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メアリー・J. ブライジのベスト・ソング20:クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウルの必聴曲
数十年にわたるキャリアの中で、メアリー・J.ブライジ(Mary J. Blige)は共同体の痛みと癒しを伝えるパイプ役を担ってきた。彼女は14枚のスタジオ・アルバムで自分の世界をリスナーと共有し、惜しみなく身を捧げ、R&B界で特異な存在であり続けている。
ニュー・ジャック・スウィングを、ヒップホップをベースにしたソウルフルなR&Bにうまく融合させたところからキャリアをスタートしたメアリーは、他のアーティストが彼女に追随する中、10年ごとにそのサウンドを進化させ続けている。
90年代の初期から00年代までポップミュージックに与え続けた影響、そして2010年代の輝ける成功を辿ることで、メアリー・J.ブライジがR&Bの最も輝かしく最も革新的なボーカリストの一人だということがわかるだろう。この記事で紹介する20曲のベスト・ソングは、彼女の芸術性を物語るものであるのだ。
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20位: Deep Inside
1999年に発売された4枚目のスタジオ・アルバム『Mary』に収録され、エルトン・ジョンの「Bennie And The Jets」のピアノのループを中心に構成された「Deep Inside」は、このシンガーの一部を欲しがっていたすべての人々に対して、彼女はこう語りかけている。
問題は長年にわたって私の人生を公にしてきたこと
そして好きな人を見つけるたびに、心配になってしまう
彼らが見ているのが本当に私なのかどうかって
19位: Take Me As I Am
「Deep Inside」から6年後、メアリーの7枚目のスタジオ・アルバム『The Breakthrough』のヒット・シングル「Take Me As I Am」の中で、彼女は主人公から観察者になり、また元に戻るということを繰り返す。この曲もまたサバイバルの物語だが、この時メアリーはトンネルの明るい側からロニー・リストン・スミスの「Garden Of Peace」の気まぐれなメロディーに乗せて、彼女はこう歌う。
彼女は落ち込んでいた
彼女について書かれていたことに
彼女は絶えず話題になっていたから
18位: Your Child
メアリー・J. ブライジの曲は、ドラマチックなインストゥルメンタルの上に叙情的なストーリーテリングが乗ることで成り立っている。ありきたりなバラード曲をより複雑なものに仕上げた「Your Child」がそれを証明している。
この曲は、交際相手に子供がいる場合、その「もう一人の女性」を人間らしく表現し、リスナーも一緒に癒されるというストーリーだ。
ダンス・リミックスに最適なサウンドではないかもしれないが、メアリーの失恋物語でさえ、ビルボード・ホット・ダンス・クラブ・プレイ・チャートで燃え上がることがある。2000年に「Your Child」が1位を獲得したように。
17位: Enough Cryin
2005年のアルバム『The Breakthrough』は、メアリーのキャリアを彼女自身の言葉で再定義した、解放的なレコードとなった。過去6枚のアルバムで見せた傷はそのままに、『The Breakthrough』はより賢く、より成熟した女王による勝利のカムバックと見ることができる。
ダークチャイルドのビートに乗せた「Enough Cryin」は、その約束を果たしてくれた。メアリー・J.ブライジの曲のほとんどはヒップホップとソウルのフュージョンがベースになっているが、この曲では彼女が、両方のジャンルを簡単に支配できることを証明しており、彼女のMCスキルも垣間見ることが出来る。
16位: Everything
ジャンルを超えたサンプリングのおかげで、時の試練に耐えている曲は多く存在している。この1997年のアルバム『Share My World』のシングル曲のバックボーンとなっているザ・スタイリスティックスの「You Are Everything」は、第二の人生を手に入れた一例と言えるだろう。
「Everything」では、メアリーが最も至福に満ちた表情で、「とても純粋な愛」について楽しげに歌い、すべての素晴らしい芸術は苦痛から生まれるという信念を貫いている。
15位: Just Fine
メアリーの2007年のアルバム『Growing Pains』に収録されているこの曲を聴かない結婚式、オフィスパーティー、炊事場、家族の集まりはアメリカではないであろう。
彼女のエキセントリックなダンスと、キャリアを通じて上質なワインのように年を重ねてきたことから、多くのR&Bファンはブライジを有名な“アンティー(auntie)”とみなしている。「Just Fine」は、「動きたい」「楽しみたい」「自分の人生を変えたい」と願うすべてのアンティーたちのためのアンセムになるかもしれない。
マーヴィン・ゲイのファンク・グルーヴとマイケル・ジャクソンの『Off The Wall』のディスコ・ビートを取り入れたこの曲は、まさにスローバックなパーティー・アンセムと呼ぶにふさわしいのだ。
