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ブルーグラスの先駆者トニー・ライスが69歳で逝去。その功績を辿る
ブルーグラス・ギターの第一人者として広く評価され、2013年に国際ブルーグラス音楽協会(International Bluegrass Music Association)の殿堂入りを果たしたトニー・ライスが69歳で逝去した。彼の前所属レーベルであるRounder Recordsは、彼が12月25日に急逝したことを伝えている。
Tony Rice June 8, 1951 – December 25, 2020
We were all deeply saddened by the news of Tony Rice’s sudden passing on Christmas Day, and we offer our deepest condolences to his loved ones and his many fans. May he Rest In Peace. pic.twitter.com/K24UOgFlPi— Rounder Records (@RounderRecords) December 27, 2020
「ブルーグラスの最も象徴的な歌声とミュージシャンの一人にお別れしなければならないのはとても辛いです。デヴィッド・アンソニー・“トニー”・ライスは昨日12月25日、ノースカロライナ州リーズヴィルの自宅で亡くなりました。彼の腕前と影響力に匹敵する者はこの先もほとんど現れることはないでしょう」
トニー・ライスは、速弾きのギター奏法であるフラットピッキングと、ジャズに影響を受けた音楽スタイルで広く知られている。
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カリフォルニアで生まれ育ち、ケンタッキーへと移り住んだトニー・ライスは、1970年代初頭、リッキー・スキャッグスらと共にJ.D.クロウ&ザ・ニュー・サウスのメンバーとして活動。その後、デヴィッド・グリスマン・バンド、ブルーグラス・アルバム・バンド(ドイル・ローソンも加入していた)、トニー・ライス・ユニット(アリソン・クラウスも加入していた)、ライス、ヒルマン&ペダーセン(兄のラリー・ライス、元バーズのクリス・ヒルマン、ハーブ・ペダーセンとの)などのバンドでキャリアを積み重ねていく。また彼は、ベラ・フレックやグレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアとの共演でも知られている。
トニー・ライスは1994年に発声障害と診断され、その後の人生でほとんどを歌うことができなくなってしまう。彼が最後に公の場でギター演奏を披露したのは、2013年に開催された国際ブルーグラス音楽協会の殿堂入り式典のステージだった。
この訃報を受けて、スティーヴ・マーティン、ジェイソン・イズベル、リッキー・スキャッグスなど、彼の演奏に影響を受けた多くの大物アーティストたちが追悼を捧げている。
スティーヴ・マーティンは自身のツイッターで、彼のお気に入りのパフォーマンスを紹介しつつ、こう述べている。
「ああ、トニー・ライスよ。私が生まれた時から知っている、偉大なミュージシャンでした」
ジェイソン・イズベルは、彼を“キング・オブ・フラットトップ・ギターのフラットピッカー”と呼び、「彼の影響力は計り知れません。彼の音楽を知らない人は、ぜひ調べてみてください。人がこれ以上美しいものを作れるものなのか、私にはわかりません。#RIPTonyRice」と賛辞を送った。
70年代のニュー・サウスでのバンドメイトで、後に『Skaggs & Rice』というデュエット・アルバムを共同リリースしたリッキー・スキャッグスもまた、彼の功績を次のように讃えている。
「トニー・ライスは、過去50年間で最も影響力のあるアコースティック・ギタリストでした。トニーは素晴らしいギタリストだっただけでなく、ブルーグラス音楽史の中で最もスタイルを持ったリード・ヴォーカリストの一人でもありました」
トニー・ライスへの追悼は、ブルーグラス界外からも寄せられており、カントリー界のスーパースター、ケニー・チェズニーは、母校であるイースト・テネシー州立大学のブルーグラス・バンドで演奏していた頃に、彼の大ファンになったという自身の思い出をこう語っている。
「大学時代、友人のショーン・レーンとマーカス・スミスというカップルと一緒に音楽をやっていて、毎週水曜日の夜はテネシー州ジョンソン・シティのダウン・ホームという場所で演奏していました。僕らが1番最初に演奏した‘Green Light on the Southern’や‘Four Strong Winds’、それからアルバム『Skaggs & Rice』からの曲など、彼の音楽はいつも僕らのライヴでは定番でした。トニー・ライスは多くの人々にインスピレーションを与えてきました。イースト・テネシーで生まれ育った私のような子供は、彼の‘Me And My Guitar’の歌い方と演奏に畏敬の念を抱いていました。キリー州オーエンズボロで開催されたIBMAブルーグラス・フェスティバルで、彼が歌っているのを観た時のことは一生忘れないでしょう。私の脳裏に永遠に焼き付いています。トニー・ライスよ、安らかにお眠りください」
Written By Tim Peacock
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