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アシュリー・シンプソン『Autobiography』解説:アイデンティティを探求した大ヒットデビュー作

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アシュリー・シンプソン(Ashlee Simpson)が音楽シーンに登場した2000年代前半は、MTVのリアリティ・ショーの全盛期だった。彼女の姉のジェシカはそれ以前に同チャンネルで放送されていた『ニューリーウェッズ 新婚アイドル:ニックとジェシカ』で、既に全国的な知名度を獲得しており、妹のアシュリーもやがてMTVで自身の番組を持つこととなったのだ。

しかし、その『MTVアシュリー・シンプソン〜デビューへの道〜』は、当時のほかの作品とは明らかに一線を画していた。この番組は新人ミュージシャンの日常の様子だけを描くのではなく、スタジオにまで密着してデビュー・アルバム『Autobiography』の制作過程までもカメラに収めていたのである。

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Ashlee Simpson – Pieces Of Me

 

デビューアルバム制作の密着取材

もっとも、シンプソンが密着取材を許したそもそもの理由は、アルバム制作の裏側を撮影する前提があったからだったという。彼女は、当時のメインストリーム・ポップ界における流行とは違ったことをしたいと考えていたのだ。「このアルバムがどんな風に作られたのかを深く知ってもらえるなんてクールだと思ったの」と本人は当時、セヴンティーン誌に語っている。

『Autobiography』 (およびその関連作品としての『The Ashlee Simpson Show』) には、失恋や新たな恋、家族との関係などに纏わる10代後半の彼女の経験が映し出されている。彼女はプロデューサーのジョン・シャンクス (手がけた主なアーティストにネリー・ファータド、グー・グー・ドールズ、ジョン・ボン・ジョヴィらがいる) とソングライターのカーラ・ディオガルディ (アヴリル・ラヴィーン、ケリー・クラークソン、グウェン・ステファニーらに楽曲を提供している) とともに、そうした実生活での出来事や感情を題材にしてこのデビュー・アルバムを作り上げていったのだ。

そしてその中には、彼女の不安や若さゆえの奔放さがどちらも表現されている。「毎日、自分が現在進行形で経験していることに考えを巡らせて、それに関する曲を書いていた」。シンプソンはMSNにそんな風に説明している。さらに別のインタビューでは「自分の心の傷や、それをどう乗り越えたかを明かすのは怖くなかった」とも話している。

 

アルバムの内容

クリッシー・ハインドやジョーン・ジェットからの影響を取り入れたという同作で印象に残るのは、ハスキーで荒削りなシンプソンの歌声を支える力強いリフの数々だ。そして『The Ashlee Simpson Show』のテーマ曲にも使用されたタイトル・トラックは、彼女のことを知り尽くしたつもりでいる人びとに向けて歌われる。

Autobiography

また、失恋を題材にした曲がアルバムの大半を占める中、「Pieces Of Me」では恋愛における幸せな瞬間が描かれる。つまり、新しい恋愛に幸せを見つけることがそのテーマになっているのだ。さらに、同じくシングル・カットされた「La La」には楽しさや自由さが表現されている。

Ashlee Simpson – La La (Official Music Video)

他方、赤裸々な内容の「Shadow」では、アーティストとしてのシンプソンのアイデンティティに多大な影響を与えた事柄について歌われている――彼女は姉の陰に隠れて生きているように感じながら、自分らしさを見つけようともがいてきたのだ。彼女は2005年、コスモポリタン誌にこう話している。

「14歳くらいのころ、私はまだ顔も幼くて、垢抜けてもいないし不細工だった。それなのに、姉は美人のポップ・スターだった。だから、自分に自信が持てない時期があったんです。でもこの曲は、”よし、ありのままの自分が大好きだし、この自分でいられて幸せ”と思えるようになったことを歌っています」

Ashlee Simpson – Shadow

 

大ヒットとなったアルバム

『Autobiography』を通じてシンプソンがアイデンティティを見つけたことは、彼女自身の人生において重要な出来事だっただけでなく、セールス面での成功にも繋がった。同作は2004年に女性アーティストが発表したデビュー・アルバムとして最大のヒットを記録し、同年のアルバム売上のトップ10にも入ったのだ。

さらにはリリースから一週間も経たずにRIAAからプラチナ・ディスクの認定を受け、ビルボード200チャートの首位を獲得。2005年のグラミー賞ではシャンクスに”Producer Of The Year (最優秀プロデューサー賞) の栄誉をももたらした。彼女はこう明かす。

「アルバムがチャートに入ればいいなと思っていただけ。アメリカのヒット・チャートで1位になるなんて思いもしなかった!あれは本当に衝撃的でした」

だが実際は、それほど衝撃的な話ではなかったはずだ。いまになって『Autobiography』を聴いてみても、シンプソンが彼女自身や彼女のファンのために、奥深く感情的な経験を作品にしたのだということが容易に感じ取れるのである。だから、収録曲の数々がいまも人びとの共感を呼ぶのは当然のことなのだ。

Written By Rhian Daly



アシュリー・シンプソン『Autobiography』
2004年7月20日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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