世界を席巻する若き女性ポップ・スター10人【動画付】

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Photo: Interscope Records (Selena Gomez, Billie Eilish, Carly Rae Jepsen), Capitol Records (Halsey), Def Jam Records (Alessia Cara), Republic Records (Ariana Grande) - Original Illustration by Kelsee Thomas

ポップ・ミュージックの世界は常に移ろいやすく、ストリーミングが主流になりつつある現在、ポップ・スター (とりわけ女性ポップ・スター) には、ポップ・チャートに浸透してきた大多数のラッパーやDJたちに対抗するために、時代をするどく見極め、巧みに適応していく能力が求められている。

テイラー・スウィフト、ビヨンセ、リアーナ、アデル、ケイティ・ペリーやレディー・ガガ。彼女たちのようなトップ・クラスのヒットメイカーは、もとより無視することはできない。彼女たちは曲を発表しなくても話題になるくらい大きな影響力を持ち続けている。

しかし新しいポップの歴史を作っていくその次の世代とは一体誰なのか? 子役スター出身者や、インターネット上でセンセーションを巻き起こしたシンガー・ソングライター、現代のポップ界に輝く星々のような女性ポップ・アーティストたちは実に多様な軌道を描いてるが、そのいずれもがそれぞれ自分のやり方で成功を手にしているのだ。

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1. ビリー・アイリッシュ

もしあなたがまだビリー・アイリッシュについて何ら知識を持たないとしても、2020年代において彼女が決して避けて通ることはできない存在であることに気付いているだろう。

2016年にセルフリリースというかたちで発表した「Ocean Eyes」でブレイクを果たして以来、彼女の動向には常に高い関心と期待が向けられてきた。ビリーの歌声は繊細だが、彼女の楽曲は幾分不穏なポップ・ソングである。そして、それゆえに、誠実で、物怖じしないその姿勢が認められ、若者たちの心をとらえたのだった。

やがてメジャー・レーベルと契約を交わしたアイリッシュは、2017年にEP『Don’t Smile at Me』をリリース。同作には大ヒットしたシングル「Bellyache」や、ヴィンス・ステイプルズとのコラボレーションの成果「&burn」といったトラックが収録されており、プロデュースは、実兄であり、ソングライティングのパートナーでもあるフィニアス・オコンネルが担当している。

欲望や裏切りといったテーマを掘り下げることはティーン・ポップにおいて一般的ではないが、アイリッシュは期待を上回るポップ・スターだ。そして、記録的なセールスを上げ、ヒット・チャートの首位に立ったデビュー・アルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』によって、彼女は誰もが知る存在になり、世界で最も偉大なポップ・スターのひとりに数えられるまでになった。

 

2. アレッシア・カーラ

彼女の世代の多くのシンガーたちがそうであるように、アレッシア・カーラも、当初は YouTubeを通じ、ヒット曲のカヴァー・ヴァージョンを披露していた。やがてデフ・ジャムと契約を交わした彼女は、同レーベルからデビュー・シングル「Here」を発表。同曲は、パーティーを好まない、内向的なたちの人たちの心境をとらえた1曲だった。

不安定なティーンエイジャーたちの心に響くカーラの個人的な感情が、ダウンテンポのビートやアイザック・ヘイズの「Ike’s Rap II」をサンプリングしたストリングスに表れた完璧なシングルだ。この「Here」は、大々的に宣伝されてリリースされたわけではないものの、じわじわと人気を高めていった。

彼女は「Here」これに続き、「Wild Things」と自己肯定を促すアンセム「Scars To Your Beautiful」を発表。これら2曲を含むアルバム『Know-It-All』がリリースされた2015年終盤には、評論家筋から最高級の賛辞を送られるまでになっている。

そして、もっと社会を意識した活動をしたいという思いから、カーラはさらなる一歩を踏み出した。自殺防止のホットラインの電話番号をタイトルにしたロジックの作品「1-800-273-8255」にポップR&Bのスター、カリードと共にゲストとして参加。その後、アルバム『The Pains of Growing』(成長に伴う痛み) をリリースし、自らの真価を世に問うたが、21歳になった彼女は、素朴な女の子から、自信に満ちたシンガーソングライターへと成熟を遂げたとみていいだろう。

1990年代や2000年代後半とはまったく異なったやり方をする今日のシンガーたちのように、カーラもまた新しいタイプのポップ・スターのひとりだといえるだろう。つまり社会的な枠組みにとらわれないアウトサイダーとして、内面をさらけ出すような歌詞を芸術作品として昇華し、特定の型に自らをはめこむことを拒んだのだ。

