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マシュー・モリソン新作アルバム発売記念、“シュー先生”のベスト・パフォーマンス10選
2009年から公開された大人気ドラマ『glee/グリー』。このドラマの中で合唱部の顧問シュー先生を演じたマシュー・モリソンがディズニーの名曲を歌った新作アルバム『Disney Dreamin’ with Matthew Morrison』を3月13日に発売する(デジタルは3月6日)。これを記念して、マシュー演じるシュー先生の『glee/グリー』でのベスト・パフォーマンスをお届けします。
原稿は、映画や音楽関連だけではなく、昨年には2作目となる小説『インナー・シティ・ブルース』も発売、大和田俊之さんとの人気シリーズ最新刊『文化系のためのヒップホップ入門3』が今年刊行されるなど幅広く活躍されている長谷川町蔵さんによる寄稿です。
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シュー先生。『glee/グリー』が終了してから5年が経った今でもこの言葉を聞くと、同作でマッキンレー高校グリー部の顧問ウィル・シュースターを演じたマシュー・モリソンの顔を反射的に思い浮かべるグリーク(『glee/グリー』の熱狂的ファン)は多いはず。
廃部になっていたグリー部を再興し、学校内に居場所がなかった生徒たちから才能を引き出して、全国大会優勝を目指す。一見頼れる教師に見えるけど、実はどの生徒よりもイタい人間であるシュー先生は、快活なティーンドラマに大人になることの苦さをトッピングする重要な役割を担っていた。
モリソンは番組以前からブロードウェイで活躍していたため、本来は生徒を指導する役柄でありながら、センターで歌い踊るシーンもふんだんに用意されていた。
今回モリソンのニューアルバム発売を記念して、あらためてシュー先生のベスト・パフォーマンスをオンエア順に10を挙げてみた。この機会に『glee/グリー』未体験の人もぜひチェックを。グリークになること間違いなしだから!
1. 「Bust A Move」
シーズン1第8話より。シュー先生は、自分が青春を送った1990年前後のヒット曲が大好きで、課題曲に提案してはグリー部員からドン引きされていた。この曲は「お前たちが歌わないなら俺が」と自らマイクを握ったヤングMCによる1989年の一発ヒット曲(最高7位)。でも全身全霊を込めて歌えば、ダサいナンバーだってカッコよくなる。ラップはもちろん、華麗なヒップホップ・ダンスにも注目だ。
2. 「Don’t Stand So Close to Me / Young Girl」
シーズン1第10話より。部員のレイチェル(リア・ミシェル)から過剰な好意を寄せられて困惑したシュー先生は、同僚のカウンセラー、エマ先生(ジェマ・メイズ)に相談。その気がないのを歌で表現することを勧められる。そこで女子ふたりを前にパフォームするのが、ポリス1980年のヒット曲(最高10位、邦題は「高校教師」)とゲイリー・パケット&ザ・ ユニオン・ギャップ1968年のヒット曲(最高2位)のマッシュアップ(混ぜ合わせ)・チューン。いずれの曲も「君は僕には若すぎるから交際はお断り」という歌詞なので違和感がない。こうしたマッシュ・アップ曲は、音楽番組としての『glee/グリー』の売りになっていく。
3. 「Dream On」
グリー部の運営に行きづまったシュー先生は、シーズン1第19話で高校時代の部活仲間でライバルだったブライアンと再会。やはり冴えない日々を送っていた彼とミュージカル『レ・ミゼラブル』の役を巡って争うことになってしまう。そのオーディション会場でふたりが熱唱するのが、ハードロックバンド、エアロスミスのデビューアルバム収録曲(最高6位)。ブライアンを演じたニール・パトリック・ハリスはシットコム『ママと恋に落ちるまで』で知られる俳優だが、『レント』や『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のブロードウェイ公演に主演したミュージカル・スターでもある。そのためデュエット・バトルの熱さはハンパないものに。
4. 「Toxic」
シーズン2第2話より。学校集会で披露した、ブリトニー・スピアーズ2003年のヒット曲(最高9位)のカバー。イケイケだったオリジナル・バージョンとは対照的に、『オール・ザット・ジャズ』を思わせるモノトーンの衣装でシックにキメている。でも歌い踊るシュー先生のYシャツをよく見て欲しい。汗でスケスケだ。振り付けがいかに難易度が高かったかが伺える。部の顧問という役柄もあってか、シュー先生には激しいパフォーマンスが伴う曲がやたらと多いのだ。そしてこうした傾向はその後もエスカレートしていく。
