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クランベリーズ「Zombie」MVがアイルランド出身のバンドとしては初の快挙となる10億回再生を達成
クランベリーズ(The Cranberries)が1994年9月にリリースしたセカンド・アルバム『No Need To Argue』収録楽曲である「Zombie」のミュージック・ビデオが、アイルランド出身のバンドとしては初の快挙となるYouTube上で1o億回再生を突破した。これによってクランベリーズは、この画期的な記録を成し遂げた数少ない有名ミュージシャンたちの仲間入りを果たし、英メディアのLouder Soundによると、このビデオは史上5番目に最も多く視聴されたロック・ビデオとなっている。
「Zombie」は、1993年3月に2人の子供の命を奪い、56人の負傷者を出したウォリントンでのIRAによる爆弾テロ事件後に、ドロレス・オリオーダンが抗議のために書いたもので、ダブリンのウィンドミル・レーン・スタジオで録音され、クランベリーズの長年の共作者であるスティーヴン・ストリート(ザ・スミス、ブラー)がプロデュースを手掛けた。バンドは、「でもね、僕じゃない。僕の家族じゃなんだ」という歌詞が登場するこの曲を、ニュー・アルバムからのリード・シングルにすべきだと主張し、政治的メッセージが強くない曲の方がよいのではないか、という周囲の提案に断固として抵抗した。
監督を務めたサミュエル・ベイヤーにとって、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」に続く2作目の10億回再生作品となったこの「Zombie」のミュージック・ビデオには、事件発生時に子供たちが戦争ゲームをして遊んでいた北アイルランドの路上のオリジナル映像や、今では政治的、歴史的に広く知られている建物の壁画などが映し出されている。このビデオの中で、全身金箔に身を包んだドロレス・オリオーダンは、刺の冠をかぶった銀色の智天使に囲まれながら巨大な十字架の前に立ち、バンドの屋外での演奏シーンが断片的に展開されていく。
クランベリーズのドラマーであるファーガル・ロウラーは、今回の快挙についてこうコメントしている。
「 ‘Zombie’のビデオがYouTubeで10億回再生を達成したというニュースを聞いて、大変嬉しく思っています。ドロレスもきっと誇らしげな笑顔を浮かべていることでしょう。長年にわたり私たちを応援してくださっている世界中のファンの皆様に心から感謝しています。皆さんがご無事で、元気に過ごしていらっしゃることを祈りつつ、私たちの音楽に希望やポジティブなメッセージを見出してくれていることを願っています」
ギタリストのノエル・ホーガンもまたファンへの感謝をこう伝えている。
「長い道のりでしたが、 ‘Zombie’の再生回数が10億を達成したことはバンドにとって画期的な出来事です。20数年前の僕たちは、この曲が時代の試練に耐え、こうしていまだに多くの人々の心に響く作品になるとは思ってもみませんでした。僕たちにできるのは、ファンの皆さんに感謝の気持ちを伝えることだけです」
最後に、ベーシストのマイク・ホーガンはこう締め括った。
「このような素晴らしいビデオを作り、人々に衝撃を与えた当時のことを今でも覚えています。そして今も尚。世界中のクランベリーズのファンの皆様、本当にありがとうございました」
クランベリーズが商業的に最も大きな成功を収めたシングル「Zombie」は、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイスランドのシングル・チャートの首位に輝り、アメリカでは全米モダン・ロック・トラックス・チャートで1位を獲得。1995年にはMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードで“最優秀楽曲賞”を受賞し、1994年にはオーストラリア国立ラジオ局Triple Jが主催する毎年恒例のリスナー・アンケート“Triple J Hottest 100”チャートで1位に選出された。ウォリントン爆弾テロ事件の犠牲者となった12歳のティム・パリーの父親であるコリン・パリーは、2018年1月16日、ドロレス・オリオーダンが亡くなった翌日に、彼女がこの曲のために書いた「荘厳で、とてもリアルな歌詞」について感謝の意を表している。
1993年3月にリリースされたクランベリーズのデビュー・アルバム『Everybody Else Is Doing It, So Why Can’t We? 』は全英アルバム・チャートで1位を獲得。翌1994年10月にリリースされたセカンド・アルバム『No Need To Argue』は、マルチ・プラチナ・ディスクに認定された後、98週に渡って全英チャートに登場し、バンドを世界的なスーパースターへと押し上げた。
2019年4月、クランベリーズは、ドロレス・オリオーダンが2018年に悲劇的な死を迎える前にレコーディングしていたヴォーカルを収録したバンド8作目にして、最後のアルバム『In The End』をリリースした。ギタリストのノエル・ホーガンは今作を、ドロレスの追悼アルバムとしている。アルバム『In The End』はイギリス、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリアのアルバム・チャート他、全米インディペンデント・アルバム・チャートでもTOP10入りを果たし、2020年の第62回グラミー賞では“最優秀ロック・アルバム”にノミネートされた。
Written By Tim Peacock