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ピューリッツァー賞受賞作曲家マイケル・アーベルスが語る『スター・ウォーズ:アコライト』の音楽

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2024年6月5日よりディズニープラスで配信が開始された『スター・ウォーズ:アコライト』(全8話)。舞台は、これまで映像化されたことがなかった、エピソード1『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』(1999)の100年前の世界。華やかなりしジェダイの黄金期、平和であるはずの銀河で、ある日、ジェダイ殺人事件が発生。そこから、多彩なライトセーバーが交錯する意外な展開へとなだれ込んでいきます。スター・ウォーズを新たな角度から描くこのハードアクション・スリラーは、世界中で大きな話題を呼んでいます。

音楽を担当したのは、マイケル・アーベルス。ジョーダン・ピール監督作品等の映画音楽を多く手掛け、様々な賞を受賞してきた他、オペラ「オマール」ではピューリッツァー賞にも輝きました。今回、初めてスター・ウォーズ作品に参加したマイケル・アーベルスに、『スター・ウォーズ:アコライト』の音楽についてお話をうかがいました。

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スター・ウォーズ:アコライト|本予告|Disney+ (ディズニープラス)

 

― 今回、初めて描かれた『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』の100年前の世界。音楽も、これまでにないユニークで新しい表現に溢れていました。同時に、伝統的なスター・ウォーズ・サウンドを髣髴とさせる響きも所々に登場し、新しさと伝統がダイナミックに組み合わされている印象を持ちました。

マイケル:まさに、ショーランナーのレスリー・ヘッドランドからは、スター・ウォーズの世界から見て「伝統的な場面」においては伝統的な音楽を用い、「これまでにないような場面」では、聴き慣れない独特な音楽を制作して欲しいと言われたんです。

ですから、それぞれの場面で「これまでのスター・ウォーズの世界観と照らして、この展開/キャラクター/感情は、新しいか?」をまず問い、その答えに基づいて、曲を編み上げていきました。

― オペラ「オマール」ではピューリッツァー賞を受賞され、ジョーダン・ピール監督作品でも高い評価を得てこられました。そのような中、スター・ウォーズの音楽を制作されてみていかがでしたか?

マイケル:スター・ウォーズに取り組むことには、他の作品とは比べ物にならない特別さがあります。スター・ウォーズを愛する沢山の方からの強い期待があることもその理由の一つです。

オペラの場合、作曲家が物語の色合いや緩急を決定することができます。また、ジョーダン・ピール監督の映画作品の場合は、観客の皆さんが想像したことのないような作品を届けたいとの監督の思いに合わせて、音楽もそのようにしてきました。

しかし、スター・ウォーズの場合、偉大なレガシーがありますから、拡張したり、スコープを変えたりする際も、常にレガシーを尊重しながら行う必要があるんです。

― そのような音楽を、どのようにして作られたのですか?

マイケル:私の場合、コンピューターの前に座り、音源からピアノの音を選んで、キーボードで書いていくことが多いですね。主要な要素であるハーモニーやメロディーから作っていきます。

スター・ウォーズの伝統的なスタイルの音楽を作る場合は、ストリングスを含めて後期ロマン派や20世紀初頭のクラシック音楽と同じような形で作曲します。

しかし、よりアンビエントで、不協和音が前面に立つような音楽の場合、音の組み合わせは同じだとしても、音に広がりを持たせられるよう、即興的にボーイングを工夫するなど、様々な技巧を組み合わせます。

― スター・ウォーズは、日本をはじめとする東洋の音楽や民族音楽を取り入れてきました。『スター・ウォーズ:アコライト』の音楽においてもそのような側面はあったのでしょうか。

マイケル:まさにその通りです。今回も、マーシャルアーツを活かした戦闘シーンなどでは、それを感じ取っていただけると思います。

また、第3話、第7話、第8話に登場するアンビエントなチェロのメロディーは、ジェダイたちによる心の平穏の探求のテーマであり、同時に、ソルの過去の過ちをめぐる恥辱感のテーマでもあります。チェロは西洋楽器ですが、このテーマを奏でる音は、とてもアジア的に聴こえませんか?私がアメリカ人だからそう感じるのかもしれませんが(笑)。

― 日本の文化、音楽、楽器については、どのような印象をお持ちですか?

マイケル:日本の文化や音楽に触れる度に感じるのは、限りなく洗練された構造と美です。実は、残念ながら、まだ日本を訪れたことはないのですが。

でも、日本の皆さんには強い共感を覚えます。というのも、日本の皆さんは、オーケストラ奏者や作曲家に求められる鍛錬や芸術的才能に対する理解が深い印象があるんです。日本の皆さんと私は、オーケストラへの愛でつながっているように感じます。そして、古くからの文化をとても大切にされていることを深く尊敬しています。

― 『スター・ウォーズ:アコライト』の中でも特に印象的だったのが、卓越した戦闘シーンでした。そして、それらのシーンでも音楽が重要な役割を担っていました。

マイケル:『スター・ウォーズ:アコライト』には、素晴らしいライトセーバー戦が登場しますよね。それらのシーンでは、主に伝統的なアプローチを用いました。すなわち、金管楽器を際立たせる形ですね。様々な美しい振付に呼応して、宙を舞う姿を描く音楽などを作りました。

マーシャルアーツにインスピレーションを得た戦いの場面では、パーカッションを主とした音楽を、時に和音を崩しながら表現しました。

― ミステリアスなサスペンス『スター・ウォーズ:アコライト』の世界の中でも、カイミール/ストレンジャーの存在感は特に印象的でした。彼の音楽もその存在感を際立たせる大切な要素でしたね。

マイケル:私も、ストレンジャーはお気に入りのキャラクターです。とても危険で、刺激的で、邪悪でありながら、一方で、規律的な生活を送っている特異な存在。音楽でも、そのような彼の多面性を表せるように意識しました。残虐な行いには恐ろしい音楽を、一方、彼が暮らす惑星のシーンには、平静で誘惑的な音楽を作りました。

彼にはテーマ曲も作りました。低い音から威嚇的に立ち上がっていくような旋律です。第5話のライトセーバー戦で登場しますし、実は、第1話でも、メイがビーチを歩いていくシーンに登場しています。

― 第5話では、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)に登場したカイロ・レンのテーマが現れ、ファンを沸かせました。

マイケル:それについては何も言えないんです。お話できるのは、あのシーンであのテーマが登場したのは、一定の感情を惹起するためだったということです。しかし、その解釈は聴いて下さった皆さんのご想像にお任せしたいと思います。

― 最後に、日本のファンの皆様に一言お願いします。

マイケル:『スター・ウォーズ:アコライト』をご覧下さりありがとうございます!そして、こうして音楽を丁寧に聴いて下さり幸せです。皆さんの温かさに心から感謝しています。

Written By 井筒 節


マイケル・アーベルス, ヴィクトリア・モネ
『スター・ウォーズ:アコライト (オリジナル・サウンドトラック) 』
2024年7月19日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / LINE MUSIC

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