イヤーズ&イヤーズのオリーが語る最新作『Night Call』と主演ドラマ『IT’S A SIN』からの影響
2021年に他のメンバーが脱退して、オリー・アレクサンダーのソロ・バンドとなったイヤーズ&イヤーズ(Years & Years)。2022年1月21日に発売された3rdアルバム『Night Call』が2度目となる全英1位を獲得し、2月16日には日本国内盤の発売とともに、日本のシンガー・ソングライターであるSIRUPとコラボした「Starstruck (SIRUP Remix)」も公開となることが話題となっている。
昨年は1980年代のイギリスを舞台にHIV/エイズに翻弄されるゲイの若者たちを描いた英ドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』に俳優として主役を演じるなど幅広く活動しているイヤーズ&イヤーズのオリー・アレクサンダーによる日本オフィシャルインタビューを掲載します。
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── 昨年はドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』が大ヒットしましたね。出演しようと思ったきっかけは何ですか? ドラマの反響や、ドラマ出演を通じて学んだことはありますか?
2019年初頭に(英国の脚本家/テレビプロデューサーの)ラッセル・T・デイヴィスが新しいドラマを作るという話を聞いたのがきっかけでした。その時、僕はイヤーズ&イヤーズのツアー中だったし、しばらく俳優の仕事からは遠ざかってました。もっと若い頃はいろいろ出てたんですけどね。
でも、ラッセルの元々大ファンだし、『クィア・アズ・フォーク』を初め、彼が手がけた作品はどれも素晴らしいと思ってたので、出演に興味がでてきて、エージェントに脚本を送ってもらったんです。それを読んだ瞬間、物語と登場人物に夢中になった。俳優をやってきて、『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』のリッチーほど魅力的なキャラクターに出会ったことがそれまでなかったから、直ぐに「絶対に演じてみたい」と思ったんです。
出演できたことは、これまでで最も意義深い経験になりました。それまであまり知らなかった時代について、多くのことを学ぶことができた。もっと知っていなきゃいけないのに、きちんと理解できていなかった。凄く心に刺さる物語だと思うし、実際反響からも、あの物語の影響力を痛感しました。今でも、あの作品とその意味について話題に上るし、この先もしばらくそれは続くと思う。関わることができてただただ誇りに思ってます。(編註:ドラマはAmazon Prime Video内のスターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-などで有料配信中)
── 2021年3月から、イヤーズ&イヤーズはオリーのソロ・プロジェクトになりましたね。どういう経緯でその決断をしたのでしょうか?
はい、イヤーズ&イヤーズは、僕だけのプロジェクトになりました。10年近くも前にバンドを始めた頃は、今とは全然違うバンドだった。それが極々自然な形で、年月とともに大きく変わっていって、音楽的にもメンバー同士の考えが乖離していったんです。だから、ソロ・プロジェクトになると発表したけど、かなり前から上がっていた話ではあったんです。バンド内で話をしていて、結論を先延ばしにしていて。
コロナ禍の中、ロックダウンがあって、メンバーと別々に過ごす時間が多くなって、どうするのが一番ベストかをそれぞれが考えるいい機会になりました。突き詰めると、メンバーそれぞれがやりたいことがバラバラだったんです。今でも友達だってことは変わらない。マイキーは今もチームの一員としてライブに参加してくれるしね。僕自身はイヤーズ&イヤーズを続けたいと思ったし、終わりにしたくなかったんです。
──完成したアルバム『Night Call』は、ドラマの影響か、80年代のディスコやクラブ・ミュージック、そしてフロアの空気にインスパイアされたようなダンス・アルバムになっていますね。ダンス・ミュージックのどういう部分を抽出させて制作しようと思ったんでしょうか?
80年代のダンス・ミュージックにたくさんインスピレーションをもらいましたね。特に『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』の撮影をした後ということもあって。3ヶ月もの間、あの時代にどっぷり浸かっていましたし。
それに自分のプレイリストは80年代の音楽で埋まっていて、生きていて辛いことや、苦悩することもたくさんある中で、“コミュニティ”だったり、“ダンスフロアで盛り上がる”というあの時代の精神にはいつだって刺激を受けてます。当時のアイコンだったドナ・サマーやシルヴェスターやペット・ショップ・ボーイズといったアーティストの音楽が今回のアルバムのインスピレーションになっている。曲に高揚感がありながら、孤独や悲しさといった個人的なことも歌っている。でも音楽はエネルギーに満ちていて、思わず踊りたくなる、そんな作品にしたかったんです。
── ひとりのプロジェクトになったことで、制作のプロセスは変わりましたか?どういうプロセスで楽曲の最終ジャッジをしたんでしょうか?
