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ファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャー新型コロナ感染で逝去。その半生を辿る
ニューヨークのパワーポップバンド、ファウンテンズ・オブ・ウェイン(Fountains of Wayne)のオリジナル・メンバーであり、ティンテッド・ウィンドウズやアイヴィーといったバンドでも活躍、作曲家・プロデューサーとしても活動し、2007年の映画『ラブソングができるまで』など多くの映画音楽を手掛け、ドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』ではエミー賞も受賞したソングライターのアダム・シュレシンガー(Adam Schlesinger)が、コロナウイルスの合併症のため52歳で死去した。彼は2020年3月に入院し、コロナウイルスの陽性反応が出ていた。
アダム・シュレシンガーは、バンドマンとしてポップ・ミュージック界でキャリアを築きながら、その創作の才能を広げ、映画、演劇、テレビのために曲を制作。米エンターテインメント分野において最も栄誉ある賞とされるエミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞の4つ全てにノミネーション経験があり、エミー賞とグラミー賞では実際に受賞を果たしている。
ベーシストであったアダム・シュレッシンガーは、クリス・コリングウッド(ギター、リード・ボーカル)と共に1995年にファウンテンズ・オブ・ウェインを結成。バンド名は、アダムの故郷モンクレアに近いニュージャージー州ウェインの芝生の置物屋から取ったものだった。
パワーポップとインディーロックを融合させたファウンテンズ・オブ・ウェインは、2003年のグラミー賞で「Best New Artist」と「Best Pop Performance」にノミネート。1996年から2011年の間に5枚のスタジオ・アルバムをリリースし、ファンはもちろん批評家たちのお気に入りのバンドだった。彼らの最大のヒットは2003年の「Stacy’s Mom」で、全米シングル・チャートで21位を記録している。
また、アダムは、ファウンテンズ・オブ・ウェイン以外にもタヒチ80のプロデューサーらと結成したアイヴィー(IVY)、テイラー・ハンソン、ジェイムス・イハ、バン・E・カルロスと結成したスーパーグループ、ティンテッド・ウィンドウズ(Tinted Windows)などのバンドでも活動していた。
キンクスのような60年代のバンドから大きな影響を受けていたアダムは、トム・ハンクスの1996年の映画『すべてをあなたに』の劇中バンド、ザ・ワンダーズのために楽曲を提供。その映画主題歌となった「That Thing You Do」はチャートに入り、アダムはアカデミー賞オリジナル楽曲賞やゴールデン・グローブ賞にもノミネートされた。
また、彼は、ジョン・ウォーターズの90年代のカルト映画を原作とした2008年のブロードウェイミュージカル『クライ・ベイビー』のために、デヴィッド・ジャバーバウムと一緒に曲を書き、その音楽的才能を舞台の世界にも持ち込んだ。同年、アダムとデヴィッドはトニー賞の最優秀オリジナル・スコア賞にノミネートされ、二人は2015年には演劇「An Act of God」で再び共演している。
アダムは作曲家として数々のテレビ番組にも貢献。その中で最も成功したのはレイチェル・ブルーム主演のミュージカルコメディドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』での仕事だった。アダムは2016年に『クレイジー・エックス・ガールフレンド』の劇中歌「Settle For Me」とオープニングテーマにて、エミー賞に2度ノミネートされている。その後、2017年のエミー賞でも『クレイジー・エックス・ガールフレンド』への提供楽曲で「Original Song」部門にノミネートされ、2018年では同じく劇中歌「Antidepressants Are So Not A Big Deal」にてエミー賞を受賞した。彼はエミー賞に合計10回ノミネートされているが、そのうち5回は彼がエグゼクティブ・ミュージック・プロデューサーを務めた『クレイジー・エックス・ガールフレンド』である。
ここ数ヶ月、アダム・シュレッシンガーは、今月オフブロードウェイでプレビューが開始される予定だったコメディアン、サラ・シルバーマンの回顧録「The Bedwetter」の舞台化の仕事をしているとこだった。さらにブロードウェイデビューを予定していたテレビシリーズ「ザ・ナニー」ミュージカル版では『クレイジー・エックス・ガールフレンド』の主演レイチェル・ブルームとともに作業中であった。
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