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今ストリーミングサービスで見られるおすすめヒップホップ伝記&ドキュメンタリー作品

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ヒップホップやR&Bなどを専門に扱う雑誌『ブラック・ミュージック・リヴュー』改めウェブサイト『bmr』を経て、現在は音楽・映画・ドラマ評論/編集/トークイベント(最新情報はこちら)など幅広く活躍されている丸屋九兵衛さんの連載コラム「丸屋九兵衛は常に借りを返す」の第23回。今回は現在NETFLIXやAmazon Prime Videoといった映像配信サービスでみることができるヒップホップ関連映像作品について。

*コラムの過去回はこちら

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週に何度も、映画配給会社や宣伝会社から【公開決定!】や【マスコミ試写ご案内】といった知らせが届く我がEメール・アカウント。それらの新作映画に占める「アーティスト伝記映画」や「音楽ドキュメンタリー」の割合の大きさには、やはり少々驚く。わたしが音楽雑誌の編集をしている頃(〜2011年)、こんな活況は存在しなかったのに……(ラッパーが気軽に出演している安価な映画はたくさんあったが)。

これはもちろん、2010年代半ばからのアーティスト伝記映画ブームの影響だろう。それに加えて、ストリーミングサービスの拡充によるところも大きいようだ。「今まで劇場公開だけでは絶対にペイできなかったドキュメンタリー作品も、配信サービスの台頭でコストをかけてソフト化することもなくダイレクトに権利が売れるようになったからですね」とは事情通の声である。

そこで今回は、「ストリーミングサービスで見られる作品」「ヒップホップ関連」という条件で、アーティスト伝記映画と音楽ドキュメンタリーを挙げていこうと思う。網羅はできないにせよ。

 

『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)

やはり、伝記映画ブームを作ったのは、この傑作だと思うのだ。よくよく見ると、実物と顔が似ている役者は少ないが、そんなことはなぎ倒して進む突進力! 描かれたこと全てが実話というわけではないし、逆に「ドレーとキューブとイージーの物語」とするために省略された部分はままあるが、2時間半ほどの作品にするためには必要な整理整頓だったと言えるだろう。

しかし、この大成功に刺激されたダズ・ディリンジャーが企画した映画『Dogg Pound 4 Life』は……どうなったのだろう? ダズの息子がダズ役、ドレーの息子がドレー役というストレートな配役が話題になったのだが。

NETFLIX / U-NEXT

 

『N.W.A & EAZY-E キングス・オブ・コンプトン』(2016)

上記『ストレイト・アウタ・コンプトン』(SOC)の後を追うように、翌年発表されたN.W.A関連ドキュメンタリー。SOCでは悪役扱いだったジェリー・ヘラーやアロンゾ・ウィリアムズ、あるいは一顧だにされなかったアラビアン・プリンスやスティーヴ・ヤノらが登場、いわば”日陰者”にスポットを当てる気高い試みと言えるだろう。また、SOCでは影が薄めのDJ・イェラがドレーと交わした会話を回想するシーンもいい。デス・ロウと激しい抗争を繰り広げていた時期のイージーの実像が語られるあたりも貴重だ。まあ、再現映像部分の精度はともかくとして。

U-NEXT / Amazon Prime(レンタル)

 

『オール・アイズ・オン・ミー』(2017)

立ち位置は違うし、時代も微妙にズレてはいるが、N.W.Aと同じく90年代の西海岸を代表するスターといえば2パック。ブラックパンサー幹部の息子として生まれ、紆余曲折を経て”ギャングスタ”ラッパーとして名を馳せ、ラスヴェガスで最期を迎えるまでを描く伝記映画が本作だ。

SOCと同じキャラクター(実在の人物)も当然ながら役者が違うので、見比べてみるのも面白い。デジタル・アンダーグラウンドのマネー・Bを当の本人が演じていることに驚きつつ。

Netflix / U-Next

 

『誰が2PACを殺したか? -殺害事件の真実』(2017)

そんな2パックはもちろん、ヒップホップ史に残る悲劇のヒーローだ。その死を巡る諸々とデス・ロウ・レコーズの裏事情、そしてシュグ・ナイト社長の極道ぶりは、そこにインスピレーションを得た「シュグ様もの」と呼びたくなるフィクション各種(映画のみならずミステリ小説もある)を作り上げている感がある。ゆえに、当然ながらドキュメンタリーも存在する。それが本作だ。

トレイヴォン・マーティン事件で有名な人権派弁護士、ベンジャミン・クランプが2パック殺害事件の真相に迫ろうとする様子を追ったもの。だが、「赤い服を着た悪魔:シュグ・ナイト」と題された回もあり、ベンジャミン・クランプさんの身が心配になるのだった……。