14位: You Remind Me (feat. Greg Nice)
1992年に『What’s The 411?』でデビューしたメアリーは、当時R&Bのルネッサンスとジャンル進化の最前線に布陣していた。ニュー・ジャック・スウィングのサウンドがヒップホップ・プロダクションと連携するようになり、進化を始めていた頃だ。
「You Remind Me」はその典型的な例で、デイヴ “ジャム “ホールのファンキーなプロダクションに乗せてメアリーが見事なカリスマを披露したことで、彼女は「ヒップホップ・ソウルの女王」と呼ばれるに由縁となったのだ。
13位: Share My World
サード・アルバム『Share My World』に収録されたメアリーのヴォーカルは、「クール」「柔らかな」「造作ない」の3つの言葉で表現でき、リラックスしたトーンで歌われている。
彼女の最初の2枚のアルバムはハードでヘヴィなエモーショナルを表現していたが、『Share My World』はよりレイドバックしたアプローチで、ヒップホップ・ソウルがよりエレクトロに満ちたR&Bの段階へと移行したことを表現している。
この変化は、メアリーがよりポジティブな心境になったことと、プロデューサーとしてパフィーと仕事をするのをやめたことも一因だった。アルバムのタイトル曲の「Share My World」は、グリッチなトリップホップ・ビートで浮遊するメアリー・J.ブライジのベスト・ソングの一つだ。
12位: Don’t Go
プロデューサーのチャッキー・トンプソンとパフィーは典型的なヒップホップのブレイクビーツをガイ(Guy)の「Goodbye Love」やデバージ(DeBarge)の「Stay With Me」などのサンプリングと交換し、メアリーのヒップホップ・ソウル・バラードであるこのアルバム『My Life』に完璧な背景を作り出した。
この曲はアルバムの中でもダウンテンポな曲だが、彼女はこの曲で、マーヴィン・ゲイのようなソウルフルな憧れを表現している。
11位: U+Me (Love Lesson)
2017年、メアリーはトラップ調のR&Bやポップ・ミュージックと互角に渡り合い、その優位性を主張した。13枚目のスタジオ・アルバム『Strength Of A Woman』では、離婚劇から立ち直り、「Glow Up」「Thick Of It」「Love Yourself」といった楽曲で、自身のパーソナル・ブランドであるソウルを維持しながらも、最新のトレンドをも取り込んでいる。
アルバム収録曲「U+Me (Love Lesson)」は、スルメのような別れのアンセムだ。彼女はその関係を後悔しているわけではなく、むしろそれを乗り越えられたことに幸運を感じている。彼女はこの曲で、「不完全なまま深入りし、いつも良いとは限らない。でも私は自分の足で歩き続けた」と歌い、彼女が前進する達人であることを改めて証明している。
「U + Me (Love Lesson)」はビルボードのアダルトR&Bソング・チャートで1位を獲得し、メアリー・J・ブライジを代表する曲の1つとなった。
10位: Not Gon’ Cry
メアリー・J.ブライジのベストソングを通して一貫したテーマとなっているのが、レジリエンス(回復力)だ。彼女は多くのリスナー、特に彼女と同じような状況を経験した女性たちに、一貫して救済への道を切り開いてきた。
1995年の映画『ため息つかせて』のサウンドトラックへの彼女の参加は、アフリカ系アメリカ人の4人の女友達がそれぞれの恋愛、デート、失恋の物語をナビゲートすることを中心にしたこの映画にとって不可欠な要素であった。この曲でブライジは「私は涙を流さない」と約束し、「だってあなたは私の涙に値しないもの」と悟るのだが、片思いのために「11年間」を犠牲にしてきたことも歌われる。
1996年の全米シングルチャートで2位を記録した「Not Gon’ Cry」は、彼女の3枚目のアルバム、1997年の『Share My World』にも収録されている。
9位: All That I Can Say
彼女のディスコグラフィーでは心痛と苦痛が多く、喜びの瞬間を歌う曲は稀に思えるが、この「All That I Can Say」は、彼女が最も幸せな状態にあることを示す癒しの曲だ。
この曲では、作曲者であるローリン・ヒルがバックヴォーカルを務めている。メアリーは最も真剣なパフォーマンスで、自分のパートナーを「天からの贈り物」と呼んでいるが、これは曲そのものを適切に表現しているだろう。
8位: I’m Goin’ Down
最高のカバーというのは、原曲を正しく表現しているだけでなく、その意味に新たな深みを与えるものだ。ホイットニー・ヒューストンによるドリー・パートンの「I Will Always Love You」の力強いカバー、シネイド・オコナーによるプリンスの「Nothing Compares 2 U」の心を打つヴァージョン、そしてメアリー・J.ブライジによるローズ・ロイスの1976年の名曲「I’m Going Down」のスリルがあるヴァージョンなどがそれにあたる。
彼女の2作目アルバム『My Life』を通して表現された苦痛にふさわしく、ショーン・”パフィー”・コムズとチャッキー・トンプソンがプロデュースした「I’m Goin’ Down」は、彼女の土臭いソプラノ・ボイスに弾力をつけ、史上最も愛されるメアリー・J.ブライジの楽曲の一つとなったのである。
