Stories
ロネッツの「I Can Hear Music」でUK TOP10入りしたビーチ・ボーイズ
イギリスのファンにしてみれば、ビーチ・ボーイズのアルバム『20/20』は素敵な曲を次から次へと聴かせてくれるプレゼントだった。1969年初頭に発表されたこのアルバムからは、まず前年の夏に先行シングル「Do It Again」が出ていた。この曲はノスタルジーあふれる歌詞と最新の音作りを組み合わせた作品に仕上がっており、全米チャートで20位に到達。一方、イギリスではチャートの首位にまで登り詰めている。
続いて1968年12月に出た第2弾シングル「Bluebirds Over The Mountain(青空のブルーバード)」は、全英チャートでは最高33位という控えめな順位に留まった。しかし、それでも全米チャートでの順位(最高61位)を上回っている。そして第3弾シングルを発売するにあたり、ビーチ・ボーイズは自分たちが大きな影響を受けた名プロデューサーの作品に目を向けた。
その曲「I Can Hear Music」は、フィル・スペクターがエリー・グリニッチ&ジェフ・バリーと共作した曲だった。ビーチ・ボーイズはこれを見事なカヴァーに仕立て上げた。プロデュースはカール・ウィルソンが手がけており、美しいリード・ヴォーカルもカール・ウィルソンが自ら歌っている。1966年にロネッツが録音したこの曲のオリジナル・ヴァージョンは、不可解なことに全米シングル・チャートの100位にしか到達していない。ロネッツがチャートに姿を見せるのもそれが最後になってしまった。
一方ビーチ・ボーイズのカヴァーも、全米チャートでは最高24位に留まっている。しかしイギリスではこのバンドにとって9曲目のトップ10入りヒットとなった。またオランダ、スウェーデン、ポーランドでもイギリスと同じく大ヒットとなっている。全英シングル・チャートでは1969年2月26日に初登場で47位を記録。そして4月には10位にまで達し、やはりトップ10入りしたザ・フーの「Pinball Wizard(邦題:ピンボールの魔術師)」と肩を並べていた。
故国アメリカとは裏腹に、イギリスでは『20/20』からシングル・カットされた曲がその後もヒットし続けた。「Break Away」はイギリスでは最高6位まで達したのに、全米チャートでは63位止まり。また全英チャートで最高5位を記録した「Cottonfields」は、全米チャートにはランク入りさえしなかった。
Written by Paul Sexton