「史上最高のロック・アルバム」ランキング・べスト100【動画付】

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何百時間も頭を悩ませ、数え切れないほどレコードを聴いてついに完成した、これまでで最も野心的で、 (願わくは) みなさんを最もわくわくさせてくれる ―― そんなリストをご覧に入れよう。史上最高のロック・アルバムのランキング・べスト100である。

はじめにその選定にあたって定めたルールを説明しておこう。まずリストにおいて、できる限りロックの歴史を網羅するが、一方でそれぞれのアルバムがリリースから数年経ってもまったく色あせていないことを条件とした。また”ロック”の定義をかなり限定的に解釈し、主にギターを中心とした音楽としている。しかしながら、それがあまりにも重要なアルバムであった場合には、少数だが例外としたセレクトしたアルバムもある。

要するに、基本的にはブルース、カントリーやR&Bは (それらがロックに与えた影響の重要性は認めつつも) このリストに含まれていない (厳密にはR&Bに分類されるような作品も少しだけ含まれるが、ロック色の強いものに限っている) 。また、ほかのジャンルもいくつかここでは省いた。エレクトロニカや、アコースティックのシンガー・ソングライターなどはロックと密接に関わってはいるのだが、厳密にはその一部とはいえないだろう。そういったジャンルのためには、またほかのリストが既に存在しているか、あるいは今後作成するつもりだ。

それはともかく、ロックの中のジャンルであれば、どれかひとつを贔屓することなく公平に選定するよう努めた。そういうわけで、きわめて大衆的なアルバムのすぐ隣にインディペンデント・レーベルからリリースされたアルバムや、アンダーグラウンド・シーンから生まれた作品が並んでいたりもする。パンクとプログレッシヴ・ロック、ハードコアとAOR、グラム・ロックとメタル、ルーツ・ロックとアリーナ・ロックなどあらゆるジャンルが本リストに含まれているが、uDiscoverの読者の方々であれば、そのすべてを受け止める懐の深さを持ちあわせているだろう。

そして最後に、このリストでは1組のバンド/アーティストにつき1点のアルバムを選定するにとどめた。明らかに2枚以上の重要作を残しているアーティストに関しては、数ある中で最も重要だと思われるもの1作品に絞った。だが1人だけ、バンド・メンバーとソロとしてリストに2度現れるアーティストがいる。それはビートルズのメンバーだ。彼らはバンドだけではなく革新的なソロ・デビュー作を残したアーティストのことだから大目に見てほしい。

それから、あなたのお気に入りの作品の中でリストに入っていないものもあるかもしれないが、そのあ場合は是非この記事の下にあるコメント欄に、あならが選ぶ1枚を書いてほしい。このリストの完成に当たって、我々にも苦渋の決断を強いられる場面がいくらもあった。だがロックの歴史は、今や100枚のアルバムではほんのさわり程度しか語ることができないほど、壮大な物語なのである。

自信を持って言えるのは、リストの中のどのアルバムも一聴の価値があるということだ。こにはきっと新たな発見もあるだろうし、また中には、あなた方が以前から愛聴してきたアルバムもあるに違いない。

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100位 : ブリンク182『Enema of the State』

今日に至るまで、スケート・パンクというジャンルからはロック史に残る名盤が数多く生まれている。だがその中でも、キャッチーさや面白さ、そして抜け目のなさという点で、この『Enema of the State』に優るアルバムはほとんど見当たらない。ブリンク182の馬鹿騒ぎは、オーディエンスのことを知り尽くし、愛していたからこそのものだった。

1999年ごろに10代後半だった若者たちは、「What’s My Age Again?」を聴いて、自分たちもまだ大人にならなくていいんだと感じ、安心させられたことだろう。やがてブリンク182もシリアスな一面を披露するようになるが、当時の彼らにそうした要素は求められていなかった。

 

99位 : パール・ジャム『Ten』

同じシアトル出身のニルヴァーナが伝統的なハード・ロックに懐疑的だった一方で、パール・ジャムはそれらの音楽に新たな意義を見出せると考えていた。マイク・マクレディのリード・ギターと、エディ・ヴェダーの歌声には本能に訴えかけるものがあり、それらはダークで共感性の高い「Alive」や「Even Flow」「Jeremy」といった楽曲に効果的に用いられている。そういった面では、彼らはミスフィッツさえ凌駕していたといえるだろう。

 

98位 : スマッシング・パンプキンズ『Siamese Dream』

ビリー・コーガンのポジションを揺るぎないものにしたのが、このアルバム『Siamese Dream』だった。彼は一流の表現力を持った自らのギター・プレイを余すことなく披露し、いわばスタジオの魔法の力も借りて、緻密さに満ちた作品を完成させた。20年以上経った今でも新たな発見がある名作だ。そして驚かされるのは、『Siamese Dream』に収録されているトラックは (「Today」や「Mayonaise」のような珠玉の作品に限らず) どれも個性が際立っているということだ。

