Stories
【デビュー40周年】ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)のキャリアを改めて振り返る
2024年にデビュー40周年を迎えたボン・ジョヴィ(Bon Jovi)は、2024年6月7日に発売する16枚目のスタジオ・アルバムする『Forever』から「Legendary」というシングルを先行で発表した。そこではこう歌われている。
I got what I want cause I got what I need
Got a fistful of friends that’ll stand up for me
Right where I am That’s where I wanna be
必要なものがあるから 欲しいものも手に入れた
一握りの仲間がいるんだ 一緒に立ち上がってくれる友たちが
今の僕のまま 僕は在りたいと思う
アメリカを代表するロック・バンドとなったボン・ジョヴィの紆余曲折を描いた全4話のドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』の第4話のタイトルであるこの新曲は、ここまで長く活動してきた、彼らのすべてを言い表しているといえよう。
彼らは1986年に3枚目のアルバム『Slippery When Wet』で音楽シーンに衝撃を与えて以来、多くの人々に愛されるロック・バンドであり続けてきた。その上、デビューから40年が経ったいまでも、彼らの演奏は相変わらずすばらしく、キャッチーなメロディーを紡ぎ出すその技術は完成の域に達している。
これまでに6作のアルバムで全米1位を獲得し、そのほかにも13作のアルバムでトップ10入りを果たした実績を持つ彼らは、いまやロック界の頂点に君臨していると言っていいだろう。
<関連記事>
・ボン・ジョヴィ新作『Forever』6月発売決定。先行曲はフジ系新ドラマ主題歌
・デビュー40周年のボン・ジョヴィ:日本のファンとバンドからの日本への愛
アルバムのこれまでの総売上は全世界で1億3000万枚以上に上り、その人気は21世紀に入ってもまるで衰えていない。だがそんな彼らも、時代の移り変わりに応じて自身のサウンドを変化させてきた。例えば、80年代らしいアリーナ・ロック調の激しいギターは時とともに少しずつ影を潜めるようになった。そしてその過程で、アダルト・コンテンポラリー・チャートにも彼らの名前が登場したり、時にはカントリー・ミュージックにも挑戦したりすることもあった。だがそれでも、彼らがハード・ロック・サウンドを完全に捨て去ることはなかった。
その軌跡からは、いかに彼らが自分たちのルーツを大切にしてきたかが分かる。そうしてボン・ジョヴィは、ニュージャージー産ロックンロールのサウンドと精神を定義する上で、ブルース・スプリングスティーンに次ぐほどの存在となったのである。
デビューまで
ボン・ジョヴィというバンド名は、リード・シンガーのジョン・ボン・ジョヴィ (本名はジョン・ボンジオヴィ/Jon Bongiovi) の名前に由来している。そして、そんな彼が10代のころに地元ニュージャージーで一緒にバンドを組んでいたのが、デヴィッド・ブライアンだった。
ジョンはやがて、ニューヨークの有名レコーディング・スタジオであるパワー・ステーションで多くの時間を過ごすようになる。というのも、彼のいとこのトニー・ボンジオヴィが同スタジオを所有していたのだ。ジョンはそこで雑用係として働きながら、終業後にはデモのレコーディングに勤しんだ。時には、Eストリート・バンドのメンバーやアルド・ノヴァが手を貸してくれることもあったという。
そんな中で制作されたデモの一つである「Runaway (夜明けのランナウェイ)」が、ニュージャージーのローカル・ラジオでヒットを記録。ジョンとブライアンはこれを受け、ギタリストのデイヴ・セイボ、ベーシストのアレック・ジョン・サッチ、ドラマーのティコ・トーレスをメンバーに迎えて”ボン・ジョヴィ”という名のバンドを結成したのだ。
この「Runaway」は、メジャー・レーベルのあいだでの彼らの争奪戦を巻き起こしたが、1983年にバンドはポリグラム/マーキュリーと契約。しかし彼らはレコーディングを始める前に、セイボに替えてリッチー・サンボラを加入させた。サンボラは、メッセージというグループでの活動など豊富な実績を持つ即戦力のギタリストだった。
