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アリアナ・グランデの20曲:同世代アーティストたちを凌駕するカルチャー・アイコン
アリアナ・グランデ(Ariana Grande)は、数十年に渡り世間の注目を浴びてきたが、とりわけ『Sweetener』と『thank u, next』と立て続けに発表した2作のアルバムが、文化的影響を及ぼすほどの大ヒットを記録したお蔭で、彼女の時代が漸くやって来た。
子役スターから強い影響力を持ったポップ・アイコンとなった彼女は、その類い稀な歌声で、常にチャートの上位を賑わし、これまでリリースしたアルバムによって、先駆者としての新たな道を歩み始めた。その猛烈な仕事量で同世代アーティストたちを凌駕しながら、自らのベスト・ソング集に加わる新たな作品を発表し続けているアリアナ・グランデからはいつだって目が離せないのだ。
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20. bad idea
元フィアンセのピート・デヴィッドソンとの別離の直後に書かれたアルバム『thank u, next』は、ドリーミーな仕上がりの『Sweetener』とはまるっきり正反対なタイプの作品だ。よりエッジの効いたサウンドは、エレクトロ・トラップ・ナンバー「bad idea」等で聴くことができる。この知る人ぞ知るトラックで、アリアナ・グランデは危うい雰囲気を醸しながら、采配を振るっている。
ムーディーなギター、そして高揚感を煽るストリングスと小刻みでクセのあるアウトロにのせて、「痛みを麻痺させたいから…さっさと別の誰かをさっさ探した方がいいと」と歌うこの曲で、彼女は過去を振り切ろうとしているのだ。
19. Right There
アルバム『Yours Truly』に収録の「Right There」(フィーチャーされているのは、過去に何度か共演してきたビッグ・ショーン)には、同アルバムに宿る90年代R&Bからの影響を象徴するヒップホップ・ソウルの要素が含まれている。
ビッグ・ショーンが冒頭で宣言する、「頂点に上り詰めた俺のナンバー・ワン・ガールにこれを捧げる」は、多くのアリアナ・グランデ作品のコア・テーマを象徴する一節で、つまり、恋人とのロマンスを続けながら、トップの座を維持し続ける術を模索していく、ということだ。アリアナ・グランデはコーラスで、「知っていて欲しいの、わたしはずっと変わらないから」と歌い、この先もその栄華は続いていくことを暗示している。
18. break up with your girlfriend, i’m bored
アルバム『thank u, next』の中で、ありとあらゆる負の感情を全て曝け出したアリアナ・グランデは、トラップ・ポップの極致とも言えるこの「break up with your girlfriend, i’m bored」で今作を陽気な雰囲気で締め括っている。
同曲のプロデューサーであるマックス・マーティンが、イン・シンクの一連の大ヒット曲の立役者だったことを考えると、彼女がこの曲で、イン・シンクの「It Makes Me Ill」のサンプリングに乗せて、率直な宣言をしているのは腑に落ちる。
アリアナ・グランデのアルバムには、常にその時代の音楽が反映されているが、Y2Kポップへのチャネリングは、2010年代後半に押し寄せた2000年代へのノスタルジアの象徴とも言える。
17. R.E.M.
『Sweetener』のテーマを引き継いだ夢心地の「REM」で、眠りの中で失われた愛を見つけたアリアナ・グランデは、「わたし起きたくない」と主張する。ファレル・ウィリアムスの巧みな作曲とプロデュースによるこの告解のトラックは、アリアナ・グランデのベスト・ソングの中でも際立っており、彼女のより脆い側面が反映されている。
16. Be My Baby
ファンの間で高い人気を誇る『My Everything』に収録の「Be My Baby」もまた、クラブ・サウンド寄りのハウス・ミュージックをふんだんに取り入れたトラックだ。
カシミア・キャットがプロデュースを手掛け、まるでエンジンを空ぶかしするかのように「わたしの、わたしの、わたしの恋人になって、そしてわたしを夢中にさせて!」と彼女が繰り返す、少々クセのあるヴォーカリストとしての冒険心に満ちた曲である。
お得意のヒップホップ・ソウル・ヴァイブを取り込んだ、『Yours Truly』収録の「Baby I」をより成熟させたサウンドに仕上がっている。
15. breathin
もし「no tears left to cry」が、アリアナ・グランデが堂々と主役の座に返り咲いた曲だとしたら、「breathin」はその挑戦的な姿勢を取り続けたナンバーだ。彼女の魅力のひとつはその清々しいまでの透明性であり、ここでも不安との闘いという、多くのファンが共感できる問題について、揺るぎないダンス・ポップ・ビートに乗せながら率直に歌っている。
