真のロックン・ロール、短剣を持った眼帯着用のフロントマン、ジョニー・キッド
これまで作られたレコードの中でイギリスのロックン・ロール・アルバムの称号に最も相応しい1枚とは? そんな議論を展開したとき、主力候補のひとつにあがるのが、北ロンドン生まれのフレディ・ヒースが歌った1960年の代表曲だ。
その頃には、1935年12月23日ウィルズデンに生まれたフロントマンは自身の名前をジョニー・キッドと改名し、彼をザ・パイレーツとして支持してくれる一流のイギリス人ミュージシャンたちを集めていた。グループには最高のセッション・ドラマーのクレム・キャティーニ、素晴らしいリード・ギターのジョー・モレッティ、セカンド・ギターのアラン・キャディー、ベースのブライアン・グレッグらが加入し、レコーディングを行った。そして曲はもちろん、不朽の名作「Shakin’ All Over」だ。
前の年にアメリカのポップとR&Bの両チャ―トでヒットしたマーヴ・ジョンソン「You Got What It Takes(邦題: 青空の恋)」のカヴァー曲でランクインするなど、グループは1960年の初頭に2度ほどチャートインしたことがあった。しかしアビイ・ロード・スタジオでレコーディングし、当初はB面扱いだった「Shakin’ All Over」はただの使い回しでも模倣でもなく、むしろオリジナルで刺激的なロックン・ロール現象に対するイギリスの解釈だった。この曲は1960年8月にイギリスのチャートで首位に立った。
彼らのダイナミックなライヴと短剣を持った眼帯着用のフロントマンのステージ上の強烈な存在感により、ジョニー・キッド & ザ・バイレーツの評判はさらに高まった。ジョニー・キッドはのちにレコード・ミラー誌にこう語っている。「楽屋の出入り口を出て、眼帯がないと全く別人に見えるんだよ。誰も俺だって気付かない。時には500人ぐらいのファンがいても、誰にも話しかけられず通りすぎることができるんだよ!」。
イギリスでチャート入りした他の6枚のシングルは、彼らが1位を獲った「Shakin’ All Over」の功績と匹敵することはなかったが、ザ・ビートルズの登場以降も、侮れない一勢力として彼らは残った。イギリスの最も素晴らしいロック・ギタリストの一人として相当の名声を築いたミック・グリーンを迎えて新しいラインナップを確立し、1963年には、マージー・ビートのサウンドに確実に影響された曲「I’ll Never Get Over You」が彼らの次の大きなヒット曲となり成功を収めた。
グループは、新しいラインナップにのちのディープ・パープル第1期ベーシスト、ニック・シンパーを迎えた。しかし、1966年10月7日、自動車事故により30歳という若さでジョニー・キッドが亡くなったことでバンド存亡の危機が持ち上がっていた。その後にサーチャーズやサーファリスから、ザ・フーやハンブル・パイまで、有能なすべてのビート・グループが「Shakin’ All Over」をレパートリーにしていたという事実があり、彼の記憶を忘れないようにその後、ザ・パイレーツは再結成されている。
Written by Paul Sexton
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