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ソフィア・カーソンとは? コロンビア移民の子でディズニー・チャンネル出身の遅咲きのアーティスト
ディズニー・チャンネル放映の『ディセンダント』シリーズのイヴィ役でブレイクしてから、映画にドラマに音楽に、フットワークの軽い活動を続けているソフィア・カーソン(Sofia Carson)。ニュー・シングル「Fool’s Gold」のリリースを機にインタヴューに応じてくれた彼女の言葉を交えながら、ミュージシャンとして新しいスタートを切った、このコロンビア系アメリカ人のマルチ・タレントの足跡を改めて辿ってみた。
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歌って踊れる演技する新星アーティストの生い立ち
英語には「トリプル・スレット(=Triple Threat / 三重の脅威)」なる物々しい言葉がある。それぞれが活動する分野において、3つの側面で抜きんでた才覚を備えた人物――つまりショウビズの世界では、シング、アクト、ダンスの三拍子揃ったアーティストを指す言葉だ。例えばジェニファー・ロペスやジャスティン・ティンバーレイク、最近ではレディー・ガガやゼンデイヤなどが該当するが、先頃発表したニュー・シングル「Fool’s Gold」で注目を集めるソフィア・カーソンも、強力なトリプル・スレットとして名前を浸透させつつある。
ちょうど28年前にコロンビアからの移民である両親のもと、フロリダ州フォート・ローダデールに生まれたソフィアは、3歳の時にバレエを習い始め、間もなくヴォーカル・レッスンもスタート。10歳にして初めて曲を書いたという。「以来私はソングライティングに夢中になって、ひとつ曲を書き上げるたびに、自分の心の小さな欠片を世界と分かち合えることの面白さに惚れ込んでしまいました」と彼女は振り返る。「私にとってソングライティングはものすごくパーソナルな行為で、多分そこにはセラピー的な側面がある。音楽を聴くことはずっとセラピーであり続けてきたから」。
そして10代を通じてダンス・カンパニーに所属し、各地でコンテストに参加していたソフィアは、18歳の時に西海岸に移り住んでカリフォルニア州立大学に進学。コミュニケーションとフランス語を勉強しながらオーディションに通う日々を送り、19歳の時にはソングライターとして音楽出版会社と契約していたそうだが、パフォーマーとしての初仕事は女優業だった。
『ディセンダント』での抜擢とソロ活動
まずはディズニー・チャンネルのドラマ『オースティン&アリー』に端役で出演し、次いで同チャンネルのテレビ映画『ディセンダント』シリーズで、悪の女王の娘イヴィ役に抜擢。2015年放映の第1弾に続いて(サントラ盤は全米ナンバーワンを獲得)、2017年に第2弾、2019年に第3弾が放映され、3つの才能をショウケースできるこの理想的な役どころで、彼女は視聴者の熱い支持を勝ち取るのである。
こうしていよいよブレイクに至ったソフィアは、2016年春に早速ソロ・アーティストとしても、レゲトン調のデビュー・シングル「Love Is the Name」をリリース。リミックス・ヴァージョンではコロンビア出身のスーパースター=J.バルヴィンをゲストに迎えて自身のルーツにオマージュに捧げ、以後EDMの流れを汲んだエレクトロニックなダンス・ポップのシングルを、ダンスの腕前を披露するMVを添えて、送り出してきた。
アラン・ウォーカーとの「Back to Beautiful」、R3HABとの「Rumors」、ギャランティスとの「San Francisco」……と、ヨーロッパの人気DJ/ダンス・プロデューサーとのコラボ曲も多く、女優業を続けながら昨年までに10曲余りを発表。そんな中で届いた、今年最初のシングルにあたる「Fool’s Gold」は、引き続きダンサブルな曲ではあるものの「新しい時代の到来を意味する曲」とソフィアが呼んでいるだけに、従来の路線とは音楽的にもヴィジュアル面においても趣を異にしている。
最新曲「Fool’s Gold」
では「Fool’s Gold」はどんな曲なのか? まずスタッフからして強力で、プロデューサーにノルウェイの大ベテラン・ヒットメイカーであるスターゲイト(過去にはリアーナ、ビヨンセを担当)を起用し、作曲には英国人シンガー・ソングライターのRAYEが参加。昨今のトレンドであるディスコ・テイストの、洒脱でファンキーなサウンドを導入しており、「パンデミックの最中に、ほんの数分間だけでも聴き手をどこか別の場所に運んで、気分を高揚させて、ハッピーにさせてくれる曲なんじゃないかと感じた」という本人の説明にも納得が行く。また、開口一番“どうしたいのか決めて!”と問いただす、今までになく主張の強い歌詞も新鮮だ。