アリアナ・グランデは『Sweetener』について、「情に流されやすい自分の心と、その背後にあるトラップ・ビート」であると表現しているが、この言葉は「breathin」とアルバム全体についての二面性を上手く捉えている。
14. Baby I
「Baby I」は、アリアナ・グランデのデビュー・アルバムに収録の他の楽曲同様、マライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストン、クリスティーナ・アギレラら、90年代と2000年代初期の至高の歌姫達が好んだポップとR&Bのブレンドをお手本にして書かれたナンバーだ。
当初はビヨンセの為に書かれた曲だったが、当時の彼女のボーイフレンドで、今は亡きマック・ミラーが、ふたりのデュエット曲「The Way」に続くシングルとしてリリースするよう彼女に勧めたという。『Yours Truly』からのヒット・シングルのひとつであるこの「Baby I」で、アリアナ・グランデはヴォーカリストとしての優れた能力を発揮し、ベイビーフェイスが手掛けた成熟した歌詞を完璧に歌いこなした。
13. thank u, next
ポップ・シーンを掌握しつつあったアリアナ・グランデだが、そんな彼女でもまだ手に入れていないものがひとつあった。当時4作のアルバムをリリースしていた彼女は、未だ全米シングル・チャートでのNo.1は獲得していなかったのだ。しかし、5作目のアルバム『thank u, next』のタイトル・トラックによって全てが変わった。
アリアナ・グランデ史上最高の楽曲と言われる「thank u, next」は、元カレ達を許すことを歌い、デビュー・アルバム『Yours Truly』のソフトポップなR&Bに回帰した小生意気なナンバーだ。この曲が大成功を収めたのは、彼女のユーモア・センスと2000年初期のロマンティック・コメディへのパロディー的内容が大きな反響を呼んだ、そのミュージック・ビデオに負うところが大きい。
12. Be Alright
『Dangerous Woman』に収録されているLGBTQアンセムは「Into You」だけではない。今作からのサード・トラックで、シカゴ生まれのディープ・ハウス・ミュージックからヒントを得た「Be Alright」は、アリアナ・グランデが彼女のライヴ・ショウで、「わたし達、何の心配もないわ」とオーディエンスを安心させることから、瞬く間にファンの間で人気曲となった。
マドンナの「Vogue」同様に、この「Be Alright」は 、曲そのものが話題のポップ・カルチャーとなり、彼女はこの曲のパフォーマンスでヴォーギングを披露するほどだった。
11. One Last Time
『My Everything』は、グランデの切羽詰まった感のあるレコードだ。と言うのも、彼女は辛い人間関係から解放されようとしていたばかりでなく、もっと欲しいという自分の思いに気づくようになり、「One Last Time」ではそうした矛盾を受け入れている。魅力的なEDMの鼓動感に溢れたこのバラードもまた、このシンガーが自身の心内を省みた歌であり、その才能の幅を更に広げたナンバーだ。
10. 7 rings
アリアナ・グランデの楽曲の中でも最も強気な1曲だ。以前からラッパーのように次々とシングルをサプライズ・リリースしていた彼女が、実際にラッパーに挑戦するのは時間の問題だった。「7 rings」はリリース直後に初登場1位に輝き、ほぼ全てのストリーミング記録を更新した。
アリアナ・グランデは、この段階で、ポップ・ミュージック界の“イット・ガール”となり、ニッキー・ミナージュが「Side To Side」で宣言していたことを実行に移した。この曲はまた、彼女がトラップ・ミュージックへとシフトするきっかけとなり、オフィシャル・リミックスでは2チェインズと共演を果たした。
9. Bang Bang
シングル「Problem」を皮切りに、アリアナ・グランデは21世紀初頭のポップ界に浸透していった女性アーティストたちとのコラボレーションに才覚を発揮していった。
シングル「Bang Bang」ではニッキー・ミナージュとイギリス人シンガーのジェシー・Jに声がけし、それぞれのシンガーにスポットライトを当てた。この曲はすぐさま、クリスティーナ・アギレラ、リル・キム、マイア、そしてピンクがフィーチャーされたディーヴァ達によるコラボレーション「Lady Marmalade」のリメイク(2002年)と引き合いに出されることになる。
8. Problem
アルバム『My Everything』の成功は、当時最も注目を集めていたラッパーのイギー・アゼリアがフィーチャーされた、リード・シングル「Problem」に負うところが大きい。
モノクロで撮影され、レトロな美しさが醸し出された同曲のミュージック・ビデオには、ゴーゴー・ブーツにミニドレスという、ナンシー・シナトラ風スタイルに身を包んだ両シンガーが登場。サクソフォンとトランペット、そして手拍子がプロダクションを支えるバックボーンとして加わり、ミュージック・ビデオ同様に60年代のモード・アプローチを体現した。
