Columns
J.バルヴィンが世界を席巻している7つの理由:ラテンブームの中心人物を解剖する
コロンビア出身のアーティスト、J.バルヴィン(J. Balvin)。1985年生まれ、現在35歳のこの男性シンガーソングライターは、世界中でのラテンポップの大きなムーブメントとともにそのキャリアを積み重ねている。一例としてその実績を上げてみると、
・全世界総ストリーミング数:400億回
・YouTube総再生回数:150億回
・YouTube登録者数:2600万人
・YouTubeで最も再生されるアーティストTOP3
・Spotify再生回数:80億回
・2019年全世界で最もシャザムされたアーティスト1位
というような南米のアーティストとしては異例の成功となっている。ではなぜ彼がここまで成功できたのか? そして彼の魅力とは? ライターの村上ひさしさんに解説頂きました。
<関連記事>
・“マカレナ”以来の現象化:ラテン・ポップのブームと過去のヒット曲を振り返る
・2010年代世界の音楽シーン総まとめ:大きな変革の10年を9つの要素で振り返る
英米のみならず全世界を股にかけて快進撃を続けるJ.バルヴィン。南米コロンビア出身のレゲトン・シンガーが、なぜこれほど広く支持を集めているのか、他のアーティストとどこが違うのかを検証しつつ、その魅力を解剖。村上隆がアートワークを手がけた最新アルバム『Colores』(読み:コロレス。スペイン語で“色”を意味する)のテーマはズバリ“色”。7色の虹ならぬ<J.バルヴィンが世界を席巻している7つの理由>に迫ります。
1. YouTube再生回数27億越えの「Mi Gente(ミ・ヘンテ)」でブーム爆裂
ラテンブームと言われても、ここ日本では今ひとつピンと来ない人も多いのでは?というのも洋楽を聴いているとラテンアーティストたちの楽曲が普通に混じっていたり、欧米の人気アーティストたちもどんどんラテン系サウンドに進出。あえてラテンとは区別しなくても、自然に聴き親しんでいる人が大半ではないかと思われる。
ジャスティン・ビーバーからビヨンセ、リアーナ、ブラック・アイド・ピーズまで、ポップソングを聴けば、知らず知らずのうちにラテン音楽に親しんでいるのが実情だ。そのブームのきっかけになった一曲が、J.バルヴィンの「Mi Gente」(with ウィリー・ウィリアムス)であり、2020年6月末の時点でYouTubeの再生回数は、なんと27億超え! 驚愕の数字を叩き出している。
さらに「Mi Gente」が世界的ブームとなる中、リミックスにはビヨンセ も参戦。そのミュージック・ビデオにはディプロやデヴィッド・ゲッタ、マーティン・ギャリックス、ティエストなどのEDM系DJ /プロデューサーや、クリスティアーノ・ロナウド、ネイマールといったサッカー選手らも登場。「Mi Gente」を歌って踊るセレブたちの姿が、大いに話題を振りまきました。
2. 共演者の顔ぶれがとにかくスゴイ!
「Mi Gente」の大ヒットで押しも押されぬスーパースターとなったJ. バルヴィン。とはいえ、ポッと出の新人などではなく、それまでのキャリアもそうとう立派、輝かしい経歴の持ち主だ。世界進出を目標に掲げてきた彼は、早い時期からジャンルを問わず様々なアーティストと頻繁にコラボを重ねてきた。アリアナ・グランデからジャスティン・ビーバー、マルーン5、メジャー・レイザーまで。リミックスならお任せシンガーとして基盤を確立したうえで、今や大物アーティストたちと対等の共演を次から次へと繰り広げている。
DJスネイク&タイガとは「Loco Contigo」でコラボ。
「I Can’t Get Enough」ではセレーナ・ゴメスやベニー・ブランコ、タイニーとも共演。
2018年のコーチェラではビヨンセのステージに飛び入り共演。
2020年のジェニファー・ロペス&シャキーラのスーパーボウル・ハーフタイムショーにもゲストで登場。
3. 絶対にスペイン語!
