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フォール・アウト・ボーイのベスト・ソング20:ポップ・パンクの名曲たち
フォール・アウト・ボーイ(Fall Out Boy)の特徴は、サウンドの刷新に限りなくエネルギーを注ぎ込んでいることにある。そもそもこのバンドは、4人のメンバー全員がサイド・プロジェクトとして結成したバンドだった。その事実が、彼らの特徴をより一層際立たせている。
シカゴのハードコア・シーンで育ったベーシストのピート・ウェンツとギタリストのジョー・トローマンは、ポップ・パンクの曲を作るためのプロジェクトとしてフォール・アウト・ボーイをスタートさせた。やがてリード・シンガー兼ギタリストのパトリック・スタンプとドラマーのアンディ・ハーレーが加入し、2003年にデビュー・アルバム『Take This To Your Grave』がレコーディングされる。そうして彼らは、自らの天職を見つけたと実感することになった。
フォール・アウト・ボーイは2005年のアルバム『From Under The Cork Tree』でメインストリームに躍り出た。このアルバムは、魅力的なギターのメロディー、ポップな方面からの影響が色濃く出たサビ、文字数制限を超えるような曲名「I’ve Got A Dark Alley And A Bad Idea That Says You Should Shut Your Mouth (Summer Song)」が特徴となっている。
2006年にグラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされた後、フォール・アウト・ボーイは2007年の『Infinity on High』、2009年の『Folie àDeux』でもチャートのトップに立った。こうして彼らは、ポップ・パンクというジャンルの代表格として人気を定着させた。
3年間にもわたる活動休止期間と数々のサイド・プロジェクトの後、フォール・アウト・ボーイは2013年に新たな壮大なビジョンと共に再始動した。彼らは、自分たちの独特なスタイルのポップ・パンクを焼き直す代わりに、スタジアム・ライヴにふさわしいオルタナティブ・ポップを作ることに挑戦したのだ。
その結果として生まれたのが、2013年の『Save Rock and Roll』、2015年の『American Beauty,American Psycho』、そして2018年の『Mania』という3枚のアルバムだった。1枚ごとに次第に大胆さを増していったこれら3作品は、これまで馴染みのなかった分野をカヴァーしつつ、キャッチーな決めフレーズ、アンセムのようなサビ、ポップ・カルチャーから影響された歌詞と言った彼らならではの音楽性をやはり存分に発揮していた。
フォール・アウト・ボーイは結成以来、ポップ・ラジオ向けのロック・ソング作りというクリエイティブな挑戦に打ち込み、成功してきた。そうした姿勢は、「This Ain’t A Scene, It’s An Arms Race」のような初期のヒットシングルでも、「My Songs Know What You Did In The Dark (Light Em Up)」のような後期のシングルでも一貫していた。
そのように音楽的な進化を見せてきたバンドなので、彼らの作品は手を出すのに躊躇するようなものに見えてしまうかもしれない。とはいえ今回の記事のようにカテゴリー別に分類してみると、フォール・アウト・ボーイの曲は親しみやすく魅力的であることがわかる。こうした曲を聴くうちに、いつしかあなたも彼らのファンになってしまうかもしれない。
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1. Sugar, We’re Going Down
フォール・アウト・ボーイの名前が2000年代半ばにアメリカ全土に響き渡ったとき、ポップ・パンクは既に変化の最中にあった。ブリンク182やグリーン・デイのようなバンドは生々しいパンクの原点から離れ、きらびやかな音づくりを取り入れていた。そしてオルタナティブ・ロック勢も、「ポップ・パンクというジャンルは自分たちのものだ」と主張するようになっていた。そんな中にフォール・アウト・ボーイが登場し、定着済みの方法論に芸術的なひねりを加えて、旋風を巻き起こしたのである。
フォール・アウト・ボーイは、実に印象的なヴォーカルとマジック・リアリズム風のミュージック・ビデオを武器にして曲を次々と発表していった。そうした曲は、全米シングルチャートでトップ10入りを果たすことになった。2005年、トロフマンは「Sugar, We’re Going Down」でファズのかかったギターをピアノの和音のように心地よいサウンドに仕上げ、全米だけではなく全英でも8位を記録した。
2. Dance, Dance
