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Classical Features

ダニエル・バレンボイム、ピアニスト単独では16年ぶりの日本ツアー実現

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© Paul Schirnhofer / DG

ダニエル・バレンボイムが2021年6月、シュターツカペレ・ベルリンを指揮したブルックナー交響曲全曲シリーズ以来5年ぶりに来日することが急きょ決まった。ピアニスト単独では16年ぶりの日本ツアー。ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ」だけ2種類のプログラムで臨む。

4月12日には主催者の一つ、日本経済新聞社の本社(東京・大手町)とベルリンのバレンボイム宅をZOOMで結んだ記者会見が開かれ、マエストロはコロナ禍のさなかに来日できる喜びを率直に語った。


会見はバレンボイムの簡単なスピーチで始まった。

「日本にはいくつもの思い出があります。最初に訪れたのは1966年と、大昔のことです。1980年代にはベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ》全曲演奏会(第1~32番)も行いました。私が日本を好む最大の理由は、音楽に対する聴衆の強い関心です。単なるイベントに足を運ぶのではなく、何か人生に重要なものを体験しようと思って集まり、一心な気持ちで聴いてくださいます。

今回はベートーヴェンのソナタだけ、2種類のプログラムを用意しました。ひとつは最初の4つのソナタ、もうひとつは最後の3つのソナタです。とりわけ今回は新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の問題が収束せず、全ての人々の健康への配慮と経済問題の板挟みといえる状況の中、文化と精神の側面の重要性が問われています。日本ツアーを実現できて、本当に良かったです」

撮影_中嶌英雄

続いて質疑応答。会見場に集まったジャーナリスト&評論家、オンライン参加を合わせ、6人の質問に答えた。

―32曲あるソナタのうち、なぜ最初の4曲と最後の3曲に絞り、〝中抜け〟にされたのですか?

「非常に期間を絞った日程で3都市を回るので、この組み合わせにしました。もし東京だけでも8回できるのであれば、ソナタ全曲演奏会にしたと思います」

―日本に特別なピアノ(バレンボイム=マーネ・スタインウェイ)を持ち込まれるそうですが、音の特徴を教えてください。

「同じタイプを2台、所有しています。新しいといっても、もう5〜6年は弾いてきました。従来のスタインウェイとの大きな違いは弦(ピアノ線)の張り方です。高音域は3本の弦を平行に、(通常は他の弦と交差する配置をとる)中間部のハ音から下の低音域でも太い弦を段違いで平行に張っています。これで音が透明度を増し、より豊かな響きを得られます」

―昨年、DG(ドイツ・グラモフォン)レーベルで制作された5度目のソナタ全曲録音の会場、ベルリンのピエール・ブーレーズ・ザールと、今回の演奏会場であるサントリーホールとでは規模も音響も異なります。何か特別な調整をなさるのですか?

「サイズの違いは大した問題ではありません。ブーレーズ・ザールでの全曲演奏会と平行し、はるかに巨大なフィルハーモニー・ド・パリでも同様の曲目を弾きましたが、ホールの特性に合わせるのもピアニストの力量のうちです。サントリーホールでは何度もピアノを奏で、指揮もしてきました。ブーレーズ・ザールともども、とりわけ音響の良いホールなので、何の心配もしていません」

―最後3つのソナタについて興味深い発言をされていましたが、より詳しく話してください。

「前に何を言ったのか、もう忘れてしまいました(笑)。私たちは内面と外面、両方の世界で音楽と結びついています。3曲は(番号としての)最後だけにとどまらず、文字通りのファイナル、一つの役割を終えて到達した満足感とともに奏でる作品です。日本の聴衆の皆さんも、そのような感覚に浸り、じっくりと耳を傾けていただければと思います」

Beethoven: Piano Sonata No. 30 in E Major, Op. 109 – I. Vivace, ma non troppo – Adagio…

―J.S.バッハに続き、ベートーヴェンも変奏曲やフーガに実績を残しました。両者の違いは?

「バッハとベートーヴェンは、二つの全く異なる世界です。もちろん、バッハという先行モデルがなければ、ベートーヴェンもあそこまでの変奏曲やフーガは書けなかったでしょう。《ハンマークラヴィーア》(ピアノ・ソナタ第29番)のフーガは巨大な次元を切り開き、バッハにはなかった劇場的なドラマを繰り広げます。良い質問をありがとう!」

―COVID-19の世界拡大(パンデミック)を境に、何が変わりましたか?

「演奏の準備をし、音楽づくりに没頭する基本には、何の変わりもありません。変わったのは、計画を立てられなくなったことです。コロナ禍前は2ー3年先の予定を入れることができましたが、今は全く見通しが立ちません。6月の短い日本ツアーも〝ラストミニッツ〟(最後数分の駆け込み)でようやく、決まりました」

最後にマエストロから締めの一言があった。

「日本へ行くことを、本当に楽しみにしています。COVID−19の弊害のひとつは、人々の簡単な往来を妨げ、旅行の自由を奪ってしまったことです。私には、我慢がなりません! だからこそ、日本への旅を心待ちにしているのです」

Written By 池田卓夫 音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎


■ダニエル・バレンボイム ピアノ・リサイタル 公演概要

【ツアースケジュール】

●東京公演「ベートーヴェン ピアノ・ソナタの系譜」
2021年
6月3日(木)19:00開演 サントリーホール プログラムA
6月4日(金)19:00開演 サントリーホール プログラムB

●大阪公演「後期三大ソナタ」
6月7日(月)18:30開演 フェスティバルホール プログラムB

●名古屋公演「後期三大ソナタ」
6月9日(水)18:45開演 愛知県芸術劇場コンサートホール プログラムB

【プログラム】

A~最初のソナタ~
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第1番 作品2-1
ピアノ・ソナタ第2番 作品2-2
ピアノ・ソナタ第3番 作品2-3
ピアノ・ソナタ第4番 作品7

B~後期三大ピアノ・ソナタ~
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第30番 作品109
ピアノ・ソナタ第31番 作品110
ピアノ・ソナタ第32番 作品111

【東京公演概要】

6月3日(木)4日(金)19時開演(18時開場) サントリーホール
主催:テンポプリモ/サンライズプロモーション東京/日本経済新聞社
チケット:4月18 日(日)10時発売
S席22,000円 A席18,000円 B席14,000円 P席10,000円
(全席指定・税込)
お問合せ:テンポプリモ 03-3524-1221


■リリース情報

ダニエル・バレンボイム『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集』
2020年12月16日発売
CD / iTunes /Amazon Music / Apple Music / Spotify




 

 

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