Stories
ビーチ・ボーイズがウェンブリーでエルトン・ジョンに勝利した日
「真夏の音楽 / MIDSUMMER MUSIC」と銘打たこのポスターからもお察しの通り、1975年6月21日に英ウェンブリー・スタジアムで開催され、エルトン・ジョンがヘッドライナーを務めた一日がかりの巨大コンサートはとてつもないイベントとなった。そして、この10年に1度の忘れられない屋外イベントでヘッドライナーのエルトンではなくビーチ・ボーイズが勝利をおさめた。
この日に先駆けて作られたこちらの素晴らしいテレビ・コマーシャル映像では、エルトン・ジョンがイベントについて説明しながら、ジョー・ウォルシュ、チャカ・カーンらとサッカーをプレイしている様子が映されている。
当時BBC Radio1のDJだったジョニー・ウォーカーが開幕を告げ、その土曜日の午前11時半になろうとしている頃に、英ロック・バンド、スタックリッジのパフォーマンスからイベントはスタートした。彼らはエルトン・ジョンが立ち上げた会社ロケット・レーベルと契約を交わした初のグループで、当イベントの5ヶ月前となるこの年の1月に、4作目のアルバム『Extravaganza』をリリースしていた。
次に登場したのは、ファンキーなソウルを歌うアメリカの売れっ子R&Bシンガー、チャカ・カーンを擁するルーファスで、全米ヒット・シングル「Once You Get Started」をフィーチャーした3作目のアルバム『Rufusized』のツアー真っ最中に登場した。次の出演者であるジョー・ウォルシュはまだソロ・アーティストとして活動していたが、まもなくしてこのウェンブリーのステージで彼の次に登場したイーグルスに加入することになる。彼らの出演は、シングル「One Of These Nights」が全英チャートに初登場した直後のことで、ジョー・ウォルシュはチャック・ベリーの「Carol」のカヴァー・パフォーマンスで共演している登場している。
ヘッドライナーのエルトン・ジョンのステージ前半では「Rocket Man」「Philadelphia Freedom」や「Bennie and the Jets」などのヒット曲も演奏しつつ、その後は、彼がその年の5月19日にリリースし、全英チャートで3連続2位を記録したアルバム『Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy』を全曲披露する流れになった。
しかしながら、その場に居合わせた多くのファンにとっては聞き馴染みのない曲ばかりで、結果的に、アメリカの懐かしのポップ・バンドとしてロンドンへやって来た、セカンド・ヘッドライナーのビーチ・ボーイズに食われるかたちとなった。
前年の秋に全米チャートでNo.1を獲得した2枚組のベスト盤『Endless Summer』とゴールドを達成した2作目のベスト盤『Spirit Of America』によってビーチ・ボーイズは完全復活を果たしたのだが、その成功は彼らの60年代のカタログ・ヒットによるところが大きかった。もはや彼らが全英アルバム・チャートにそれまでに2年以上登場していなかったことなど関係なかった。
「Wouldn’t It Be Nice」で始まり、「Fun Fun Fun」で終わる、他22曲を披露した彼らのヒット曲満載のステージでは、ウェンブリー・スタジアム中にカリフォルニアの風が吹き荒れ、ビーチ・ボーイズは彼らの海外キャリアにおける頂点を満喫した。
Written by Paul Sexton
- ビーチ・ボーイズ アーティストページ
- ファミリー・アフェア:世界を席巻した血の絆
- チェックすべきビーチ・ボーイズの名曲10曲
- なぜ、ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』が芸術品であり続けるのか?
- ザ・ビーチ・ボーイズが『1967 –Sunshine Tomorrow』を発表
- ビーチ・ボーイズ関連記事