HULU / U-Next / Amazon Prime

 

『Unsolved: 未解決ファイルを開いて』(2018)

タイトル通り、迷宮入りした事件を追うアンソロジー的シリーズと位置付けられている番組。そのシーズン1は、2パックのみならず、その半年ほど後に起こったビギー(ザ・ノトーリアス・BIG)殺害事件の真相をも追う内容だ。

LAPDの刑事から転身して作家となったグレッグ・キャディング(上記『誰が2PACを殺したか?』にも顔を出す)が書いたノンフィクションを映像化したもので、ジョシュ・デュアメル演じるキャディング刑事とジミ・シンプソン演じるラッセル・プール刑事のコンビを語り手とし、全10話のドラマ仕立てになっている。

面白いのは、シュグ・ナイト役が先述の『オール・アイズ・オン・ミー』と同じDominic L. Santanaで、2パック役は『ストレイト・アウタ・コンプトン』と同じMarcc Roseであること。さらに、元デスティニーズ・チャイルドのラトーヤも(別人役で)出演しているぞ!

Netflix

 

『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ ~ア・トライブ・コールド・クエストの旅~』(2011)

アイス・キューブもバスタ・ライムズも出ていた大学映画『ハイアー・ラーニング』でのネオナチ役が鮮烈だった(が本人はユダヤ系の)マイケル・ラパポートが監督した、評価が非常に高いドキュメンタリー。スコアをマッドリブとピーナッツ・バター・ウルフが手掛けているあたりも、揺るぎないリスペクトを集めるATCQらしい。

U-Next / Amazon Prime

 

『リル・ウェイン ザ・カーター』(2009)

上記のATCQ作品とは好対照と申しましょうか……「宣伝に協力するよ」と約束したはずのアーティスト本人から訴えられる騒ぎとなったのが本作。最高傑作と見なされるアルバム『Tha Carter III』発表前後のリル・ウェインを追ったドキュメンタリー映画だ。制作はヒップホップ界の口論を追う『The Beef』シリーズで知られるQDIII(クインシー・ジョーンズの息子)。

ヒップホップ関連の映像でマリファナを吹かしている場面は多々あれど、紫色の咳止めシロップが嗜好ドラッグとしてこれほどまでにクローズアップされた作品は他にないだろう。だがそれよりも印象に残るのは、リル・ウェインのワーカホリックぶり。ツアー先のホテルでも「思い立ったが吉日!」とばかりに室内でマイクを立ててレコーディングを始める労動倫理、見た人はむしろ心打たれると思うのだが……なぜ訴えたのだ、ウェインよ。

Amazon Prime

 

『ヒップホップ・エボリューション』(2016〜2020)

ヒップホップを通史的に追うドキュメンタリー映像という試みは、時として危険である。安易に取り組むと目も当てられない結果になるのだ。しかし、1シーズンあたり4話という構成で2020年までに全4シーズンが作られている本作は、やはりそれだけの時間をかけているだけあって、かなりしっかりしている。

基本は70年代からの流れを、おおむね時間軸に沿って描くが、トゥー・ショート以降の北カリフォルア湾岸地帯を追う「カリフォルニア:ベイエリア」やヒューストンのスクリューやアトランタのクランクに迫る「南部発の実験的サウンド」など、各エピソードは特定の地域とサウンドをテーマにしたもの。今のところの最新回、シーズン4エピソード4は、50セントの台頭からリル・ウェインの『Tha Carter III』あたりまで。つまり00年代までしか到達していないから、まだ期待できる!

Netflix

 

というわけで、ざっと紹介したヒップホップ関連アーティスト伝記映画と音楽ドキュメンタリー作品。それでも海外とのギャップは残っている。つまり、同じ系列のストリーミングサービスでも、アメリカでは見られるのに日本では「視聴不可」となっているものも多々あるのだ。それらがここ日本で解禁されるのを待ちつつ、そして、架空のアーティストのライフストーリー(ニセ伝記)映画やドキュメンタリーを模した”モキュメンタリー”作品も紹介できる日が来るのを祈りつつ、筆を置きたい。

Written By 丸屋九兵衛


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■著者プロフィール

maruya

丸屋九兵衛(まるや きゅうべえ)

音楽情報サイト『bmr』の所有者/音楽評論家/編集者/ラジオDJ/どこでもトーカー。2020年現在、トークライブ【Q-B-CONTINUED】シリーズを展開。他トークイベントに【Soul Food Assassins】や【HOUSE OF BEEF】等。

bmr :http://bmr.jp
Twitter :https://twitter.com/qb_maruya
オンライントークイベント:https://peatix.com/group/7003758/events
手作りサイト :https://www.qbmaruya.com/

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