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ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』ドルビーアトモスで配信開始。ジャイルズが語る制作背景とその意義
ビーチ・ボーイズ（The Beach Boys）が1966年に発売した名盤『Pet Sounds』が、グラミー賞受賞プロデューサーのジャイルズ・マーティンによって、没入感のあるドルビーアトモス（空間オーディオ）で2023年6月2日に配信された。このミックスは、バンドがジャイルズに直接依頼したもので、現在Apple Music、Amazon Music Unlimitedでストリーミング配信されている。
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ドルビーアトモス・ミックスの制作背景
ビーチ・ボーイズからオリジナルのアナログ・テープへのアクセスを与えられたジャイルズ・マーティンは、ブライアン・ウィルソンによる1966年のオリジナル・モノ・ミックスとマーク・リネットの1997年のステレオ・ミックスを参照して、この歴史的アルバムの革命的な新しいミックスを制作した。
先週、ドルビーが所有するロンドンのスタジオで行われた試聴会でのQ&Aセッションで、ジャイルズはこの新ミックスの制作過程についてこう語っている。
「オリジナルのモノラル・ミックスを聴きながら、彼らが何をしようとしていたのかを解き明かそうとしたんです。彼らになることはできませんが、理解しようとしました。テクノロジーではなく、歌、そしてその歌が何かを感じさせてくれるかどうかが重要なんです」
ジャイルズ・マーティンは、画期的なドルビーアトモス・ミックス技術の最前線に立つ人物であり、昨年の誰もが賞賛したザ・ビートルズの『Revolver』を含む、ザ・ビートルズの一連のスペシャル・エディションのリリースを監督している人物でもある。
今回の『Pet Sounds』のドルビーアトモス・ミックスでは、音楽の中心にリスナーを置き、そのサウンドの輝きに今までなかった奥行きを与えるミックスによって、試聴会に参加したメディア関係者は一様に、誰もが認める名作に新たな次元が与えられたとして感嘆の声を上げていた。
ジャイルズは、この新しいミックスを制作する際に与えられた責任について、試聴会に訪れたメディアに対して冗談を交えて次のように話していた。
「“あなたならできる、きっと素晴らしいものになる”と思っていても、“お前にはできるわけがない”という小さな声も聞こえてくるんです。ビートルズでもストーンズでもビーチ・ボーイズでも、私が心がけているのは、“最も愛されるリスニング体験”であるということを…それをレコードの中に込めるんです。そうすると少し糸口が見えてくるんです」
「また、不思議なんですが、テクノロジーを加えるのではなく、テクノロジーを取り去るんです。モノラル音源は素晴らしいものですが、モノラルを聴かない世代もいるわけで、それをどう尊重するのか？ 空間オーディオの素晴らしいところは…（空間の）真ん中に根を張って、聴く人の周りに声を届けることができることですね」
天才の働き
ドルビーアトモス・ミックスのプレス発表で、ジャイルズ・マーティンは『Pet Sounds』を「ポピュラー音楽のあり方を変えた象徴的なアルバム」と表現している。
このアルバムは、ザ・ビートルズに影響を与えて『Sgt. Pepper’s』を作らせ、その『Sgt. Pepper’s』がピンク・フロイドに影響を与えて『The Dark Side of the Moon』を作らせた。ブライアン・ウィルソンという天才が、アイデアとテクスチャーに無限の情熱を注いだという点で、このレコードは魅力的な作品なのだ。
「『Pet Sounds』をドルビーアトモスに移行させることで、このアルバムの世界に完全に没入できるようになりました。このサウンドに包まれることで、レコードに収録されていたのに今まで聴いたことのない楽器の音を聴くことができるようになったんです。私は古いレコードを手に入れ、『不思議の国のアリス』のようにゆっくりと穴から落ちていく様子を想像するのがとても好きなんです。これこそ空間オーディオのあるべき姿であり、聴く皆さんは文字通り大好きなレコードに囲まれることになる。それには『Pet Sounds』が最適なのです」
「このアルバムは、色彩と質感と想像力に溢れた作品で、この想像力は空間的な領域でより一層実現されます。ビーチ・ボーイズからこのアルバムのドルビーアトモスの制作を依頼されたことは、私にとって大きな名誉であり、史上最も象徴的なアルバムに携わる機会を得たことに驚きと興奮を覚えました」
Written By Paul Sexton
ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』（ドルビーアトモス・ミックス）
2023年6月2日配信
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