5. 「Make ‘Em Laugh」
シーズン2第7話より。ディープなミュージカル・オタクのシュー先生は就寝中、古典ミュージカルの世界にいる自分を夢見ることがある。やはり夢の中で披露されたこの曲では、ミュージカル俳優ドナルド・オコーナーがスタンリー・ドーネン監督作『雨に唄えば』(1952)で披露したキャリア史上最高のパフォーマンスを、部員のマイク・チャン(ハリー・シャムJr.)と一緒に丸ごとカバー。その完成度の高さに、視聴者は「こんなものを連続ドラマの夢の中のシーンでわざわざやるのか?」と絶句したものだった。
6. 「Singing In The Rain/Umbrella」
シーズン2第7話より。『雨に唄えば』の主題歌を課題曲に提案して「古臭い」と部員に敬遠されたシュー先生が、代用教員のホリーに相談して一緒に作り上げた、リアーナ2007年の大ヒット曲「Umbrella」(最高1位)とのマッシュアップ・チューン。振り付けも映画とMVをミックスしたものになっている。大量の水が降り注ぐ中で行われた収録は、モリソン曰く『Glee』史上最もハードな撮影のひとつだったそう。なおホリーを演じたグウィネス・パルトロウは、本作をきっかけに番組のクリエイターのひとり、ブラッド・ファルチャックと結婚している。
7. 「You and I」
シーズン3第6話より。クイーンのギタリスト、ブライアン・メイの参加が話題を呼んだレディ・ガガ2011年のヒット曲(最高6位)と、カントリー・シンガー、エディ・ラビットとクリスタル・ゲイルのデュエットによる1982年のヒット曲(最高7位)を、曲名が同じという理由でマッシュ・アップ。この曲でシュー先生がデュエットする相手は、ライバル高の元顧問で、レイチェルの母親でもあるシェルビー。演じているイディナ・メンゼルはブロードウェイのスターで、ディズニー・アニメ『アナと雪の女王』(2013)のエルザ役の声優としても知られる(つまり「レット・イット・ゴー」を歌った)あの人だ。
8. 「You’re All The World To Me」
シーズン4第15話より。“シュー先生の夢の中シリーズ”の1曲。困難を乗り越えて結ばれたエマ先生と披露するクラシカルなデュエット・チューン。しかし彼が目覚めると……。オリジナルは、スタンリー・ドーネン監督のミュージカル『恋愛準決勝戦』(1951)の挿入歌。映画内でこの曲が歌われるときに披露されたフレッド・アステアのトリッキーな“天井ダンス”(ライオネル・リッチーからビリー・アイリッシュまで音楽界でも引用するアーティストは多い)を見事にコピーしている。
9. 「Cheek to Cheek」
『glee/グリー』における最大のヴィラン。それはチアリーディング部の顧問スー先生ことスー・シルベスター(ジェーン・リンチ)である。高校内の負け組生徒の駆け込み寺と化したグリー部を激しく憎む彼女は、グリー部を潰そうと権謀術数を巡らすのだが、次第にシュー先生の考えを認めるように。シーズン5第7話に至っては、シュー先生が見るような脳内ミュージカルを夢想するまでになってしまうのだった。なおオリジナルは『トップ・ハット』(1935)でフレッド・アステアが歌った挿入曲。
10. 「Teach Your Children」
番組全体の最終回でもあるシーズン6第13話で、グリー部OBと現役部員を前にシュー先生が、「あなたの子どもたちに教えてあげてください/あなたの夢を託して下さい」と切々と歌うナンバー(オリジナルはクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの1970年曲。最高16位)。それは高校という場所に留まり、そこを通り過ぎていく子どもたちに夢を与える教師こそが自分の天職なのだと悟った彼による決意表明でもある。曲の終わりにレイチェルが囁く「サンキュー」は、そんなシュー先生に対するグリークの想いを代弁しているのだ。
Written by 長谷川町蔵
マシュー・モリソン『Disney Dreamin’ with Matthew Morrison』
2020年3月6日デジタル配信
3月13日 日本盤 CD(通常盤) / CD+DVD(生産限定盤) 発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify
- マシュー・モリソン アーティストページ
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