ちなみにタイトルの「Fool’s Gold」とは、黄鉄鋼のこと。一見金のような鉱物であるために“見掛け倒しのもの”を意味するのだが、この曲の主人公はひとりの男性に惹かれながらも、果たして自分の心を委ねる価値があるのかどうか、逡巡している。過去に「Love Is the Name」でもコラボした、売れっ子監督のハンナ・ラックス・デイヴィスによるMVでは、そんな悩ましいシチュエイションが、火をモチーフにして鮮烈に描き出される。
「MVは、心の中で炎を燃やしている、ひとりの女性のストーリーを伝えています。彼女は自分が何を欲しているのか知っている。彼に惹かれているんです。でもこの恋はあまりにも出来過ぎているように思えて、まさに“play with fire(火遊び=危険なことに手を出す)”と表現できる状況なのかもしれない――と示唆しています。ハンナは途方もない才能を備えた映像作家で、いつも私のヴィジョンを理解し、最高に美しい形で表現してくれる。今回のMVも、単に美しくて強烈なインパクトがあるだけでなく、曲に魂を吹き込んでくれた気がします」
この先も新曲をどんどん発表して、「Fool’s Gold」のラヴストーリーの続きを教えてくれるというソフィアだが、次に控える主演映画『Purple Hearts』もまた、彼女にとって大きな一歩になるに違いない。なぜって同作での役どころはシンガー・ソングライター。劇中で歌う曲を自ら綴るだけでなく、初めて映画のプロデュースにも挑戦するのだという。
「まさにこれから曲作りに着手しようとしています。今回はキャラクターの視点に立つとは言え、多分自分のために曲を書くのとそんなに変わらないんじゃないかと思う。女優として私は色んな役を演じ、毎回自分とは違う人物のストーリーを伝えてきたけど、最終的にはストーリーテリングであることに変わりはないし、キャラクターと何かしら共通項を見出すこともあるでしょうから」
彼女が持つさらに3つの顔
最後に、ソフィアが持つさらに3つの顔についても触れておこう。というのも彼女は、目下3つの団体・企業のグローバル・アンバサダーを務めている。そのひとつはレブロン。ファッション・アイコンとしても若い女性たちへの影響力を持っているからこその起用だが、それでいてメイクアップに関するこだわりを訊ねると、「美とは人間の内面から表れるもの」と躊躇なく語る。「イヴィが外見にとらわれない賢明な女性へと成長する過程を見せて、私たちの本質は心の中にあるのだと伝えてきました」と彼女が自負する、『ディセンダント』のメッセージに重なる信条だ。
他方でソフィアは、ユニセフ及びラテン・グラミー賞が運営する文化財団のグローバル・アンバサダーも務めている。後者に関しては、スペイン語音楽の教育支援などを国内外で行なう同財団の活動を広く知らしめ、支援を訴えており、コロンビアにあるルーツに誇りを抱く彼女には打ってつけの役割だろう。
「私自身はアメリカ合衆国で生まれ育ったんだけど、ラテン・アメリカ出身の両親に育てられて、ふたつの言語、ふたつのカルチャーに接して生きてきたんです。エルヴィス・プレスリーやザ・ビートルズだけじゃなくて、スペイン語の音楽も同じだけ聴いてきたし、遠くない将来、スペイン語で歌うことも考えていますよ」
このように、『ディセンダント』を足掛かりにして表現者としてマルチに活躍し、自身の影響力をポジティヴに活かした啓蒙活動に勤しむソフィア。地に足が付いた佇まいはやはり、大学で学び、大人になってから成功を掴んだ人ならでは。
マイリー・サイラス然り、前述したゼンデイヤ然り、10代でディズニー・チャンネルの番組に出演してブレイクするスターが多い中、どちらかというと遅咲きだった彼女はファースト・アルバムもまだ発表に至っていないが、マイペースにやりたいことを見極めていくというスタンスは、今後もきっと変わらないのだろう。
「『ディセンダント』の最新シリーズが終わってから、私は様々なプロジェクトに取り組んできました。でも、たとえ番組が放映されていなくてもイヴィは永遠に私の一部分であり続けるだろうし、世界中の大勢の女の子にとっても、大切な存在であり続けるはず。そして、まさにそうやって『ディセンダント』と一緒に成長してきた女の子たちが、今私の音楽を聴いてくれています。イヴィを演じることで築いた土台があって、そこから進化していくことができるというのは、私にとってすごくエキサイティングなことなんです」
Written By 新谷 洋子
ソフィア・カーソン「Fool’s Gold」
2021年3月26日配信
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