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ラテン・ジャズの先駆的パーカッショニスト、キャンディド・カメロが99歳で逝去。その功績を辿る
アメリカでラテン・ジャズの発展に貢献したキューバ出身の先駆的パーカッショニスト、キャンディド・カメロ(Cándido Camero)が99歳で逝去した。 ニューヨークのラジオ局“WGBO”によると、彼は11月7日にニューヨークの自宅で安らかに息を引き取ったという。
コンガとボンゴの名手だったキャンディド・カメロは、その長いキャリアの中で名だたるジャズ界の大物たちとコラボレーションを果たし、彼の演奏は、ソニー・ロリンズ、ケニー・バレル、アート・ブレイキー、デューク・エリントンなどといった偉大なミュージシャンたちの数え切れないほどの録音作品で聴くことができる他、ディジー・ガレスピー、トニー・ベネット、ティト・プエンテらとも共演。後年は、多くのディスコ、ポップス、R&Bの作品でもその才能を発揮していた。
チューニングを施した複数のコンガを一度に演奏し独特のメロディーを創り出す、革新的な音楽テクニックで知られていたキャンディド・カメロは、アフロ・キューバン音楽によく使われるギターの1種、トレスの熟練奏者でもあった。
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キャンディド・カメロは、アメリカに移住して定期的にライヴ活動を行った最初のキューバ人アーティストの1人で、1921年にハバナの郊外で生まれた彼が40年代半ばにニューヨークへやって来た時には、すでに母国キューバで音楽家としての地位を確立していた。
彼の最初のアメリカでのレコーディングは、ラテン・ジャズのパイオニアであるマチートと彼のバンドであるアフロ・キューバン・オーケストラとの共演で、程なくしてライヴやスタジオで引っ張りだことなった彼は、大物アーティストたちと共演を果たしながら、ラテン・ジャズの先駆けとしてそのジャンルの人気の高さを証明していく。彼は、“エド・サリヴァン・ショー”や“ジャッキー・グリーソン・ショー”といった当時の人気TV番組にも長年レギュラー出演していた。
彼はまた、アル・コーン(Al Cohn)をフィーチャーした1956年の『Candido』、1969年の『Thousand Finger Man』、1970年の『Beautiful』、そしてグラミー賞で最優秀トラディショナル・トロピカル・ラテン・アルバム賞にノミネートされた2004年の『Inolvidable』など、12作以上のリーダー作品を残している。
キャンディド・カメロの計り知れない音楽的貢献は近年ますます評価されており、2008年には“国立芸術基金(NEA)ジャズ・マスターズ”を、2009年にはラテン・グラミー賞の“生涯功労賞”を受賞。2006年にはドキュメンタリー映画『Candido: Hands of Fire』の題材にもなった。
この訃報を受けて、DJのマーク・ファリナ、バンドリーダーのエディ・パルミエリなど、様々なアーティストや音楽業界のリーダーたちが彼に追悼を捧げている。ラジオ番組のホストやDJ、レコード・レーベルの主宰者としても知られるジャイルス・ピーター
「彼のコンガは、私が1番好きな楽曲の中によく登場します。チャノ・ポソやマチートらと共に、彼はジャズにキューバ音楽の影響をもたらしました。ビリー・テイラーと共演した“Mambo Inn”やアート・ブレイキーとの“Cubano Chant”など、私がラジオやクラブ、パブで仕事をしていた何年もの間、彼の演奏は本当によく聴いていました」
Written By Sophie Smith
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