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ポール・マッカートニーが新作『McCartney III』や映画『The Beatles: Get Back』について語る
ポール・マッカートニー(Paul McCartney)がBBCの取材に応じ、
ポール・マッカートニーは、ショウン・キーブニーのBBC Radio 6 Musicのためにマット・エバリットのインタビューに応じ、
「自分でもよくわかりませんが、アイデアが浮かんできて僕を忙しく掻き立てるんです。
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「その後仕事に行けるようになりました。
ニュー・アルバム『McCartney III』は、ザ・ビートルズの解散騒動の最中となる1970年にリリースされた『McCartney』から始まった作詞作曲から録音まで全て自ら手掛けるDIYアルバムのシリーズの続編となる。アルバム『McCartney』についてポール・マッカートニーはこう明かす。
「ある日突然、ザ・
「でも、僕はドラムキットもベースもギターもアンプも、全部自前で持っていました。だから、ザ・ビートルズ時代に使っていたのと同じ4トラック・レコーダーをEMIから手に入れて、録音環境は全く気にせず、ミキシング・デスクも使わずに、マイクをレコーダーにそのまま差し込んで、音楽を作ったっていう、ただそれだけでした」
その10年後、ポール・マッカートニーは1980年のアルバム『McCartney II』の制作にも同じプロセスを採用した。
「シンセを使ったことがなかったので、シンセでできることをすべて駆使したのと、もう一つはシーケンサーでした。これもまた人が使っているって聞いたことはあっても自分では使ったことがなかったもので、それがこのアルバムのベースになっているんですが、要するに僕はただ家に引き籠もって作業をしていただけなんです」
「時には少し狂気じみているようにも思えました。自分は、研究室に籠もっている狂った教授のようだとよく言っていたものです。とりわけ“Secret Friend”みたいな曲は、ちょうど8分なんですが、そのために8分間演奏し続けなければならない。今なら攪拌器のようなパーカッションを入れたければ、演奏の一部を録音するだけで、あとはコンピュータが8分間の処理をしてくれますよね。でも当時の僕は、誰もいない小さな部屋に立って、時計を見ながら“うわぁ、あと7分もある”と思いつつシェーカーの音を鳴らしていました」
「一人でやっている時は、アイデアが浮かんだらすぐに演奏できます。一方で、バンドと一緒にやっていると、それを説明しなければならないし、彼らも、自分自身も理解しなければならないと思うんです。誤解のないように言っておきますが、ライヴはバンドでやるのが間違いなく最高です。でも、自分一人で考えを巡らしている時は自由度が高いし、常に僕自身が楽しんでいることでもあります」
“これをやってみようか”
ポール・マッカートニーは、音楽的実験が彼自身をどこへ連れて行ってくれるのかをみてみたいという、どこまでも自由な感覚で新作『McCartney III』に臨んだという。
「それがこのアルバムの素晴らしいところなんです。僕自身アルバムを作っていたことに気づいていなくて、それが大きな違いです。僕のために映画を作っている人が、その作品のためにイントロの音楽やインストゥルメンタル楽曲が必要だったので、僕はスタジオでその音楽を作らなければならなかった。その作業をしているうちに、“悪くないね。いい感じだ、これをやってみようか”と思うようになったんです。それから9週間いろいろやってみて、“ああ、この作品は完成させた方がいいだろう。おお、完成できそうだ。そう、これでいいんだ”と思って、全曲を通しで聴いてみたら、これが紛れもなくアルバムになるっていう確信を持てました」
また、『McCartney III』の内容について、彼は次のように述べている。
「ほとんどが新曲です。でも中には以前に未完成のまま残してあった曲もあって、スタジオに入ってから“待てよ、あの曲はどうだろう?試しにやってみよう”と思って、それを実際にやってみたら、“おや、まあ”ってなるんだ。何がよくなかったのか、なぜ気に入らなかったのかを考えると、場合によってはヴォーカルや歌詞が合っていなかったり、ただ何かが噛み合っていなかったりすることもありました。だから、そういったものを全部削ぎ落として、“よし、じゃあ全く違う曲にしてみよう”っていう、そんな作業を全てやりきってから作品を見直して、“この音楽で僕は何ができるだろう?これはニュー・アルバムか何かなのかな?”と考えていた時に、突如として、これは“McCartney III”なんだって思い付いたんです。過去の2作同様に、全て自分自身でつくり上げたので、そう呼ぶのに相応しいんです」
