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ベスト・ブルーノート・サンプリング20曲:ヒップホップを築いたトラックたち(全曲視聴付き)
耳の肥えたアナログ・ディガーやヒップホップ・ファンに広く使われている、ベスト・ブルー・ノート・サンプルズは、文化を構成するものの一部になっている。そのベストな20曲を紹介しよう。
70年代半ばに登場し、80年代に華々しく開花したヒップホップは、オールドスクール・グルーヴを投入しようとするプロデューサー達が、様々な昔の楽曲のサンプリングを生かしながら築いていった。初期ヒップホップの基盤を担ったのは、“ザ・ゴッドファーザー・オブ・ソウル”のジェイムズ・ブラウンだったが、ブルーノート・カタログもまた、同様の役割を果たしていた。ヒップホップ界でジャズに最も影響を受けたグループのひとつがア・トライブ・コールド・クエストだが、彼らはこのアイコニックなジャズ・レーベルの作品の中でも、とりわけファンクに強く影響され、60年代後半から70年代初期にかけてのレコーディングを好んだ。彼らの代表的なブルーノート・サンプリングにはギタリストのグラント・グリーン、キーボーディストのロニー・フォスター、フルーティストのボビー・ハンフリー、シンガーのマリーナ・ショウ、オルガニストのロニー・スミス、そしてアルト・サクソフォンの巨匠ルー・ドナルドソンらによるディープ・グルーヴなどが使われている。
ブルー・ノートの作品からインスピレーションを得た、その他のアーティストには、パブリック・エネミー、ドクター・ドレー、デ・ラ・ソウル、2パック、アイスT、バスタ・ライムス、アイス・キューブ、ビースティ・ボーイズ等々、ヒップホップの殿堂を築いた錚々たる面々がいる。
ヒップホップが誕生してまもない当時、サンプリングはやりたい放題で、商店の窓ガラスを割って高価なものを強奪するような状況だった。しかし1984年から2010年にかけてのレーベル責任者で、先見の明を持った今は亡きブルース・ランドヴォールの管理下にあった当時のブルーノートは、ロンドンのヒップホップ・グループ、US3に、レーベルのカタログへのアクセスを勧め、サンプリングの合法化への道を切り開いた。その結果、1992年にハービー・ハンコックの名作「Cantaloupe Island」をサンプリングした「Cantaloop (Flip Fantasia)」が大ヒットした。
今日でも、J・コール、ケンドリック・ラマー、フライング・ロータス、カニエ・ウェストといったアーティストが、ブルーノートの宝庫を利用し続けており、ブルーノートのベスト・サンプルが、変わらずヒップホップの進化における主要な構成要素であることを証明し続けている。
ブルーノートで最もサンプリングされている作品のプレイリストはこちら。史上最高のブルーノート・サンプル20選をそれぞれ聴くには下へスクロールダウン。
1. ハービー・ハンコック「Cantaloupe Island」(1964)
ロンドンを拠点とするグループ、US3は、ブルーノートが契約した初のヒップホップ・アーティストであり、1993年には「Cantaloop (Flip Fantasia)」が全米ポップ・チャートでTOP10入りを記録した。このトラックは、ハービー・ハンコックのブルーノート4作目『Empyrean Isles』中で最も印象的なカットを、再構築していることで知られる。その他にも、グループのデビュー・アルバム『Hand On The Torch』には、さまざまなブルーノートの名作がフィーチャーされている。
2006年には、ハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」は、コンガマンの「Blue Note Tribute」という、ヨーロッパのEDMトラックの基盤にもなっている。一方のハービー・ハンコックはというと、ウェブメディアwhosampled.comによって、史上3番目にサンプリングされたジャズ・ミュージシャンとして選出され、これまでサンプリングされたブルーノート作品の中では、驚異的な割合を占めている。
2. グラント・グリーン「Down Here On The Ground」(1970)
グッド・グルーヴ(そしてヴィンテージ・ファンキー・ジャズ)を無駄にしないことで知られるア・トライブ・コールド・クエストは、ギタリストのグラント・グリーンの曲「Down Here On The Ground」(アルゼンチン人ピアニストのラロ・シフリン共作)のライヴ・ヴァージョンにあまりにも惚れてしまい、1991年LP『The Low End Theory』収録の「Vibes And Stuff」でサンプリングしたほど。グリーンのヴァージョンは、ニュージャージー州ニューアークにある会場ザ・クリシェ・ラウンジでレコーディングされ、1970年のアルバム『Alive!』に収録されていた。
