人気音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』で最もポップで最もトップなパフォーマンス20選
イギリスの最も長寿で最も愛されたポップ音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』は1964年から2006年まで放映され、国中の家族をテレビの前に集結させた。木曜日(後に金曜日に移動)、父親がいつも“このアーティストは男の子なのか、女の子なのか?”とぶつぶつ言っている間、子供達は宿題を終えようとばたばたしていた。テレビの前に座りながら、代わる代わる登場する大勢のアイドルに釘付けになった。
『トップ・オブ・ザ・ポップス』はチャート番組だった為、流行している音楽の信頼出来るバロメーターとなり、ミュージシャンもDJ達も、そしてダンサー達もスターに仕立て上げられた(*ミュージシャンのパフォーマンス以外に、曲に合わせてセクシーな女性ダンサーが踊るコーナーがあった。次にあがるのはそのダンサーチーム)。パンズ・ピープルとレッグズ&コーはみんな覚えているだろう。しかしゴー・ジョーズとルビー・フリッパーは? あれは意外だった! 番組は時代と共に進化していった。それはそうだ! セレブなプレゼンターと常に魅力的なテーマ曲が起用されたが、最も好評だったのはレッド・ツェッペリンの「Whole Lotta Love」のCCSヴァージョンだった。
大変惜しまれつつ、そして恐らく復活は不可能な『トップ・オブ・ザ・ポップス』は、40年にも渡る年代記だ。我々は皆さんの為に、最高の瞬間を入念に選んでみた。“これがナンバー・ワンだ!トップ・オブ・ザ・ポップスだ”という不滅のフレーズが鳴り響いた、あの黄金期を追体験しよう。
ザ・ローリング・ストーンズ 「The Last Time」
ザ・ローリング・ストーンズは番組初登場の際、ザ・ビートルズの「I Wanna Be Your Man」をカヴァーした。しかし、他の多くの昔のBBCの番組同様、この時のパフォーマンスは遠い昔に紛失してしまっている。しかし、我々は1965年の素晴らしいパフォーマンスを見つけ出した。ベン・シャーマンのボタン・ダウンを着たミック・ジャガー、サングラス姿のビル・ワイマン、ダルシマーを持ったブライアン・ジョーンズ、そしてオーディエンスにいるジョージ・ベストが観る者の体に駆け巡るアドレナリンを刺激するだろう。
マンフレッド・マン「The Mighty Quinn」
ヴィンテージ・マイク・ダボ時代のマンフレッド・マン(フルートにクラウス・フォアマン)は不思議な存在だ。これはボブ・ディランのアルバム『Basement Tapes』に収録され、当時は未発表だった曲を、普通の人々が初めて聴くことが出来た瞬間でもあった。ボブ・ディランをカヴァーすることで良く知られるマンフレッド・マンのベストな作品のひとつ。このようなものは他にはないだろう。
ザ・ムーヴ「Fire Brigade」
この素晴らしくゴキゲンなブラムビートを奏でる彼等を思い起こそう。十字軍の衣装を身にまとった豪華なロイ・ウッドと、ナイトクラブのドアマンのような威圧感を漂わすカール・ウェイン。トレヴァー・バートンとエース・ケフォードもまた然り、ちょっかいを出したら大変なことになりそう。
ジョン・レノン「Instant Karma!」
『トップ・オブ・ザ・ポップス』 に登場するザ・ビートルズを観ることは出来ないが(BBCがテープを失くしてしまった!)、ジョン・レノンの曲は1970年に100万枚を売り上げ、ザ・ビートルズの曲「Let It Be」のチャート・インにも勢いをつけた。ここではパフォーマンス・アート・モードのヨーコ・オノと、気高さに溢れたパフォーマンスを堪能出来る。輝き続けよ、ジョン。
デヴィッド・ボウイ「Starman」
「He had to phone someone, so he picked on you /誰かに電話しなければならなかった。それで彼はきみを選んだのさ」。そうしてジギー・スターダスト演じるデヴィッド・ボウイは、我々の居間に飛び込んで来た。まさに番組を変えたと多くの人が認める瞬間だ。ミック・ロンソンの首に腕をまとわせるその野生的な美しさと、そして曲自体がまた…これはもうレジェンドならではのもの。
ザ・スウィート「Block Buster!」
不当に過小評価されたザ・スウィートが生み出す、とんでもなくグラムなイメージは、このパフォーマンスを画期的なものにしている。デヴィッド・ボウイの「The Jean Genie」がトップの座につくのを阻止するのに一役買ったが、どちらのポップ・ナンバーもボ・ディドリーの「I’m A Man」のザ・ヤードバーズ・ヴァージョンからヒントを得ている。リフとポーズは滑稽だが(ベーシストのスティーヴ・プリーストは第一次世界大戦時のドイツの軍服を着ているし)、ハイエナジーなコマーシャル・ポップだから責めるわけにはいかない。この最高な演奏を見てどうしたら良いか誰か分かるか? まあいないだろうな。
アリス・クーパー「School’s Out」
ピュアな十代の反逆。モラルに厳しい活動家のメアリー・ホワイトハウスはこの曲を発禁にしようとし、先生は涙を流し、キャスターのノエル・エドモンズはこれを“異端”で“問題作”だと断言した。おいおい、それこそが1972年の子供達がティータイムに求めていたものだ。あんたらのお上品な学校の話の入る余地はない。
スレイド「Mama Weer All Crazee Now」
ウルヴァーハンプトン出身のグラム野郎による、1972年秋の大ヒット曲。ノディ・ホルダーの鏡付きシルクハット、ガールフレンドのコートを着たベーシストのジム・リー、そしてひどく甲高い声による壮大なリフレインにより、この楽曲はトップ中のトップに選出された。トニー・ブラックバーンの甘ったるいイントロに注目。数年後ハリー・エンフィールドのテレビ番組でスマッシーとナイシー〔訳注:番組の登場人物達〕が見事に風刺した。
ザ・フー「5.15」
『Quadrophenia(邦題:四重人格)』…とその扇動者に、ここで触れることが出来る。キース・ムーンは病的なまでに酷く泥酔している(この後に楽屋をめちゃくちゃにした!)。ピート・タウンゼントはステージを破壊し(そうしてバンドは罰金を科せられた!)、バンドは人々の心を弄んだ。でも、いま午後7時15分にあの歌詞が歌われたら、聞く者がその魅力から逃れることはまず無理だろう!
