ザ・ローリング・ストーンズ『Emotional Rescue』:パンクの波の中で成功した作品
“ザ・ローリング・ストーンズはパンクに駆逐されたのか?” 彼らは、傑作アルバムとして何年にも渡って評価されることになる『Some Girls』の1978年のリリースでそうした問いを笑い飛ばしたのみならず、次作では来たる次の10年への準備すら万全であることを見せつけた。今から35年前の1980年の7月26日にリリースされたアルバム『Emotional Rescue』は、アメリカのヒット・チャートの1位をリリース後わずか2週目で獲得したのだ。
それはストーンズがアメリカのアルバム・ヒット・チャートの頂点を最も長くキープすることになる期間の始まりでもあった。同作は、実に8月の初頭から9月まで、その位置を維持したのである。そして、7週間に渡って支配を続けたアルバムに取って代わったのは、同じく彼らの14ヶ月後にリリースされたアルバム『Tattoo You』だ。こちらは9ヶ月間ポール・ポジションに就いている。
だが、ストーンズにとっては1980年の成功とその周辺で何もかもが最高というわけでもなかった。ビル・ワイマンは、実際に彼が公式に完全に袂を分かったのは1993年初頭のことではあったが、間もなくグループを脱退するつもりだとそれまで以上に頻繁に口にするようになっていた。
ロン・ウッドと当時彼の恋人だったジョーは、麻薬を所持していたとしてオランダ領アンティルのシント・マールテン島で2月に5日間拘留されている。そんな中で、ミック・ジャガーはグループ内やニュー・アルバムのプロモーションのためのラジオ特番などで「メンバー達のための消臭剤」的な枠割りを健気に請け負って踏ん張った。
当時は、ミック・ジャガーとキース・リチャードの両名においても何らかの”エモーショナルな救済”が必要な時期だった。ミックは8年間連れ添った妻のビアンカと前年の11月に離婚しており、ニュー・アルバムが形になろうとしていた7月にはキースがアニタ・パレンバーグと破局を迎えていたのだ。
にもかかわらず、HOT100で最終的に3位にまで上昇する先行リリースのタイトル・トラックが登場4週目で11位の位置にいたところへ、アルバム『Emotional Rescue』はヒット・チャートの8位に初登場、そのまま1位へ駆け上がっていった。収録曲「Dance (Part 1)」を始め、アルバム全体のトーンは前作アルバムに収められていた「Miss You」を引き継いだディスコ色を感じさせるロックだ。しかし続いてリリースされたシングル「She’s So Cold」は、同じアルバムに収録のされた「Summer Romance」や「Let Me Go」と同じく、ストーンズならではのロックな仕上がりだ。アルバムは、2000年にアメリカでダブル・プラチナムに認定されている。
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