 

97位 : フランク・ザッパ『Apostrophe』

多くのファンがフランク・ザッパの一番好きなアルバムとして本作を挙げる理由はいくつもある。『Apostrophe』は音楽的な発明に満ちた作品で、歌詞の面白さは商業的な成功を可能にするものだった (「Don’t Eat the Yellow Snow」はシングルとしてもリリースされている) 。

タイトル・トラックを演奏しているのは最高のパワー・トリオといえるメンバーである。しかし「Cozmik Debris」の思想よりもニュー・エイジ運動の方が長く生き残ったのは不思議なことだ。

 

96位 : テレヴィジョン『Marquee Moon』

フリー・ジャズとフランス象徴詩の影響を受けてパンク・ロックの幅を広げたこのアルバムは、ニューヨークの記念碑的な作品といえよう。バンドのリーダーがトム・ヴァーレインと名乗っているだけのことはある。オープニング・トラックにふさわしい「See No Evil」と、タイトル・トラック「Marquee Moon」に聴ける雄大なギター・ジャムをはじめ、このアルバムにはいまもエネルギーが満ち溢れている。

 

95位 : ディープ・パープル『Machine Head』

このアルバムは、ロック史上稀にみるラウドで、なおかつ有名なアルバムでありながら、最も喜びに溢れたアルバムでもある。ディープ・パープルのダークな側面 (前作『Fireball』で全面に打ち出されている) は大幅に抑えられており、純粋にロックを称えるアルバムに仕上がった。惑星間を飛び回るような「Space Truckin’や、ハイ・スピードで駆け抜けていくアンセム「Highway Star」を聴けば、気持ちが高ぶること間違いなしだ。

 

94位 : ハスカー・ドゥ『Zen Arcade』

変幻自在のトリオ、ハスカー・ドゥはこの壮大な2枚組アルバム『Zen Arcade』にサイケデリック、ハードコア、アヴァン・ロック、ノイズ・ポップといった何もかもを詰め込んだ。それらは<自由を手にした若者の最初の1年>というゆるやかなコンセプトのもとにまとめられている。

この作品によってボブ・モールドとグラント・ハートは両者ともトップ・クラスのソングライターの仲間入りを果たし、バンドは強力なパワー・トリオとして名を上げた。このアルバムがたった3日間のセッションでレコーディングされたことは有名だが、そのスピード感や勢いも演奏から感じ取れる。

 

93位 : ザ・ジャム『Sound Affects』

『Sound Affects』はこのトリオの5作目のスタジオ・アルバムにして最高傑作である。ポール・ウェラーがロック界を代表する世界的ソングライターとされる所以を十二分に感じ取れる作品だ。率直なラブ・ソングを痛烈に批判した楽曲から、皮肉たっぷりの名曲「That’s Entertainment」に至るまで、彼らはこのアルバムであらゆる方面にその音楽性を広げている。

ザ・ジャムはシングル曲をアルバムから外すことが多かったが、このころには揺るぎない名作である「Going Underground」を省く余裕があるほどだったのだから彼らが最盛期を迎えていたといって間違いないだろう。

 

92位 : ペイヴメント『Crooked Rain, Crooked Rain』

スティーヴン・マルクマスというオリジナリティの塊のようなソングライターを擁し、ギターのサウンドもすばらしいペイヴメント。制作上の無駄を省き、心に響くロック・ソングとウィットに富んだ魅力的な楽曲を残した。本作はさまざまな点で後世に大きな影響を与えたが、そのひとつには曲さえあればスタジオでの莫大な予算は必要ないと証明したことが挙げられるだろう。

 

91位 : プリテンダーズ『Pretenders (愛しのキッズ) 』

本作でデビューするやいなや、クリッシー・ハインドはたちまち時代を象徴する人になった。だが本来のプリテンダーズは、純度の高いパンクからアリーナ・ロックに近いもの、ディスコやダブまであらゆるジャンルを取り入れたバンドらしいバンドだった。

個人的な告白を歌った「Tattooed Love Boys」から、クールで自信に満ちた「Brass In Pocket (恋のブラス・イン・ポケット) 」まで、ハインドはどんな曲でも魅力的に歌い上げることが出来た。

 

90位 : ザ・ヤー・ヤー・ヤーズ『Fever to Tell』

本作について語るべきことは多い。強烈な印象を与えるフックがいくつもあることや、バンドが騒々しいパンクから古典的なポップまでわけなく演奏していること。またカレン・Oのヴォーカルのカリスマ性とスター性。

