英国チャートで最も名誉な1位のタイミング:クリスマス週でのシングル1位獲得の歴史

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毎年、ホリデー・シーズンには必ず新しい音楽がリリースされるが、英国ではクリスマスの週にシングル・チャートで1位になる楽曲は、伝統的に大きな意味を持ち続けている。しかし、事情を知らない人からすれば、首位の座を目指す戦いはいささか激しすぎると思うだろう。

有名なところでは、ラヴコメ映画『ラブ・アクチュアリー』の中で、ビル・ナイが演じる老齢のロック・スター、ビリー・マックが、ザ・トロッグスの「Love Is All Around」をリメイクした「Christmas Is All Around」で、クリスマス週に1位となった。このビリー・マックによる架空の楽曲は、毎年クリスマスの時期にチャートの上位を目指して熾烈な戦いを繰り広げるシングルにも見事に溶け込んでいる。

リアリティ番組からリリースされたシングルやチャリティ・ソングに至るまで、クリスマス・ナンバー・ワンへの人々の熱狂の具体は未だ全く衰えを見せる気配がない。

ただし、陽気なクリスマス・ソングが常にクリスマス週の1位になっていたわけではない。ザ・ビートルズ60年代に、ソリや雪などへの言及は一切ない「I Want To Told Your Hand」や「I Feel Fine」「Day Tripper」、そして「Hello Goodbye」で、1度どころか4度もクリスマス週で1位を獲得したのだ。

 

クリスマス週1位のチャート争いが激しくなったのは、1973年になってからである。社会や経済の不安が大きくなったこの時期、グラム・ロック・バンドのスレイドとウィザードが、独自のクリスマス・アンセムをリリースしたのだ。

ブリット・ポップのバトルが始まる遥か以前、スレイドは「Merry Xmas Everybody」で、ウィザードは「I Wish It Could Be Christmas Everyday」で、両バンドが対決。どちらが王座に就くかを決めるためにファンも対決したのだった。その結果、スレイドがトップに輝いたが、この対決は、ストレスの多い現代において、ありがたい気晴らしとして受け入れられると、悪趣味なクリスマス・セーターやフランク・シナトラと並んで、ホリデー・シーズンに欠かせない風物詩となった。

それではホリデー・シーズンを祝って、私たちの心をつかんだ印象深いクリスマス・ナンバー・ワンをここに紹介しよう。

 

バンド・エイド「Do They Know It’s Christmas?」(1984年)

一般的に、チャリティ・ソングは息が短いと考えられているが、1984年のエチオピアの飢餓救済のためにボブ・ゲルドフが作曲し、大勢のスターたちが参加したこの曲 は、史上最も売れたクリスマス週1位の楽曲であり続けている。シングルは、380万枚以上のセールスを記録し、多額の救済資金を調達した。当時の人気シンガーを40人近くも集めたこの曲は、善意に基づく過剰主義の好例で、今でもあちこちのスーパーマーケットで流れている。

 

ベニー・ヒル「Ernie (The Fastest Milkman In The West)」(1971年)

チャリティ・ソングはクリスマス・チャートの常連だが、コミック・ソングもホリデー・シーズンに高い人気を誇る。スキャッフォードの「Lily The Pink」やミスター・ブロビーの「Mr Blobby」に至るまで、多くのコミック・ソングがチャートの首位を獲得したが、どのシングルもコメディアンのベニー・ヒルがリリースしたこの曲の足元にも及ばない。牛乳配達人からテレビ業界のアイコンとなったベニー・ヒルが1971年、自身の人気コメディ番組のために作った同曲はクリスマス週で1位となった。ベニー・ヒルはこの曲の中で、「毎日、朝はあたたかいロールパン、夜はクランペット」の素晴らしさを讃えている。

 

クイーンBohemian Rhapsody」(1975年、1991年)

クリスマス直前にリリースされたクイーンの『A Night At The Opera』と圧巻のリード・シングル「Bohemian Rhapsody」は、チャートを制すると、その勢いを長らく維持し続けた。同曲は1975年にクリスマス週1位となっただけでなく、それから16年後の1991年に、クイーンのフロントマンだったフレディ・マーキュリーの死を受けて再び首位を獲得した。「Bohemian Rhapsody」がクリスマス週1位に輝いたおかげで、我々はクリスマス・ツリーの周りでホット・チョコレートの「You Sexy Thing」(クリスマス・チャートの2位だった)を歌わずにすんだのだ。「Bohemian Rhapsody」は英国で史上最高セールスを記録したシングルとなり、201812月には、20世紀で最もストリーミングされた楽曲となった。