世界的人気を獲得しても、絶対に英語ではなく、常にスペイン語で歌唱。そこへのこだわりは、本人曰く
「スペイン語で育ったからには、スペイン語を大切にしたいんだ。“Mi Gente”にしてもスペイン語で歌って世界中でナンバー1を獲得した。カーディ・B やバッド・バニーと組んだ“I Like It”でもスペイン語だけで通したよ。スペイン語で歌って世界に認められたいんだ」
とのこと。そのカーディ・B&バッド・バニーとのコラボ曲「I Like It」では全米ナンバー1を獲得。グラミー賞にもノミネートされている。
4. YouTubeが大人気
リスナーの多くが音楽と動画を同時に楽しむ今日この頃。なかでも南アメリカではYouTube人気が絶大というのもあって、J.バルヴィンもユニークなミュージック・ビデオを次々と発表。ヴィジュアルを含めてスター性を発揮している。
YouTubeの再生回数は前述の「Mi Gente」が27億回、「I Like It」が11億回、さらにニッキー・ジャムとのコラボ曲「X」が18億回、アヌエルAA、ダディー・ヤンキー、カロル・G、オズナとのコラボ曲「China(読み:チナ)」が13億回などなど、どれも桁外れ!
ニューアルバム『Colores』からの「Rojo(ロホ)」や「Amarillo(アマリジョ)」も1億回を早くも突破。
5. ライヴもエンタメ満載
2018年8月、サマーソニックの初来日公演では、アッパーに楽しませるところはとことん派手に楽しませ、しっかり聴かせるところは、じっくり響かせる、そのメリハリの効いた展開で圧倒。バンドによる生演奏、カラフルなヴィジュアル、オーディエンスの盛り上げ方など、どれを取っても最上級のエンターテインメントを披露した。世界が認めるレゲトンスターの実力と真価をまざまざと見せつけた。
前アルバム『Vibras』リリース直後の欧米ツアーでは恐竜がモチーフに。
2019年の南北アメリカツアー“Arcoiris(アルコイーリス=虹)”では、その名の通り虹色のカラフル&ポップなステージが評判に。ニューヨークのマジソンスクエアガーデンも完売。ツアーの規模もいっそう巨大化した。
6. とことんファッショニスタ!
ほとんど毎週のように変わる髪型や髪の色、ド派手なサングラスや遊び心満載なファッション。究極のファッショニスタの彼にとって、ファッションは音楽と同じくくらい大切。「ファッションとは自己表現なんだよ。つまり自身の内面を外に向かって表現しているわけで、だから僕はファッションを愛してるんだ。誰もが独自の好みやスタイルを持っている。音楽とまったく同じだよ」と語っている。
GUESSとのコラボ第2弾となるカプセルコレクション『GUESS X J Balvin Colores』もこの6月からスタート。
母国コロンビアでは自身のファッションラインもローンチ。
7. ポップカルチャーにゾッコン❤️
ポップアートへの造詣が深い彼は、日本のアニメやポップカルチャーの大ファン。可愛いキャラを大挙して登場させた前ツアー“アルコイーリス”に続いて、最新アルバム『Colores』でも我らが村上隆とがっつりコラボ。アルバムのジャケットを含むアートワークやヴィジュアルを全面的に村上隆が担当している。
日本盤CD『Colores』にはミニポスターやステッカーも封入。
J. バルヴィンと村上隆によるコラボレーションアイテムの販売もスタート。
最新シングル「Asul(アスル)」や「Negro(ネグロ)」のミュージック・ビデオにはアニメ版も登場。自身もアニメと化して楽しませてくれる。
ラテンミュージック界の貴公子とも呼ばれるJ. バルヴィン。カッコいいのに、親しみやすいそのキャラやお人柄もその魅力。レゲトンのリズムは一度ハマると病みつきになること請け合い。世界を踊らせるJ. バルヴィンのサウンドとヴィジュアルで虹色に染まってはどうでしょう?
Written by 村上ひさし
J. バルヴィン『Colores』
2020年3月20日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
- “マカレナ”以来の現象化:ラテン・ポップのブームと過去のヒット曲を振り返る
- 2010年代世界の音楽シーン総まとめ:大きな変革の10年を9つの要素で振り返る
- ケイティ・ペリーの楽曲ベスト20:21世紀のポップを形成した名曲たち(動画付)
- コラム:今やレディー・ガガのいない世界なんて考えられない
- R&Bの反逆児ジェシー・レイエズが世界的スターダムの入口に立つまでの8つのステップ
- 2019年最大の新人ビリー・アイリッシュが大成功をおさめた現代的な8つの理由
- アリアナ・グランデの本心『thank u, next』とラッパー的アプローチ by 渡辺志保
- ヤングブラッド、ルックスも音楽性もジェンダーも全ての壁を破壊し続ける異色アーティスト
- セレーナ・ゴメス、難病を乗り越え大活躍を続けるアメリカの恋人
- 再結成したジョナス・ブラザーズが全米を席巻している7つの理由
- 欧米から見たK-POP:初めて耳にする最高のポップ・ジャンル
- 2020年度から全米アルバムチャート算出方法に新たにYouTubeの再生回数が追加