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ミイナ・オカベのルーツと軌跡:Reelで75億再生、月9主題歌にも抜擢された日系デンマーク人の音楽
デンマーク人の父親と日本人の母親を持ち、コペンハーゲンを拠点に活動するシンガーソングライター、ミイナ・オカべ(Mina Okabe)。
2021年にリリースしたデビュー・アルバム『Better Days』のリード曲「Every Second」を使った動画がInstagram上で300万本/合計75億回以上の再生を記録して日本をはじめ、世界中でトレンドとなり、2023年10月から放送されたフジテレビ系月9ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』の主題歌に大抜擢された。
小袋成彬がプロデュースをした主題歌「Flashback feat. Daichi Yamamoto」は10月に配信、11月にはこの曲や「Every Second」を収録したEPが発売となっている。そんな彼女のインタビューを掲載します。
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音楽的バックグラウンド
―― 最初にプロになる前のことをお伺いします。海外のインタビューで祖母はクラシック歌手、両親も楽器を演奏していたとおっしゃっていたのを拝見しましたが、音楽一家だったのですか?
お父さんはドラムをバンドで叩いたりしてたんですけど、それはお父さんが10代の頃で、お母さんもトランペットを少しやってたんですけど、それも昔の話で、今は両親2人ともそんなに楽器は演奏していないんです。祖父母、特におばあちゃんが、クラシックを演奏家だったので、おばあちゃんの方の家族が、音楽一家だったっていうのは、あると思います。両親は、プロのミュージシャンではないのですが、私に音楽レッスンを受けさせてくれたり、音楽活動を応援してくれたりして、すごく力になってくれました。
―― ちなみに子どもの頃はビヨンセになりたかったとか?
(笑)。正確にはビヨンセになりたかったわけではなくて、シンガーになりたかったんです。歌手になるなら、やっぱりビヨンセみたいに歌えないとダメじゃないかなって子供の頃はずっと思っていて。すごい歌が上手い友達とか、オーディション番組の「X-Factor」を見ていると、ビヨンセぐらいのレベルまでいかないといけないんだって思いこんでいて。あとでビヨンセみたいに歌えなくてもプロになれることを学んで、今に至ります。
―― 初めて行ったコンサートは誰のライヴでしたか?
10歳の時なんですが、大ファンだったアヴリル・ラヴィーンのコンサートに行ったのが初めてのコンサート体験でした。父がすごい出張が多い人だったんですが、とある出張先で、たしか2010年ごろかな? CDショップに寄った時に、店内放送でアヴリルが流れていたそうなんですが、「この曲は娘が好きかも!」と思って、CDを買ってきてくれたんです。父の思った通り、アヴリルにはまって、家の車の中で何度も聞いてましたね。
―― 他にもエイミー・ワインハウスが大好きだとのことですが、一番好きな曲はなんですか?
スタジオアルバムでは『Back to Black』に収録されていた「Wake Up Alone」っていう曲があって、彼女が亡くなった後に発売された『Lioness: Hidden Treasures』に、スローでジャジーなヴァージョンが収録されていたんです。それは“original recording”と呼ばれていて、そっちのヴァージョンが大好きで、歌詞もそうだし、サウンドもそうだし、彼女の歌い方もそうだし。それが今の自分の1番好きな曲です。
―― 小さい頃はお父さんのお仕事の関係で、色んな国を転々とされたそうですが、デンマークに長く定住され、そこで音楽活動を続けて、デビューされました。そのデンマークで流行っている音楽はどういうものでしょうか?
私はデンマークでは育ってないので、昔のデンマークでどんな音楽が流行っていたかはそこまで詳しくは知らないんですけれども、今のデンマークで流行ってるのは、デンマークのポップミュージックで、80sから影響を受けたものだったりとか、あとはデンマーク語のラップがすごい流行ってますね。
「Every Second」のバイラルヒット
―― それではここからご自身の音楽についてお聞かせください。「Every Second」は今にもなくなりそうな恋愛についての内省的な曲ですが、この曲は今や、TikTokやInstagramで曲本来の世界観が広がって、様々な映像で使われています。作曲した本人としてそういった使われ方は、嬉しいものですか? それとも驚くものですか?
こうやって広がっていってることが、私にとってすごく大きな意味を持ってることです。この曲について「いいね」をしてくれることはすごくエキサイティングですし、もちろん感謝もしています。
この曲が持ってる意味っていうのも実は大切で、今を楽しもう、未来を心配しすぎないでっていうことを自分自身に言い聞かせるためにこの曲を書いたんです。すごくいいメッセージを持った曲ができたなって気づいたんです。だから、ライヴで歌っている時も、その瞬間を楽しめるっていうことが伝わると思うんです。なので、皆さんがそういうメッセージを受け取ってくれたらすごく嬉しいなっていう風に。
―― 「Every Second」のMVは、とてもきれいな海辺をドライブするシーンが印象的です。スペインのアリカンテで撮影されたとのことですが、なぜスペインで撮影することになったのですか?
