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KISSのベストソング20:一晩中ロックするための地獄の必聴楽曲20選
コカ・コーラ、キャデラック、星条旗とならんで、KISSはアメリカを代表する存在だ。彼らはまた、天性のサヴァイヴァーでもある。80年代前半には、ボブ・ディランがエレクトリック・サウンドに転向した時のような反動で、トレードマークのメイクアップを(一時的に)落としたり、90年代初頭には80年代に活躍したドラマーのエリック・カーが亡くなったり、さまざまな変化を乗り越える力を持って生まれついたのだ。
KISSは、そのセンセーショナルなステージばかりが注目されがちだが、同バンドは過去50年にわたって、ステージ同様に見事な楽曲を生み出してきた。実際、彼らの煌びやかな存在なしに、ロックンロールを想像することすらほぼ不可能だろう。
現在行われている“End Of The Road”ファイナル・ツアーがバンドにとって最後のツアーとなるならば、uDiscover MusicではKISSのベストソング20曲を選んで、彼らに敬意を表したい。
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20位: Nothin’ To Loss (KISS, 1974)
KISSもファンも、「Nothing’ To Lose」に愛着を持ち続けている。この曲は1974年2月に同バンドの初シングルとしてリリースされた。また同曲は、同じく1974年2月にアメリカにおけるテレビ初出演となったABCの『In Concert』で披露した1曲でもある。
煽情的でローリング・ストーンズ的なこの曲では、ジーン・シモンズとオリジナル・メンバーのピーター・クリスがツイン・ヴォーカルを取った。70年代の全盛期を通じて、活力溢れる「Nothing’ To Lose」は、KISSのコンサートには欠かせない定番曲となった。
19位: Forever (Hot In The Shade, 1989)
ガンズ・アンド・ローゼズがロック・シーンを席巻し、 グランジ・ミュージックの人気が上昇してきた80年代後半から90年代前半にかけては、KISSにとって苦難の時代だった。
1989年の『Hot In The Shade』はゴールド・ディスク(50万枚以上のセールス)となったが、それでも彼らのディスコグラフィの中では、不遇のアルバムに数えられている。それでも同アルバムは、ポール・スタンレー/マイケル・ボルトンの共作による「Forever」を残した。全米でトップ10入りを果たしたいぶし銀のパワー・バラードは、今日でも説得力抜群だ。
18位: Firehouse (KISS, 1974)
ポール・スタンレーがペンを執り、ザ・ムーヴによる60年代のヒット曲「Fire Brigade」に明らかに影響を受けたキャッチーな「Firehouse」は、KISS がバンド名をタイトルに冠したデビュー・アルバムの中でも傑出した楽曲だ。
低く響くリフと、ジーン・シモンズのスムーズなベースラインを基盤とした同曲は、ライヴ・パフォーマンスにぴったりで、KISSのキャリアを通じてライヴの定番曲となった。楽曲のテーマ(消防署)は、光る赤ランプやサイレンで強調されることも多く、ジーン・シモンズが火を噴くことでも知られている。
17位: Crazy Crazy Nights (Crazy Crazy Nights, 1987)
1987年にリリースされた14枚目のスタジオ・アルバム『Crazy Crazy Nights』で、KISSは1982年の『Creatures Of the Night』から続けてきたハードでメタル的なスタイルから方向転換した。
ジーン・シモンズと仲間たちは、シンセサイザーを重用したラジオでのオンエア向きなポップ・メタルのサウンドを追求した。そして、快楽主義的なアルバムのタイトル・トラックは、イギリスで初めてトップ10入りを果たすスマッシュ・ヒットとなった。
16位: I Was Made For Lovin’ You (Dynasty, 1979)
ローリング・ストーンズが1978年の「Miss You」でディスコを取り入れたように、KISSも「I Was Made For Loving You」で、70年代後半にダンスフロアを熱狂させたディスコを取り入れた。
批評家たちは、しなやかで冗談めいたこのポップ・トラックを珍曲として片づけたが、同曲はビルボードの総合チャートで11位を記録し、KISSにとって特に大きなアメリカでのヒットとなった。