現代においても音楽ファンを魅了し続けるこのギタリストが手掛けた、ジェームス・ブラウンの「Ain’t It Funky Now」のジャズ・ヴァージョンは、「Cantaloupe Woman」と「Sookie Sookie」と並んで、ベスト・ブルーノート・サンプル・リストに加えるべき作品である。彼の1971年のナンバー「Maybe Tomorrow」は、ケントリック・ラマーの2012年の作品「Sing About Me, I’m Dying Of Thirst」でもサンプリングされている。
3.ロニー・フォスター「Mystic Brew」(1972)
70年代に、ブルーノートがハード・バップからジャズ・ファンクへと転向したことを考えると、同レーベルの70年代の作品が、数々のヒップホップ・アーティストによってサンプリングされていたことは、少しも不思議ではない。キーボーディストのロニー・フォスターの、1972年アルバム『Two Headed Freap』に収録された、メロウでスロウなジャム「Mystic Brew」を、ニューヨークのグループ、ア・トライブ・コールド・クエストが、1993年のLP『Midnight Marauders』収録トラック「Electric Relaxation」で再利用したのは有名な話。DJ兼プロデューサーのマッドリブは、同トラックをリミックスし「Mystic Bounce」と名づけ、2003年にブルーノートから発表したアルバム『Shades Of Blue』に収録した。最近ではJ・コールが、ケンドリック・ラマーをゲストに迎えた2013年アルバム『Born Sinner』に収録の「Forbidden Fruit」で、このトラックをサンプリングしている。
4. ルー・ドナルドソン「Ode To Billie Joe」(1967)
このノースカロライナ州生まれのアルト・サクソフォニストは、おそらくブルーノート史上最もサンプリングされたミュージシャンであり(彼は全部合わせて200回以上再利用されている)ベスト・ブルーノート・サンプル・リストには欠かせない。ルー・ドナルドソンは60年代ブルーノートのソウル・ジャズを牽引する人物であり、1967年のボビー・ジェントリーのヒット曲のカヴァーは、その後同年に彼のアルバム『Mr Shing-A-Ling』に収録された。カニエ・ウェストは2004年のデビュー・アルバム『The College Dropout』収録曲「Jesus Walks」の中で、これをサンプリング。エミネムも2013年に発表した『The Marshall Mathers LP 2』収録の「Bad Guy」で先例に倣った。近年では、2015年に、ルー・ドナルドソンのグリーシーなソウル・グルーヴが、エイサップ・ロッキーのアルバム『At. Long. Last. A$AP』に収録されているトラック「L$D」の独自性を築くのに一役買った。その他にも、ベスト・ブルー・ノート・サンプルとして、凹凸つけがたいドナルドソン・ナンバーには「Turtle Walk」「Who’s Making Love」「Pot Belly」「The Caterpillar」「Brother Soul」などがあり、ア・トライブ・コールド・クエスト、メアリーJブライジ、ナズ、ドクター・ドレー、デ・ラ・ソウル、ピート・ロック&CLスムースらが彼の作品をサンプリングしている。
5. ドナルド・バード「Flight-Time」(1972)
50年代と60年代を代表するハード・バップ・トランペッターだったドナルド・バードは、70年代初頭にフュージョンへと転向した。新たな路線における彼の最大のアルバムは、ラリー・ミゼルがプロデュースした1972年の『Black Byrd』だ。この作品からは、パブリック・エネミーが1990年、デフ・ジャムから発表したLP『Fear Of A Black Planet』のタイトル・トラックの中で使用した。その4年後、ナズがこの曲をサンプリングして新たな曲を作り上げた。アルバム『Illmatic』収録ナンバー「NY State Of Mind」である。
ドナルド・バードのトラックは、Akai S900サンプラー(80年代に、音楽制作を永遠に変えてしまった、手頃な価格のハードウェア)でも、「Blackjack」「Stepping In Tomorrow」「Think Twice」「Wind Parade」「Street Lady」等々、全て合わせて100回以上サンプリングされている。
6. ボビー・ハッチャーソン「Ummh」(1970)