 

3. セレーナ・ゴメス

ディズニー・チャンネルに見出されたセレーナ・ゴメスは、同様の背景を持つスターたち (デミ・ロヴァート、ジョナス・ブラザーズ、マイリー・サイラス) やニコロデオンのアリアナ・グランデに続いて、子供向けチャンネルのスターからポップ・シンガーに転身したひとりである。彼女は、25歳の若さにして業界のベテランであり、2017年にはビルボード誌によって”Woman of the Year (1年を代表する女性アーティスト) ”に選ばれるほどだ。

当初、バンドの一員としてその音楽活動を始めた彼女だったが、2013年に『Stars Dance』でソロ・デビューを果たし、これを気に快活なティーン・シンガーから成熟した女性アーティストへと変貌を遂げ、ボリウッドの影響を滲ませたシングル「Come & Get It」で世界中にその名を知らしめた。

彼女の反抗的な姿勢は、主に女優としての仕事に発揮されているが、その一方、伸びしろのある創造性をさまざまな楽曲で発揮している。トーキング・ヘッズの「Psycho Killer」をサンプリングした、この上なくキャッチーで快活な「Bad Liar」や、カイゴとのコラボレーションによるダンス・ポップ・チューン「It Ain’t Me」、マシュメロをプロデューサーに迎えたシングル「Wolves」はその成果の一例だ。

また、ダンス・ナンバーをヒットさせ続ける一方で、「Back To You」では彼女のシリアスなポップ・アーティストとしての技量を知らしめている。この曲は、ゴメスがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるティーン向けドラマ『13の理由』のサウンドトラック盤に収録されている。

一時、彼女は活動を休止したこともあったが、2019年には復帰。すばらしいバラード・ナンバー「Lose You To Love Me」と、これに続いてリリースした耳に残るダンス・ポップ・チューン「Look At Her Now」で、その勢いがいささかも衰えていないことを印象付けた。

 

4. チャーリーXCX

イギリス出身のシンガーソングライター、チャーリーXCXは、今回ご紹介する一連のスターたちと比べると、さほど有名ではないかもしれない。しかしながら彼女も、16歳でレコーディング契約を得てからというもの、多くのヒット曲を書き上げてきた。

2012年に最も成功したポップ・ソングであるアイコナ・ポップの「I Love It」に驚異的なフックを提供して以来、彼女はグウェン・ステファニー、イギー・アゼリア、セレーナ・ゴメスやリアーナといった面々に楽曲を提供。

自身もまたパフォーマーとしてきわめつきの「Boom Clap」、「Boys」といった作品を発表。風刺の効いた後者のミュージック・ビデオでは、彼女自身がカメラを手に取り、イマドキの女性に人気の若者たちを撮影している。

彼女がデビューから間もなく発表したアルバム『True Romance』は今なおオルタナティブ・ポップの見本のような作品として支持されており、アルバム『Charlie』は、彼女をポップ・シーンの主役にのし上げた。イギー・アゼリアの「Fancy」でコーラスを務めた彼女は、そんな役割に留まらない秘めたる実力を、いよいよ世に知らしめたのである。

 

5. ヘイリー・スタインフェルド

ヘイリー・スタインフェルドは、14歳にしてオスカー賞にノミネートされた経験を持つ女優からシンガーへの転身組で、映画『ピッチ・パーフェクト2』で披露したその歌唱力で注目を集めた。彼女にとって最初のレコーディングとなったのは、10代のころから大人気だったショーン・メンデスとアコースティックなデュオ・ナンバー「Stitches」だ。その後彼女はEP『Haiz』をリリース。同作からの先行シングルになった「Love Myself」は女性の社会進出をテーマにしたキャッチーなアンセムで、ディヴァイナルズの「I Touch Myself」の現代版と見做されている。

カーラやゴメス、チャーリーと同様スタインフェルドもDJ/プロデューサーとのコラボレーションに成果を残している。プラチナ・ディスクに認定されたヒット曲「Starving」では今をときめくDJ、ゼッドを迎えており、この曲によって、彼女はアコースティック・ポップからダンス・ミュージックまで卒なくこなせることを証明した。