7. Break Free
ZEDDとマックス・マーティンがプロデュースした「Break Free」は、アリアナ・グランデにとって前作のポップR&B路線からの本格的な脱却となったが、それはエレクトロ・ダンスから離脱したリアーナと同様の影響を及ぼした。
「嫌だと思っていることを、ここではっきりと言う。わたしは前よりも強くなった」と彼女が力強く歌うとおり、この「Break Free」は、「あなたなしでは生きられない」という『Yours Truly』での忠誠心ではなく、『My Everything』に一貫してみられる自立したアティチュードを体現しているのだ。このアルバムを通して彼女が歌う、破局を乗り越え、女性として自立することは、その後のアリアナ・グランデのベスト・ソングを特徴づける精神となった。
6. no tears left to cry
3作の全米1位アルバムをリリースし、いよいよポップ界を席巻する準備ができていたアリアナ・グランデだったが、思いがけず自身のキャリア史上最大の試練に直面する。
2017年の“Dangerous Woman tour”中にマンチェスターでのコンサートを狙った悲劇的な爆破事件は、彼女に深い心の傷を与え、同事件の犠牲者とその家族を支援するために開催されたチャリティーコンサート<One Love Manchester>に繋がった。
<One Love Manchester>は、アリアナ・グランデ自身とファン達の感情を浄化する役割を果たしたが、彼女はその後ライヴ活動から遠ざかり、スポットライトから離れた彼女は、心の痛みを和らげるために全てを音楽に託すことにした。
そうして前を向いて歩むことを綴った印象的な詩歌である、ドリーム・ポップ・アンセム「no tears left to cry」を引っ下げ、彼女はこれまで以上に強くなって戻って来た。この『Sweetener』からのリード・シングルで、彼女は心の痛みを抱えながらも、充実した人生を“力いっぱい”歩んでいることが、リスナーに伝えられた。
5. The Way
「The Way」が2013年1月にリリースされた時、多くの批評家達はアリアナ・グランデに、“次世代のマライア・キャリー”という称号を与えた。しかしブレンダ・ラッセルの「A Little Bit Of Love」のピアノをサンプリングし、ヒップホップの要素を取り入れた「The Way」での彼女の歌声は、本家よりも若干甘く、柔らかい味わいを持っている。そのサウンドは、当時20歳だった彼女のデビュー・アルバム『Yours Truly』を通して聴くことができる。
4. Side To Side
男性のアレに跨ぐことについてラップする、ニッキー・ミナージュがフィーチャーされたこの「Side To Side」は、控え目に言っても、性的に露骨なナンバーだ。向こう見ずな性行為の前後を暗にほのめかした内容は、ソウルサイクルを真似た同曲のミュージック・ビデオと共にファンの共感を得た。
このトロピカル・ポップ・トラックで、“ポップ界を牛耳る若きアリ”とラップするニッキー・ミナージュは、自分のこの発言が現実にものになるとはこの時気付いていなかった。
3. Dangerous Woman
アリアナ・グランデは3作目のスタジオ・アルバムで、自身のキャリアにおいて最も大胆な改革を起こした。当時はまだ、彼女の音楽の成熟度を疑問視する声もあったが、洗練された官能性とヴォーカルが特徴の「Dangerous Woman」は、彼女は批評家たちへの辛辣な反論であるだけでなく、自信に満ち溢れた若い女性としての新たな一面を見せつけている。
2. Into You
アリアナ・グランデは、この「Into You」で、泥臭いダンス・ポップ調のサウンドにチャレンジした。安定したビートから情熱的なクラブ・バンガーへと変化していく、『Dangerous Woman』の中で最もダンサブルなナンバーだ。
スリルを追い求める80年代ポップを手本にした彼女は、その上にエレキ・ギターを加え、ゴキゲンなアリーナ・ロック風のアンセムに仕上げている。このシングルは、アリアナ・グランデのベスト・ソングに数多く登場するLGBTQアンセムの第一号でもある。
1. God is a woman
『Sweetener』は、“ポップ・スター”アリアナ・グランデにとって、新章の始まりになっただけでなく、“危険な女性”になるという約束を果たし、アーティストとしての自信を深めた彼女の成長ぶりが感じられる作品でもあった。
この変化の大きな鍵となったのが「God is a woman」だ。2018年の夏にリリースされたこのトラップ調のアンセムは、当時25歳だったアリアナ・グランデの、自信に満ち溢れた新たなモードを特徴づける曲でもある。また2018年の“MTVビデオ・ミュージック・アワード”では、女性の体形を擁護する、野心的な振り付けを初披露した。
Written By Da’Shan Smith