サウンドガーデンのベスト・ライヴ15: 記憶に残るパフォーマンスをランキング
サウンドガーデン(Soundgarden)のベスト・ライヴは、このロック・レジェンドが単なるバンドではなく、音楽界で他者の追随を許さないサウンドの突撃部隊だったことを証明している。器用なリズム・セクションであるマット・キャメロンとベン・シェパードが極めて重要な基盤を提供し、そこへギタリストのキム・セイルがトニー・アイオミばりの激しいリフを爆発させ、フロントマンのクリス・コーネルがマルチ・オクターブの声域で、ステージ上で存在感を示しながら見事にキメている。その繋がりには弱点は存在しない。
シアトル出身の多才な4人組が生んだ輝かしい作品群には、『Badmotorfinger』や1994年の並外れた作品『Superunknown』など、高く評価されたオルタナティヴ・ロックの試金石がある。そして、そうしたスタジオ・レコーディングが、彼らの伝説を確実なものにしていったのは確かだが、サウンドガーデンが生来の力を発揮したのは、間違いなくステージ上だった。この非凡なバンドを賞賛すべく、uDiscover Musicは彼等のキャリアを総括した、サウンドガーデンのライヴから選りすぐった15曲を紹介しよう。
自分の好きな曲が入っていない。もしくは、ここに挙げた中で実際に足を運んだものはある場合は、下のコメント欄でぜひ教えていただきたい。
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15位「Get On The Snake」(ウイスキー・ア・ゴーゴー、ロサンゼルス、1989年)
サウンドガーデンは、メジャー・レーベルと契約を交わした初のシアトル出身のグランジ・バンドとして、1989年にA&Mレコードからセカンド・アルバム『Louder Than Love』をリリースした。
ユニバーサル・ミュージック・グループ傘下の新レーベルは、後にニルヴァーナやR.E.M.のビデオを手掛けることになる監督のケヴィン・カースレイクに、サウンドガーデンがアルバムを引っ下げた全米ツアーのショウのひとつを撮影する許可を与えた。
ハンディ・カメラによって撮影され、1990年5月に『Louder Than Live』として発表されたこのモノクロ映像には、人気の波に乗るクリス・コーネルとバンド・メンバーの生き生きとした姿が捉えられている。
ロサンゼルスにあるロックの聖地“ウイスキー・ア・ゴーゴー”で行なわれたこの感情を刺激するステージは、「Get On The Snake」の容赦なくヘヴィーなヴァージョンでピークを迎える。このオーディオ・レコーディングは後年、彼等のキャリアを総括したアンソロジー『Telephantasm』(2010年)に収録されている。
14位「Burden In My Hand」(サタデー・ナイト・ライヴ、1996年)
壮大な『Superunknown』に続く作品としてリリースされた、サウンドガーデンの5作目アルバム『Down On The Upside』は、1996年で最も人々の期待を集めたリリースだった。バンドは本作のファースト・シングルにアンセム調の「Pretty Noose」を選んだが、1996年5月には、ニューヨークにあるNBCの“サタデー・ナイト・ライヴ”のスタジオで、それに続くシングル「Burden In My Hand」の華々しいヴァージョンをパフォーマンスしている。
ジム・キャリーによるバンド紹介と、分割画面技術を駆使した撮影の元、、サウンドガーデンは、力強くカリスマ性に溢れた演奏を披露した。黒シャツとそれにマッチしたフェンダー・テレキャスターを纏ったクリス・コーネルはとりわけシャープに見えた。
13位「Fell On Black Days」(ヘンリー・J・カイザー・コンベンションセンター、オークランド、1996年)
サウンドガーデンは5枚目のアルバム『Down On The Upside』に続いて、初の公式ライヴ・アルバムをリリースする計画を立てていた。そのことを念頭に置きつつ、彼らはプロデューサーのアダム・キャスパー(エアロスミス、フー・ファイターズ)に、1996年に行なわれた全米ツアーの西海岸での公演の幾つかを、24トラック移動式設備でレコーディングするよう依頼した。
このプロジェクトは1997年のバンド解散で一旦は流れてしまったが、その13年後のバンド再結成時に再考されることになった。2011年3月にリリースされた『Live On I-5』(タイトルはパシフィック・コースト・ハイウェイの5号線から拝借)を聴くと、サウンドガーデンが『Down On The Upside』の制作作業にライヴ感覚で臨んでいたことが分かる。『Live On I-5』に収録されている幾つかのトラックもまた、サウンドガーデンのベスト・ライヴ選考における対抗馬となるが、この「Fell On Black Days」(『Superunknown』に収録の)激しいヴァージョンもまた欠くことのできない1曲としてランクインした。