ザ・ウォーカー・ブラザーズ「No Regrets」
スコット・ウォーカーと男達の1975年カムバック・シングルは、トム・ラッシュのお涙頂戴の名作を、思い切りツイストの効いたカントリー調で表現したものだ。普段は物凄く元気で激しいこの番組の穏やかな瞬間だった。そして彼等の声は気品に溢れている。
ロッド・スチュワート「Maggie May」
実際のレコードでは全員がプレイしていない(そしてジョン・ピールはこの中でマンドリンをプレイしていない)この曲を、ロッド・スチュワートが昔のフェイセズと歌うのを観る最高のチャンスだ。『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出演するのが積極的に推奨されていたこの時代ならでは。
ザ・クラッシュ「Bankrobber」
ジョー・ストラマーと仲間たちは、番組で口先だけのお世辞を言うのを拒んだが、『トップ・オブ・ザ・ポップス』はそんなことはお構いなしに放送した。番組のダンサーチームのレッグズ・アンド・コーによる笑っちゃうような(それも恐らくは意図的にそうした)ヴァージョンは、その度肝を抜かれる無鉄砲ぶりで歴史に残るだろう。ザ・クラッシュは喜んだに違いない。
フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド「Relax」
リヴァプール・インヴェイジョン第二の波で、あのわんぱくフランキー達は居間に危険な要素を呼び戻した。同性愛的なニュアンスはおばちゃん達をピリピリさせたが、子供達はみんな大喜びした。やっちゃダメって? そんなもん知るもんか!
ハッピー・マンデーズ『Step On』
おい、俺を困らせないでくれよ。ベズの猿のようなダンスと、ショーン・ライダーの“戦闘態勢準備万端”なパフォーマンスは、我々を90年代へと導いてくれた。ポール・マッカートニーは、マッドチェスターというと、ザ・ビートルズの「Strawberry Fields Forever」時代を思い出すと言ったが、この北部出身の変わり者達はマンチェスターのイメージを見事に塗り替えてることに成功してのけた。
ニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」
みんなにひとつずつあるでしょ、制汗剤を愛する者達よ(*曲タイトルのTeen Spiritは制汗剤の商品名)。カート・コバーンとその陽気な男達は、昔ながらのファッションに身を包み、舞台上で大げさに振る舞い…そして「Load up on guns, bring your friends / 銃に弾をこめて、ダチを連れてこい」という頭の歌詞を「Load up on drugs and kill your friends / ヤクをぶち込み、おまえのダチを殺してやる」という変えて歌ったことで番組をメチャクチャにし、BBCの検閲をびっくりさせた。恐ろしや。
ブラー「Parklife」
フィル・ダニエルズ(*訳注:「Parklife」でデュエットしている英国人俳優。『さらば青春の光』ではジミー役を演じた)は、ブリットポップの支配権を巡りブラー対オアシスの闘争が繰り広げられる中、ブラーに加勢し、結局、闘争に勝ったのはブラーだが、戦争に勝ったのはオアシスだと言われている(陳腐な言い方)。でも、本当はみんなが勝者だった。我々のような野次馬連中でさえ、ちょっとばかりその争いで楽しませて頂いた。
オアシス「Roll With It」
ロビー・ウィリアムスに“国民的バンド”と紹介された彼等は、『トップ・オブ・ザ・ポップス』をぶち壊しにかかる。兄弟のパートを入れ替え、ノエル・ギャラガーがヴォーカルを口パクをする一方、弟のリアムはギターを担当。すごい物まねだ!
パルプ「Common People」
70年代に幼年期を送ったジャーヴィス・コッカーは、『トップ・オブ・ザ・ポップス』の重要性を理解していたし、その扱い方も分かっていた。…と言うわけで、番組に出演した彼らは、巨大なショッピング・カートの中のゴーゴー・ダンサーが踊るという演出で演奏した。この曲でパルプ・ムーヴメントが始まったのだ。いま聴いてもゾクゾクする。
スパイス・ガールズ「Wannabe」
彼女たちの登場でガール・パワーが始まる。パパ達も何だか元気になった。1996年に世界を揺るがし、“ジグ・ア・ジグ・アー”(*曲の一節)することを教えてくれた女性5人による、男達の粗暴なブリットポップに対する爽快な解毒剤や対処策でありモダン・ポップの再誕生だ。
『トップ・オブ・ザ・ポップス』は、40年以上もの間その名に恥じぬどころかそれ以上の働きをした後、2006年に幕を閉じた。
その一方で、8つの3枚組CDコレクションは、1964年1月1日の初放映から2006年7月30日の最終回まで、番組の歴史を辿りながら、この番組がどれほど特別なものだったかを見事に捉えている。番組のレガシーを5年ごとに分け、永遠の名作を数多く集めながら、各々の主要な時代を蘇らせている。
Written By Max Bell
- ザ・ビートルズと「Hello, Goodbye」のプロモ・フィルム
- ザ・ローリング・ストーンズとエド・サリヴァン
- BBCで初めてロックを取り扱った大物プロデューサー死去
- 1963年7月、ストーンズ初の歌番組出演