強いブルースの雰囲気が感じられる、趣のあるミッド・テンポのシャッフル・グルーヴ「Ummh」は、ヴィブラホーン奏者のボビー・ハッチャーソンが、1970年にブルーノートから発表したアルバム『San Francisco』(ウェスト・コースト出身テノール・サクソフォニストのハロルド・ランドとのコラボレーション)に収録の素晴らしいトラックである。この曲をサンプリングした初のラッパーは、アイス・キューブだった(1993年LP『Lethal Injection』収録「Ghetto Bird」)。また「Ummh」は、イギリス人DJ/プロデューサー/リミキサーのフォーテックが手掛けた「The Rain」、マドンナの「Bedtime Story」(どちらも1994年にレコーディングされたもの)でも使用されている。同じくLP『San Francisco』に収録の「Goin’ Down South」は、US3の楽曲「Lazy Day」の基礎として使われた。
7. ザ・スリー・サウンズ「Repeat After Me」(1969)
ピアノにジーン・ハリスを携えた、ミシガン州出身のこのトリオは、50年代及び60年代の、フィンガー・クリッキング・ソウル・ジャズの代表的存在だ。ハリスの煌びやかなピアノが奏でるストラッティング・ブルースを基盤としたトラック「Repeat After Me」が、最初にサンプリングされたのは、アメリカ/カナダ出身のヒップホップ・トリオ、メイン・ソースが1991年に発表したデビューLP『Breaking Atoms』に収録されている「Vamos A Rapiar」だった。このザ・スリー・サウンズのトラック(元々は彼等の1969年LP『Soul Symphony』にフィーチャーされたもの)は、その翌年発表されたザ・コープの作品「Kill My Landlord」をインスパイアすることになる。2002年には、ジャズを基盤としたイギリス出身ヒップホップ・デュオ、ザ・ハーバライザーが「The Turnaround」の中でこの曲をサンプリングした。
8. リューベン・ウィルソン「We’re In Love」(1971)
このオクラホマ州マウンズ出身のソウル・ジャズ・オルガン・グラインダーは、50年代、60年代、そして70年代にかけてブルーノート名鑑に登場する、数多くのハモンド・ヒーローのひとりだ。1968年から1971年の間に、リューベン・ウィルソンはレーベルからアルバムを5枚リリースしているが、「We’re In Love」は彼のブルーノート最後の作品『Set Us Free』に収録されているトラック。1994年、このエレクトリック・シタール、パーカッション、そしてヴォーカルが織り成すドリーミーなバラードを耳にしたナズは、彼の都会風瞑想曲「Memory Lane (Sittin’ In Da Park)」の中でサンプリングしたのだが、実際にはこの2年前、サイエンティフィックの「I Ain’t The Damn One」の中で初めてサンプリングされていた。近年では、2011年にエイス・フッドが「Forgiv’n」でこのトラックを使用し、また、2018年には、ラッパーのプロブレムが「Stressin’」の中でサンプリングしている。リューベン・ウィルソンのブルーノートからの楽曲「Orange Peel」と「Stormy」もまた、ベスト・ブルーノート・サンプルに加えられるべき優れた作品だ。
9. デューク・ピアソン「Ground Hog」(1969)
デューク・ピアソンが1968年にブルー・ノートでレコーディングしたLP『Introducing Duke Pearson’s Big Band』に収録されていた粋なブルース・トラックは、日本人ヒップホップ・アーティストの、スチャダラパーと高木完がフィーチャーされた、デ・ラ・ソウルの「Long Island Wildin’」をインスパイアした。同トラックは1993年のLP『Buhloone Mindstate』に収録され、当時デューク・ピアソンを使ったものは希少だったため、古いレコード・コレクター達は、すぐさま同様のサンプル材料を探すべく、ブルーノート・コレクションに目を通し始めた。
10. ジェレミー・スタイグ「Howlin’ For Judy」(1969)
元々は短命に終わったソリッド・ステート・レーベルからリリースされ、その後1970年にブルーノート・カタログに加えられた「Howlin’ For Judy」は、マンハッタン出身フルーティストの5枚目アルバム『Legwork』に収録されていたトラックである。多重録音されたフルートが絡み合う音が印象的なワイルドなジャズ・グルーヴは、ビースティ・ボーイズの「Sure Shot」(1994)で使われたことで広く知られるが、その前年にも、DJシャドウ・アンド・ザ・グルーヴ・ロバーズが、シングル「In/Flux」の中でサンプリングしている。クロックワーク・ブードゥー・フリークス(別名ザ・メキシカン)もまた、1997年に「Deaf Mick’s Throwdown」というトラックで拝借している。
11. ロニー・ローズ「Tidal Wave」(1975)