今を生きる
番組司会のマット・エバリットから「新曲の中にパンデミックの影響を受けたものがありますか?」という質問を受けたポール・マッカートニーは、次のように答えている。
「比較的新しい曲のいくつかはそうだと思います。“Seize the Day”という曲は、パンデミックの影響を受けていて、辛い時期があっても今を生きるんだ、と歌う曲なんですが、パンデミックを乗り切るためには、良いことに目を向けて、それを掴む努力をした方がいいということを僕自身やこの曲を聴いている人にも思い出させてくれるはずです。間違いなく僕の助けになった曲ですね」
さらに、この世界的な危機を広い視点で捉えた時の自身の感情について、彼はこう説明している。
「もちろん嫌に決まっています。ニュースを見る度に、何人の人が亡くなったのかがトップで報じられていて、そんな日々が続くと気が滅入る。そして、今私の身の周りで起きていることから、私の両親、私の父と母であるジムとメアリーが第二次世界大戦中に経験していたことを思い出しました。彼らは生き延びました 。爆撃をくぐり抜け、自分たちの右や左、そして目の前で人々が犠牲になっていく中、彼らは信じられないほどの精神力を持って戦いを生き延びたんです。そんな両親のもとリヴァプールで育った僕たちは、周りの人々も皆そうだったように、もう辛いことは十分経験したから“楽しく、前向きに生きよう”といった戦時中の精神を持っていました。ですからそんな環境で育った僕が、その精神に則って、“彼らができたのなら、自分にもできるはず”と考えるのはいいことだと思っています」
音楽はクビになったら趣味でやる
また音楽のセラピー効果について、ポール・マッカートニーは次のように語った。
「(音楽は)クビになったら趣味でやるっていつも人には言っています。僕はいつもギターと一緒で、友達のようなものなんだ。多くのギタリストや楽器奏者も同じことを言うでしょうね。この生命を持たない物体と関係性を持つと、自分にとってとても大事な存在になります。ザ・ビートルズ初期の頃に、僕とジョンはいつも(ギターは)精神科医のようなものだと言っていました。気分が落ち込んでいるときに、どこかの物置の中に入って演奏を始めると、次第に気分が良くなるんです。そんな本当に大事な存在です」
「ロサンゼルスのドジャー・スタジアムでやった最後のライヴを振り返ってみて、とても良い一夜だったんですが、“あー、あれが最後のライヴになったらどうしよう”って考えることもあります。でも、なんの心配せずに、観客席でただ夢中でバンドの生ライヴを聴いたり、演奏するライヴバンドになれるってそれだけで素晴らしいことだと思いませんか?この間、曲をやる代わりに、ステージに立って“ライヴって最高だろう?”って言っている自分の姿を想像してみたのですが、それはすごく特別な瞬間になるでしょうね、だから(またライヴできる日が来るのを)祈っています」
最後にポール・マッカートニーは、ピーター・ジャクソン監督の最新ドキュメンタリー映画『
「映画は観ました。素晴らしかった。彼が、当時撮影された56時間くらいある全映像を徹底的に掘り起こそうとしている時に、僕は彼に“ああ、つまらなくなりそうだね”って言ったんです。何故なら僕の記憶の中では、 1970年のオリジナル映画『レット・イット・ビー』の思い出はとても悲しくて、憂鬱なものでしたから。でも彼が僕に連絡をくれて、“いや、(映像を)見てるんだけど、そこには笑いがあって、みなさん4人は一緒に制作しているし、あなたは曲を作っている。ジョージが’Something In The Way She Moves’の歌詞を考えていたり、僕が’Get Back’に取り掛かっていたりする映像を彼は少しずつ僕に見せてくれたんですが、それは実際に当時の僕たちの姿だったので、素晴らしかったし、嬉しかった。本物の家族のように口論になることはあっても、僕たちはお互いを愛し合っていたことを思い出させてくれて、映画がそれを映し出しているんです。とても温かい気持ちになりますし、彼らと楽屋で一緒に過ごしたり、良い音楽を作れたことは素晴らしいことです」
Written By Paul Sexton
ポール・マッカートニー『McCartney III』
2020年12月18日発売
CD / 限定赤LP / LP / iTunes / Apple Music
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