Stories
MTV Unpluggedのベスト・パフォーマンス15組:時代を決定づけたアーティストたち(全曲視聴付)
「MTV Unplugged」は、ライヴ・レコーディングの新たな指標を示したプログラムである。広く親しまれている名曲群の新たな魅力を引き出してみせた、一連の秀逸なパフォーマンスは、今なお高い評価を得ている。
「MTV Unplugged」出演時にカート・コバーンが着用していたくたびれて毛羽立った緑色のカーディガンが、先日オークションに出品され、33万4千ドル(約3630万円)という驚異的な価格で落札された。彼のあのセーターがポップ・カルチャーを象徴する逸品と見做されたという事実は、すなわち『MTV Unplugged In New York』に記録されているニルヴァーナのパフォーマンスが、「MTV Unplugged」の30年の歴史のみならず、ポピュラー・ミュージックの長い歴史に名を残す、最良のライヴ・パフォーマンスのひとつとして人々の記憶に刻み込まれたことを意味している。
一時代を特徴付けたライヴ番組
MTVで、「MTV Unplugged」が初めてオン・エアされたのは1989年11月26日のことだったが、この番組が生まれたきっかけについては諸説ある。そのひとつは、XTCやボン・ジョヴィといった当時の人気アーティストが、その年の初めにMTVで披露したアコースティック・ライヴが好評を博したからというものだが、さらに遡って、1982年にイギリスで開催されたチャリティ・イベント「The Secret Policeman’s Other Ball」で披露されたエネルギッシュなアコースティック・セットが英米で反響を呼んだことに着眼しての企画だったと見る向きもある。
いずれにせよ、MTVがスタートさせたこの新しいシリーズには、数多の人気アーティストが挙って出演。最初の1年に限っても、シニード・オコナー、エルトン・ジョン、エアロスミスが登場。その後、さらにR.E.M.、ニール・ヤング、ボブ・ディラン、そして、番組出演時のパフォーマンスをライヴ・アルバムとしてリリースした最初のアーティストに当たるポール・マッカートニーらが彼らに続いている。
今にして思えば「MTV Unplugged」は一時代を決定付けたひとつの現象だった。現代で言えば、ジェームズ・コーデンの「Carpool Karaoke」やNPRの「Tiny Desk Concert」のようなものだろう。前者は、アーティスト達の気さくで楽しげな様子に焦点を当てたもの、後者は音楽性をより深く掘り下げるという趣向で人気を博している。しかし、文化的なインパクトという点では、そのどちらも「MTV Unplugged」には及ばない。「MTV Unplugged」は、30年に亘って、多くのアーティストたちの新たな魅力をファンに伝えてきた。
ここでは「MTV Unplugged」で、特に優れたパフォーマンスを披露した15組をご紹介する。あなたの思われる15選と違うと感じられたなら、コメント・セクションを通じて、お気に入りのパフォーマンスをお知らせいただきたい。
15位:ケイティ・ペリー (2009年)
MTVは、2009年夏に「Unplugged」の新たな6エピソードを制作し、再始動したシリーズを大々的に宣伝した。そして、記念すべきこの新シリーズに登場したアーティストの一人が、ケイティ・ペリー。それは彼女の大ヒットとなったデビュー・アルバム『One Of The Boys』のリリースから、わずか1年後のことだった。
コンパクトに纏められたセットリストは、言うまでもなく「I Kissed A Girl」や「Thinking Of You」といったヒット曲を中心にしたものになっていたが、パワー・ポップ・バンドのファウンテンズ・オブ・ウェインの「Hackensack」をカバーしており、自身の憧れのアーティストをオーディエンスに紹介する恰好の機会とも捉えていた。
ケイティ・ペリーはEP『MTV Unplugged』に付属されたインタビュー・ディスクの中で「私が誰かという…イメージは持ってもらえてるかもしれないけど、私は自分の作品についてのストーリーとかどうやって生まれたのかとかをみんなに知ってもらいたいなと思ったんです」と語っている。彼女のステージはまさにこの言葉通りのものだった。
14位:ショーン・メンデス (2017年)
「MTV Unplugged」に出演した時点のショーン・メンデスは、生まれ故郷のカナダでようやく飲酒ができる年齢に達したばかりの若者だったが、既にビルボード誌のアダルト・コンテンポラリーと、アダルト・トップ40チャートで3回に及んで首位を獲得。デビュー以来リリースした2枚のアルバムも立て続けに全米アルバム・チャートの首位をマークし、ヘッドライナーとして既に3回のコンサート・ツアーも成功させていた。
