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【動画付】洋楽ベスト・カヴァー曲ランキングTOP25とオリジナル
名カヴァーには、オリジナル楽曲に新たな命を吹き込む力がある。時にはそのカバー・ヴァージョンが決定版となってしまうことさえある。このカヴァー曲のランキングには、あるアーティストに提供された非オリジナル曲 (フランク・シナトラの曲の多くがそれにあたる) は含まれず、既にヒットしていたり、ほかのアーティストによる有名なヴァージョンがあったような楽曲を取り上げている。
そのため、モット・ザ・フープルの「All the Young Dudes (すべての若き野郎ども) 」 (オリジナル・ヴァージョン : デヴィッド・ボウイ作) やリンダ・ロンシュタット&ザ・ストーン・ポニーズの「Different Drum (悲しきロック・ビート) 」 (オリジナル・ヴァージョン : マイケル・ネスミスの作品) は入らない。それぞれ、彼らが初めてレコーディングした楽曲だからだ。誰かの楽曲を忠実に再現するだけでなく、楽曲をまったく新たな形で自分たちのものにするのが我々の考える名カヴァーだ。
お気に入りのカヴァー曲が抜けていたなら、コメント欄から教えてほしい。
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第25位 チャールズ・ブラッドリー「Changes」(オリジナル:ブラック・サバス)
現代の名ソウル・バラードを書いたのは、ブラック・サバスだ。オジーの書いたこのバラードは、ソウル・シンガーのチャールズ・ブラッドリーにぴったりの楽曲だった。彼はこのカヴァー・ヴァージョンで自身の母を賛美し、感情を溢れさせている。同ヴァージョンは思春期をテーマにしたテレビ・アニメ『ビッグマウス』の主題歌となり、違った形のチェンジ (変化) を表現するのに使われている。
第24位 グレッグ・オールマン「These Days (青春の日々) 」(オリジナル:ジャクソン・ブラウン)
いくどもカヴァーされてきたジャクソン・ブラウンによる楽曲だが、1973年のソロ・デビュー・アルバム『Laid Back』で取り上げたグレッグ・オールマン以上にソウルフルな演奏に仕上げたアーティストはいない。逆にオールマンは、自身が求めていた厭世的な歌詞をブラウンから手に入れた。ニコによる早い時期のカヴァー・ヴァージョンも名演で、映画監督のウェス・アンダーソンも好んだ。
第23位 プリテンダーズ「Stop Your Sobbing」(オリジナル:ザ・キンクス)
バンド名を冠した1980年のデビュー・アルバムに収録。キンクスの隠れた名曲にクリッシー・ハインドとプロデューサーのニック・ロウは、この曲にぴったりのフィル・スペクター風のアレンジを施した。レイ・デイヴィスを含む多くの人が、このカヴァー・ヴァージョンとハインド自身に恋をした。
第22位 ロス・ロボス「La Bamba」(オリジナル:リッチー・ヴァレンス)
リッチー・ヴァレンスのヒット曲は、ルー・ダイアモンド・フィリップス主演によるリッチー・ヴァレンスの伝記映画『ラ★バンバ』のサントラでカヴァーされ80年代に蘇った。ロス・ロボスは最後にメキシコの伝統的な演奏を入れることで、個人的な雰囲気を出している。今になってライヴで取り上げることがあれば、アコースティック・ヴァージョンが聴けるかもしれない。
第21位 トッド・ラングレン「Happenings Ten Years Time Ago (幻の10年)」(オリジナル:ザ・ヤードバーズ)
1976年作『Faithful (誓いの明日)』にはオリジナル版と似たサウンドのカヴァーが多いが、アルバム冒頭の1曲をトッド・ラングレンは自分なりのアレンジでレコーディングしている。メタルの原型といえるヤードバーズの楽曲の燃えるような激しいカヴァー・ヴァージョンだ。アルバムの流れから言えば「旅を始める前に、趣旨を伝えておこう」といった立ち位置だろう。
第20位 ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「Sugar Sugar」(オリジナル:アーチーズ)
そう、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズがジャマイカでリリースした初期のシングルの中には、架空のバンドであるアーチーズによる1960年代の若者向けヒット曲「Sugar Sugar」のカヴァー・ヴァージョンも含まれていた。あまりに不釣り合いな組み合わせで面白いが、ウェイラーズは見事なグルーヴ感を出している。
