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ザ・バンド『Music from Big Pink』50周年記念エディション発売決定

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ザ・バンド『Music from Big Pink』の発売50周年を記念して、8月31日に新たにリミックスされ、追加曲を収録した50周年記念盤が発売されることが発表となった。スーパー・デラックスのボックス・セット(CD/ブルーレイ/2枚組LP/7インチ・ヴィニール/ハードカバーの本も付属)と、1枚組CD、デジタル版、180gの2枚組黒盤LP、そしてUNIVERSAL MUSIC STORE限定の180gの2枚組ピンク盤LPがそれぞれ発売される。記念盤はすべて、ボブ・クリアマウンテンがオリジナルの4トラックのアナログ・マスターから新たにプロデュースしたもので、音が画期的に明瞭になっただけでなく、以前は聞くことができなかったメンバーのスタジオでのセッション中の会話も聞くことができる。この50周年記念盤のCDと、デジタル版、そしてボックス・セットには、“ビッグ・ピンク”のセッションからのアウトテイクと別ヴァージョンが合わせて5曲分、そして未発表の「I Shall be Released」のアカペラ・ヴァージョンが収録されている。

UNIVERSAL MUSIC STORE限定カラー・ヴァイナル

またボックス・セットのみの特典として、クリアマウンテンのプロデュースで、アルバムとボーナス・トラックをすべて5.1サラウンドでミックスしたヴァージョンをハイレゾ音源(96kHz/24bit)でブルーレイに収録。新しいオーディオ・ミックスは、ゲイトウェイ・マスタリングのボブ・ラドウィックがマスタリングを担当した。ボックス・セットには、ザ・バンドが1968年に発売した7インチのヴィニール・シングル「The Weight / I Shall be Released」の新たなステレオ・ミックス盤と、著名な音楽ジャーナリストのデヴィッド・フリックの書き下ろしのエッセイとエリオット・ランディの名写真が掲載された小冊子も付属している。

アルバムの新たなヴィニール盤は、バーニー・グランドマン・マスタリングでクリス・ベルマンが新たなステレオ・ミックスを45回転でヴィニールにカットし、1枚組だったLPを2枚組に拡張した。黒およびピンク盤のLPは、GZヴィニール/プレシジョンでプレスされた。

新たにステレオ・ミックスされた「The Weight」は、デジタル・アルバムを予約すれば本日より先行ストリーミング&ダウンロードが可能となっている。

The Band "Music from Big Pink (50th Anniversary Edition)" Unboxing

彼らはザ・バンドと名乗る前に、様々なところで共に活動してきた。当時は10代ながらマルチ・プレイヤーとして活躍していたリヴォン・ヘルム(ドラムス、ヴォーカル、ヴァイオリン)、ロビー・ロバートソン(ギター、ピアノ、ヴォーカル)、リック・ダンコ(ベース、ヴォーカル、フィドル)、リチャード・マニュエル(キーボード、ヴォーカル、ドラムス)、そしてガース・ハドソン(キーボード、ホーン)は、ロニー・ホーキンスのバック・バンド、ザ・ホークスとして共に演奏し、レコーディングして、1960年から1962年の間に活動。そして1963年末に、彼らは独立し、リヴォン&ザ・ホークスとして、この名前で1964年から1965年の間、活動していた。

1965年にロバートソンはニューヨークでボブ・ディランと出会う。ちょうどディランは自身のツアー・バンドにエレクトリック・ギタリストを探していた。そして元ホークスのメンバーは、彼がアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパとツアーして、エレクトリック・セットで観客を増やしつつあった1965年10月から1966年にかけてディランのバックを務めることになった。リヴォンは、ディランの初めてのエレクトリックのライヴ・パフォーマンスに対する“純粋なフォーク心酔者”の容赦ないヤジに嫌気がさして、1965年11月にグループを離れた。

1966年のツアーが終了すると、ロバートソン、ダンコ、マニュエル、ハドソンは、ニューヨークのウェスト・ソージェティーズの“ビッグ・ピンク”に落ち着き、翌年のために練習を行なった。近所のウッドストックに住むディランもしばしばここを訪れて共に過ごしていた。ヘルムも1967年10月には彼らに再合流して、ザ・バンドは誕生した。彼らは新たな音楽を書き、最初のアルバムのレコーディングをおこなった。ロビー・ロバートソンは、当時のことをこう語る。