要するに『MTV Unplugged』の収録に参加した時点で、ショーンはまさに正真正銘のスーパースターだったというわけだ。このとき、彼はトップ・ヒットを記録した3曲「Stitches」「Treat You Better」「There’s Nothing Holdin’ Me Back」に、「Roses」や「Patience」といったファンのあいだで人気の高い曲を織り交ぜ、アコースティック・ギターを基調にしたアレンジで披露している。彼がジョン・メイヤーやエド・シーランと併称されるべきすばらしいポップ・ソングを生み出せること、そしてその前途により大きな成功が控えていることを我々は既に知っていたが、「MTV Unplugged」におけるパフォーマンスは、そんな評価を確信に変えるに十分なものだった。
13位:ブライアン・アダムス (1997年)
既に広く認知されているアーティストが「MTV Unplugged」に出演するのを観る醍醐味のひとつは、いったい彼らがどんな驚きを体験させてくれるだろうかという期待感にある。ヒット曲をストレートにプレイしてくれるのだろうか? それとも何か仕掛けを用意して楽しませてくれるのだろうか?ブライアン・アダムスの「MTV Unplugged」におけるパフォーマンスは後者だった。
高い人気を誇るヒット曲「Summer Of ’69」で幕を開けたこのステージで、彼は「Back To You」を含む3曲の新曲も披露。また、イリアン奏者のデイヴィ・スピラーン、作曲家のマイケル・ケイメン、そしてジュリアード音楽院の学生グループといった意外なゲストも招き、刺激的なショーを展開した。しかしながら、彼の『Unplugged』が大きな成功を収めた最大の理由は、やはり、そこに収録されている彼自身の優れた楽曲と優れたパフォーマンスにある。
12位:ニール・ヤング (1993位)
ニール・ヤングは、1992年12月に撮影された「MTV Unplugged」のパフォーマンスに満足しておらず、この時の映像は放映されることはなかった。そのわずか数ヶ月後にもう一度収録にトライしている。幸い、この際のパフォーマンスは十分に満足のいくもので、やがてその音源を収録したアルバム『Unplugged』もリリースされている。
セットリストの中で、ヒット曲といえるものは、バッファロー・スプリングフィールド時代の作品「Mr. Soul」、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングのレパートリー「Helpless」、そして「The Needle And the Damage Done」の3曲に限られているが、『Tonight’s the Night』からの気怠げな「World On A String」、『Rust Never Sleeps』に収録されていたソクゾクするような「Pocahontas」、『Trans』からのテクノ調の「Transformer Man」(ここでは驚くほど温もりと情感を感じさせるアコースティックなナンバーに様変わりしている)といったディープなナンバーが大半を占めている。
そうした中でも、とりわけファンを喜ばせたのが「Stringman」で、全盛期とされる1970年代半ばにレコーディングされたものの、当時はリリースされることのなかった哀愁を湛えたたピアノ・バラードである。
11位:キッス (1995年)
キッスのようなバンドをアコースティック・セットで聞くとどうなるのだろう?どうやらかなりイケるらしい!キッスのアンプラグドはひたすらにベーシックだ。メイクも花火もなし、骨を砕くようなディストーションがなくても、キッスのアンプラグドでのパフォーマンスは、惹かれずにいられないギターのリフと歌わずにいられないメロディで、グループの圧倒的な存在感を印象付けた。
しかし、これを単なる「いいショー」から「すばらしいショー」へと引き上げたのは、脱退したオリジナル・メンバーのエース・フレーリーとピーター・クリスの参加で、これには誰もが驚きを覚えた。ジーン・シモンズとポール・スタンレー (そして交替で加入したメンバーたち)のいるステージに上がり、ローリング・ストーンズのカヴァー「2000 Man」、「Beth」や「Nothin’ To Lose」、定番の「Rock And Roll All Nite」というグループのきわめつきの人気ナンバーを披露した。
「MTV Unplugged」のベスト・パフォーマンスのひとつとして歴史に名を残すことになったこのステージにおける、フレーリー、クリス、ジーン・シモンズ、ポール・スタンレーの共演がきっかけになって、オリジナル・ラインナップの復活の可能性が話し合われ、その後、再結成。ワールド・ツアーを開催して大成功の裡に終えている。