第19位 ハンブル・パイ「I Don’t Need No Doctor」(オリジナル:レイ・チャールズ)
ハンブル・パイのライヴ・アルバム『Performance : Rockin’ The Fillmore』を締めくくる激しいカヴァー・ナンバー。レイ・チャールズのR&Bナンバーをハード・ロック調に仕上げた名カヴァー・ヴァージョンであり、聴いていて楽しい演奏だ。
「I sho’ feel good… therefore, therefore, I don’t need no doctor! / いい気分でいたいのさ…だから、だから、医者なんていらない!」というスティーヴ・マリオットの即興ヴォーカルがすばらしい。
第18位 グレン・キャンベル「Hold On Hope」(オリジナル:ガイデッド・バイ・ヴォイシズ)
インディ・パワー・ポップ界の雄ガイデッド・バイ・ヴォイシズによる「Hold On Hope」の驚くべきカヴァー・ヴァージョンだ。2011年のグレン・キャンベルのアルバム『Ghost On The Canvas』に数多く記録されている名演のひとつだ。
同作はカントリー界を代表するアーティストの”さよならアルバム”として制作されたが、2017年には、64作目にして正真正銘最後のアルバム『Adios』がリリースされている。「There rides the cowboy / カウボーイがやってくる」という一節を、グレン・キャンベル以上に上手く歌える者はいないだろう。
第17位 ブライアン・フェリー「The “In” Crowd」(オリジナル:ドビー・グレイ)
ソロとしてもロキシー・ミュージックとしても、ブライアン・フェリーの陽気な楽曲は珍しい。「The “In” Crowd」で彼は自身の派手なイメージを茶化しながら、同時に賛美してもいる。ソウル・シンガーのドビー・グレイがオリジナル・ヴァージョンを歌ったこの「The “In” Crowd」はモータウンの楽曲だと誤解されることが多い。それはアレンジを手掛けたジーン・ペイジがモータウン風に仕上げたためだ。フェリーが取り上げる以前に、ラムゼイ・ルイス・トリオが1964年にインストゥルメンタルのライヴ・ヴァージョンを発表。チープ・トリックはフェリーによるカヴァー・ヴァージョンをさらにカヴァーしている。
第16位 ザ・ディッキーズ「Nights In White Satin (サテンの夜)」(オリジナル:ザ・ムーディー・ブルース)
もともとは単なる冗談でしかなかった。いたずら好きなロサンゼルスのパンク・バンド、ディッキーズはカヴァーに向かない曲 (その最たる例が「Silent Night (きよしこの夜) 」である) ばかりを選んで演奏していた。だが困ったことにムーディー・ブルースのヒット曲は、バズコックス風のパンク・ポップ・アレンジにぴったりだった。ムーディー・ブルースのフロントマンであるジャスティン・ヘイワードもこれを称賛している。
第15位 グラディス・ナイト&ザ・ピップス、マーヴィン・ゲイ「I Heard It Through The Grapevine (悲しいうわさ)」 (オリジナル:スモーキー・ロビンソン)
「I Heard It Through The Grapevine (悲しいうわさ)」はどれがオリジナルでどれがカヴァー・ヴァージョンかを判断するのが難しい。派手なグラディス・ナイトのヴァージョンは、マーヴィン・ゲイのスロー・グルーヴ・ヴァージョンの1年前にチャートの首位に輝いているが、先にレコーディングされたのは後者だったのだ。そしてどちらのヴァージョンも厳密にはカヴァー・ヴァージョンであり、最初に制作されたのはミラクルズのアルバムに収録されていたさほど知られていないヴァージョンということになる。
第14位 ブルース・スプリングスティーン&ザ・E・ストリート・バンド「Trapped」(オリジナル:ジミー・クリフ)
ブルース・スプリングスティーンがライヴで披露するカヴァー曲を集めれば大容量のボックス・セットが作れそうだが、ジミー・クリフのカヴァー・ヴァージョンは特別だ。”ザ・ボス”ことスプリングスティーンは、本質を損なうことなくこの曲をアリーナ・アンセムに作り替えた。彼の「Trapped」は評判を呼んだチャリティ・アルバム『We Are The World』の大きなハイライトとなっている。
第13位 ザ・ツーリスツ「I Only Want to Be With You (二人だけのデート)」(オリジナル:ダスティ・スプリングフィールド)