「ハーモニーが花開いてきていた。すべてが育っていった」

“ビッグ・ピンク”は、ザ・バンドにとって、そしてディランにとっては隠れ家であり、クリエイティヴ作業を行なう場所だった。ディランがレコーディングしたセッションは、『The Basement Tapes』として、すぐにブートレッグで出回った。

『Music from Big Pink』のレコーディング・セッションのためにザ・バンドのメンバーは、ニューヨークの A&Rレコーディングや、ロサンゼルスの有名なキャピトル・スタジオなどを訪れた。また、LAのゴールド・スター・スタジオでもいくつか追加のセッション作業を行なった。デヴィッド・フリックはボックス・セットの小冊子掲載のエッセイで当時の状況を以下のように書いている。

「このアルバムは、ザ・バンドがあの家で、何かの式典のように車座になって曲を書き、それをそのまま演奏したような形でレコーディングされた……」

ロバートソンはこう説明する。

「僕たちは一緒に集まって、互いに切磋琢磨して練習したりしていた。それらがすべて音楽ににじみ出ていると思う。これは、僕たちがロニー・ホーキンスとやっていたときや、リヴォン&ザ・ホークスとしてやったものとも、ディランとのツアーでプレイしていたものとも違っていた。この音楽は、多分、今まで誰も手を出せなかった次元にあるものだった」

1993年に出版された『ザ・バンド 軌跡』で、リヴォン・ヘルムは以下のように語っている。

「『Music from Big Pink』は、皆がやっている音とはちがうものにしたいと思っていた。これは僕たちの音楽で、ラジオや、今の風潮とはかけ離れた場所で磨き上げたものだったから」

長引く戦争と不安定な社会政治情勢の真っ只中、また1967~68年に発売されたビートルズの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』と『The Beatles』、ジミ・ヘンドリックスの『Axis: Bold As Love』、そしてザ・ローリング・ストーンズの『Beggars Banquet』などの文化の転換期となったアルバムに挟まれる形でリリースされた『Music from Big Pink』は、評論家たちの度肝を抜いた。

ローリング・ストーン紙のジャーナリストのアルフレッド・G・アロノウィッツは、『Music from Big Pink』は、「新たなカテゴリーのドアを開くアルバムだ」と褒め称えた。そしてサンフランシスコ・クロニクル紙で、ラルフ・J・グリーソンはこう評している。

「独特な声の彼らの音は、今のポピュラー音楽では聴いたことのないサウンドだ。田舎っぽい音だが、カントリー&ウェスタン局で聴くような曲ではないし、かといって洗練されていないわけでもない。ある意味、聖歌のようだ。これらの曲はアメリカの名曲になっていくだろう。彼らが2枚目のアルバムを出さなくても、ザ・バンドが2度と人前でライヴを行なわなくても関係ない」

アル・クーパーはこのアルバムをローリング・ストーン誌でこう評価している。

「『Music from Big Pink』は素晴らしい成果を上げた。世の中には一生努力しても、このレベルに達することができない人たちが数多くいる」

『Music from Big Pink』は発売時、ビルボードの総合アルバムチャートで30位と、まあまあの成功を収めたが、ポピュラー音楽の歴史の中では最も重要なアルバムのひとつとして認識されている。グリール・マーカスは、1975年に出版した『ミステリー・トレイン ロック音楽にみるアメリカ像』のなかで「『ビッグ・ピンク』の豊かさは、ザ・バンドが一切既存の曲を真似ることなく、あらゆる組み合わせでアメリカのポピュラー音楽を包括していることにある。ザ・バンドは自分たちの影響の源を、我々が選挙の時にジョージ・ワシントンのことを思い出す程度にしか表さない、でも繋がりはある」と語っている。

ザ・バンドのメンバーのリチャード・マニュエル、リック・ダンコ、リヴォン・ヘルムはすでに鬼籍に入っているが、ザ・バンドの遺産は、レコードとして、そしてボブ・ディランのみならず、エリック・クラプトンジョージ・ハリソンマイルス・デイヴィスなどの音楽業界の大物を唸らせ、ポピュラー音楽業界に確かな影響を与えた存在として、今も生き続けている。アメリカーナという言葉がまだ存在する前から、いかにもアメリカらしい音楽を作っていたリック、リヴォン、ガース、リチャード、そしてロビーは、唯一、この“ザ・バンド”という名前を名乗るのにふさわしい集団だった。


ザ・バンド『Music from Big Pink (50th Anniversary Edition)』
2018年8月31日発売

ボックス1CDLPカラーLP


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