10位:フローレンス・アンド・ザ・マシーン (2012年)
フローレンス・アンド・ザ・マシーンのヴォーカリスト、フローレンス・ウェルチは、そこがどこであれ、その場を聴衆で埋め尽くしてしまうような圧倒的なヴォーカルで知られる。彼女の「MTV Unplugged」の収録が、かつてのシナゴーグ (ユダヤ教の礼拝堂) だった場所で行われたというのも理に適った話だ (これには、フローレンス・アンド・ザ・マシーンが、このとき10名の合唱団をサポートに迎えたという事情もあった)。
歌手としてのウェルチの才能のショーケースとして「MTV Unplugged」ほど、うってつけなものはないだろう。もちろんヒット曲が聞けるというのも当然あるが「No Light, No Light」やオーティス・レディングのヒットで有名になったスタックス・ソウルの名曲「Try A Little Tenderness」のカヴァーなどで過去を遡ってみせた場面は、まさに彼女のパフォーマンスの神髄をとらえたものと言っていい。そしてそれは、すなわち「MTV Unplugged」の歴史にあっても最高の瞬間のひとつに数えられる。
9位:ローリン・ヒル (2001年)
『The Miseducation Of Lauryn Hill』は、現時点でローリン・ヒルの唯一のスタジオ・アルバムだ。そのリリースから20年以上経った現在、続編として呼ぶのに最も近い作品がアルバム『MTV Unplugged No.2.0』だろう。ローリン・ヒルの「MTV Unplugged」は、ステージが新曲という点で独特なものだった。
ラディカルな、ニュー・フォークというスタイルを引っさげて登場し、曲間の合間に極めてパーソナルな内容の語りが入る展開は、ライヴ・アルバムであると同時にあたかも日記のようにも感じられる。『The Miseducation Of Lauryn Hill』が満場一致の称賛を得ているのとは対照的に、『MTV Unplugged No.2.0』に対する評価は真二つに分かれている。未完成な、剥き身のままの作品 (およびそれを歌う女性) を称賛する者もいれば、まったく同じ理由でアルバムをこき下ろす者もいる。
このアルバムが私たちが彼女に期待していた次作アルバムでないことは間違いないが、今、あらためて聴き返してみると、「Mystery Of Iniquity」や「I Find It Hard To Say (Rebel)」などの先見性には全く驚かされる。「MTV Unplugged」で披露された、一連の歴史的なパフォーマンスの中でも、あらためて評価されるべきが、このローリン・ヒルのライヴだろう。
8位:エリック・クラプトン (1992年)
「MTV Unplugged」の知名度を飛躍的に高めたのは、同プログラムでポール・マッカートニーが披露したパフォーマンスかもしれないが、ニール・ヤング、ボブ・ディランといった、仲間の大御所たちにインスピレーションを与えて、その出演を促したミュージシャンといえば、明らかにエリック・クラプトンだろう。
エリック・クラプトンのアルバム『Unplugged』は、クラプトンのキャリアを活性化しただけでなく、グラミー賞6部門で賞を獲得。全世界で2,600万セットを売り上げる驚異的なヒットを記録した。クラプトンは「MTV Unplugged」で、自らのルーツに立ち返り、楽曲の装飾をぎりぎりまでそぎ落とすことでその質を高めてみせ、「Tears In Heaven」はより悲しく響き、「Layla」はより魅惑的になり、「Malted Milk」はよりブルージーに仕上がった。クラプトンはそのキャリアのすべてをブルースの探求に注ぎ込んできたが、彼がブルースのけだるさをあますところなくとらまえた初めてのパフォーマンスは、この”MTV Unplugged”で披露された歌唱/演奏だった。
7位:R.E.M. (1991年、2001年)
反則と思われる向きもあるかもしれないが、R.E.M.が「MTV Unplugged」で披露した2回のステージのすばらしさとは、それぞれが著しく性格の異なるものだった点にある。どちらのステージも、明らかに新曲を中心に据えたものではあったが、グループは長年のファンのお気に入りのレパートリーも、そのセットリストに加えていた。1991年のステージで披露した「Perfect Circle」と「Fall On Me」。2001年のステージで披露した「Cuyahoga」と「The One I Love」がその曲で、言うまでもなく「Losing My Religion」はどちらの回でも取り上げられていた。