最初に、この曲のMVのビジュアルをどうしようかってなった時に、いろんな写真や画像だったり、参考になるものを集めていたんです。そこで、集めたものの共通点に気づいたんです。それってちょっと温かみのある、自然な、ナチュラルな感じの雰囲気だったんです。
そういう雰囲気を演出しようとしたんですが、北欧やスカンジナビアでは、そういうところがないんですよね。すごく寒いですし、色味も白ばっかりで。だから、ちょっとそこから離れようってことで、フランスに行ったんです。自分のアルバムのために、最初の写真を撮るのをフランスにしたんですね。そのあとに訪れたスペインの街の色だったり、自然の色っていうものにすごく惹かれて。そこで自分の曲が流れるのを聞いた時に、感じるものがあったんです。だからスペインのあの場所でミュージック・ビデオをとることにしたんです。
―― 作曲の際には、詩が先ですか? メロディやサウンドが先ですか?
メロディが先ですね。メロディが出来たあとで、歌詞が自然に自分の中から出てくるんです。なので、自分がその時感じていることが歌詞になる感じですね。その歌詞にまた、影響されてメロディもまた変わっていくこともあります。
月9主題歌や日本について
―― ドラマの主題歌となった「Flashback」のトラックは、ミイナの他の曲と違って、サウンドやリズムの曲だと思います。レコーディングした際に、難しさはありましたか?
すごく面白かったです。今回、この曲に挑戦させてもらって、すごくエキサイティングでもありました。自分が普段作ってる曲とはサウンドが違うんですが、なぜかこの曲のスタイルに、自分の歌がしっくりきたんです。そこに自分なりのツイストを加えることもできて、あの曲を自分の音楽にすることができたと思います。
―― 「Flashback」の作詞は日本語ですが、通常の英語での作詞と違ってテクニカル的に難しさはありましたか?
もちろん英語で歌うよりは、難しかったんですが、スタジオの中にいる皆さんも、すごくいい人たちだったし、忍耐強く自分が歌う慣れていない日本語の歌唱に付き合ってくれたんです。その体験も楽しかったですね。
―― カラオケで「Flashback」を歌おうとする人に、アドバイスはありますか?
自分の息遣いで、自由に歌ってくれるのが1番いいと思います。
―― 様々な日本のプロモーションの中で、一番印象に残っているものはありますか?
ラジオ番組への出演とか、ライヴをやったこととか、ドラマ『ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜』のセットに行ったこととか。ドラマのセットに行ったこと自体が、人生で初めてでした。ユニバーサル ミュージックのチームと一緒に仕事できたのも楽しかったし、皆さん一生懸命仕事してくれて、そこにもすごく感謝してますし、ほんとに数えきれないですね。
―― コペンハーゲンと日本でのライヴ、お客さんの印象は違いましたか?
どちらも違ってて、楽しいですが、日本ではリスペクトを感じられました。お客さんが、自分の音楽を聴いてくれてることがすごい伝わってきますね。曲の間のMCでトークをしてても、リラクションがよく返ってきますし、そういうことも楽しむことができました。
デンマークのコペンハーゲでのライヴでは、演奏中にみんなはお喋りしたり、ビールを飲んだり、酔っぱらっちゃったりとか(笑)。それはまたそれで楽しいですね。2つの違う楽しみ方があって、すごくいいと思います。
―― ドラマ「ONE LOVE」をご覧になっているかとお聞きしましたが、自身の楽曲がドラマの最後に使われた時の印象を教えてください。
ほんとうにクレイジーで、最初は全然信じられませんでした。ドラマの中であの曲が流れるまでは、リラックスもできなかったし、もしかしたらテレビ局の方の気が変わって、私の歌が使われてないんじゃないかもとか心配になってました(笑)。でも、実際に、曲が流れるのを聞いて、すごく興奮したし、日本人の母ももちろんそうですし、自分の日本の親戚やファミリーもみんな、すごく喜んでくれました。
―― 2024年に叶えたいことはありますか?
今、アルバムを作っているところで、それをリリースできたらいいなっていうのがまず1つです。今書いてる新曲が、自分も年を重ねていって、今までとちょっと違う側面を出すことができると思うので、そういったところも気に入ってくれたら嬉しいなって思います。
それと旅もいっぱいしたいですし、ライヴもいろんな場所でやりたいし、日本に戻ってきたいし、日本では単独公演もやって、音楽フェスにも出てみたいですね。今はそれが自分の中での目標です。
Written By uDiscover Team
ミイナ・オカベ『Flashback EP』
2023年11月10日発売
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