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イギー・ポップ『Lust For Life』40周年記念でレコードを発売:このアルバムの魅力とは?
イギー・ポップが自身をさらけ出したソロ・アルバム『Lust For Life』は、40年前の1977年8月29日にリリースされた。新たな限定版のリイシューは、180グラムのメタリック・ゴールドのレコードLPで再発され、この伝説的なアルバムの40周年を煌びやかに祝福する。
ザ・ストゥージズ時代の後に立て続けにリリースしたソロ作品の2枚目で、デヴィッド・ボウイを共謀者とした『Lust For Life』は、ソロ第1作『The Idiot』の型にはまったポップのメロディから脱し、ストゥージズ時代のワイルドな快楽主義を前面に出した。当時のパンク・シーンが英米で爆発する中、イギー・ポップは古き門番の最後の砦で、自分の立ち位置を力強く確保し続けただけでなく、再び先導を切って新たな道を開き、皆が彼の後をついていったのだ。
1989年にイギー・ポップがクリーム誌にこう話している「10年前倒しで80年代を最高の時代にすることを実現させた男が、地球に舞い降りた男とタッグを組んだんだ」。
1発目のドラム・ビートから、「Lust For Life」はシュープリームスの「You Can’t Hurry Love(邦題:恋はあせらず)」のあのモータウンのビートを格段に力強くしたものだと瞬時にわかる。そしてオリジナルに比べてもっとワイルドな曲であることは明らかだった。好評だった前作『The Idiot』とそれに伴うソロ・ツアーを成し遂げていたイギー・ポップは、そのステップにより自信が溢れ、70年代の熱狂的なエネルギーを捕らえながら、アルバム全体をベルリンの壁の目と鼻の先の場所で3週間かけて仕上げた。
多くの楽曲はデヴィッド・ボウイとの共作だったが、本当に輝かしいのはイギー・ポップのウィットに富んだ歌詞と音楽性、そしてリズム・セクションのトニーとハントのセールス兄弟、ギターのカルロス・アロマーとリッキー・ガードナー、そしてキーボード兼バック・ヴォーカルのデヴィッド・ボウイからなる見事なバック・バンドだった。
イギー・ポップとの制作について、昼間の番組『Dinah!』でデヴィッド・ボウイとイギー・ポップがともに出演した有名なインタヴューで、デヴィッド・ボウイは「他で見ることのできない、動物的なロックを解き放つイギー・ポップに惹かれた」と話している。そして間違いなく、その生きる喜びを語ったタイトルの通りに、アルバムのほとんどの歌詞はスタジオの中や徹夜して書かれたものが多く、イギー・ポップの新たに芽生えた欲求のままを現していた。
イギー・ポップを知らない人でも、アルバムのタイトル・トラック「Lust For Life」は知っている人が多いだろう。ドラッグだらけの生活へオマージュであるキャッチーな曲は、子供向けの映画からクルーズ船のマーケティングにまで使用されているのだから。しかし、あらゆる使い方をされてきた中で、ダニー・ボイル監督のカルト的名作で滅茶苦茶なドラッグ映画『トレインスポッティング』で使用されたことをきっかけに、新たな世代のイギー・ポップ・ファンが生まれた。最初のリリースではチャート入りしなかったものの、1996年にシングルとして再度リリースされると、アルバムの1曲目だけだというのに、イギリスで26位を記録した。
『Lust For Life』は最初から最後まで飛ばし続け、「Sixteen」、「Some Weird Sin」、「Success」、そしてファンの一押し「The Passenger」など、ハイ・エネルギーの曲ばかりが収録されている。でもアルバム全部が熱狂的なロックン・ロールではなく、驚かされる紆余曲折がある。ブルージーで、まるでリザード・キング(*訳注:ジム・モリソンのアルター・エゴの名前)が乗り移ったかのようなイギー・ポップのフリースタイルの歌詞で、デヴィッド・ボウイとイギー・ポップが『The Idiot』でツアーをしていた日々を彷彿とさせた「Turn Blue」、そしてデヴィッド・ボウイの高音のハーモニーをフィーチャーし、のちにデヴィッド・ボウイ自身の1984年のアルバムのタイトル・トラックとなった「Tonight」なども収録されている。
『Lust For Life』を聴けば、すぐ後に続いたニュー・ウェイヴのシーンやさらに後のロック・ルネッサンスの中で、2人に影響を受けた無数の弟子の存在がすぐに思い浮かぶ。イギー・ポップは数え切れないほどのカヴァーをインスパイアし、ポスト・パンクのスージー&ザ・バンシーズ、トラブル・メーカーのGGアリン、スムースなクルーナー、トム・ジョーンズまでもが彼のカヴァーを歌った。そして40年経った現在でも、イギー・ポップは群れの先陣を切っているのだ。
Written by Laura Stavropoulos