「Sugar, We’re Going Down」に続き、ウェンツによる「Dance, Dance」も全英8位、全米で9位と大ヒットを記録し単なる一発屋でないことを証明。楽曲内ではポップ・パンクの中でもとりわけ印象的なベースラインを披露した。
3. Thnks Fr Th Mmrs
2007年にリリースされたシアトリカルなシングル「Thnks Fr Th Mmrs」は彼らの楽曲の中でも特に人気が高い作品のひとつ。ここでは、ヴァイオリンとユーフォニアムが効果的に使われている。
4. Centuries
その後もスタンプは2015年のシングル「Centuries」などで、その素晴らしい歌唱力を見せつけた。こうした曲には、どれも独特で印象的な特徴が盛り込まれている。それによってフォール・アウト・ボーイは、商業的なヒットを次々と生み出すことができたのだ。
5. Grand Theft Autumn / Where Is Your Boy / 6. Calm Before The Storm
フォール・アウト・ボーイが登場する前の1990年代のバンドは、反権威主義的な姿勢や自分たちの心構えを表現するためにポップ・パンクを使っていたと言えるかもしれない。一方フォール・アウト・ボーイは、ウィットに富んだ遅咲きのカムバックや若い大人の恋愛のための身辺雑記としてポップ・パンクを扱っていた。つまり、2000年代の人間が親近感を持てる歌詞というわけだ。「Grand Theft Autumn / Where Is Your Boy」の揺るぎない恋心や「Calm Before The Storm」で描かれる失恋の悲しみなどは、今でも古びた歌詞ではなく、身近なものだと聞くことができる。
7. Saturday
また「Saturday」は、真の人間的な成長を妨げるノスタルジアをテーマにした歌で、ティーンエイジャーも大人も親近感がわく内容になっている。
8. Of All The Gin Joints In All The World
2003年にデビュー・アルバム『Take This To Your Grave』をリリースした後、フォール・アウト・ボーイは叙情性と音楽性をさらに引き締めた。つまりテンポを速め、ヴォーカルをより前面に押し出し、ツイン・ギター・サウンドを強化したのである。
2枚目のアルバム『From Under The Cork Tree』では、彼らならではのポップ・パンクが完成している。「Of All The Gin Joints In All The World」は、映画の『カサブランカ』にちなんだタイトルと、エンドルフィンが湧き上がるサビが特徴の曲。
9. A Little Less Sixteen Candles, A Little More “Touch Me”
また「A Little Less Sixteen Candles, A Little More “Touch Me”」では、自らを憐れむような印象的なアンセムを力強いギターの決めフレーズに載せて聴かせている。これら2曲を聴くだけで、このアルバムがRolling StoneとValtureの両誌から「史上最高のポップ・パンク・アルバムのひとつ」という評価を受けた理由がはっきりわかるはずだ。
10. The Take Over, The Breaks Over
フォール・アウト・ボーイは、最初の2枚のアルバムでポップ・パンクの象徴的な楽曲を次々と生み出した。3枚目のアルバム『Infinity on High』と4枚目のアルバム『Folie à Deux』の曲を作り始めたとき、彼らは自らのハードコア・パンクの伝統とは必ずしも一致しないアーティスト達 (たとえばマーヴィン・ゲイ、エルトン・ジョン、プリンス) からの影響を取り込んた。
当初、それはピアノ・パートの増加という形で表に出てきた。その例としては、「The Take Over, The Breaks Over」のブリッジで聞こえてくる高らかな鍵盤の音色が挙げられる。そうして彼らは、ギター・ポップの限界を超えることを目指していた。
11. I Don’t Care
『Folie à Deux』で、フォール・アウト・ボーイはさらにその先を行こうとした。つまり、スタンプは自分のヴォーカルの音域をさらに高く、さらに低くまで広げるという挑戦を易々と追求していたのである。その代表例が「I Don’t Care」だ。この曲はナルシストをふざけた調子で讃える賛歌であり、当時のセレブをあからさまに揶揄している。
12. She’s My Winona / 13. The (Shipped) Gold Standard
さらに「She’s My Winona」では、曲の途中でトリッキーな転調を難なくこなしていた。また「The (Shipped) Gold Standard」では、さりげないトリルなどを駆使して低音域に挑戦している。これらの曲はどれも生き生きとしたギター・ポップ・ナンバーだが、スタンプのアクロバティックなヴォーカルのおかげで至高のポップ・ソングの領域に到達している。
14. Rat A Tat (feat. Courtney Love)
