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スティングのセルフ・カバーアルバム『My Songs』と初来日時のインタビュー

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ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」第23回は、2019年5月24日にニュー・アルバム『My Songs』を発売するスティング。今作を聞いた感想やスティングがポリスとして初来日した時に行ったインタビューの思い出などを執筆いただきました。(これまでのコラム一覧はこちらから)


 

セルフカバー『My Songs』

スティングが『My Songs』と題したアルバムを発売します。これは、タイトルから予想できるように、これまでのスティングのヒット曲をセルフ・カバーした作品。一体どんな曲が収録されているんだろう、とものすごく気になりますよね。1979年「Can’t Stand Losing You」が、いきなりUK2位にランクされて以来の40年以上に及ぶキャリアから、彼自身がどんな時代の曲をピックアップするのか? 時代の流れに沿った選曲になるのか? それとも特別な時代に焦点をあてるのか? または音楽的な面を重視するのか? ヒット曲にこだわるのか?

結果、ライヴ・テイクを含む19曲プラス日本のボーナストラック1曲の合計20曲は、まさにベスト・アルバムにふさわしい選曲となりました。『My Songs』の凄さは、単なる時代に合わせたセルフ・カバーではなく、あくまでもチャレンジャーとしての勢いが感じられるカバーになっているのです。

「Demolition Man」は、ポリス・サウンドの中でもユニークで、アグレッシヴなサウンドで当時は驚いたものですが、もともとこの曲はスティングがグレイス・ジョーンズに提供した1曲で、彼女独特の語るようなパフォーマンスで話題となりました。そして同年ポリス自身もアルバム『Ghost in the Machine』に収録。それはジャズをベースにしたアップテンポのハーロ・ロックテイストでした。アンディのギター・ソロもポリスっぽくなかったですよね。その後マンフレッド・マン・アース・バンドもカバーし、ソロになったスティングも、1993年にシルベスター・スタローン主演の刑事映画「デモリションマン」のプロモーションとして、エンディングに流れるための「Demolition Man」を新たに録音しています。映画用の音は、デジタルなアレンジで、「007」風な、映画ならではの雰囲気を出していましたが、今回の『My Songs』では、バンド・スタイルの新しいアレンジです。様々なストーリーをもつ「Demolition Man」は、スティングにとってとても意味のある曲であることがわかりますね。


Sting – Demolition Man (Audio)

アルバムのオープニングを飾る「Brand New Day」は、オリジナルにも使われているスティーヴィー・ワンダーのハーモニカから始まり、オリジナルと大きな変化はないものの、よりエモーショナルなスティングの歌声になっています。スティングの60歳のバースデーコンサートでは、スティーヴィー・ワンダーがサプライズで登場し、オリジナル同様にハーモニカを演奏しました。まさに二人の共演が目に浮かぶこの楽曲は、スティングにとっても思い入れの強い曲なのでしょう。

Sting – Brand New Day (2019 Version/Audio)

『My Songs』は、70年代後半、80年代、90年代の楽曲がピックアップされています。スティングにとっては、ポリスで登場し、急速にスター街道を全速力で走ることになり、その後スティングの名が世界中に広まったところで、ソロとしてのスタートを切ることになりました。この時代の20年間が、彼の大きな人生のターニングポイントになったことがわかります。

ポリスの曲は「Demolition Man」以外には、「Every Breath You Take(見つめていたい)」「Can’t Stand Losing You」「So Lonely」「Message In A Bottle」「Walking On The Moon」が収録されています。まだ全曲の音が届いていないので、どのようなアレンジになっているかは、発売日までお預けです。いずれにしろ、ポリス時代の大ヒット曲が収録されているので、本当に楽しみです。個人的には「Walking On The Moon」が大好きなので、67歳になったスティングの新しい解釈を楽しみにしています。

The Police – Walking On The Moon

スティングへのインタビュー

私がスティングにインタビューしたのは、たった一度だけです。ポリスとして初来日した時。今となっては、とても貴重な時間になりました。当時大貫憲章さんと担当していたラジオ番組「全英トップ20」のためのインタビューだったのですが、番組がスタートしたと同時にポリス旋風が吹き荒れ、当時主流だったパンクから流れた、ニュー・ロマンティック・ムーヴメントとは一線を画し、注目を浴びていました。

70年代後半は、レゲエやスカをベースにしたグループは数多くいました。スペシャルズやマッドネス、セレクターなどは2トーン・ムーヴメントの立役者で、その流れからファン・ボーイ・スリーやザ・ビート、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズなどが生まれました。他にもガールズ・グループでザ・ベル・スターズとかいましたね。でもポリスは、今でいうグローバルなところに位置していて、アメリカ人の女性シンガー、クリッシー・ハインドを迎えたプリテンダーズとともにその人気は高かったのです。クリッシーは元NMEの記者、スティングは元小学校の国語教師という過去のキャリアも注目され、ムーヴメントの呼称はなかったと思いますが、人気を二分していたのは確かです。

初インタビューは、大貫さんと一緒に出向き、今では考えられないのですが、滞在先の新宿のホテルのロビーで!  中野サンプラザのコンサート当日のホール入り前だったかと思います。3人並んでポリスとしてのインタビューはとても貴重なものでしたが、その光景は今でも目に焼き付いているのですが、内容はほとんど覚えていません。本当に覚えていないことが多すぎます。と自己反省。唯一覚えているのは、たった15分ぐらいのインタビュー時間だったのですが、最後の最後まで粘って質問していた私に、スティングがそばにあった新聞紙を丸めて、私の頭を軽くポンポンとたたき、「もう終りね」と言われたことだけ。それこそ40年前のことです。さすが、学校の先生らしい対応だ、なんて思ったものです。頭ポンポンはボブ・ゲルドフにもやられた経験あり。彼の場合は、「大きくな〜れ」と呪文をかけてくれましたけど。

思い出が薄くて申し訳けないのですが、70年代から80年代に移り変わるイギリスの音楽シーンの中で、ポリスは大きな存在で、その活躍をリアルで体験できたことを懐かしく思うとともに、そんな時代を目の当たりにできたことに感謝するのです。

Written by 今泉圭姫子


スティング『My Songs』
2019年5月24日発売
通常CDとデジタルでの発売
試聴・購入まとめリンク

ポリスのドキュメンタリー
『ポリス・インサイド・アウト』

2019年5月31日発売
Blu-ray / DVD
日本語字幕付 / 英文ライナー翻訳付


今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

 

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