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完結を迎えた『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』。その音楽の魅力を振り返る

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2023年8月9日からDisney+で配信となったシリーズを締めくくる『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』のシーズン4。

『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』のシーズン1は2019年から公開され、そこに出演していたオリヴィア・ロドリゴは2021年にアーティストデビューすると、今や2020年代を代表する女性アーティストとして活躍していることも有名だ。

オリジナルの新曲はもとより、前作『ハイスクール・ミュージカル』の楽曲やディズニーの名曲がいくつも登場してきたこのドラマシリーズの音楽について、烏山タラさんに解説頂きました。

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全世界大ヒットドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』シーズン4|予告編|青春ミュージカル・ドラマシリーズがついにフィナーレへ!|Disney+ (ディズニープラス)

 

2019年にシリーズがスタートして以来、人気を博してきた『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』の完結編となるシーズン4が2023年8月9日からDisney+で独占配信となった。シニアイヤー(最終学年)を迎え、自らの進路や夢に向かって切り開くワイルドキャッツを描いた最新シリーズにも、新しい楽曲から誰もが知っているディズニーの名曲まで数多くちりばめられているが、改めて全4シーズンに渡って繰り広げられてきた本作の音楽の魅力を紐解こう。

ディズニー・チャンネルから生まれた『ハイスクール・ミュージカル』シリーズは2006年にテレビムービーとして公開されたのをきっかけに、日本を含む世界中で大ヒットを記録。その後、2本の続編が制作され、主演を務めたザック・エフロンやヴァネッサ・ハジェンズ、アシュレイ・ティスデイルは一躍大ブレイクを果たしてスターダムに上りつめた。

『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』では、そんな一大ムーブメントを起こした名作と同じイースト高校を舞台に、演劇部に所属する高校生たちがミュージカル公演を企画する過程で、時に恋をしたり壁にぶつかったりしながら、歌うこと、踊ること、表現することの楽しさに気づかされていく。

シリーズ通して、オリジナルの『ハイスクール・ミュージカル』シリーズ(2006年~2008年)や、『美女と野獣』『アナと雪の女王』などのディズニーの有名曲のカバーが数多く登場するため、長年のHSMファンにとっても、今回初めてイースト高校の門をくぐる新しいファンにとっても入り込みやすい内容になっている。オリジナル版に出演したライアン役のルーカス・グラビールやチャド役のコービン・ブルーなど、ゆかりのキャストも登場するサプライズも嬉しく、時に新生キャストとの夢の共演も見せてくれる点も見逃せない(シーズン1の「A Role of A Lifetime」やシーズン3の「Different Way to Dance」など)。

そしてもちろん、フレッシュなキャストによる完全新曲も聴きごたえのあるものばかりだ。

シーズン1(2019年)

新生ワイルドキャッツがオーディションで歌うのは、他でもない「Start of Something New(始まりの予感)」。オリジナル版で主役のトロイとガブリエラが初めてデュエットをするシーンで使われたこの楽曲は、まさに演劇部メンバーにとって“Start of Something New”(何か新しいことの始まり)を体現するのにぴったりな1曲。

その後も「What I’ve Been Looking For(最高のパートナー)」「Stick to the Status Quo(今までどおりが一番)」「Breaking Free(自由をつかめ)」など懐かしの楽曲が登場し古参ファンをニヤリとさせるが、ミュージカル上演中の劇中歌としてパフォーマンスされる「Get’cha Head in the Game(大切なのはバスケット!)」は、オリジナル以上に臨場感あふれるバスケットボールを使ったキャストのマスダンスと、リッキーとEJの熱唱が見どころ。

フィナーレを飾るのは、やはりこのシリーズの代表曲ともいえる「We’re All in This Together(みんなスター!)」で、初めての公演をやりきったワイルドキャッツの一体感溢れる歌唱がオーディエンスの胸を打つ。

We're All in This Together (HSMTMTS | Disney+)

シーズン1は、特にオリヴィア・ロドリゴ扮するニニとジョシュア・バセット扮するリッキーの恋の行方にフォーカスしており、本作で初登場するアコースティックなラブソング「I Think I Kinda, You Know」(それぞれが歌うバージョンと、デュエットバージョンが存在)は、2人が遠回しな表現で少しずつ想いを通わせていく様子がいじらしい。

また、ニニが交際中のEJのとある“裏切り”を知り、元カレのリッキーへの想いも重ねながら歌う「All I Want」は、オリヴィア・ロドリゴがこの役のオファーを受けたときにニニの気持ちになって書き下ろしたバラードで、シングル配信もされて全米ビルボード総合ソングチャート「Hot 100」にランクインするなど、全米のティーンから人気を集める楽曲となった。

歌詞の中には”Once upon a time”や、”Happy Ever After”など、ディズニー・プリンセスを彷彿とさせるような歌詞も登場し、ピンク色のドレスで弾き語りをするオリヴィア出演のMVも話題となった。