15位: I Love It Loud (Creatures Of The Night, 1982)
ポップ志向のアルバム『Dynasty』と『Unmasked』を70年代から80年代の変わり目にリリースした後、KISSは10作目のスタジオ・アルバム『Creatures Of The Night』で、70年代半ばから後半にかけてバンドに成功をもたらした硬派なハードロック・サウンドに再び立ち戻った。
その決意をはっきりと表明すべく、ジーン・シモンズは地を揺るがすようなビートに合わせて、ヘヴィーメタルを讃えるハードな同曲を書いた。シンプルながら際立っていて、拳を突き上げたくなるロック・アンセムの例に漏れず、今でも名曲の誉れ高い。
14位: Lick It Up (Lick It Up, 1983)
KISSはマーキュリー・レコードとの新契約を祝して、11作目のスタジオ・アルバム『Lick It Up』(1983年)ではトレードマークのメイクアップを落とした。これはおそらく、彼らにとってキャリア最大の冒険だったに違いない。
極端なイメージチェンジではあったが、その冒険は実を結んだ。というのも、同アルバムは、タフでハードなロック/メタルを融合してファンを再獲得した『Creatures Of The Night』を基盤としていたからだ。アルバムのハイライト同曲は、ハードでセクシーなタイトルを冠しており、いかにもKISSらしい。イギリスでTOP40のヒットを記録した。
13位: Calling Dr. Love (Rock And Roll Over, 1976)
1976年にリリースされたアルバム『Rock And Roll Over』の収録曲には名曲が多いが、ジーン・シモンズによる「Calling Dr. Love」もそのひとつだ。なお同曲は、全く思いの寄らないところからインスピレーションを得ている。コメディ・グループのThe Three Stooges(三ばか大将)主演で1934年に公開された映画『Men in Black』である。
全米でTOP20に入った同曲で繰り返されるコール・アンド・リスポンスのコーラスは、同映画の台詞(「Calling Doctor Howard, Doctor Fine, Doctor Howard」)をベースにしている。しかし、ジーン・シモンズと仲間たちは、これをKISSらしいリフ主導のキャッチーなアンセムに料理した。リード・ギタリストのエース・フレーリーのギター・ソロも見事に炸裂している。
12位: Creatures Of The Night (Creatures Of The Night, 1982)
カサブランカ・レコードからの最後の作品で、KISSのキャリアの中でも特にヘヴィーな1枚となった1982年の『Creatures Of The Night』は、ハードなタイトル・トラックと共に潔く発表された
。ポール・スタンリーとオリヴィア・ニュートン=ジョンからマール・ハガードと、コラボレーションの相手は多岐にわたるソングライターのアダム・ミッチェルとの共作による「Creatures In The Night」は、デフ・レパードやアイアン・メイデンといったイギリスのNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)時代のスターたちが切り拓いたハードコアで妥協のないヘヴィー・ロックの流れを汲んでいた。そして、英米の両国にアピールする魅力を持つ同曲は、イギリスでTOP40に入るヒットとなった。
11位: Hard Luck Woman (Rock And Roll Over, 1976)
通説では、ポール・スタンレーは、ロッド・スチュワートを思い描いて「Hard Luck Woman」を書いたとされているが、ピーター・クリスのヴォーカルによる「Beth」がヒットしたことで、KISSはポール・スタンレーが手掛けた同曲を自らレコーディングすることにした。
ピーター・クリスは、「Maggie May」のロッド・スチュワート的ハスキーなヴォーカルで素晴らしい仕事をしており、彼のヴォーカルは同曲のルーツに立ち戻るようなセミアコースティックな演奏と見事にマッチしている。ラジオ受けする魅力を持つ「Hard Luck Woman」は全米でTOP20ヒットとなり、1994年にはカントリー界の大物ガース・ブルックスが、KISSのトリビュート・アルバム『KISS My Ass: Classic Kiss Regrooved』で、スタンレー、シモンズらKISSのメンバーをバックに従えて、同曲をカヴァーしている。
10位: Rocket Ride (Alive II, 1977)