12位「Beyond The Wheel」(エキシビション・スタジアム、トロント、1993年)
長きにわたってその実力を証明してきたサウンドガーデンだが、バンド4枚目にあたる大作『Superunknown』の制作に着手した頃の彼らは、とにかく計り知れない力を持つ存在となっていた。
トロントのエキシビション・スタジアム公演(1993年)で録られた、ブラック・サバスを彷彿とさせるデビュー・アルバム『Ultramega OK』の収録曲「Beyond The Wheel」(後に「Black Hole Sun」のB面としてリリース)の完全に統制されたライブ・ヴァージョンがその紛れもない証拠である。広い音域をカヴァーするクリス・コーネルの歌いっぷりは驚異的である。
11位「My Wave」(ジョーンズ・ビーチ・アンフィシアター、ニューヨーク、1993年)
この素晴らしいライヴ・ヴァージョンは元々アルバム『Superunknown』のキー・トラックのひとつであり、後に同アルバムのデラックス再発盤にも登場した。同じくトロントのエキシビション・スタジアム公演(1993年)で録音されたこの「My Wave」の卓越したテイクは、マット・キャメロンがドラム・キットの後ろで奇跡とも言える至難の業を披露し、キム・セイルがリフを刻み続ける中、クリス・コーネルの歌が巧みにその波に乗る、楽しくも荒れ狂う内容になっている。
10位「Jesus Christ Pose」(ラッシュモア・プラザ・シヴィック・センター、ラピッド・シティ、サウスダコタ、1993年)
サウンドガーデンの楽曲の中でも恐らく最も感情に訴える「Jesus Christ Pose」もまた、ライヴでは激しく披露され、その様子はクリス・コーネルの自虐的な歌詞とマッチしていた。
この並外れた曲の決定的なライヴ・ヴァージョンを選ぶのは難しいが、1993年にサウスダコタのラッシュモアで録音されたこの7分に渡る圧巻のテイク(当初はCDシングル「Black Hole Sun」のエキストラとして、後に『Telephantasm』に収録された)はとにかく素晴らしい。
9位「Searching With My Good Eye Closed」(『Hype!』映像パフォーマンス、1996年)
『Badmotorfinger』時代の不気味なサイケ・ロック・ナンバー「Searching With My Good Eye Closed」は、90年代サウンドガーデンの大半のライヴ・セットの見せ場だったため、この曲のライヴ・パフォーマンスを選ぶには選択肢が多過ぎるほどだ。
『Live On I-5』のテイクも素晴らしいが、ダグ・プレイ監督によるグランジを描いたドキュメンタリー映画『Hype!』(1996年)に登場し、キム・セイルとマット・キャメロンの短いインタビューの場面に挿入されるこのヴァージョンもまた素晴らしい。一方でサブ・ポップからリリースされた『Hype!』のスピンオフ・サウンドトラックには、サウンドガーデンによる「Nothing To Say」の見事なヴァージョンが収録されている。
8位「Blind Dogs」(『Live From The Artists Den』、2013年)
サウンドガーデンはアイランド・レコードから発売された、アメリカの犯罪ドラマ『バスケットボール・ダイアリーズ』(1995年 原作はジム・キャロルの同名自伝的小説)のサウンドトラックに「Blind Dogs」を提供した。
「Blind Dogs」は広く評価されたが、バンドが初めてこの曲を披露したのは、2013年にロサンゼルスのザ・ウィルターン・シアターで行なわれた、バンドのキャリアを総括した『Live From The Artists Den』のステージでのことだった。
7位「Rowing」(『The Late Show With David Letterman』、2012年)
2012年の復活作『King Animal』を祝し、サウンドガーデンはテレビ番組“The Late Show With David Letterman”のために、1時間に渡る特別なセットをプレイした。彼らは過去のカタログも掘り起こし、その中から『Superunknown』からの「Fell On Black Days」と『Ultramega OK』から「Beyond The Wheel」も演奏したが、言うまでもなく中心となったのは、ニュー・アルバムの収録楽曲だった。
どの曲も完璧なサウンドで披露されたが、このライヴ・セットで非常に力強く印象に残ったのは、ループと電子音楽をベースにした一風変わった「Rowing」だった。
6位「Outshined」(パラマウント・シアター、シアトル、1992年)