デビューから3枚目の大成功
ボン・ジョヴィは1984年にセルフ・タイトルのデビュー・アルバム『Bon Jovi (夜明けのランウェイ) 』をリリース。同作に収録された「Runaway」のオリジナル・ヴァージョンは、チャートのトップ40に入るヒットを記録した。さらに、翌年に発表された『7800° Fahrenheit』も、程なくしてゴールド・ディスクに認定。こうして、1986年作『Slippery When Wet』で大ブレイクを果たす下地が整ったのである。
そんなあるとき、ジョンとリッチーはKISSのポール・スタンレーから、プロの作曲家であるデズモンド・チャイルドの連絡先を受け取った。同アルバム内の二大ヒット曲は、この3人がリッチーの実家の地下室で共作したものである。そうして合計で30曲を共作した彼らは、地元のニュージャージーとニューヨークの若者たちに聴かせてその反応を見た。また、アルバムの曲順も若者たちの意見を参考にして決めていったという。
そうして完成したアルバムは、「You Give Love A Bad Name」の人気が後押しとなって軌道に乗り始め、「Living On A Prayer」と「Wanted Dead Or Alive」も続けざまにシングル・カットされ、いずれのシングルも、アメリカのシングル・チャートで頂点に輝いていた。さらに、それらの楽曲に魅力溢れる王道のミュージック・ビデオが作られ、MTVで頻繁に放送されたことも同作の勢いに拍車をかけた。
結果として上記の3曲はいずれもチャートでトップ10入りを果たし、そのおかげもあって『Slippery When Wet』はアメリカだけで1200万枚ものセールスを記録。この1作により、ボン・ジョヴィは自国でスーパースターの仲間入りを果たした。そして、その人気はアメリカ国内にとどまらなかった。同アルバムは、ヨーロッパ、カナダ、日本、そしてオーストラリアでも著しい成功を収めたのである。
彼らは1986年の大ヒット・アルバム『Slippery When Wet』と、同作からのヒット・シングルである「You Give Love A Bad Name」「Wanted Dead Or Alive」「Living On A Prayer」などの楽曲で、来るべきポップ・メタル黄金期の礎を築いた。だがボン・ジョヴィは、ド派手な髪型が流行した80年代だけで消えていくようなバンドではなかった。彼らはスタイルやサウンドの主流が時代によって変化する中、その流れに抗いながら、アメリカを代表するロック・バンドの一つとなったのだ。
『New Jersey』でも続いた成功
1988年、ボン・ジョヴィは『Slippery When Wet』で確立したスタイルをさらに発展させ、4枚目のアルバム『New Jersey』を制作。このアルバムも、瞬く間にチャートの1位まで達し、そして前作の成功にはわずかに及ばなかったものの、同作もアメリカだけで700万枚の売り上げを記録した。
加えて、この『New Jersey』からは「Bad Medicine」と「I’ll Be There For You」という二つの全米ナンバー・ワン・シングルが生まれたほか、「Born To Be My Baby」、「Lay Your Hands On Me」、「Living In Sin」もチャートのトップ10に入った。
しかしボン・ジョヴィの面々は18ヶ月に亘るワールド・ツアーを行ったあと、活動を休止。その間、ジョン・ボン・ジョヴィは映画『ヤングガン2』のサウンドトラックを手がけ、それらの楽曲は1990年に発売されたジョン・ボン・ジョヴィのソロ・アルバム『Blaze Of Glory』としてリリースされた。
グラミー賞やアカデミー賞にもノミネートされた同アルバムからは、全米1位を獲得した「Blaze of Glory」に加えて、最高12位を記録した「Miracle」というヒットシングルも生まれている。
活動復帰の『Keep The Faith』
翌年、ボン・ジョヴィは活動を再開。5thアルバム『Keep The Faith』をレコーディングし、1992年の秋にリリースした。こちらは前2作ほどの大成功を収めるには至らなかったものの、シングル「Bed Of Roses」がヒットを記録。この曲はアダルト・コンテンポラリーに分類されるようなバラードで、バンドの人気を保つのに一役買った。