Olivia Rodrigo – All I Want (Official Video)

 

シーズン2(2021年)

『ハイスクール・ミュージカル』の上演を無事やり遂げたワイルドキャッツたちは、春の公演で『美女と野獣』を演じることに。さらに、強豪校のノース高校を相手に、最も優れた高校演劇部に贈られる“アラン・メンケン賞”を目指す。

アラン・メンケンは、言わずと知れたディズニーの音楽史を創ってきた作曲家であり、中でも彼が手掛けた『美女と野獣』(1991年)はディズニーのミュージカルの最高峰ともされる作品だ。さらに『ハイスクール・ミュージカル2』(2007年)や『ハンナ・モンタナ/ザ・ムービー』(2009年)からの楽曲も登場し、いずれもオリジナル版とは全く異なるシチュエーション、登場人物により歌唱されるわけだが、そんな新解釈も原曲の持つ魅力を更に昇華させてくれる。

ワイルドキャッツたちが、『美女と野獣』のどの役を演じるかのキャスティングの過程もドラマチックに描かれているが、シリーズ1では端役のダーバス先生を務めていたアシュリンが今回主役のベルに大抜擢。「Something There(愛の芽生え)」ではのびやかな歌声で生き生きと演じている。

Something There (From Beauty & The Beast | HSMTMTS | Disney+)

また、EJとビッグレッドによるガストンとル・フゥのコンビはまさに息ぴったり、「Gaston(強いぞ、ガストン)」の稽古シーンには思わずクスッと笑ってしまうこと間違いなし。アカデミー賞®を獲得した名曲「Be Our Guest(ひとりぼっちの晩餐会)」の上演シーンは、ワイルドキャッツの面々のはじける笑顔と楽しいパフォーマンスが光り、公演におけるまさにハイライト。

Be Our Guest (From Beauty & The Beast | HSMTMTS | Disney+)

シーズン2でも新曲が多く登場するが、アシュリン・ジーナ・コートニーの3人がゴージャスな衣装で歌い踊る「1-2-3」、カルロスが愛する彼氏セブに捧げる「In a Heartbeat」など、前作から格段にワイルドキャッツの面々のパフォーマンスがレベルアップしており、それぞれのキャラクターのバックグラウンドが濃く反映された歌詞も物語を盛り上げる。

特にオリヴィア・ロドリゴによる書き下ろしの「The Rose Song」は、先に触れたキャスティングの過程でニニが葛藤を込めて歌いあげる珠玉のバラードで、ニニにとっても、配信当時「drivers license」で世界中を席巻していた歌手としてのオリヴィアにとっても、ターニングポイントとなる楽曲になった。

Olivia Rodrigo – The Rose Song (HSMTMTS | Disney+)

 

シーズン3(2022年)

シーズン3では学校を飛び出し、カリフォルニアにあるサマーキャンプ場「キャンプ・シャローレイク」へ!ディズニー・チャンネルの長年のファンであれば、この設定がデミ・ロヴァートとジョナス・ブラザース主演でヒットを飛ばしたディズニー・チャンネル・ムービー『キャンプ・ロック』(2008年)の影響を受けていることがすぐ分かるはず。

実際に本シーズンでは、『キャンプ・ロック』から「This Is Me」や『ハイスクール・ミュージカル2』から「What Time Is It?」などの人気曲が登場。さらに今回ワイルドキャッツは、『アナと雪の女王』の上演にチャレンジ、さらに本作から新キャラクターのマドックス、ジェット、ヴァル(演じるのは『ゾンビーズ』シリーズでおなじみのメグ・ドネリー!)、エミーが参加、新たなドラマも展開される。

前作でその関係性に進展があったEJとジーナによる「Love Is an Open Door(とびら開けて)」、カルロス役のフランキー・ロドリゲスの多才ぶりが際立つ「In Summer(あこがれの夏)」(カルロスはシーズン2でもろうそくのリュミエール役を演じ、今回はオラフ役。またもや人間ではない役に少し不満もありそう…?)など、誰もが口ずさめる名曲のカバーが続くが、やはりエルサ役のコートニーによる「Let It Go」は圧巻のパフォーマンス。常に自信家で完璧主義のコートニーだが、実は“本当の自分”を探し続けており、ありのままの姿を見せたい彼女の思いと歌詞がリンクした名場面になっている。

Dara Reneé – Let It Go (From Frozen | HSMTMTS)

本シリーズは、ワイルドキャッツの人間関係やそれぞれの置かれている状況がめまぐるしく変化し、キャラクターの成長を見届けられるのも魅力の一つ。シーズン3は特にそれが顕著で、そんなストーリーと相まって、新キャラクターのジェットによる新曲「Right Place」、コートニーの「Here I Come」、アシュリンの「Rising」など、ワイルドキャッツそれぞれの心の内を歌い上げる骨太なバラードがサウンドトラックには多く収録されている。中でもメインキャラクターのひとりが“カミングアウト”をするシーンは配信時に本国でTwitterのトレンド入りするなど、大きな話題を集めた。

