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スティーヴ・ミラー・バンド82年の全米シングル1位「Abracadabra」は「4分間の息抜き」
1982年の晩夏、スティーヴ・ミラー・バンドはアメリカのラジオ局やレコード店にとって最もホットな存在だった。彼らのアルバム『Abracadabra』はアメリカだけでプラチナム・セールスを獲得し、その後全米アルバム・チャートで3位の座を6週間にわたって独占し続けた。そして一度聞いたら忘れられないアルバムのタイトル・トラックは同年9月4日に全米シングルチャート首位に輝き、主役であるギタリストと彼のバンドはポップの覇者となったのだった。
スティーヴ・ミラーと彼のバンドのドラマーであるゲイリー・マラバーのプロデュースとなるその楽曲「Abracadabra」は、コマーシャルなシングルとロックなアルバムとを両立させることにかけて、ミルウォーキー出身のこのギタリストがいかに優れた才能の持ち主であったかを知る好例だろう。そのコンビネーションの妙は、1973年の「The Joker」と1976年リリースの「Rock’n Me」の2曲の過去の全米ナンバー・ワン・ヒット・シングルでも見事に活かされていた。ローリング・ストーン誌に掲載されたインタビューで、いささかのフラストレーションを込めて彼はこう語っている。「僕が求められているのは短い曲を書くことだ。みんながそれで4分間の息抜きができればいいんだよ」。
「Abracadabra」が1位になった後に、歴史の逆転現象が起こった。かつてスティーヴ・ミラーは「Rock’n Me」でシカゴの「If You Leave Me Now(邦題:愛ある別れ)」から首位の座を奪っていたが、今度は「Abracadabra」が首位の座をシカゴの「Hard To Say I’m Sorry(邦題:素直になれなくて)」に譲ったのだ。
「Abracadabra」は2週間連続1位を記録してゴールド・シングルとなり、オーストラリア、オーストリア、カナダ、スウェーデン、そしてスイスでも1位になった曲だ。イギリスでは、キャプテン・センシブルの「Happy Talk」とアイリーン・キャラの「Fame」に阻まれ、その最高位は2位だった。
Written by Paul Sexton
スティーヴ・ミラー・バンド『Abracadabra』
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