テナー・サックス、エレクトリック・ピアノ、それから幻想的なシンセが重なり合うメロウなジャムとしてスタートする「Tidal Wave」は、その後急激な感情の動きをみせる。このトラックはロニー・ローズの成功を収めた傑作デビュー・アルバム『Pressure Sensitive』に収録されていた。この楽曲に惚れ込んだブラック・ムーン(「Who Got Da Props」、1993)、カジモト(「Return Of The Loop Digga」、2000)、ヤング・リーン(「Princess Daisy」、2013)らがサンプリングで使用している。
12. エディ・ヘンダーソン「The Kumquat Kids」(1975)
ジャズ・フュージョン・トランペッターのエディ・ヘンダーソン(精神科医の資格も持つ)は、70年代半ばにブルー・ノートで2枚のアルバムを制作している。うちの1作『Sunburst』に、押さえられたシンセ・ベースが印象的なスーパー・ファンキーな「The Kumquat Kids」が収録されているのだが、イギリス出身のエレクトロニカ・デュオのへクススタティックが、2000年にこれを、中毒性の高いダンス・ナンバー「Kids Can Dance」の中でサンプリングした。エディ・ヘンダーソンの「Inside You」(ブルー・ノート2作目『Heritage』収録)もまた、1996年のジェイ・Zの「Coming Of Age」や、ソウルズ・オブ・ミスチーフの1993年の「Tell Me Who Profits」で使われているベスト・ブルーノート・サンプルである。
13. ジーン・ハリス・アンド・ザ・スリー・サウンズ「Book Of Slim」(1968)
尊敬すべきアーカンソー州出身のサクソフォニスト、モンク・ヒギンズが作曲、アレンジした快活かつ優雅な「Book Of Slim」は、ジーン・ハルス・アンド・ザ・スリー・サウンズのアルバム『Elegant Soul』に収録されていたトラックである(ジーン・ハルスがグループとは別に、単独でその名が上げられたのはこの作品が初めてのこと)。ラッパーのグールー(ギャング・スターの片割れ)は、これを、ヴァイブズの巨匠ロイ・エアーズをフィーチャーした「Take A Look (At Yourself)」の中でサンプリングした。ブラッカリシャス(「Lyric Fathom」)とザ・ハーバライザー(「Intro」)も、1994年と1999年にそれぞれ拝借している。またマッドリブはこのトラックを『Shades Of Blue』でリミックスし、「Slim’s Return」と命名した。
14. スタンリー・タレンタイン「Sunny」(1966)
力強いテナー・サックス・サウンドで知られる、ピッツバーグ出身のソウル・ジャズの達人、スタンリー・タレンタインは、ヒップホップ世代のアーティストに度々サンプリングされている。2016年、ボビー・ヘブの不朽の名作「Sunny」のソウルフルなヴァージョンからの抜粋が、カリフォルニアを拠点とするMCジャレン・サントイの「Foreplay」で取り上げられ、その1年後には、ダラスの若きラッパー、リロイスの「Sunny Nights」をインスパイアした。それ以外でも、J・ディラ、J・コール、アイス・キューブらがスタンリー・タレンタインの音楽をサンプリングしている。
15. ジミー・マグリフ「The Worm」(1968)
ブルーノートに吸収されたソリッド・ステイト・カタログからの、印象的なソウル・ジャズ・トラック「The Worm」は、トランペッターのブルース・ミッチェルがフィーチャーされた、フィラデルフィア出身オルガニストのジミー・マグリフの15枚目のLPからのタイトル・トラック。この曲はおそらくこれまでに100回以上サンプリングされているが、その中で最も知られているのは、イギリス出身ダンス・グループ、ザ・ケミカル・ブラザーズの「Chemical Beats」と「Delek」、ノルウェー出身エレクトロ・デュオのロイクソップによる「Remind Me」、そしてゴーストフェイス・キラーが2007年に発表した「Back Like That」のマーキー&バングル・リミックスなどである。
16. マリーナ・ショウ「Woman Of The Ghetto」(1973)
ブルーノートと契約を交わした3人目のシンガーであり、レーベルで初めて1枚以上のアルバムをレコーディングしたマリーナ・ショウは、アンセム調の「Woman Of The Ghetto」のスタジオ・ヴァージョンを、1969年にカデット・レコードから発表したアルバム『The Spice Of Life』用に共作/レコーディングした。しかし最もサンプリングされたものと言えば、彼女がブルーノートからリリースしたライヴ・ヴァージョン(ライヴLP『Live At Montreux』に収録)だった。イギリス出身のダンス・グループのブルー・ボーイは、1997年に、この楽曲からヴォーカルのみをサンプリングし、「Remember Me」を生み出した。2000年には、フランス人プロデューサーのサン・ジェルマンが、ブルーノートからのアルバム『Tourist』に収録のトラックを「Rose Rouge」で使用した。また2012年には、イギリス人シンガー・ソングライターのデイリーが、ブルー・ボーイがマリーナ・ショウをサンプリングした「Remember Me」をジェシー・Jをフィーチャリングした楽曲で使用した。
