有したキーボーディスト、キース・エマーソンは、他のバンドならば圧倒的な存在感を示していただろう。
幸運なことにこのケースでは、レイクとパーマーという世界水準のリズム隊がおり、レイクという美声ヴォーカリストがいた。彼らは幾度かポップを標榜したものの、LP片面を使った大作「Tarkus」や「Karn Evil 9」こそが彼らの本物のレガシーである。
8位:トランスアトランティック
2000年にトランスアトランティックがシーンに登場した時、メンバー全員にそれぞれ立派な経歴があった。ギタリストのロイネ・ストルトはフラワー・キングス、ドラマーのマイク・ポートノイはドリーム・シアター、ベーシストのピート・トレワヴァスはマリリオン、シンガー/キーポーディストのニール・モーズはスポックス・ビアードで各々活躍していたのだ。だが、そのいずれもがこのバンドで最高の仕事をする結果となり、70年代プログレッシヴ・ロックを起点にしつつも、そこにモダンかつ極めて個人的な視点を与えていた。
彼らはまた、77分の1曲から成るCD(『The Whirlwind』)や、60分超と90分超の全く異なるヴァージョンが存在するアルバム(『The Absolute Universe』)、といったコンセプチュアルな作品を見事にモノにしている。
7位:ピンク・フロイド
ピンク・フロイドほどコンセプト・アルバムという表現手段を活かしたバンドはいないだろう。『Dark Side of the Moon(狂気)』から『The Wall』まで、伝統的な長さのアルバムで、全体で体験しなければならない長尺の大作を展開した。
ピンク・フロイドは、コンセプトを思い描くロジャー・ウォーターズとギター・ヒーローのデヴィッド・ギルモアが対等の関係であった時期が全盛期と言われている。もちろん創始者のシド・バレットがもたらしたサイケデリックの影響は決して消えないが。
6位:トゥール
プログレッシヴ・ロックに影響を受けたバンドの中でこの20年で最も成功したと言われるトゥールは、高い音楽的野心を持つバンドが現代社会でも成功できることを証明した。
難解かつ多層的な楽曲とダークな世界観で武装しつつ、トゥールは聴き手をよりダイレクトなロックの瞬間へと引き摺り込む。近作『Fear Inoculum』には古典的なフロイドやラッシュの要素が見られるが、その迫り来る世界の終末というテーマ(そしてそれを回避できるという幾らかの希望)は、これ以上ないほどタイムリーである。
5位:ジェネシス
ジェネシスは数あるバンドの中でも最も興味深いキャリアを歩んできたかもしれない。1974年、彼らは、ドレスや狐のマスクを好むシンガーを擁する、実に独創的でシアトリカルなプログレッシヴ・ロック・バンドだったがビッグ・ヒットには縁遠かった。
その10年後、ジェネシスとその新旧メンバー(ピーター・ガブリエル、フィル・コリンズ)は事実上ポップのメインストリームを特徴づける存在となっていた。だが、彼らは決して大作を書くことは止めず、ジェネシスは最も商業主義へと傾いた時でも依然として独創性に溢れていた。
4位:ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター
唯一無二のピーター・ハミルをフロントに据えたヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターは常に思慮深いバンドであり、その歌詞は生きる意味を深く探り、あるいは人間関係の暗部を覗き込んでいた。
音楽的には、生々しいロックやフリー・ジャズの要素を取り入れつつ、思いがけないところで美しいメロディの瞬間が忍び込むものだった。彼らが70年代パンクから称賛を得た数少ないプログレッシヴ・ロック・バンドの一つだったのも不思議ではない。よく知られたことだが、ジョン・ライドンは、バンドのフルメンバーが参加したハミルのソロ・アルバム『Nadir’s Big Chance』を愛聴していた。
3位:ラッシュ
ラッシュはハード・ロック・トリオとしてスタートしており、彼らにそれを問いただしたとしても、それが自分たちだと主張するばかりだった。だが、彼らはキャリアを通して自ら進化し、気に入ったサウンドは何であれ取り入れ、それに自分たちなりの解釈を加えていたが、やがて彼らの最も野心的なコンセプト・アルバムと言われる『Clockwork Angels』を最後に活動を休止することとなる。
プラチナディスクを連発していた時でさえ、彼らはさらなる方向性に挑み、さらなるサウンドを加え、さらに緻密なショウを行うことに余念がなかった。
2位:イエス
そのキャリアには紆余曲折があったにも拘らず、イエスはプログレッシヴ・ロックの代名詞であり続け、彼らの黄金期のアルバム、『The Yes Album』から『Going for the One』まで、あるいはその前後数作はその最も輝かしい瞬間であり続けている。
ジョン・アンダーソンの透き通る歌声、スティーヴ・ハウの指板の上の妙技、あるいは、火を噴くようなソロを弾くケープを纏ったリック・ウェイクマンほどプログレッシヴ・ロックを体現するものはない。最後の2人は『90125』期にはいなかったが、そのことがイエスに洗練されたポップ・バンドという想定外の第2章を迎えさせたのだ。
1位:キング・クリムゾン
ロバート・フリップによるこの創作物には不動のラインナップも不変のサウンドもなく、また、彼がプログレッシヴ・ロックという言葉に魅了されることもなかった。それでもなお、プログレッシヴ・ロックの冒険精神をこれほどブレずに体現してきたバンドは他にはいない。
1969年の「21st Century Schizoid Man」の痛烈な一撃に始まったクリムゾンのキャリアは、改革の連続だった。「Larks’ Tongue in Aspic」の組織化された騒音、スリム化された80年代クリムゾン、目の眩むようなダブル・トリオ、そしてグランジの影響を受けた90年代モデルは、いずれも熱烈な支持者を集めた。
近年のトリプル・ドラム編成は、かつてないほど強烈な炎を上げている。フリップが仄めかすように、もしもこれが真の終焉を意味するのならば、彼らは一度も選択を間違えることなくその使命を全うしたこととなる。
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- プログレッシヴ・ロックのベスト・ギタリスト25
- マイク・オールドフィールド『Tubular Bells』50周年記念盤発売
ラッシュ『Signals』(40周年記念エディション)
2023年4月28日発売
2023年5月31日日本盤CD発売
マイク・オールドフィールド『Tubular Bells – 50th Anniversary Edition』
2023年5月26日発売
CD
ムーディー・ブルース『To Our Children’s Children’s Children / The Royal Albert Hall Concert December 1969』
2023年5月12日発売
4CD+ブルーレイ