ダンス・ポップ的傾向と、力強い歌詞でスタインフェルドが作ったシングル曲「Most Girls」はトロピカル・ハウス風のキャッチーな作品で、このトラックによって彼女は初のスタジオ・アルバムのリリースに向けた準備を万端整えたのだった。これまでに作曲の見事な腕前を証明してきた彼女は、20歳でワーナーと出版契約を交わしたことでも知られている。また、彼女はアップルTVのオリジナル・ドラマ・シリーズ『ディキンスン 〜若き女性詩人の憂鬱〜』では主役を演じ、女優としての才能も証明。『Dickinson』のためにレコーディングした「Afterlife」はシングルとしてリリースされている。

 

6. カーリー・レイ・ジェプセン

ポップ・ミュージックの世界に馴染みが薄い向きも、カーリー・レイ・ジェプセンのデビュー・ヒット曲「Call Me Maybe」はどこかで耳にしているはずだ。驚異的な勢いで多くの人を夢中にした同曲は、既にYouTubeで14億回を上回る再生回数を叩き出している。

現代の最高のポップ・ソングの異名を持つこの曲に続き、ジェプセンがリリースしたのは、まったく傾向の異なる作品だった。1980年代のポップ・ミュージックの影響色濃いシンセ・ポップ・アルバム『E•MO•TION』がその作品で、ジェプセンは同作に、そのジャンルに精通したシーアや、ブラッド・オレンジの異名でも知られるデヴ・ハインズらを起用している。

『E•MO•TION』はカルト・ヒットとなり、彼女のキャリアの出発点であったYouTubeの視聴者層である若者たちよりも、むしろインディー・ポップを愛する成熟した聴き手を惹きつけた。ところでジェプセンの歌詞はほとんどすべて彼女お気に入りの’報われない愛’をテーマに書かれており、このパターンに触発されたマニフェストまで生まれている。4枚目のスタジオ・アルバム『Dedicated』で、ジョブセンは、より壮大な歌、壮大なプロダクション、壮大な感情表現に向かってキャパシティを広げている。

 

7. アリアナ・グランデ

今回リストアップしたアーティストの大半がそうであるように、アリアナ・グランデのスターへの道のりもまたティーン向けテレビ番組から始まった。しかしマイリー・サイラスとは違い、彼女の”子供向けエンターテイナー”というイメージの払拭は実に巧みで、既存のファンを失うことなくもっと年上の聴衆を惹きつけることに成功した。

トレードマークであるポニーテールと、オーバーサイズのスウェットによって彼女は実際の年齢の25歳よりも若く見えるかもしれないが、成熟した女性アーティストへとしっかりと進化を遂げており、その力強い歌声が特徴的で”ミニ・マライア・キャリー”と評す向きさえある。また彼女もまた、そのキャリーのように、多くのヒップホップ・アーティストたちともコラボレーションを試みており、デビュー・シングル「The Way」ではマック・ミラー、「Side To Side」ではニッキー・ミナージュを起用し、ヒットをものにしてきた。

Spotify時代のポップ・スターに相応しく、ストリーミングがチャートに集計されるようになったとき、最初にUKで同チャートの首位を獲得したのもアリアナ・グランデだった。グランデはレトロ・ポップのサウンドを再解釈するにまたとない歌声に恵まれているが、ひとつのジャンルに留まることはなかった。

ゼッドのサポートを得たEDMチューン「Break Free」、挑発的なR&Bナンバー「Dangerous Woman」はそんな彼女の姿勢を裏付けている。また一般のポップ・スターたちに比較して政治に対する意識が高いグランデは、折に触れて我々を驚かせてきた。マンチェスター・アリーナにおける爆弾テロ事件の直後、熱心なファンのために限られた時間で大規模なコンサートを実現に導くという偉業を成し遂げたこともその一例に数えられよう。

2018年8月、アリアナ・グランデはサード・アルバム『Sweetener』を発表。チャートの首位をマークしたこの記録破りのヒット作で、グランデは見事にシーンに復帰した。マックス・マーティンやファレル・ウィリアムスといったプロデューサーのサポートを得た『Sweetener』は、トラップの影響を受けたトラックからダンス・ポップ、ソウルフルなR&Bナンバーなどが並ぶ、従来のポップ・ミュージックの枠を超えた傑作だったが、それでもまだ十分ではないといわんばかりに、彼女はおよそ1年弱で、新作『thank u, next』を発表。前作と同様、ヒット・チャートの首位に送り込んだ。ポップ・ミュージックの世界におけるグランデの最大のライバル、それは彼女自身だと言っていいだろう。

 

8. デミ・ロヴァート

子供のころからその姿を見てきているのに、これらのポップ・スターたちを若い新しい才能だと考えるのは奇妙なことだ。セレーナ・ゴメスと同様、ディズニーによってポップ・スターにプロデュースされたデミ・ロヴァートのキャリアのスタートは華々しいものだった。

