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映画『BETTER MAN/ベター・マン』とロビー・ウィリアムス:映画のテーマと本人とのインタビュー

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Photo: Ron Howard/Redferns

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第95回。

今回は、今年3月28日に日本で劇場公開される映画『BETTER MAN/ベター・マン』とこの映画で描かれるロビー・ウィリアムス(Robbie Williamas)について。

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映画『BETTER MAN/ベター・マン』特報2

 

心の葛藤に向き合う映画

ロビー・ウィリアムスの波乱万丈な人生を“モンキー”に見立てて描いた映画『BETTER MAN/ベター・マン』。この映画は、スーパースターの道に立ちはだかる心の葛藤が大きなテーマです。当然、テイク・ザットが登場するし、公に知られている元カノとのこと、オアシスのリアム&ノエルとの確執も描かれています。実は、辛いです。苦しいです。ロビーと一緒に彼の心の葛藤に向き合うことになります。

ロビーがテイク・ザットとして活動を始めた頃から、何度かインタビューをしてきた私にとって、映画に描かれているシーンのいくつかをリアルタイムで共有してきました。だからこそ、字幕なし版を初めて鑑賞した時は、すべてが許諾を得て作られたのか、これで再度テイク・ザットとの関係性が悪くなってしまうのではないか、とあらぬ心配で、映画に集中することができなかったのです(字幕ありの2度目は、少しだけディテイルに目を向けて観ることができました)。

昨年、Netflixで配信されたロビー・ウィリアムスの全4話のドキュメンタリーは、ロビー自身のナレーションで、貴重な映像と共に、彼の音楽キャリアを振り返った作品でした。ここでも、テイク・ザット時代の心の葛藤は描かれていましたが、最後にはテイク・ザットへの愛を語ったロビーでした。

もちろん、そんな思いを言葉にすることができるようになったのは、彼がさまざまな経験を経て、家庭を持ち、父親になったことが大きいはずです。だからこそ、最終章で誰もが安堵感を持ち、新たな扉を開けるロビーにエールを送りました。そして今回の映画公開となるのです。

映画『BETTER MAN/ベター・マン』は、「グレイテスト・ショーマン」のマイケル・グレイシー監督による新作です。その話題性も先行しました。ロンドンの繁華街リージェント・ストリートで撮影された「Rock DJ」やロビーとニコール・アップルトンとの出会いを美しくダンス・パフォーマンスで表現した「She’s The One」は、まさにマイケル・グレイシー監督による華やかで美しいミュージカルならではの映像でした。

Robbie Williams – Rock DJ (Regent Street) | Better Man | Official Movie Scene

 

ポップ・スターとして歌を歌い続けていく

劇中に、テイク・ザット、そしてロビーのヒット曲の数々を散りばめ、ロビーがガイ・チェンバーズと作り上げた楽曲の素晴らしさを改めて知ることができた映画でもあります。音楽が要のミュージカル映画ではありますが、こんなにもロビーの作品が映画にマッチするとは思いませんでした。でも振り返れば、これまでの彼のMV制作は、常にストーリー性を用いた映像を作り上げていたので、映像に対する思いの強さはわかっていました。

懸念される点としては、ポップ・スターが、突然の成功によりドラッグに溺れ、身を滅ぼすといった視点だけで捉えられてしまうことです。もちろん事実ではあります。テイク・ザットの他のメンバーも絶頂期の荒れた生活を過去に告白していました。

しかし、そのポイントよりも、祖母、母の無償の愛を受けながらも、“歌う”喜びを教えてくれた父親の愛情を渇望する少年であり、自信に満ちていると思えば、全く自信を失っている、そんな心の不安定をドラッグに頼り、挙句の果てに、仲間や愛する女性も失う。それでも大きなステージに立ち続け、ポップ・スターとして歌を歌い続けていくというのが、この映画のテーマなのです。ネガティヴな表現だけでなく、ロビーの憎み切れない性格、愛らしい人であることが伝えられたらと思うのです。

 

ロビーとのインタビュー

昨年のテイク・ザットの来日公演、今回の映画『BETTER MAN/ベター・マン』の公開で、当時のエピソードをいろいろと思い出しているのですが、グループを脱退し、ソロで来日した時のロビーは、テイク・ザットの話には神経質になっていましたが(スタッフが!)、「Never Forget」のレコーディングの話など、あまり気負わずに話をしていたことを思い出しました。

以前にも書きましたが、「僕はあまり歌っていない」というロビーに、「最後のここのパートはロビーらしくて、要になっているよ」と言ったことなど。だからこそロンドン・ウェンブリー・スタジアムでのProgressツアーで、テイク・ザットのメンバーとして、ロビーがそのパートを歌った時は、グッとくるものがありました。

Take That – Never Forget (Progress Live / 2011)

ロビーは何冊かの自伝を出版しています。「Feel」というタイトルで発売になった自伝は、ライターのクリス・ヒースが彼の活動に付き添って書き上げました。丁度2度目の来日時に、クリスもロビーと共に来日し、私のインタビューも録音していました。その部分が150ページから151ページに紹介されています。

「DJ Snoopyから繊細な部分を隠しているでしょって突っ込まれたロビーは、『隠そうとはしていないよ。だって歌詞に書いているからね。ただ、ありのままの自分が毎回ステージに上がったら退屈なショーになってしまう。ショーマンとして、自分というアートを本物の100倍以上に見せる。それをファンは信じて楽しむんだよね。でもね、本当の僕はすごく繊細で凹みやすいのは確かさ』。DJ Snoopyはもっと分析したくて、さらに彼の心に迫る質問をしようとする。『ロビーにとって一番心地よい場所は?』と聞くと、ロビーは『スターバックス』と答えた。インタビューの終わりには、二人のギタリストをバックに、リハーサルもなしで、“Feel”のアコースティック・ヴァージョンを披露。ラジオ番組で、リハもなく生歌を披露するのは本人にとっても初めての試みだっただろう」と書かれていました。

この言葉が、ロビーの全てを語っているように思えます。映画『BETTER MAN/ベター・マン』は、繊細さとショーマンシップが描かれた映画であると、自分の中での答えが出ました。3度目の鑑賞は、エンターテインメント映画として、劇場の大スクリーンで観ようと思っています。

Robbie Williams – Feel

Written By 今泉 圭姫子


映画公開にあわせてベスト盤が再発ロビー・ウィリアムス『Greatest Hits』
2004年10月18日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / YouTube Music / Amazon Music


映画情報

映画『BETTER MAN/ベター・マン』

2025年3月28日(金)日本全国ロードショー

<監督> マイケル・グレイシー(『グレイテスト・ショーマン』)
<出演>ロビー・ウィリアムス
<原題>『BETTER MAN』

公式HP:https://betterman-movie.jp/
2024 Better Man AU Pty Ltd. All rights reserved



今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー

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