Adrian Lyles – Right Place (HSMTMTS)

 

シーズン4(2023年)

新学期を迎え、舞台は再びイースト高校へ。2008年公開の映画『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』の上演のために動き出すワイルドキャッツたちだったが、同時期に「ハイスクール・ミュージカル」シリーズ待望の第4弾となる『ハイスクール・ミュージカル:リユニオン』の撮影が同校で行われることになり、ミュージカルの計画変更を余儀なくされてしまう。

冒頭から前述の『リユニオン』の実際の劇中劇で始まり、オリジナル・キャストのルーカス・グラビール、コービン・ブルー、モニーク・コールマン(本シーズンで待望の登場!)他が再集結して披露する「High School Reunion」は、往年のファンであれば思わず目頭が熱くなること間違いなしのキャッチ―な新曲で、ドラマの中と言わず誰もが本当にキャストの“reunion(再開や同窓会の意)を望んでしまうはず。

High School Reunion (HSMTMTS | Disney+)

今までのキャラクターが勢ぞろいしてのパフォーマンスが目立つのは、人気シリーズを締めくくる最後のシーズンならでは。中でも前半のハイライトのひとつは、それぞれの葛藤を重ねてワイルドキャッツの面々がイースト高校の校舎で歌い踊る「Nightmares Come to Life」。

マイケル・ジャクソンの「スリラー」さながらのゾンビルックでクールにパフォーマンスするこの曲は、『ディセンダント』シリーズや『ゾンビーズ』シリーズなど、近年のディズニー・チャンネル・ムービーの魅力もはらんだ見逃せない楽曲になっている。

Nightmares Come to Life (HSMTMTS | Disney+)

新曲の素晴らしさは言わずもがな、“卒業”や“旅立ち”というテーマを持つ本シリーズだからこそ、原点回帰の意味もあるのか、カバーされる楽曲のほとんどが「ハイスクール・ミュージカル」シリーズからのもの。特に前述の『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』の楽曲は前面に使用されており、「Now or Never」「I Want It All(すべて欲しい!)」「Can I Have This Dance(踊りましょう)」「A Night to Remember(忘れられない夜)」など、懐かしの名曲のオンパレード。

さらに本シリーズのシーズン1で印象的に使用されたエンパワーメント・ソング「Born to Be Brave」が再び使われたり、サントラの1曲目にはシリーズ通してオープニングに使われてきたガブリエル・マン作曲の「High School Musical Main Theme」が収録されていたりと、シリーズを初めから観てきたファンならより感慨深い仕掛けもある。

そしてもちろんオーラスで使われる楽曲は、2006年の映画第1作目に登場し、多くのディズニー・ファンに愛され続けてきたアンセム「We’re All in This Together(みんなスター!)」なのだが、キャストのこのシリーズに賭ける想いが詰まったアレンジが胸を打つ。

High School Musical (Finale) (HSMTMTS | Disney+)

 

ディズニー・ミュージカルの歴史と魅力が凝縮された特別なドラマ・シリーズ

フレッシュな青春ミュージカルとして新曲も十分に楽しめる一方で、本シリーズの最大の魅力は、ディズニー・ミュージックの輝かしい歴史を紐解けるところ。

“ディズニー・ルネサンス”の幕開けに大きく寄与した作曲家アラン・メンケンと作詞家ハワード・アシュマンの黄金コンビによる傑作『美女と野獣』、ディズニー・チャンネルの歴史において特に大きなブームを巻き起こした『ハイスクール・ミュージカル』『ハンナ・モンタナ』『キャンプ・ロック』、そしてディズニー・アニメーションの新時代を切り開いた大ヒット作『アナと雪の女王』。いずれもディズニー・ミュージックを語るうえで欠かせない名曲の数々を、多様性あふれる現代ならではの解釈で、新たな付加価値とともによみがえらせている。

劇中でワイルドキャッツは舞台に立つたびに新たな自分を見出し、歌うこと、演じることの喜びに目覚めていく。本作におけるディズニーの名曲たちは、単なる既存楽曲のカバー・バージョンとしての登場ではなく、成長を続ける高校生たちの背中を押したり思いを体現するためのツールとして、重要な役割を担っているのだ。

オリヴィア・ロドリゴ、ジョシュア・バセット、ソフィア・ワイリーなど、既にその才能を発揮して人気を博している若手実力派による圧巻のパフォーマンスとともに、ディズニー・ミュージック、そして多くのファンが今もなお愛してやまない「ハイスクール・ミュージカル」の世界を一気に堪能できる名シリーズをぜひ最後まで完走してみてほしい。

Written by 烏山タラ


ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル キャスト & Disney
『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル シーズン4 オリジナル・サウンドトラック』
2023年8月9日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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