ツーリスツによる1979年のカヴァー・ヴァージョンは、ダスティ・スプリングフィールドのヒット曲を更に楽しげで素朴にするという、不可能に近いことをやってのけだ。この曲をきっかけに、シンガーのアニー・レノックスも頭角を現した。この「I Only Want to Be With You」のカヴァー・ヴァージョンは、1963年のスプリングフィールドによるオリジナル・ヴァージョンと同じ、ヒット・チャートの4位まで上昇した。
第12位 ザ・コンチネンタル・ドリフターズ「Some Of Shelly’s Blues」(オリジナル:リンダ・ロンシュタット&ザ・ストーン・ポニーズ)
ニッティー・グリッティー・ダート・バンドからリンダ・ロンシュタットまで、多くの一流シンガーがこのルーツ・ポップの隠れた名曲をカヴァーしてきた。しかしバングルズ、コンチネンタル・ドリフターズのヴィッキー・ピーターソンはマイケル・ネスミス作のこの「Some Of Shelly’s Blues」に秀逸なアレンジを加え、ニュー・オリンズとローレル・キャニオンの音楽スタイルを融合させたような完璧なヴァージョンを生み出した。
第11位 パール・ジャム「Last Kiss」(オリジナル:J・フランク・ウィルソン&ザ・キャヴァリアーズ)
彼ら自身は失敗と思っていたかもしれないが、パール・ジャムは1960年代前半に若者たちを涙させた J・フランク・ウィストン&ザ・キャヴァリアーズの「Last Kiss」を本格的なロック・バラードに仕上げた。
エディ・ヴェダーがバンドを立ち上げると、グループは同曲をレコーディングし、ファン・クラブの会員にクリスマスのギフトとして配布した。しかしその曲がバンドのキャリアで最大のヒットとなり、最も有名なカヴァー曲のひとつとなったことは驚きだ。
第10位 ソフト・セル「Tainted Love (汚れなき愛)」(オリジナル : グロリア・ジョーンズ)
「Tainted Love」はもともと、T・レックスのメンバーでマーク・ボランの恋人であったグロリア・ジョーンズがイギリスでマイナー・ヒットさせた楽曲だった。ソフト・セルによるカヴァー・ヴァージョンは、ミニマルなシンセの伴奏とマーク・アーモンドの耳につくヴォーカルにより、不穏でグッとセクシーなサウンドになっている。
第9位 ジョニー・キャッシュ「Solitary Man」(オリジナル : ニール・ダイアモンド)
ナイン・インチ・ネイルズの「Hurt」をジョニー・キャッシュがカヴァーした音源も大きな評判を呼んだが、ニール・ダイアモンドのこの曲の方が実は出来がよく、胸の張り裂けるようなパフォーマンスになっている。1966年のダイアモンドのヴァージョンはヤング・アダルト世代の傷心を歌っていたが、キャッシュのカヴァー・ヴァージョンは人生を終えようとしている老人の歌だ。同ヴァージョンはキャッシュのキャリアで最高のカヴァー・ヴァージョンのひとつであり、彼の『American Recordings』シリーズを代表する名演のひとつでもある。
第8位 ジェフ・バックリー「Hallelujah」(オリジナル : レナード・コーエン)
ジェフ・バックリーによる「Hallelujah」の焼け付くような演奏により、その後25年に亘って同じ曲の無益なカヴァー・ヴァージョンが生まれ続けることになった。バックリーの名演は、作曲したレナード・コーエンが意図したダークな美しさと官能性に満ちていた (その前に作られたジョン・ケイルのヴァージョンも知名度では劣るがすばらしい) 。あらゆる場所でカヴァーされてきた楽曲のため、バックリーのヴァージョンがオリジナルだと誤解している人も多い。
第7位 ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ「I Love Rock And Roll」(オリジナル : ジ・アローズ)
カヴァー曲選びのセンスの良さはジョーン・ジェットの特徴である。彼女はレスリー・ゴーアの「You Don’t Own Me (恋と涙の17才) 」やエディ・コクランの「Summertime Blues」、ローリング・ストーンズの「Let It Bleed」などもレコーディングしている。「I Love Rock And Rollはアローズがイギリスでマイナー・ヒットさせた楽曲で、彼女のファンのほとんどは聴いたこともなかっただろう。今では彼女のキャリアの代表曲になった。
第6位 エルヴィス・プレスリー「Tomorrow Is A Long Time (明日は遠く)」(オリジナル:ボブ・ディラン)
