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ザ・ビートルズ『Sgt. Pepper』の古今東西カヴァー・ヴァージョン
60年代はザ・ビートルズの新作達が リリースされ、他のアーティストが次第にしきりと、レノン=マッカートニーの楽曲をカヴァーしたがった、それは、彼らがヒットするための保証を得たように感じられるためだった。しかし、正直に言うと、ひとつ素晴らしい曲があると、まったく違ったものも引き上げられ、ラジオで放送されるようになる。
ザ・ビートルズが『Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の前にリリースした『Revolver』からは多くの当代のカヴァーが生まれた、ザ・トレメローズは「Good Day Sunshine」をカヴァーし、ブライアン・プールが離脱後のセカンド・シングルとなったが、どこでもうまくはいかなかった。他でも、アメリカのハーモニー・バンド、スパンキー&アワ・ギャングが、彼らのファースト・シングルとして「And Your Bird Can Sing」をカヴァーしたが、こちらもチャート入りはしなかった。しかし、クリフ・ベネット&レベルラウザーズの場合は別の話だ。ザ・ビートルズのマネージャーであるブライアン・エプスタインによって、マネージされた彼らは、「Get To Get You Into My Life」で素早くうれ、その曲はイギリスのTOP10入り ヒットとなった。
『Sgt Pepper』がリリースされたのは1967年6月の第1週で、アルバム収録曲のカヴァーは数日以内に始まった。1週間ほど先んじて、ザ・ヤング・アイディアが 「With A Little Help From My Friends」をカヴァーした。ザ・ビートルズが彼ら自身のヴァージョンをシングルとしてリリースしていなかったので、ザ・ヤング・アイディアの楽曲はすぐさまUKチャートの10位に上り詰めた。『Sgt Pepper』がリリースされて数日後、ジミ・ヘンドリックスがロンドンのサヴィル・シアターに登場し、「Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band」をカヴァーし、ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンを大喜びさせた、この曲はこれから数年間継続的に演奏された。
他の興味深い当代の『Sgt Pepper』からのカヴァーといえば、 ハリー・二ルソンによる、アルバム『Pandemonium Shadow Show』に収録された「She’s Leaving Home」だろう。ハリー・ 二ルソンはザ・ビートルズと友人同士となり、彼の風変わりな一面は、彼自身のソングライティングに反映された。それらの中には、ザ・ビートルズ自身に影響を及ぼした人もいる。ファッツ・ドミノはバンドにとっての初期のインスピレーションの元であり、だからこそ、彼が「Lovely Rita」のカヴァーを謹呈したことは非常に自然であった。およそ1年後には、ザ・ビートルズが「Lady Madonna」を録音、彼らはファッツのサウンドを取り入れた。
あまり自然発生的でないのは素晴らしいギタリストのガボール・ザボとウェス・モントゴメリーによる2つのジャズ・カヴァーだ。そして、ここにはビッグ・ジム・サリバンのカバーも加えたい。彼は、60年代、70年代の数多くのヒット曲にフィーチャーされた素晴らしいセッション・ギタリストで、彼の名前に対応してもう一人の60年代のセッション・プレイヤー(ジミー・ペイジ)はリトル・ジムと呼ばれた。
そして数年が経っても『Sgt Pepper』はミュージシャンたちに、その創作性においても楽曲のクオリティにおいても、感銘を与え続けた。ジョー・コッカ―は、「With A Little Help From My Friends」をカヴァーし、大きなヒットとなった。またエルトン・ジョンは「Lucy In The Sky With Diamonds」をカヴァーし、全米チャートのトップに送り込んでいる。そして、その一方で、すぐにはザ・ビートルズのファンであると思い浮かばないようなアーティスト、ザ・ウェディング・プレゼントや、ソニック・ユースら、音の実験者たちも、ザ・ビートルズの音の実験に対する愛を共有している。
あらゆる人がアルバムの影響を受けているのは紛れもない事実だろう。最近のカヴァーには、素晴らしいジェフ・ベックによる「A Day In The Life」がある。これは大傑作であり、ジェフ・ベックはいまだにコンサートで、観客を楽しませるための1曲として演奏している。どうやって一人の男が、これだけのサウンドを作り出せたのか?より意欲的な形で、ジ・アート・オブ・タイム・アンサンブルとフレーミング・リップスの両アーティストとも、ここ数年にアルバムを全曲カヴァーしており、両アーティストの作品とも、探し出す価値のある作品である。
最期に、驚くべき才能を持ったジャズ・シンガー、アル・ジャロウに関して述べておきたい、彼がカヴァーした「She’s Leaving Home」はなにか新しく今までとは違うものだ。とても美しい。その他にもスティーヴ・ヒレッジやワールド・パーティのように、オリジナルとの僅差を感じさせないほど完璧に、敬意を感じさせるものもある。
何か完璧に違うヴァージョンが聴きたいという場合は、イージー・スター・オール・スターズのアルバムを聴いてみよう…ジョン・レノンもポール・マッカートニーも、ジョージ・ハリスンも、リンゴ・スターもこんな風になるなんて思いもしなかっただろう、だけどもう一度言っておこう、これが『Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の魔法だと。
★プレイリスト『The Beatles’ Sgt. Pepper Covered』をSpotifyで聴く : Vol.1 / Vol.2 / Vol.3
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