「Rocket Ride」は、KISSの初代リード・ギタリストのエース・フレーリーが作曲とヴォーカルを担当した。このリストに登場する20曲のうち、KISSの主要メンバーであるジーン・シモンズとポール・スタンレーが直接的に関与していないのは2曲のみで、そのうちのひとつがこの曲だ。
サイケ調の激しい同曲はエース・フレーリーの最高傑作のひとつで、ライヴ・アルバム『Alive II』に収録されているスタジオ・レコーディングのうち、エース・フレーリーが参加した唯一の楽曲。エース・フレーリーは縦横無尽の活躍を見せ、ピーター・クリスによるドラムを除いて、ヴォーカルも楽器もすべて自ら担当している。
9位: Black Diamond (KISS, 1974)
KISSがリリースしたセルフタイトルのデビュー・アルバムからの1曲で、揺ぎ無いクラシックの座を獲得している「Black Diamond」。ラフな質感の同曲は、ポール・スタンレーがほぼ全てをひとりで書き上げた曲で、彼が12弦ギターを弾きながら冒頭のセクションを歌った後、バンドの演奏が始まり、ドラマーのピーター・クリスが次の2小節を歌う。これは、彼らが出身地であるニューヨークの路上でよく見かけていた売春婦についての曲だ。後にポール・スタンレーはClassic Rockの取材にこう語っている。
「(Black Diamondは)ニューヨークについて書いた曲なんだ。僕たちはニューヨークを心から愛していて、俺たちが書けることと言ったら、ニューヨークでの生活しかなかった。道端で売春婦が佇む光景を、実際に僕たちがそういう経験をしていなくても、空想する題材を手にすることができたんだ」
ファンにも人気の高い「Black Diamond」は、リプレイスメンツやパール・ジャムらにもカヴァーされている。
8位: Shout It Out Loud (Destroyer, 1976)
KISSの1作目、2作目、3作目のアルバムは、アメリカでゴールド・ディスク(50万枚以上のセールス)を獲得したが、カサブランカ・レコードが4作目のアルバム『Destroyer』でアリス・クーパーのプロデュースを手掛けたことで知られるボブ・エズリンを起用したことで、彼らのキャリアがレベル・アップした。
レコーディングの達人ともいえるボブ・エズリンは、バンドのサウンドを磨き上げ、ストリングスやサウンドエフェクトを取り入れながら洗練させていった。また、パンチの効いたラジオ向きなエズリンのプロダクションは、「Shout It Out Loud」の全米TOP40入りに大いに貢献。『Destroyer』からのファースト・シングルとなった同曲は、ポール・スタンレーがソングライティングを手がけた楽曲で、ホリーズの「We Want To Shout It Out Loud」にインスパイアされている。
なお、ジーン・シモンズとポール・スタンレーは、KISSの前身だったウィキッド・レスターで、ホリーズの同曲を演奏していた。
7位: Hotter Than Hell (Hotter Than Hell, 1974)
自信に満ち溢れるデビュー・アルバム『KISS』は真似のできない傑作だったが、セカンド・アルバムの『Hotter Than Hell』にも聴きどころはある。特に、エース・フレーリーの「Parasite」や、ポール・スタンレーのペンによる「Hotter Than Hell」は素晴らしい。
後者がフリーによる不朽の名作「All Right Now」に似ていることは否定できないが、メンバー全員の演奏が炸裂する「Hotter Than Hell」は、今でもKISSならではの名曲である。
6位: Beth (Destroyer, 1976)
初代ドラマーのピーター・クリスがヴォーカルをとった「Beth」は、KISSの代表的バラードで、同バンドがアメリカで最高位の7位を獲得したシングルであり、アメリカでゴールド・ディスクを獲得したKISSのシングル2作のうちのひとつでもある(もう1枚はディスコ調の「I Was Made For Lovin’ You」)。
ピーター・クリスは同曲のライターとしても名を連ねているが、アレンジを大幅に変えて、ピアノとストリングスを加えた共同ソングライター/プロデューサーのボブ・エズリンが同曲における一番の貢献者というのが一般的な見解だ。ただし、ピーター・クリスの心に沁みるヴォーカルが絶妙にマッチしていることは誰もが認めている。「Beth」はこれまでのKISSとは大きく趣の異なる楽曲だったが、時代を越えた魅力を持つ1曲でもある。
5位: Love Gun (Love Gun, 1977)