7位: No More Drama
2001年の5枚目のアルバム『No More Drama』で宣言されているように、このタイトルトラック「No More Drama」はメアリーが馴染みのない領域、つまり満足感を得るための曲となっている。
ジミー・ジャムとテリー・ルイスのコンビが手がけた昼ドラ『ザ・ヤング・アンド・ザ・レストレス』の「Nadia’s Theme」に乗せて、メアリーはこれまでの人生の中で経験した失恋や浮き沈みを回想しながら「No more drama」と宣言し、最も劇的なパフォーマンスを見せている。
6位: Be Without You
2005年のアルバム『The Breakthrough』の中で最も素晴らしい曲の一つである「Be Without You」はR&Bラジオ局を席巻し、75週という驚異的なチャート入りを果たし、この曲でメアリーはグラミー賞を2度受賞した。
この曲は彼女の最もパワフルなパフォーマンスのひとつであり、彼女が00年代に入っても主役の座を維持できることを証明した。
5位: Family Affair
メアリーをバラード歌手としてしか知らない人にとって、「Family Affair」は彼女がまだまだイケるということを知らせてくれる曲だった。2001年、彼女自身は明るい方向へ向かい、人生に対するより健全な展望を持つようになっていた頃だ。
5枚目のスタジオ・アルバムを『No More Drama』と名付けた彼女は、その夏、ファンを自分のダンスフロアに招待し、ドクター・ドレーによるG-Funkに乗せて、「憎しみやホラ吹きはいらない」と念を押して、新しい時代の扉を開けたのである。この曲は、彼女にとって初の全米1位となり、ポップカルチャーの歴史に名を残すことになった。
4位: Real Love (Remix) (with Notorious B.I.G.)
ノトーリアス・B.I.G.が『What’s The 411?』収録曲のリミックスにゲスト参加したおかげで、この曲はメインストリームに足を踏み入れることができた。「Real Love」はすでにR&Bチャートで1位を獲得しており、当時のメアリー・J.ブライジの曲の中で最高の成績を収めていたが、ビギーの参加によって次のレベルに到達することになった。
このリミックスは、ショーン・”パフィ”・コムズとバッド・ボーイがその後10年にわたって作り出したR&B/ヒップホップ・コラボレーションの雛形にもなっている。
3位: I’ll Be There for You/You’re All I Need to Get By (Method Man feat. Mary J Blige)
メアリーの記憶に残る数々のコラボレーションは、R&Bとヒップホップの両方の世界で彼女への尊敬と賞賛を集めている。1995年、彼女はウータン・クランのメソッド・マンと組んで、ヒップホップ界で最も象徴的なラブ・ソングのデュエットの1つを作りあげた。
この曲は、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルによるモータウンの名曲「You’re All I Need to Get By」を補完したもので、メアリーがフックを歌い、そのメロディーを模倣している。
2位: I Can Love You (feat. Lil’ Kim)
『Share My World』の収録曲「I Can Love You」は、ヒップホップ・ソウルの女王がリル・キムとタッグを組んだシングルだ。この曲では、リル・キムが1996年のデビュー・アルバム『Hard Core』で発表した有名なトラック「Queen B**ch」をサンプリングして、彼女の最高のヴァージョンを披露している。この曲は女性の連帯感を表現した瞬間であり、ヒップホップ史の一コマでもある。
1位: My Life
メアリー・J.ブライジのベスト・ソングや彼女のディスコグラフィー全てを通して繰り返されるテーマは、彼女がいかに世間やメディア、そして恋愛相手に誤解されていると感じてきたか、ということだ。その傷と痛みの下で、彼女は何度も、自分がただの人間であることを私たちに思い出させてくれた。
1994年にリリースされたアルバム『My Life』のタイトル曲でメアリーは、ロイ・エアーズの「Everybody Loves The Sunshine」のサンプリングに乗せて、「もしあなたが私の人生を見たなら、私が見たものを教えて」とコーラスで歌い、最も感動的な歌声を披露する。
多くのR&Bシンガーがそうであるように、メアリーも教会からスタートし、「My Life」ではそのゴスペルのルーツも披露しているが、この曲が真のスタンダードとなっている、メアリーと彼女のヒップホップ・ソウルのサウンドが完璧に凝縮されているからだ。カタルシスとスピリチュアル、そして彼女の素晴らしい才能と幅広い芸術性を思い起こさせる作品だ。
Written By Da’Shan Smith
- メアリー・J. ブライジ アーティストページ
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