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【Today at Appleレポート】辻井伸行が圧巻の演奏を披露。《ハンマークラヴィーア》を語る
日本を代表するピアニストであり、クラシックの名門レーベル ドイツ・グラモフォンと専属契約を結ぶ 辻井伸行が、2月12日(水)午後6時からApple表参道で開催された Today at Apple「スポットライト:辻井伸行と探る、クラシック音楽とApple Music Classicalの魅力」に登場。イベントでは、圧巻の生演奏を披露し、ベートーヴェンの最難曲とされる《ハンマークラヴィーア》の魅力について語った。
Apple表参道がコンサートホールに変わる瞬間
Apple表参道には多くの観客が詰めかけた。外からガラス越しに演奏の様子を見守る人々の姿も。オープニングで辻井が演奏したのは、ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール優勝時に弾き、ドイツ・グラモフォンからの世界デビューアルバムにも収録されている「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 Op.106《ハンマークラヴィーア》第1楽章」。彼の堂々たる演奏が始まると、Apple表参道の空気は一変し、まるでコンサートホールのような緊張感に包まれた。
続いて披露されたのは、ショパン《ノクターン第8番》、リスト《リゴレット・パラフレーズ》。情感豊かな音色が響き渡り、会場は一層の熱気に包まれた。
ベートーヴェンの難曲に挑む想い
演奏後には、ナビゲーターとのQ&Aセッションが行われた。
辻井は、《ハンマークラヴィーア》について「ベートーヴェンの32曲あるピアノ・ソナタの中でも最も難しい曲。体力的にも精神的にも非常に大変で、表現も奥が深く難しい」と説明。録音にあたっては、「ベートーヴェンの葛藤や痛み、苦しみ、自分との闘いを経て、最後には勝利をつかむ——その長い長い旅をどのようにお客様に届けるかに苦労した」と振り返った。
また、この曲は彼が 20歳でヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールに優勝した際に演奏した思い出の一曲でもある。当時は「弾く事に一生懸命だった」が、15年の時を経て「改めてこの曲の良さが分かるようになった」と語った。
ヴァン・クライバーンから託された言葉
「人生の中で印象に残っている言葉は?」という質問に対し、辻井が挙げたのはヴァン・クライバーンの言葉だった。クライバーンが亡くなる直前、辻井にこう語ったという。
「クラシック音楽に興味のない人にも、生の演奏を届け、コンサートに足を運んでもらえるようなピアニストになりなさい」
その言葉通り、彼はApple表参道という普段の演奏場所とは違う空間でも、多くの人々にクラシックの魅力を伝え、感動を届けていた。
サプライズ・アンコールで「ラ・カンパネラ」
Q&Aセッションが終わり、プレゼンテーターがイベントの締めくくりを告げようとした瞬間、辻井が「せっかくですので、アンコールを」と提案。最後に披露されたのは、リストの名曲 「ラ・カンパネラ」だった。
煌びやかな音がApple表参道に響き渡り、演奏が終わると同時に会場は大きな拍手と「ブラボー!」の歓声に包まれた。辻井伸行のピアニズムと、クラシック音楽の持つ力を存分に感じられる特別な一夜となった。
なお、今回のイベントでは、昨年、日本でローンチされたApple Music Classicalの魅力についても語られた。普段、Voice Over機能を活用してiPhoneを使っているという辻井は Apple Music Classicalについて、「聴きたい曲名やアーティスト名を検索するとすぐ出てくるのでとても便利です。空間オーディオはコンサートホールでの生の演奏を聴いているような臨場感があります。」と語った。
今回のイベントを機に、辻井が2015年にリリースしたウラディーミル・アシュケナージ指揮、ベルリン・ドイツ交響楽団演奏による「ショパン: ピアノ協奏曲 第2番 & ノクターン」のドルビーアトモスによる空間オーディオでの配信がスタートした。こちらも『べートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番《ハンマークラヴィーア》、遥かなる恋人に』とともに、没入感あふれる空間オーディオ体験で是非お楽しみいただきたい。
※辻井伸行の「辻」の字は、正しくは一点しんにょうです。
■リリース情報
辻井伸行
『べートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番《ハンマークラヴィーア》、遥かなる恋人に』
2024年11月29日 発売
CD/ Apple Music / Apple Music Classical / Spotify / Amazon Music / iTunes
■公演情報
2025年2月~6月 大和証券グループ presents 辻井伸行 日本ツアー2025
東京・大阪・神奈川・静岡・栃木・福井・宮城・山形・広島・福岡・熊本・鹿児島・高知・札幌にて全17公演開催。
詳細はこちら
- 辻井伸行 オフィシャル・サイト
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