また、1991年のセットでの演奏は、初期のR.E.M.を特徴付けていたフォーク・ロック的なサウンドで纏められており、2001年のセットは『Up』や『Reveal』といったアルバムのそれからメカニカルな要素を取り除いた、幾分ポップス寄りのタフなサウンドになっている。いずれにしても、『Unplugged: The Complete 1991 And 2001 Sessions』 (バンドの解散から3年後にリリースされている)で聴けるR.E.M.の「MTV Unplugged」でのステージは、彼らがいかに風変わりで、特別なバンドであったかということを思い起こさせてくれる。
6位:ジミー・ペイジ & ロバート・プラント (1994年)
レッド・ツェッペリンの1985年と1988年のリユニオンは、当事者であるジミー・ペイジとロバート・プラントによれば満足のいくものではなかったという。しかし1994年に『No Quarter: Jimmy Page And Robert Plant Unledded』で再び力を合わせたとき、ペイジとプラントのあいだにかつての魔法が蘇った。
彼らに先んじて「Unplugged」シリーズに出演したニルヴァーナがそうだったように、二人もまた「MTV Unplugged」を通じ、自身の過去の作品に新しい命を吹き込んだのである。実際、フォーク・ロック調の「The Battle Of Evermore」はオーケストラとこの上なく見事に調和していたし、「Four Sticks」ではモロッコと中東の音楽を効果的に聴き手に届けた。ちなみにアルバムの一部はマラケシュでレコーディングしている。
このときペイジとプラントが新たに完成させた「City Don’t Cry」「Yallah」(のちに「The Truth Explodes」に改題)、「Wonderful One」「Wah Wah」の4曲は、いずれも『No Quarter: Jimmy Page And Robert Plant Unledded』のハイライトに数えられるトラックになっている。
5位:ビョーク (1994年)
ビョークは、過去30年間で最も先進的で常に驚きをもたらすアーティストの一人で、そうした驚きの多くは最先端のエレクトロニック・ビートの活用によるところが大きい。しかし、彼女がいかに革新的であったかは「MTV Unplugged」で披露された彼女のパフォーマンスからも聴き取れる。
ビョークはそのステージで、ハープ奏者のコーキー・ヘイル、サックス奏者のオリバー・レイク、タブラ奏者のタルビン・シン、サウス・バンク・ガムラン・オーケストラら、1993年のアルバム『Debut』のレコーディングに参加したミュージシャンとともに同作収録曲のほぼすべてを再演。共演者らにスポットライトを当ててつつ、自身のマテリアルを根本的に再解釈してみせた。
インドとジャワの楽器を効果的に使用した「One Day」と「Big Time Sensuality」、ジャジーでグルーヴィーなトラックに生まれ変わった「Violently Happy」はその一例である (ビョークは、このおよそ10年後に、この際のパフォーマンスと1995年にテレビ番組で披露した「Venus As A Boy」を含むアルバム『Debut Live』をリリースしている)。
4位:シャキーラ (1999年)
シャキーラは「MTV Unplugged」に出演する以前に4枚のアルバムをリリースしていたが、この番組で披露したパフォーマンスにて本格的なブレイクを果たすことになった。「MTV Unplugged」に出演した最初のラテン・ポップ・アーティストであった。
彼女は、当時リリースしたばかりだったアルバム『Donde Estan Los Ladrones?』に収録されたほぼすべての楽曲を披露し、このチャンスを最大限に活用した (スペイン語がまったくわからなくても「Ciega」「Sordomuda」、「Inevitable」「OjosAsí」といった楽曲は十分に楽しめる)。
この「MTV Unplugged」の出演を契機に、シャキーラは新たなスタートして大きな注目を集め、グラミーのベスト・ラテン・ポップ・アルバム賞を獲得。『Donde Estan Los Ladrones?』は全世界で500万セットを売り上げるなど成功を収め、次作に当たる『Laundry Service』は北米地域だけでおよそ400万セットを売り上げる大ヒットになった。
3位:ジェイ・Z (2001年)
2000年に特別番組として復活した「MTV Unplugged」は、翌2001年の終わりに「Unplugged」の名を冠した新たな傑作アルバムを生み出すことになった。番組とアルバムの主役になったのはジェイ・Zで、彼はその2ヶ月前に名盤『The Blueprint』をリリースしたばかりだった。