 

ウィングス「Mull Of Kintyre」(1977年)

ホリデー・ナンバーを演奏するパイプ・バンドは、チーフタンズの独壇場ではない。スコットランドの隠れ家を愛してやまなかったポール・マッカートニーは、そこからインスピレーションを受けると、地元のキャンベルタウン・パイプ・バンドの助けを借りて、ウィングスのバンドメイトだったデニー・レインと共に「Mull Of Kintyre」を書き下ろした。物憂げな同曲は、クリスマス・アンセムには程遠いが、それでも英国ではウィングスにとって最大のヒットとなり、200万枚以上のセールスを記録した初のシングルとなった。

 

ボニーMMary’s Boy Child/Oh My Lord」(1978年)

ディスコ・グループのボニーMが放ったクリスマス・ヒットは、毛皮をまとってカリプソのリズムで踊る彼らのミュージック・ビデオと一緒に鑑賞するのがおすすめだ。ボニーM1978年、「Rivers Of Babylon」と「Brown Girl In The Ring」のシングルでミリオンセラーを記録しているが、50年代のクリスマス・キャロル「Mary’s Boy Child」に「Oh My Lord」のアレンジを加えたフランク・ファリアンによるプロデュースのこのホリデー・シングルで、ミリオンセラーをもう1枚手に入れた。

 

ヒューマン・リーグ「Don’t You Want Me」(1981年)

ホリデー・シーズンは、誰にとっても精神的に辛い時期にもなりかねない。報われない恋に傷ついた気持ちを綴った歌詞と、極めてキャッチーなコーラスを組み合わせたヒューマン・リーグのシンセポップ・アンセムが、多くの人々の共感を呼んだのも納得のいく話だ。クールなミュージック・ビデオも印象的な「Don’t You Want Me」は、予想外のクリスマス・ナンバー・ワンに輝き、5週にわたって英国チャートの首位を維持した。

 

ガールズ・アラウド「Sound Of The Underground」(2002年)

企業のタイアップ企画ほど、クリスマスらしいシングルはない。2000年代はじめから台頭したオーディション番組をきっかけに、リアリティTVスターがクリスマス・チャートを席捲するようになった。その先陣を切ったのが、2002年にデビューしたガールズ・アラウドだ。当時のテレビ番組『Popstars: The Rivals』からは、ガールズ・アラウドとワン・トゥルー・ヴォイスという2つのライバル・グループが誕生した。そして同番組は、毎年恒例のクリスマス週1位の争いで2つのグループを競わせたのだ。2005年から2008年、2010年、2013年、2014年と、リアリティ番組の優勝者がチャートで首位を獲得した。

 

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン「Killing In The Name」(2009年)

X Factor』の優勝者が毎年チャートの首位を独占した後、ファンによるFacebookのキャンペーンによって、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが1992年にリリースしたシングル「Killing In The Name」が2009年の『X Factor』優勝者、ジョー・マケルダリーを破り、クリスマス週1位曲となった。このヒットにより、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンはダウンロード限定シングルでクリスマス・ナンバー・ワンを獲得した最初のグループとなった。

 

ジャスティス・コレクティヴ「He Ain’t Heavy, He’s My Brother」(2012年)

2012年に発表され、ヒットを記録したこの曲は、小規模なアプローチでチャリティを行った。世界の飢餓を救いはしなかったが、1989年、シェフィールドのヒルズボロ・スタジアムで大勢の死傷者が出た事故、ヒルズボロの悲劇の被災者支援のために資金を集めたのだ。このスーパー・グループには、ポール・マッカートニー、ポール・ヒートン、スパイス・ガールズのメラニー・C、ロビー・ウィリアムズなどが名を連ねたほか、ホリーズのオリジナル・メンバー、ボビー・エリオットとトニー・ヒックも参加した(「He Ain’t Heavy, He’s My Brother」をまず世に知らしめたのはザ・ホリーズだった)。同曲は2012年、『X Factor』の優勝者、ジェイムス・アーサーとの首位争いに勝利した。

Written by uDiscover Team



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