63年全米に”熱波”をもたらしたマーサ&ザ・ヴァンデラスの「Heat Wave」
1963年、アメリカは長くとてつもなく暑い熱波(Heat Wave)に見舞われた。7月10日、モータウン傘下のレーベルであるゴーディからマーサ&ザ・ヴァンデラス(Martha and the Vandellas)にとっての2枚目のヒットR&B曲となった「Heat Wave」がリリース、初めてチャートの1位を獲得し、ポップ・マーケットにおいてもブレイクを果たしたのだ。
文句のつけどころのないホーランド=ドジャー=ホーランドによるこの楽曲は、マーサ・リーヴスと仲間のザ・ヴァンデラスの声だけでなく、唸るようなマイク・テリー(下記写真)のバリトンサックスが冴え渡っている。彼は1960年からの5年間、デトロイトの隣町にあったゴールデン・ワールド・レコードに移るまでは初期モータウンのセッションマンの中でのキーパーソンだった。タムラ・レコード時代から、フォー・トップスの「I Can’t Help Myself」、アイズレー・ブラザーズ「This Old Heart Of Mine」、そしてキム・ウェストンの「Helpless」など素晴らしいヒット作でもプレイしている。
6月20日にレコーディングされた「Heat Wave」は、その後(Love Is Like A)という枕言葉がタイトルに付け加えられ、レコーディングから3週間後には発売された。その年の初夏の天気のおかげもあって曲は知れ渡り、ラジオの天気予報でもこの曲がよく使われるようになった。
約ひと月かけてR&Bチャートに入った「Heat Wave」はその後もうひと月かけてチャートを駆け上がり、初期モータウンのもうひとつのヒット作、スティーヴィー・ワンダーの「Fingertips Pt.2」を下して首位を獲得。すると、マーサ・リーヴス、ロザリンド・アシュフォード、アネット・スターリングの3人は首位をひと月に渡って維持し、誰にも譲らなかった。彼女たちの初のソウルヒット曲「Come And Get These Memories」がポップ・チャートで29位でつまずいたのに対し、「Heat Wave」は全米シングル・チャートで4位を記録するというジャンルを超えた成功を記録した。
この曲は数多くのカヴァー・バージョンが存在するが、中でもルルや、ダスティ・スプリングフィールド、ザ・フーといったモータウン好きの英国アーティストによるものが多いが、その後1975年にリンダ・ロンシュタッドがこの曲で全米チャートでトップ5を記録した。
Written by Paul Sexton
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