17. ビッグ・ジョン・パットン「Alfie’s Theme」(1968)
ビッグ・ジョン・パットンの素晴らしいソウル・ジャズ・オルガン・トリオが1966年映画『Alfie』(主演は愛すべき浮気男役のマイケル・ケイン)のために手掛けたソニー・ロリンズの印象的なテーマは、彼らが1968年に発表した8枚目のブルーノート・アルバム『Understanding』に収録されている。ロンドンのヒップホップ・アーティスト、US3が1993年にブルーノートからリリースした「It’s Like That」で、このトラックの一部を使用した。ビッグ・ジョン・パットンはブルーノートで最もサンプリングされた回数の少ないアーティストの部類に入るが、ビッグ・ジョン・パットンによるザ・ミーターズの「Cissy Strut」の味わい深いヴァージョンは、ポーランド人ラッパーOSTRにも使われた。
18. ブルー・ミッチェル「Good Humour Man」(1968)
フロリダ生まれのホルン奏者、ブルー・ミッチェルは、楽譜を読むことが出来ず、トランペットを全て聴き覚えで演奏していた。ホレス・シルヴァー・クインテットの一員として、60年代に世に知られるようになった彼は、その後ブルーノートで個人名義のアルバムを制作。1991年にUMCの「One To Grow On」、そして1995年にブラッドハウンド・ギャングの「Mama Say」でサンプリングされた「Good Humor Man」は、ブルー・ミッチェルがビッグバンド編成でレコーディングしたアルバム『Heads Up!』に収録されている。更に、1969年にブルーノートでレコーディングした「Flat Backing」もまた、デル・ザ・ファンキーホモサピアンをはじめとするヒップホップ・アーティストたちによって使われ、ベスト・ブルー・ノート・サンプルとして挙げるに相応しい楽曲である。
19. ロニー・スミス「Spinning Wheel」(1970)
ア・トライブ・コールド・クエストは、ロニー・スミスの「Spinning Wheel」が屈指のベスト・ブルーノート・サンプルだと感じていたようだ。このブラッド・スウェット・アンド・ティアーズによる1970年ポップ・ロック・ヒットの、オルガンに導かれたソウル・ジャズ・ヴァージョンをいたく気に入った彼等は、1990年のデビューLP『People’s Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』に収録されているヒット曲「Can I Kick It?」、そして1991年のアルバム『The Low End Theory』収録の「Buggin’ Out」の中で、このトラックを2度もサンプリングしている。このロニー・スミスによる「Spinning Wheel’」ブルーノート・ヴァージョンは、1993年のウータン・クランのデビュー・アルバム『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』に収録されている「Wu Tang: 7th Chamber」にもインスピレーションを与えた。その他にも、ロニー・スミスの音楽は、ナイトメアズ・オン・ワックス、ダ・ヤングスタズ、ケース.Oにもサンプリングされている。
20. ボビー・ハンフリー「Harlem River Drive」(1973)
大物プロデューサーのラリー・ミゼルが手掛ける、フルートに導かれたこのジャズ・ファンクは、これまでに何度もサンプリングされているが、恐らくその中で最も有名なのが、DJ・ジャジー・ジェフ・アンド・ザ・フレッシュ・プリンスが1987年にサンプリングした「Touch Of Jazz」だろう。このトラックがサンプリングされたその他の作品として、1992年のコモン「Just In The Nick Of Rhyme」、その翌年発表されたヤングMCの「Back In The Day」、そして近年では、KDの「Ride Around Town」などがある。また、サンプリングに使われたボビー・ハンフリーのブルーノート音源には「Blacks And Blues」「Jasper Country Man」「My Little Girl」「Smiling Faces Sometimes」「San Francisco Lights」などもある。最後のトラックは、フライング・ロータスが2012年に発表した「Until The Colours Come」の中で使用されていた。それ以外にも、エリックB&ラキム、リュダクリス、アイスT、そしてディゲブル・プラネッツにもサンプリングされている。
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