また、グループは1994年にベスト・アルバム『Cross Road』を発表。同作からも、バラード曲である「Always」がチャートのトップ10に入った。
しかし時を同じくして、ベーシストのアレック・ジョン・サッチがバンドを脱退。その後任を務めたのは、「Runaway」のころからボン・ジョヴィのレコーディングに参加していたヒュー・マクドナルドだった。彼は正式メンバーとして加わったわけではなかったが、グループの次なるアルバムでは際立った活躍をみせた。
1995年秋に発表された『These Days』は、またしても全米アルバム・チャートでトップ10入りを果たし、ヨーロッパでも人気を博した。翌1996年、ジョン・ボン・ジョヴィは個人として映画『ムーンライト&ヴァレンチノ』に出演。続く1997年の夏には、公式には初となるソロ・アルバム『Destination Anywhere』をリリースした。
ソロ活動、そして復活作
1990年代終盤、ボン・ジョヴィのメンバーたちはそれぞれのソロ・プロジェクトに精を出していた。例えば、リッチーは1998年に2作目のソロ・アルバム『Undiscovered Soul』をリリースしている。
しかしながら1999年にコメディ映画『エドtv』に楽曲を提供したことをきっかけとして、グループは徐々にフル・アルバムの制作へと乗り出していった。そうして完成したのが、2000年発表のアルバム『Crush』である。
このアルバムは、各種チャートで悠々とヒットを記録したシングル「It’s My Life」を収録していたことから、彼らにとってアメリカ国内でのある種の”復活作”になった。『Crush』からは、さらに「Thank You For Loving Me」もヒットを記録。結果として『Crush』はアメリカでダブル・プラチナに認定されるとともに、全世界で800万枚を売り上げる成功を収めている。
続いてボン・ジョヴィの面々は、それから比較的間もない2002年の秋に8作目のスタジオ・アルバム『Bounce』を発表。さらには同作を引っ提げてのワールド・ツアーも開催した。そして2003年、彼らはグループの人気曲にアコースティック・アレンジを施してリメイクした『This Left Feels Right』をリリース。翌2004年には、同作のリリースに合わせて行われたアコースティック・ライヴの模様を収めたDVDもリリースされている。
同年11月には、アウトテイクやレア・トラックをぎっしりと詰め込んだ意欲的なボックス・セット『100,000,000 Bon Jovi Fans Can’t Be Wrong』をリリース。続いてボン・ジョヴィの面々は、全編が新曲で構成された『Have A Nice Day』を発表。同作のプロデューサーを務めたジョン・シャンクスは、このあとも引き続き彼らの作品を引き続き手がけていくことになった。
『Have A Nice Day』は日本、オーストラリア、ヨーロッパ、カナダのアルバム・チャートで1位を獲得したが、そんな同作の成功の一端を担ったのがシングル「Who Says You Can’t Go Home」であった。シュガーランドのジェニファー・ネトルズをゲスト・ヴォーカルに迎えた同曲は、グラミー賞の最優秀カントリー・コラボレーション賞にも輝いている。
カントリーアルバムの制作
その翌年、ボン・ジョヴィの面々はスタジオでの楽曲制作に多くの時間を費やした。そして、アメリカ中西部で支持されるようなカントリー・サウンドにポップの要素を加えた楽曲群を仕上げた彼らは、2007年の夏にその成果をアルバム『Lost Highway』として発表。リアン・ライムスやビッグ&リッチをデュエット曲のゲストに迎えたこのアルバムは、グループがカントリー・ミュージックのファンからの厚い支持を獲得する契機となった。
ジャンルを横断した作風の『Lost Highway』は多くの人の心を惹きつけ、アメリカのアルバム・チャートで彼らにとって3度目となる1位をマーク。しかしすぐに、ボン・ジョヴィの面々はロック・サウンドへと回帰した。そのアルバムが、物憂げで痛烈な内容の2009年作『The Circle』である。
