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【対談】DJ NORI × DJ MURO:ディスコとCaptain Vinyl、そしてディスコの核心や本質とは?

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全世界にディスコ・ブームを巻き起こしたジョン・トラボルタ主演の決定的な映画、『サタデー・ナイト・フィーバー』が日本で公開されてからこの7月22日で40周年を迎える。

これを機に、改めて「ディスコ」をキー・ワードとした様々なコンピレーションやアルバムのリイシューが既に行われ、リアルタイムでディスコを謳歌した世代を筆頭に、追体験でディスコを味わい始めた世代や、昨今のディスコ/ブギーの一大ブームを通じて新たにディスコをイメージし始めた世代までをも巻き込んで俄かに熱を帯びてきた感がある。

そんな中、DJ NORIとDJ MUROが主催する7インチ・レコードを中心としたジャンルレスなパーティー「CAPTAIN VINYL」名義でこの4月25日に『DIGGIN’ DISCO presented by CAPTAIN VINYL』と冠された2枚組のミックスCDとそこからシングル・カットされる格好で2枚の45回転ヴァイナル・シングルがリリースされた。

前述したように、世代に関わることなく、愛されて止まない“ディスコ”のその本質/正体というものを、“音楽愛”を絶対的なテーマとする「CAPTAIN VINYL」のコンセプトよろしく、2人それぞれのキャラクターに基づきながら描き、紡ぎ出したのがこの決定打的な大作である。

そこで2人のディスコに対する思いや、本作を通じて訴えたいこと、そして今だからこそ捉えたいディスコ観を語ってもらった。

Interviewed & Written by 細田ジャム日出夫


細田ジャム日出夫(以下J):一言で「ディスコ」と言っても、多かれ少なかれ、人それぞれ違う思いを抱きがちですよね?

DJ NORI(以下N)そうですね。ディスコって、もちろん音楽、ダンス、ファッションの上に成立している訳ですけど、時代、時代によってその捉えられ方は変わっていきましたからね。ディスコが生まれた頃は言うまでもなく、全盛だった78年と80年代とではやっぱり違っていたでしょうし、場所的にもアメリカと日本とでは当然違うとも思いますし。

J:NORIさんのディスコ・デビューは?

N僕のディスコ・デビューは地元の札幌です。高校時代は球児だったので、デビューは決して早くはないんですよね。そんな中、70年代後半に札幌から東京に一人で遊びに来て行ったのが六本木のキサナドゥやファーマーズ・マーケットだったんです。その時にも思ったんですけど、結果的に惹きつけられていたのはあのディスコと呼ばれる空間そのものだったような気がするんですよね。

MURO(以下M)僕はまだ若い頃に、新宿のディスコで遊び始めてからというもの、社会科見学ではないですけど、一通り行きまくりましたね。しかも、僕も一人で(笑)。ブースに行ってはDJのかけてる曲をチェックして、その帰りにWINNERS(註:六本木で深夜まで営業していた輸入盤専門レコード店)で頑張って2,000円出してそのレコード(註:12インチ・シングル)を買うみたいなことをしていました。あと、板橋に「ローラー・イン・トーキョー」というローラー・ディスコ(註:ローラー・スケートのリンクが併設されたディスコ)があったんですけど、そこの選曲が凄く良くて、そこによく通ったことも覚えています。

J:新宿でのディスコ・デビュー前にはディスコにどんなイメージを持っていましたか?

Mとにかく憧れてたんですよ、ディスコに。遊びに行けるようになるまでは、ラジオで鈴木雅之さんがパーソナリティーをされていた深夜番組があって、そこで(新宿の)ゼノンとかニューヨーク・ニューヨークのCMがD-TRAINの曲とかで流れてたんですけど、それを聞いてミラー・ボールのあるキラキラの空間を想像して、妄想が膨らんで、もう宇宙規模でしたね。ディスコに行ったら、そこまで行けちゃうんじゃないかと思っていましたからね。

J:場所そのものが「ファンタジー」のような感じだったんですね。

Mそうですね。

Nお店も大きいし、音もデカイし。

J:実際にその空間に足を踏み入れた後はやっぱりそこでプレイされる音楽の存在が大きかったのですか?

N僕の場合は最初はダンスにも魅了されたんですよね。でも、自分にはそもそもダンスは合わないなと思って、DJの知り合いとかも増えていったので、どんどん音楽に傾いていった感じですね。

M:NORIさんと話したこともあるんですけど、自分も全く一緒なんです。結局のところ、僕もダンスは得意ではなかったので、すぐに殆ど踊りもしないでブースに張り付き始めた感じでしすね。それと、19時までに入ると入場料が1,000円とかで、しかもフリー・フード&フリー・ドリンクだったじゃないですか、もう遊び方のヴァリエーションがたくさんあり過ぎるくらいでしたよね。それと誕生日のお客さんにライブ録音のミックス・テープのプレゼントをしていたディスコがあったりしたようなんですが、そういうのをアパレルの先輩とかがお店でかけたりしてて、「これヴァージョンが違う!」とか、そんな衝撃を中学校の時に受けたこともよく覚えてます。まさにノンストップ・ミュージックの魅力の一つですよね。

J:そんなダンスがあって、音楽があって、遊び方のヴァリエーションも豊かなディスコの核心、本質を敢えて言うなら何なんでしょう?

