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【レビュー】映画『さすらいのレコード・コレクター〜10セントの宝物』

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あなたが、レコード・マニアだとしよう。そしてレアなレコードが欲しくなったらどこで買うだろうか。おそらくは中古レコード・ショップ、今ならネットでの通販、個人で売買できるフリマアプリもあるかもしれない。

2018年4月21日に日本で公開されるドキュメンタリー映画『さすらいのレコード・コレクター〜10セントの宝物』の主人公 “最強のレコード・コレクター” ジョー・バザードは違う。彼はレアなレコードを求めるために、他人の家に行って、そこの地下室や押し入れで忘れられたまま眠っている隠れた名盤を探し出すのだ。

『さすらいのレコード・コレクター〜10セントの宝物』の原題は『Desperate Man Blues』、“捨て身の男のブルース”とでも訳そうか。映画の公開は2003年。当時65歳の彼は、家の地下室の壁いっぱいに収納された78回転のSP盤を聞きながら、楽しくリズムをとり、葉巻をふかし、カメラに向かって楽しそうに楽曲の解説をする。映画は彼の日常を淡々と追っていく。

映画の主人公ジョー・バザードは、1936年生まれ。彼の音楽の信条は「ロックン・ロールが癌のように広がって、アメリカン・ミュージックは全て破壊されてしまった」。集めたレコードは25,000枚を超え、その殆どがロックン・ロール以前の1920年代や30年代のあまり光が当たらないアメリカン・フォークやブルース、ゴスペルの分野だ。

彼は、アメリカン・フォーク、ルーツ・ミュージックの伝説の SP盤レーベル「FONOTONE RECORDS」のオーナーをしていたことでも有名で、世界中にこのレーベルのマニアが存在している。ドキュメンタリー映画の公開当時、ジョー・バザード監修によるコンピレーション『Desperate Man Blues: Discovering the Roots of American Music』も発売されている。15年前に公開されたドキュメンタリー作品が日本で公開されることになったきっかけは、この1枚のアルバムを今作配給担当者がたまたま輸入盤店で見つけたことだった。そのコンピレーションにはこう書かれている。

「多くのレコード会社から価値がないと見放されてしまった音楽たち。それを集めたレコード・コレクターズたちに、あなたはお礼を言いたくなるだろう」

そんなジョー・バザードは、81歳になった今でも映画に登場するSP盤に溢れた地下室で音楽を聴き続け、ラジオ放送も続けている。今年1月には、アメリカのラジオ局RADIO BRISTOLで、DJのアイビー・シェパードとともにあの地下室から元気に2時間生放送もしている。その時の元気な様子が、こちらで公開されている。

上映時間52分、15年前の作品、有名人は誰も出ない、監督が撮った他の作品は見当たらない、世紀の発見が登場するわけでもない。しかし、レコード・コレクターでこの映画を見て後悔する者は一人もしないだろう。自分の足で、欲しいレコードやCDを探し、そこでたまたま出会った未知の音源に偶然出会った経験のあるものは。

「ジョー・バザードが持っている音源が大好きなんだ。彼が保存している多くの盤は本当に貴重なものだよ」エルヴィス・コステロ


映画『さすらいのレコード・コレクター 10セントの宝物』

2018年4/21(土)〜新宿 ケイズシネマにてロードショー、全国順次公開
公式サイト
公式Twitter
公式Facebook

映画『さすらいのレコード・コレクター 10セントの宝物』予告編

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