また、彼らは翌年にベスト・アルバム『Greatest Hits: The Ultimate Collection』を発表。このコンピレーションには数多くのヒット曲だけでなく、「No Apologies」と「What Do You Got?」という二つの新曲も収録されていた。
精力的なアルバム制作と40周年
続くアルバム『What About Now』でも、プロデューサーはジョン・シャンクスが務めた。シャンクスは、かつて若くして一世を風靡したヴォーカル・グループ、テイク・ザットの作品なども手がけていた人物である。2013年3月にリリースされた『What About Now』は、全米チャートで初登場1位を記録。アメリカで首位を獲得するのは、ボン・ジョヴィにとってこれで5度目となった。
このあとリッチー・サンボラの脱退を経て、グループは『Burning Bridges』をリリース。同作は、それまで未発表/未完成となっていた楽曲に、新曲である「We Don’t Run」や「Saturday Night Gave Me Sunday Morning」を加えた秀作だった。
そして2016年は、『This House Is Not For Sale』がリリースされたことで特筆すべき年となった。完成度の高い楽曲を数多く収めたこのアルバムは、信頼と実績のあるボン・ジョヴィらしいサウンドを堪能できるアルバムだ。2020年には15枚目のスタジオ・アルバム『2020』を発売。新型コロナウイルス蔓延のため従来のプロモーションが上手く行うことができるセールス的には苦戦を強いられた。
2024年1月には、バンドはデビュー40周年を迎え、デビュー・アルバム『Runaway』に未発表音源を追加したデラックス・ヴァージョンを発売。また、4月にはバンドのキャリアを総括する全4話となる初のドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』を配信(日本ではディズニープラスにて)。この作品の中で、ジョン・ボン・ジョヴィは声帯の不調と手術をしたことを告白したことが話題となった。
そして6月には16枚目のアルバム『Forever』を発売。ジョンの声帯手術を乗り越えて制作されたアルバムからの先行シングル「Legendary」を配信している。
Written By uDiscover Team
ボン・ジョヴィ『Forever』
2024年6月7日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music
<Tracklist>
1. Legendary
2. We Made It Look Easy
3. Living Proof
4. Waves
5. Seeds
6. Kiss The Bride
7. The People’s House
8. Walls Of Jericho
9. I Wrote You A Song
10. Living In Paradise
11. My First Guitar
12. Hollow Man
- ボン・ジョヴィ アーティスト・ページ
- ボン・ジョヴィ新作『Forever』6月発売決定
- デビュー40周年のボン・ジョヴィ:日本のファンとバンドからの日本への愛
- ボン・ジョヴィ、YouTubeにて過去の名曲ミュージック・ビデオをHD化
- ボン・ジョヴィ40周年を記念するドキュメンタリーの予告編が初公開
- ボン・ジョヴィの名曲「Livin’ on a Prayer」のMVがYouTubeにて10億再生を突破
- ボン・ジョヴィ『Slippery When Wet』バンドの人生を変えた1986年の名盤
- ボン・ジョヴィ初のゴールド・ディスク、セカンド・アルバム『7800° Fahrenheit』
- ボン・ジョヴィ『These Days』解説:内省的な歌詞と信念を貫いたサウンド
- ボン・ジョヴィ「Livin’ On A Prayer」最初ジョンは気に入っていなかった
- ボン・ジョヴィ『Keep The Faith』:グランジの時代にサウンドを進化させた1枚
- ボン・ジョヴィ『Cross Road』解説:日本で初の1位、人生が交差したベスト
- 初の全米シングル1位「You Give Love A Bad Name」