彼女のデビュー・アルバム『Don’t Forget』は2008年に米チャート2位を記録。以来リリースした5枚のアルバムすべてを大ヒットさせてきた。しかしながらそこに至るまでの歩みは決して平坦なものではなかった。”ディズニー”の威光を借りた彼女にはクリーンなイメージを維持する責任がつきまとった。そしてそれゆえに、自身がアルコールやクスリの類と無縁であることを率直に語り、健全な精神を保ち続けていることを公言。その種のデリケートな問題に関する偏見を拭い去ろうと努めてきた。

シンプルなアレンジ、トラップに影響されたインストゥルメンテーション、控えめなヴォーカルというのが昨今のポップ・ミュージックの主流だが、ロヴァートは、その作品を通じ、一貫して自信に満ちた大胆なヴォーカルを披露してきた。そのあたりは、アルバム『Tell Me You Love Me』のリード・トラックで、トップ10ヒットを記録した「Sorry Not Sorry」にも明らかな通りだ。

 

9. ロード

ロードをこのリストに加えることには躊躇いもあった。今や彼女は、彼女だけのフィールドで着実に活動しているのだから。衝撃的なアルバム『Pure Heroine』でミステリアスなデビューを飾った彼女は、16歳にして既にあまりに成熟したアーティストであったがために、不正を疑われ、疑惑の目を向けられた。曲を書いているのは本当は彼女ではないのではないか、あるいは年齢を偽っているのではないかというわけだ。要するに、当時のポップ・シーンにあって、彼女はそれだけ規格外だったということだ。

その4年後、ロードは2作目のアルバム『Melodrama』を携えて一線に復帰したが、このとき彼女は大きな成功を収めたデビュー時のやり方を踏襲しようとはしなかった。彼女は内省的な告白や度を越した行い、人間関係、大人になることに付き纏う悩みといったことをテーマにコンセプチュアルなアルバムを完成させたのだった。

彼女はその作品をヒット・チャートに送り込み続けているが、今もなお、詩的な歌詞を大衆にアピールすることに長けた真摯なシンガーソングライターであり続けている。ソングライターとして、またプロデューサーとして、このニュージーランド出身の才女が創作上の自由を完全に我がものにしたそのとき、型にはまったポップスの時代は終焉を迎えるのかもしれない。

 

10. ホールジー

ロードがそうであるように、ホールジーもまたインターネットの時代を代表する新しいポップ・スターだ。ディズニーのような伝統的な後ろ盾を持たなかったニュージャージー出身のホールジーは、18歳でYouTube上に莫大な数のフォロワーを獲得していた。自身の音楽をセルフ・リリースした後、2014年にアストラルワークスと契約してEP『Room 93』を発表。続いて2015年にプラチナム・ヒットを記録したデビュー・アルバム『Badlands』をリリースした。ホールジーのスモーキーなアルトは暗いエレクトロ・ポップにぴったりで、ラジオでかかる典型的な音楽に飽き飽きしていた若者たちの心を打った。

しかし2016年にザ・チェインスモーカーズの世界的大ヒット作「Closer」に客演して歌ったことは、彼女のキャリアでも最も成功した瞬間のひとつだといえるだろう。ダイヤモンド・ヒットに認定された「Closer」は、Spotifyのサービス開始以来、3番目に再生回数の多いトラックとなっており、ホールジーにグラミー賞のノミネーションももたらしている。

彼女自身の名義でリリースされた作品に限っても、『Badlands』と続く『Hopeless Fountain Kingdom』(2017年) の2作がプラチナ・ディスクに認定される大ヒットを記録。また、ホールジーはライヴ・パフォーマーとしても高い人気を誇り、世界各国のスタジアム・クラスの会場で、満員の聴衆を前にパフォーマンスを披露。今回リストアップしたスターたちと同様、女性の権利と”LGBTQ+”に対する意識を高めることにも熱心で、そうした傾向は彼女の作品やファン層からも窺い知ることができる。

彼女の作品は、さまざまなコンセプトやキャラクターに拠るところが大きいが、別れを歌ったアンセム「Without Me」ではありのままの自分を垣間見せている。その「Without Me」を米チャートのトップ20圏内に送り込み。彼女はサード・アルバム『Maniac』や『If I Can’t Have Love, I Want Power』のリリースと新たなステップに向けて順調に歩みを進めている。

Written By uDiscover Team


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