ポール・スタンレーがリズムギター以外にも、ソングライティング、アレンジ、ヴォーカル、さらにはベースまで担当した同曲は、KISSの6作目のアルバムでプラチナ・ディスク(100万枚以上のセールス)を獲得した『Love Gun』からのタイトル・トラックだ。
現代においては、歌詞の内容が1984年公開のロック・モキュメンタリー・コメディ映画『スパイナル・タップ』っぽすぎる嫌いがあるが、ポール・スタンレーは同曲で、ブッカー・T&ザ・MGズの「The Hunter」の歌詞をいくつか引用していることに触れておこう。
素晴らしいロック・ソングであることは疑いの余地もないため、「いかにもKISSらしい曲」で、バンドがレコーディングした中でも「代表的な5曲のひとつに入る」というポール・スタンレーの主張に異議を唱えるのは難しいだろう。
4位: God Of Thunder (Destroyer, 1976)
「God Of Thunder」は、ジーン・シモンズのテーマソングとして広く認知されているが、皮肉にもギリシャ神話に影響を受けたこの壮大なトラックを書いたのはポール・スタンレーである。彼はヴォーカルも取ろうとしていたが、プロデューサーのボブ・エズリンが、ジーン・シモンズのリード・ヴォーカルを強く求めた。
公平を期して言うならば、ジーン・シモンズは素晴らしい仕事をした。そして、ライヴでは血を吹きだし、ベースのソロを加えることで、同曲は他のKISS楽曲と同様に、いまやジーン・シモンズの代名詞となっている。『Alive II』にはもっと速いヴァージョンの「God Of Thunder」が収録されているが、雰囲気と純然たるドラマという点で、『Destroyer』収録のヴァージョンが圧倒的な決定版といえる。
3位: Deuce (KISS, 1974)
セルフタイトルのデビュー・アルバムに収録されている「Deuce」は、ジーン・シモンズによる名曲で、ライヴでも人気が高い。レッド・クロスやレニー・クラヴィッツ、バソリー等さまざまなアーティストがカヴァーしてきた同曲は、KISS楽曲の中でも最もカヴァーされている。なぜこの曲が、あらゆるタイプのロック・ファンに訴えるのかは聴けばすぐに分かる。
「Deuce」には、暴れ狂うリフ、切迫感のあるヴォーカル、エース・フレーリーの威厳あるリード・ギター等、全ての要素が備わっている。驚くべきことに、ジーン・シモンズは、この曲がほぼ出来上がった状態で降りてきたという。後年彼は、「リック、リフ、メロディ、全てが聞こえた。俺たちはその場ですぐにアレンジして、これはずっと定番曲になるだろうって思った」。彼の予測は正しかった。
2位: Detroit Rock City (Destroyer, 1976)
KISSはずっとニューヨークに住んでいたかもしれないが、活動初期にバンドが最大かつ最も熱狂的なファンを得たのはデトロイトだ。そのお礼として、ポール・スタンレーは、プロデューサーのボブ・エズリンの助けを借りて、この伝説的なモーター・シティ(デトロイト)賛歌を作ると、同曲はKISSの代表曲となった。
まさに、「Detroit Rock City」のないKISSのショウなど、想像するのは不可能に近い。クラシック・ロックの定番曲として長年愛されてきた同曲は、そのギター・ソロで知られており、ポール・スタンレーとエース・フレーリーがツイン・ヴォーカルを取っている。
1位: Rock And Roll All Nite (Dressed To Kill, 1975)
3作目のアルバム『Dressed To Kill』のレコーディングに際して、KISSが当時所属していたレーベルの社長ニール・ボガートはセッションを個人的に仕切り、「君たちにはアンセムが必要だ!」とメンバーに発破をかけた。
そしてジーン・シモンズとポール・スタンレーがソングライティングを手がけ、伝説的なフレーズ「I Wanna Rock’n’Roll All Nite and Party Every Day!」をフィーチャーした極めてキャッチーな「Rock And Roll All Nite」は、アンセムに相応しい1曲となった。
同曲が本格的にブレイクしたのは、ライヴ・アルバム『Alive!』のエネルギッシュなヴァージョンが全米・シングル・チャート12位を記録した時だった。これでKISSは商業的な成功を決定的なものとし、代表曲を手に入れた。
Written By Tim Peacock
KISS『Creatures Of The Night 40th Anniversary』
2022年11月18日発売
5CD 1Blu-ray Box / 2CD / 1CD / 1LP
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