A&Mからリリースされたサウンドガーデンの最初のライヴ・ビデオ『Louder Than Live』はどちらかと言えば控え目な作品であり、今日までリイシューされていない。
一方で、再びケヴィン・カースレイクが監督し、サウンドガーデンが『Badmotorfinger』で国際舞台に立っていた当時の彼らの姿を捉えた2作目のライヴ・ビデオ『Motorvision』は高い注目を集めた。彼らの故郷シアトルにあるパラマウント・シアターで行なわれた超満員のショウで撮影された本作で、絶好調のサウンドガーデンが、「Jesus Christ Pose」や「Slaves And Bulldozers」、そして並外れた「Outshined」等を含むセットリストを見事にこなしている。
5位「Black Rain」(“Conan”、2010年)
サウンドガーデンの本格的な再結成のきっかけを作った曲「Black Rain」のデモ音源は、1991年には出来上がっていたが、バンドと『Down On The Upside』のプロデューサーであるアダム・キャスパーが今作を完成させたのは、アーカイヴ素材の捜索中に発見された後、2010年のことだった。
この曲はシングルとしてリリースされ、コンピレーション・アルバム『Telephantasm』に収録された一方で、バンドはTBSで放送されていたコナン・オブライエンのトークショウで、この曲の忘れられない感情剥き出しのパフォーマンスを披露し、13年ぶりにメンバー全員揃ってのテレビ出演を果たした。
4位「Room A Thousand Years Wide」/「Somewhere」(1996年)
後に、ライヴ・アルバム『Live On I-5』のためにまとめられた1996年のライヴ録音は、2011年の“ブラック・フライデー・レコード・ストア・デイ”限定盤『Before The Doors: Live On I-5』を生んだ。
“Down On The Upside”ツアーのサウンドチェック中にレコーディングされた音源を集めた、そのオレンジ・ヴァイナルの限定盤EPは、『Badmotorfinger』の代表作「Room A Thousand Years Wide」と「Somewhere」の激しいヴァージョンを聴けるだけでも購入する価値がある。
3位「Rusty Cage」(“Later… With Jools Holland”、2012年)
広く注目を集めた“Live On Letterman”でのパフォーマンスに加え、サウンドガーデンは英長寿番組“Later… With Jools Holland”で素晴らしいミニ・ライヴを披露するために、2012年11月にイギリスへ出向いた。
彼らはその夜、『King Animal』からの「Been Away Too Long」の騒々しいヴァージョンをフルで披露したが、その後数十年にわたって語り継がれるのは、『Badmotorfinger』からの強烈な「Rusty Cage」のテイクだろう。
2位「Black Hole Sun」(『Live From The Artists Den』、2013年)
サウンドガーデンの強力な作品群の中でも、「Black Hole Sun」のように特異な楽曲はひと際目立つ。ドリーミーな『White Album』を彷彿とさせる雰囲気と、眩いばかりのアンサンブルによって、バンドの代表的ヒット作は、時代を超越した不変のクオリティーを纏っている。
クリス・コーネルとバンドメンバーが、毎回ステージ上で情熱と魂を注いでいた楽曲である故に、サウンドガーデンが『Live From The Artists Den』のために選りすぐったこの演奏が、今作の中でひときわ印象に残るパフォーマンスとなっているのは当然のことだろう。
1位「Spoonman」(デルマー・フェアグラウンド、デルマー、1996年)
サウンドガーデンの最も素晴らしく、奇妙なクセの一つと言えば、思いも寄らないような変拍子を曲に使用する傾向だろう。ここで選出した「Get On The Snake」(9/4でプレイ)から「Black Rain」(こちらは9/8)まで、本当にそれもその良い例と言える。
しかしながら、最も大胆で、テンポに挑むような「Spoonman」(『Superunknown』収録)は、(スプーン・ソロの箇所で)7/4から3/4へ変動した後、多少落ち着きを取り戻す4/4に戻ってくる。サウンドガーデンは、この曲の挑戦的な演奏が大変気に入り、1993年以降、彼らのライヴではハイライト曲のひとつになっていた。『Live On I-5』に収録されている、1996年のデルマー・フェアグラウンズ公演からのヴァージョンは、彼らのキャリア史上で間違いなく最上級である。
Written By Tim Peacock
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