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ラズベリーズのエリック・カルメンが74歳で逝去。その功績を辿る
ラズベリーズ(The Raspberries)の創設メンバー、そしてソロ・アーティストとしてパワー・ポップの隆盛に革新的な影響力をもたらしたエリック・カルメン(Eric Carmen)が2024年3月、74歳で逝去した。
エリック妻、エイミー・カルメンは次のような声明とともにこの訃報を伝えている。
「あまりにも悲しく、つらいお知らせをお伝えしなければなりません。私たちの優しく、愛情深く、才能豊かなエリックが週末に眠るように息を引き取りました。何十年もの間、彼の音楽は多くの人々に感動を与え、永遠のレガシーとなったことは彼にとっても大きな喜びでした。私たちが大きな喪失を悼む間、家族のプライバシーを尊重してください。“Love Is All That Matters…Faithful and Forever” 愛がすべて…心から、永遠に(1977年のアルバム『Boats Against the Current』収録の「Love Is All That Matters」からの引用)」
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その生涯
オハイオ州クリーブランド出身のエリック・カルメンがラズベリーズを結成したのは1970年。このバンドはもともと、60年代後半に彼の地元クリーブランドで最も成功した2つのバンドから生まれた。
ドラマーのジム・ボンファンティとギター&ヴォーカルのデュオ、ウォーリー・ブライソンとディヴ・スモーリーは、ザ・クワイアとして活動し、彼らの爽やかなマージー・ビート・スタイルの「It’s Cold Outside」は全米でマイナー・ヒットとなり、後にライノ・エンタテインメントからリリースされた画期的なガレージ・ロック・ボックス・セット『Nuggets』に収録された。
ウォーリー・ブライソンはその後、新進気鋭のシンガー・ソングライターだったエリック・カルメンと共に当時のクリーブランドで2番目の注目株だったサイラス・エリーに参加し、カルメン/ブライソンによるオリジナル曲「Get The Message」はエピック・レコードからシングルとしてリリースされた。
ザ・クワイアとサイラス・エリーの解散後、エリック・カルメン、ウォーリー・ブライソン、ジム・ボンファンティの3人は、ベーシストのジョン・アレクシスを迎えて1970年にラズベリーズを結成。翌71年、ジョン・アレクシスが脱退すると、ベース担当がエリック・カルメンに替わり、ベトナム戦争から帰還したばかりのディヴ・スモーリーがリズムギターとして加入した。よ
うやくバンドとして定着し、完成度の高いスタジオ・デモ音源をレコーディングしていったラズベリーズは、メジャー・レーベル間での入札合戦を引き起こし、その結果キャピトル・レコードが彼らの契約を勝ち取った。
キャピトル・レコードば、すでに当時のバンドのデモに感銘を受けていたプロデューサーのジミー・アイナー(後にベイ・シティ・ローラーズを手掛けることになる)とラズベリーズを引き合わせ、ニューヨークのレコード・プラントとロンドンのアビイ・ロード・スタジオで行われたバンドの名を冠したデビュー作のレコーディング・セッションを監督するよう彼に依頼した。
1972年4月にリリースされたラズベリーズのデビュー作『Raspberries』ジャケット写真では、バンドメンバーがそのふわふわとボリュームのあるヘアスタイルを誇示しており、その中には同様に華麗な音楽が収められていた。
繊細な「Waiting」や切ない「Don’t Want To Say Goodbye」などの曲は、控えめな「Yesterday」風のストリングスによって補完され、エリック・カルメンの「I Can Remember」は、8分間という息を呑むような時間の中で、儚げでメランコリックなバラードから、ザ・フーを彷彿とさせる熱狂的な展開を繰り広げる。
解散、そしてソロへ
ラズベリーズは1973年の『Side 3』と1974年の『Starting Over』という過小評価された2作の傑作を残して1975年に解散し、同年、アリスタ・レコードからソロ・デビューを果たしたエリック・カルメンは、「Hungry Eyes」や 「All By Myself」をはじめとする数々のヒット曲をリリースし、ソロ・アーティストとして大きな成功を収めていった。
Written By Sam Armstrong
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