このときのセットリストは「Heart Of The City (Ain’t No Love)」や「Takeover」といった『The Blueprint』のハイライト・チューンに、「Hard Knock Life (Ghetto Anthem)」「Can’t Knock The Hustle」などの初期の代表曲を交えたもので、最盛期にあったジェイ・Zを捉えたライヴ・アルバムでもある。
『Jay-Z: Unplugged』は、それだけでも十分に入手する意味のある作品だが、同作の価値をいっそう高めているのが、ホヴァことジェイ・Zのラップをバックアップするザ・ルーツによる生演奏である。ドラム・マシンもサンプラーも不要。世界最高のヒップホップ・バンドのサポートがあればそれで十分だろう。
2位:ポール・マッカートニー (1991年)
元ビートルズのポール・マッカートニーは、常に先頭を走り続けてきたが「MTV Unplugged」で披露したパフォーマンスをライヴ・アルバムとして発表したのも彼が最初だった。このときのマッカートニーのセットリストは、ロックン・ロール・スタンダードのカヴァー・ヴァージョン (ジーン・ヴィンセントの「Be-Bop−A-Lula」、エルヴィス・プレスリーの「Blue Moon Of Kentucky」)、ファンにはお馴染みのビートルズ・ナンバー(「Here, There and Everywhere」「Blackbird」)、マッカートニーが14歳のころに作曲した処女作「I Lost My Little Girl」やその他のソロ・ナンバーを含むヴァラエティに富んだものだった。
そして彼とバンドのメンバーはアンプを使用せず、細心の注意を払って配置されたマイクを前に演奏。文字通り、”プラグ”を繋ぐことなくステージを務めている。『Unplugged (The Official Bootleg)』で聴けるこの上なくクリアで温もりに満ちたサウンドは、まさにこの”Unplugged”なセッティングの賜だった。
マッカートニーの「MTV Unplugged」は、シリーズのすべてのパフォーマンスの中でも、芸術性/商業性の両面できわだった成功を収めているが、特筆すべきは「MTV Unplugged」のプロデューサー、アレックス・コレッティから贈られた賛辞だろう。後に彼は、この人気シリーズの成功はマッカートニーのパフォーマンスあってのものだったという趣旨のコメントを残している。
1位:ニルヴァーナ (1993年)
1位に選ぶべきバンドはほかにいるだろうか? ニルヴァーナの「MTV Unplugged」は、シリーズ中最高のエピソードになったというだけでなく、ニルヴァーナの最も重要なアルバムに数えられる『MTV Unplugged In New York』を生み出すことにもなった。
同作に記録されているのは、大方の聴き手がイメージするラウドで歪んだサウンドではない。静謐さの中にくっきりと浮かび上がるカート・コバーンの紡ぎ出すメロディと豊かな感情表現だ。コバーンの判断により、バンドは大ヒット曲を敢えて外し、より地味で陰鬱な楽曲を披露。これがコマーシャル性に欠けると感じたプロデューサーたちは、当初コバーンの選曲に異議を唱えたというが、こうした選曲ゆえに、このステージはより身近さが感じられるものになっている。
また、ショーの締めくくりに披露されたレッド・ベリーのレパートリー「Where Did You Sleep Last Night?」を筆頭に、ここで取り上げられている一連のカヴァー曲が、どれもがコバーンのオリジナルのように聴こえる点も特筆すべきだろう。コバーンの死から7ヶ月が経過した1994年11月1日にリリースされた『MTV Unplugged In New York』には墓石のような重みが感じられた。同作にあらためて耳を傾けてみると、まるで必死で喘いでいる生き物のように感じられる。まさにこの瞬間、彼らは奇妙で美しい何かに進化を遂げようとしていたのである。
Written By Jacob Nierenberg
- 史上最高のライヴ・アルバム・ベスト25
- 全米ラジオチャートでニルヴァーナ史上最高位を記録した「About A Girl」
- 『R.E.M. By MTV』の監督が語る25周年を迎えたR.E.M.の『Automatic For The People』
- ウッドストック以降:現代のフェスティバルはいかに変貌を遂げたか
- ミュージシャンとツアーの歴史:ヴォードヴィルからフェス、巨大ライブまで
- MTVヨーロッパで最初に流れたのはダイアー・ストレイツの「Money for Nothing」