今回苦労したのは、どこで作業を止めるべきかというところでした。ついつい、「明日か来週にもっといい曲が書けたらどうしよう」とか思っちゃうんですよね。「違うことを試したみたらどうなるだろう」とか。曲の候補リストができて、それがさらに膨らんで、その都度アルバムに入れる曲を入れ替えてって、エディットにも時間がかかりました。
一番大きな変化はというと、少しだけ前よりも自分を表現する上で解放感があったことですね。決して前までは我慢してたってわけじゃないけど、今回は、思い切り楽しんでやろうとも思ったんです。そうすることで、聴いた人たちも楽しく聴いてくれるんじゃないかってね。
── 歌詞に関してはどうでしょうか? 今回は意中の相手と出会い、その関係が発展していくものの、やがて別の道を歩んでいくというプロセスを描いているような気がしますが。
歌詞に関しては、多くの曲がロックダウン中に書いたものです。あの時期は一人で過ごす時間が多くて、それまでの恋愛のことや、一緒に踊りに出かけるといった今の自分の生活にはなくなった人との近しい関係、そんなことについて考えてました。僕は日記をつけているんだけど、その中の言葉や一文を取り出して、それを中心に歌詞を書くことが多いんです。そうする中で、曲のテーマが浮き上がってくる。その多くが、愛を求めることや、欲望だったり、それが何を意味しているのかをわかろうとすることだったりする、ということかな。
── ドラマのテーマにもなっていたLBGTQ+に対するメッセージ、もしくは社会に対する思いを表現している部分や曲はありますか?
アルバムの曲はどれもかなり同性愛的だと思う(笑)。「Sweet Talker」のサビの歌詞も、「You’re such a sweet talker, Man of my dreams, Where are you, where are you now? / 甘い言葉をかけてくれる君は、正に夢にみた男性。今どこにいるの?」という感じだし。今だに、この曲がラジオでかかると興奮しますよ。男性が別の男性に対する思いを歌った曲がラジオでかかることが「慣習に逆らっている」あるいは「ショッキング」だと思うべきではないんだけど、時々そう思ってしまうことはあるんです。「うわぁ、本当にかけてくれているんだ。すごい」って噛み締めてしまう。そもそも自分の曲がラジオでかかること自体嬉しいですから。今でも、ワクワクさせられる。だからそういう部分もアルバムにしっかり反映できて良かったと思います。
──「Starstruck」にはカイリー・ミノーグと共演したヴァージョンもありますね。あなたにとってカイリーはどんな存在でしょうか?また、共演してみての感想を教えてください。
もう、これまでで最高の経験でした。彼女は間違いなくアイコンだけど、心の暖かい人でもある。彼女に会うだけで幸せな気持ちになる。彼女のことはずっと尊敬しています。あれだけ品があって、優しさに溢れている人が、何十年も世界的ヒット曲を出し続けているということ自体が凄いですよね。彼女と知り合いになれて自分は凄くラッキーだと思うし、彼女はとにかく最高ですよ。
── アルバムのアートワークについて。なぜ人魚になろうと?
それ、大好きな質問(笑)。人魚がもともと大好きで、今回アルバムを作るにあたって、人魚が僕にとってのミューズでした。海辺で一人きりで岩の上に佇んで誘惑の歌を歌う、という人魚のイメージがインスピレーションになっているんですよ。『Night Call』の曲の多くを、人魚が歌っているのを想像したりして(笑)、自分が人魚の格好をする言い訳を探してたってものあるけど。
── 今回のアルバム制作を通じて学んだこと、もしくは次へのヴィジョンは見えましたか?
何を学んだかな…(なぜか爆笑)。毎回同じなんだけど、何か作品を作ると、これは通らないといけない僕のプロセスで、「自分には無理」「駄作になる」「失敗する」とついつい考えてしまうんです。それでも頑張って作り続けて、なんとか完成に至る。今回も全く同じでした。で、次回もきっと同じだと思う。音楽を作るのが本当に好きで、このアルバムを作りながら、音楽を作る喜びを改めて噛み締めることができた。ロックダウン中、現実逃避できたのもよかったですね。
── 今後、音楽以外も含めやってみたいことはありますか?
今は何にでも挑戦したいと思っています。いつか、自分でドラマか映画を作ってみたいとも思ってる。クィアーのスリラーで、見ててドキドキするホラーとか。個人的に好きなジャンルだから、作ったら面白いかも(笑)。もちろん、アルバムもまた作るつもりです。どんな音楽になるかはまだわからないけど。
── ドラマか映画を作りたいというのは、監督したいとか、脚本を書いてみたいってことですか?
全然決めていないけど、自分で企画のアイディアを出して、脚本にも関わって、大変な仕事は他の人に任せたいかな(笑)。
── エグゼクティブ・プロデューサー的な感じ?
そうそう。エグゼクティブ・プロデューサーがいいですね。
── 日本のリスナーへのメッセージをお願いします。
みんなのことが大好きだし、会えなくて寂しいよ。また直ぐにでも日本に行きたいと思っている。それまでみんなの安全と健康と幸せを祈っているよ。Lot’s of love!
Written By uDiscover Team
最新アルバム
イヤーズ&イヤーズ『Night Call』
2022年1月21日輸入・デジタル発売
2022年2月16日国内盤発売
国内盤CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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