フォール・アウト・ボーイはそのキャリアの中でさまざまなミュージシャンとコラボレーションを行ってきた。そうしたコラボ相手の中は、エルトン・ジョンのような伝説のミュージシャンもいれば、バーナ・ボーイのような新進気鋭のスターもいる。
カムバック・アルバム『Save Rock and Roll』に収録された「Rat A Tat」は、ハーレーのアグレッシブなドラミングとコートニー・ラヴの不機嫌なつぶやきのような歌声によって疾走感のあるロック・ナンバーになっている。これは理論上はごく当然の顔合わせであり、実際に素晴らしい結果を生み出している。
15. Tiffany Blews (feat. Lil Wayne & Alexander DeLeon)
一方、リル・ウェインとの「Tiffany Blews」のように、一見するとでたらめな組み合わせのように見えるのに、実にうまく馴染んでいる作品もある。この曲の場合、ウェインのラップが夢のようにスムーズに展開される。それゆえ、彼がバンドの正式メンバーでないことを忘れてしまいそうになる。
16. What A Catch, Donnie (feat. Brendon Urie, Alexander DeLeon, William Beckett, Elvis Costello, Travis McCoy, Doug Neumann & Gabe Saporta)
ほかのコラボレーションの中には、メンバー自身にとっても驚きの顔合わせもあった。フォール・アウト・ボーイは、バラードの「What A Catch, Donnie」のレコーディング・セッションを終えた後、ふとした思いつきでこの曲を色んなアーティストが参加するものにした。その中にはエルヴィス・コステロもいた。するとコステロはこの曲を単に楽しんだだけでなく、そのエモーショナルな結末の部分も自ら歌いたいと申し出た。これはフォール・アウト・ボーイにとっても驚くような成り行きだった。
17. 20 Dollar Nose Bleed
とはいえ、おそらく彼らが行った最もしっくりくる顔合わせのコラボレーションは、長い時間をかけて実現したように感じられる。その曲「20 Dollar Nose Bleed」は、フュエルド・バイ・ラーメン・レーベルに所属しているパニック・アット・ザ・ディスコのフロントマン、ブレンドン・ユーリーをフィーチャーしている。
鮮やかなホーンと楽しいドラムフィルに満ちたこの曲は、まるでブロードウェイ・ミュージカルのヒット曲のように、2人のパワフルなヴォーカリストの掛け合いが続き、やがてふたり揃ってサビを歌い上げるという構成になっている。こうした力作を聞けばわかる通り、フォール・アウト・ボーイは自分たちのステージを作り上げるだけでなく、それを他者と共有することにも長けているのである。
18. Alone Together
2009年から2012年までの活動休止期間の後、フォール・アウト・ボーイは再び自分たちのサウンドを進化させることを決意した。この時彼らは2010年代中期のトレンドを取り入れ、エレクトロ・ポップ、ピッチアップしたヴォーカル・クリップ、ダンス・リズムといった要素を自らのサウンドに盛り込んでいる。
プロデューサーには、長年の付き合いだったニール・エイヴロンの代わりにブッチ・ウォーカーを起用。さらにはキーボードやサンプルを増やし、歌詞もストーリー性のある内容から、マントラのような短いフレーズを多用したものへと変化していた。2013年の『Save Rock and Roll』では、こうした変化が「Alone Together」で実を結んでいる。これはアコースティック・ギターとエレクトロニカが交互に登場する夢想のようなラブ・ソングで、スタジアム・コンサートにふさわしい出来栄えだった。
19. Uma Thurman
2015年に『American Beauty / American Psycho』をリリースした時、フォール・アウト・ボーイは彼らならではのモダンなポップとロックの流れをどう組み合わせたらいいのかわかっていた。サンプルを多用した結果、このアルバムの曲は推理ゲームと化した。
その中でも最もエキサイティングな例といえるのが、「Uma Thurman」である。映画『パルプ・フィクション』の主演ユマ・サーマンにちなんで名付けられたこの曲は、『マンスターズ』のテーマ・ソングから借用したサーフ・ロックのメロディに乗り、若い世代にハンバーガー・ショップで踊り出す理由を提供した。
20. Hold Me Tight Or Don’t
2018年発売の現時点での最新作『Mania』でも、フォール・アウト・ボーイは「Hold Me Tight Or Don’t」で新たなサウンドを作り出し、ダンスホールに足を踏み入れる一方でエレクトロ・ポップに独特なひねりを加えている。
Written By Laura Stavropoulos
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