Nそれこそ六本木だと、QUEUEやJESPAみたいにブラック・ミュージックしかかけないお店とか、GIZAみたいにロックやニュー・ウェイヴを中心にかけるお店とか、お店の個性は様々でしたけど、どのディスコも人と人との出会いがあって、そうして集まった人達のパワーが重なりあって、それが一体となった時のあの空間でしか生まれ得ないエネルギーですかね。ライブとかとは明らかに違う特別な一体感。DJが積み上げていった先にあるあの一体感はディスコ特有のものだったと思います。機材や音響設備が凄かったのも、その雰囲気をバックアップするという意味合いも強かったのかもしれませんね。

M僕が遊び始めた頃も、お店の種類も数もたくさんありましたけど、どこも本当に盛り上がっていましたからね。あの空間はクラブでのそれとは異質なものだったと思います。

J:よくディスコが終焉を迎えてクラブの文化が生まれたと言われますよね。

N大体85年くらいからですね。アメリカでもStudio 54がクローズになった時に「ディスコは終わった」と言われたものでした。そう言われることで、ディスコの意味合いが変わっていったんですよね。一方、クラブにはより音楽的に自由な感覚があったと思います。そもそもヒップホップやハウスといったジャンルが生まれて、それに伴って生まれたのがクラブでしたものね。

J:不特定多数から特定少数みたいな感じですね。音楽そのものがディスコの姿そのものを変えてしまった、と。でも、世の中の流れがそうなってきらからこそ、改めてディスコが持つ魅力の核心が語られるようになってきたのかもしれませんね。『サタデー・ナイト・フィーバー』という映画も公開から40年を経てそれまで触れられてこなかった本質に迫りたくなる、みたいな。
そんなことを考え始めると、今回のミックスCDを通じて、「Captain Vinyl」が今に伝える”ディスコ”とは何なのかがとても気になります。

MそれはもうNORIさんサイドの1曲目にある(ブラックバーズの)“Happy Music”じゃあないですけど、そのメッセージが全てだと思うんです。一人でも多くの人が音楽でハッピーになれるように、ということ、それが「Captain Vinyl」の目指すところなんです。だから、ディスコというテーマにはまさにピッタリと合致していて。それと、「Captain Vinyl」というパーティーはいつも「筋書きのないドラマ」なんですけど、実は今日の今日までお互いの選曲を敢えて知らないままにしていたので、今日になって初めてNORIさんが“Happy Music”でスタートして、僕がアル・ハドソン&ザ・ソウル・パートナーズの“Happy Feet”で締めてるというのには、ちょっとビックリしています。

N本当、そうですね(笑)。僕のサイドはジャンルや時代にとらわれない流れになっていて、「Captain Vinyl」のパーティーと同様にミックスには全て45sを使っています。で、要所要所でアリシア・ブリッジスの“I Love The Night Life”とか、ドナ・サマーの“I Feel Love”のような黄金時代に生まれた“永遠のディスコのテーマ”のような曲を散りばめていていますけど、全体を通したセレクションは基本的にはMUROくんと考え方は変わりませんね。

J:MUROさんのミックスは45sにこだわったものではないですよね。

M:はい、スターポイントの“Miracle Love”のように、7インチになったらいいなあという曲も意識的にセレクションに加えたりしています。

J:ヴァイナルのシングルがこのミックスCDからカットされるという部分にも繋がっている感じですね。ところで、ジャケットはカサブランカ・レコードのロゴと12インチのスリーヴ・デザインが元ネタになってますよね。「Casablanca」も「Captain Vinyl」も「C」始まりですし。

MこのアイデアはNORIさんとも完全に考えが一致しましたね。

Nドナ・サマーとか、キッスとか、ディスコをブームにしたそれこそ象徴的なレーベルですからね。


『サタデー・ナイト・フィーバー』の公開からでも早40年、である。時代が流れても変わらないもの。時代が流れたから見えてくるもの。

ディスコの時代をリアルタイムで体感し、場としてのディスコが姿形を変えても、現在へと至るまで人を惹きつけるダンス・フロアの根源的な魅惑というものを身をもって知るのがこの2人、なのだ。

今回のミックスCD、『DIGGIN’ DISCO presented by CAPTAIN VINYL』がディスコの正体、スピリットを暴いて余りある作品集となっているのは、それゆえ、なのである。

-JAM


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