誰も知らないうちに、エルヴィスは1966年の映画『カリフォルニア万才』のあまり注目を浴びていないサントラにふたつの名演を忍び込ませていた。ひとつはノリが良いクローヴァーズの「Down In The Alley」、ふたつめがボブ・ディランの「Tomorrow Is A Long Time」のカヴァー・ヴァージョンだ。後者は優しさたっぷりに歌われている。退役後のエルヴィスがその才能に合う楽曲のカヴァーに執着したとしたら?その答えは5分後にわかるだろう。
第5位 Run-D.M.C.「Walk This Way」(オリジナル : エアロスミス)
Run-D.M.C.による「Walk This Way」は、史上最も画期的なパーティ・レコードのひとつだ。このカヴァーにはエアロスミスのスティーヴン・タイラーも参加し、ジョー・ペリーの有名なギター・リフも印象的に使われている。またこの曲は、ラップでカヴァーした早い時期のレコードで、ラジオとMTVが一線を画そうとしている中で、Run-D.M.C.はふたつのジャンルを結びつけたのだ。
第4位 ママス&パパス「Dedicated To The One I Love (愛する君に)」(オリジナル : ザ・シュレルズ)
ポップ・シングル屈指の見事なハーモニーをもつ同曲を第4位にランクインさせた。この「Dedicated To The One I Love」のカヴァー・ヴァージョンはただでさえ良質なシュレルズのヒット曲を、これ以上ないほどロマンティックに仕上げた。ママス&パパスが「…誰でもそれを求めている (…And it’s something that everybody needs)」と歌うとき、今でも身震いしてしまうほどだ。
第3位 ハリー・ニルソン「Without You」(オリジナル : バッドフィンガー)
ハリー・ニルソンのカヴァーは、1970年のバッドフィンガーによる楽曲で、すべての情熱を絞り出した。優れたソングライターであるニルソンのふたつの大ヒット曲が、どちらもカヴァー曲 (「Without You」と「Everybody’s Talkin’」) であることは興味深い。1990年代の歌姫ブームに青春を送った人にとっては、マライア・キャリーのヴァージョンがチャートを席巻したことも記憶にあるだろう。
第2位 エルヴィス・コステロ「(What’s So Funny ’Bout) Peace, Love And Understanding」(オリジナル : ニック・ロウ)
正当な怒りを少しばかり加えたことが、このカヴァー・ヴァージョン (オリジナルはニック・ロウが作曲しブリンズリー・シュウォーツが歌ったカントリー・ロック・ナンバー) のすばらしいアクセントになった。エルヴィス・コステロ、そしてプロデュースを手掛けたニック・ロウ自身の手により、「(What’s So Funny ’Bout) Peace, Love And Understanding」は色あせない1曲になったのだった。
第1位 スティーヴィー・ワンダー「We Can Work It Out (恋を抱きしめよう)」(オリジナル : ザ・ビートルズ)
モータウンはビートルズをカヴァーすることを厭わなかった。ベリー・ゴーディはそれまでにも、ビートルズがブリティッシュ・インヴェイジョンを先導してやってきた数か月後、シュープリームスに『A Bit Of Liverpool』というアルバムを作らせていた。だが、オリジナルにも劣らなかったのはスティーヴィー・ワンダーによる「We Can Work It Out (恋を抱きしめよう) 」のカヴァー・ヴァージョンが初めてだった。
1970年にスティーヴィーがレコーディングをしたとき、ビートルズがこの曲をヒットさせてから、5年の月日が経っていた。そしてそのころ、彼は「Signed, Sealed, Delivered (I’m Yours)」と「Heaven Help Us All」という名曲ふたつを続けざまにリリースしたばかりだった。彼はそれが特別なものにならない限り、ビートルズをカヴァーする理由はなかったのだ。彼は同曲をファンキーに仕上げ、優れたヴォーカルで楽曲のムードを変えることでそれを成し遂げた。
イントロで印象的なのは当時珍しかったクラヴィネットの音色だが、ワンダーは後に同じ楽器を使って「Superstition (迷信)」の華やかなサウンドを生み出している。何より、彼はオリジナル・ヴァージョンになかった楽観性を出してみせた。ポール・マッカートニーのヴォーカルが嘆願するようなトーンであるのに対し、スティーヴィーは「大丈夫、僕らならやれるよ」という感じだ。
Written By Brett Milano
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