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マルーン5 東京ドーム初日公演レポート:世代を超えた幅広いファン層とみんなが聴きたい歌

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Photo: Ryota Mori

2025年2月6日、8日、9日に東京ドームにて3日間実施しているマルーン5(Maroon 5)の来日公演。この初日公演について、音楽ライター、服部のり子さんによるオフィシャル・レポートとライヴ写真を掲載。

また、ライヴのセットリストがプレイリストとなって公開されている(Apple Music / Spotify / YouTube

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マルーン5の来日公演初日は、オンタイムで始まった。客電が落ちると、周囲から「19時ピッタリ!」という驚きの声が上がり、観客の集中力が一気に高まるが、暗闇に流れてくるのはハリー・ベラフォンテの「Jump In the Line」。昨年あたりからこのラテンナンバーを使っているようだが、会場の少しの戸惑いは、アダム・レヴィーンの歌声で大歓声に変わる。オープニングを飾ったのは「Animals」。ここからほぼノンストップで、楽器チェンジなどの微妙な間もなく、ほどよい緊張感のなかでヒット曲が演奏されていく。

敢えて“ほぼ”としたのは、3曲目の「This Love」のあと、アダムのMCがあったからだ。そこで彼は、「日本には20年以上も来ていて、最初は2004年で、来るたびにどんどんビッグになっている」と、観客への感謝を口にしたが、確かに前回の2022年は、東京では東京ドーム2daysだったが、今回は3days。20年の歳月は、親子連れの姿が物語っている。前列の親子は、お母さんが「This Love」や「Sunday Morning」で盛り上がり、お子さんは、「Memories」を撮影していた。

前回もそうだったけれど、その亡きマネージャーに捧げた「Memories」ではスマホのライトがドームを神々しく彩り、歌の最後で天を見上げるアダムの表情は美しかった。

 

彼らが“しない”こと

そのアダムは、ドジャースのユニフォームを着ている。彼らの街LAの大火事をサポートする意味かと思ったが、そこに言及することはなく、背中には漢字で大谷翔平とある。キーボードのPJモートンは、WBC侍ジャパンのユニフォームを着用。私の位置からは背中が見えなかったけれど、彼も大谷選手の背番号だったようだ。そういえば、前回のアンコールではギターのジェイムズ・ヴァレンタインがサッカー日本代表のユニフォームに着替えていたけれど、それをアピールして、喝采を集めるということをしない。

“しない”ことで言うと、TOKYOやJAPANの連呼で煽ることはない。「Harder to Breathe」の前に少しマット・フリンのドラムソロがあり、「Sunday Morning」のイントロでPJモートンのキーボードがフィーチャーされたり、「This Love」でアダムのギターソロがあったりしたが、バンドのライヴで見せ場とする長々としたソロ演奏はない。その代わりじゃないけれど、長かったのは「Lucky Strike」の後のコール&レスポンスだった。また曲のタイトルもほとんど言わない。「What Lovers Do」と「Makes Me Wonder」から続けて演奏されたプリンスのカヴァー「I Wanna Be Your Lover」も途中で気付いた。

例外だったのは、PJモートンのソロ楽曲「Heavy」でアダムがPJを熱く紹介したこと。この「Heavy」は、彼の2013年のソロアルバム『New Orleans』からの曲だ。ニューオーリンズ育ちのPJが奏でるキーボードと歌は、マルーン5のキャッチーで、ポップなヒット曲とは一線を画す、ソウルフルなファンク。おそらく初めて聴く人もいるはずだ。それでもアメリカ南部の魂が込められた黒人音楽が高揚感を掻き立てるのだろう。会場全体が新たな熱気を帯びる。個人的には昨年の単独公演を見逃したので、うれしい1曲となった。

反対に少々残念だったのがアンコール1曲目の「Lost Stars」。アダムとジェイムズが2人だけで登場して、アコギで「Lost Stars」を弾き始めたので、期待感が跳ね上がったけれど、ワンフレーズだけで、「She Will Be loved」にスイッチされた。そして、この曲の途中で他のメンバーが合流して、「Girls Like You」へと続く。この曲ではMVに出演した女性たちの映像がステージ後方のヴィジョンに映し出される。2年前もそうだったなと思うなか、張り出したステージの真横にいる観客にアダムが笑顔で歌いかけ始めた。それがアダムの愛妻ベハティ・プリンスルーと三番目のお子さんだった。

そして、ラストナンバーは「Sugar」。来日直前の人気楽曲投票企画で、1位になった曲だけに歓声もより一層大きくなる。

 

「次も絶対」と思わせるコンサート

コンサートも多様化されてきて、マルーン5も行っているようにラスベガスの常設公演が人気を集めたりしているが、それでも多くのアーティストは、新作を発表すると、ツアーを行う。でも、マルーン5の最後の新作『Jordi』がリリースされたのは2021年のこと。それにも関わらず、東京ドーム3公演。ライヴを観るまではそこが不思議だった。

不思議という点ではほとんどの曲でイントロが始まると、すぐに大歓声が上がり、約5万人のコール&レスポンスと大合唱がドームに響き渡り、一体感は半端ない。でも、メンバーの名前を絶叫する声は、ほとんどないのだ。彼ら自身の自己アピールもない。ギターのジェシー・カーマイケル、ベースのサム・ファラーは、終始演奏に徹していた。

こう書くと、エンターテイメント性に欠けるように映るかもしれないが、約90分のステージで惜しみなく2002年のデビュー作『Songs About Jane』から現在まで、アダムがゲスト参加したジム・クラス・ヒーローズの「Stereo Hearts」も含むヒット曲を披露していく。だから、「あの曲を聴きたかったのに」というありがちな不満は残らないはず。それが世代を超えた幅広いファン層を育て、楽しかったという満足感と共に「次も絶対」と思わせるのだろう。これこそがマルーン5の想像を超える集客力ではないか。

最後に銀テープが飛んできたし、バリライトのライティングが華やかだったけれど、それ以外は、派手な演出はなかった。緩急の流れを作るアコースティックセットもなかった。もうそういう演出を必要としていないのだ。ただみんなが聴きたい歌があればいい。それが出来るのも彼らがパフォーマンスを磨き上げてきたからこそだ。そして、オンタイムのスタートを含めて、コンサートにありがちな慣習をスマートに打ち壊しているという別角度の感動もあった。

Written By 服部のり子 / All Photo by Ryota Mori


来日公演セットリストがプレイリストに
Apple Music / Spotify / YouTube



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