後に彼女たちの作品はもっと洗練されていくが、『Fever to Tell』においては、何でも試してみようとする挑戦的な姿勢が感じられる。それがこのアルバムと、当時を代表するロック・シングルである「Maps」を特別なものにした。

 

89位 : ウィルコ『Yankee Hotel Foxtrot』

本作のために、ジェフ・トゥイーディは所属レーベルや、一部のバンド・メンバーたちとさえ争うことになった。だが彼には、自分が偉大な作品に取り掛かっているという自覚があったのだ。

密度の濃い電子音がアルバム全体を通して重要な役割を果たしており、各収録曲 (そのほとんどは才気溢れる、故ジェイ・ベネットが作曲した) には不確かな未来に向かってばらばらになってしまったアメリカが表現されている。だがアメリカーナというジャンルの未来が明るいことは証明され、本作はロック史上最高の名盤にその名を連ねた。

 

88位 : ボストン『Boston (幻想飛行) 』

ほとんどすべてのレコード会社に断られながら、リリースを勝ち取ると驚異的なセールスを記録したボストンのこのデビュー・アルバムは、以降のAORの模範となった。だがそうして生まれた無数の模倣者たちは、サウンドこそほぼ正確に再現出来たものの、トム・ショルツの楽曲の根底にあるハートを再現することは出来なかった。

彼の楽曲は特に、故ブラッド・デルプがエモーショナルに歌い上げることで唯一無二の輝きを放った。しかも、模倣者たちが何百万ドルも費やしてようやく得たようなサウンドを、ショルツは自宅で作り上げてしまったのだ。

 

87位 : ザ・キンクス『The Kinks Are the Village Green Preservation Society』

ブリティッシュ・ビートのグループとして始動してから、レイ・デイヴィスの鋭い社会風刺が特徴的なバンドになるまで、キンクスは着実に成長を続けていった。そしてその変遷の中で最初に迎えたピークが本作だ。

ほろ苦いウィットと巧みに描写されたキャラクター、そして耳に残るメロディーが特徴的なアルバムには、パンクを先取りしたような「Johnny Thunder」や、イギリスの素朴なブルースのような風情が感じられる「Last of the Steam-Powered Trains (蒸気機関車の最後) 」のように、このグループらしいハードなロック・サウンドも健在だ。

 

86位 : ザ・カーズ『The Cars (錯乱のドライヴ) 』

熟達した5人のミュージシャンから成るボストン出身のザ・カーズは、ニュー・ウェイヴのジャンルから初めての大ヒット作を世に送り出した。ほとんどすべての楽曲がラジオでヒットし、カーズはクールなアート性とロックンロールの魂を完璧に融合させた。

リック・オケイセックの曲はロックのキャッチフレーズを皮肉ってはいるが (「Shake it up」「Let the good times roll」といったフレーズは、「踊ろう」「楽しもう」というニュアンスでしばしば使用された) 、手拍子を打ちたくなるようなものばかりだ。

 

85位 : スージー・アンド・ザ・バンシーズ『Juju (呪々) 』

ダークな魅力に溢れたアルバム『Juju』はゴス・シーンを語る上では欠かせない作品。以前からパンク・ロックは自分には合わないと感じていたスージー・スーだったが、本作でまったく別のジャンルを代表する歌姫としての地位を確立した。

特に、シングル曲「Arabian Knights」と「Spellbound (呪縛) 」では彼女のヴォーカルの魅力が遺憾なく発揮されている。バンシーズの全盛期を支えていたもうひとりのメンバーに、ギタリストのジョン・マッギオークがいる。彼の多彩なギター・サウンドは、セヴェリンとバッジーのリズム隊が生み出す迫るようなビートと完璧に調和している。

 

84位 : ヴァン・モリソン『Astral Weeks』

先進的なR&Bバンドを脱退し、揉めた末に前レーベルを脱退したばかりの時期、怒れる若者であったヴァン・モリソンは、瞑想的で超越的な美しさを持ったアルバムを作り上げた。おそらくこのリストで最も<ロックっぽさ>がないアルバムだ。

だが『Astral Weeks』はロック・アルバムのように制作され、主にジャズ・ミュージシャンたちによって演奏された。その歌声は何らか神聖なものの影響を受けている。どのカテゴリーにも当てはまらない本作に言えることは傑作であるということだけだ。

 

83位 : エルヴィス・コステロ『Armed Forces』

世間から怒りっぽい若者だと思われていたエルヴィス・コステロだが、彼はこのアルバムでそんなイメージに反論した。卓越したメロディー・センスや個性的なアレンジ、多義的な言葉遊びが光る作品だが、怒りの感情も十分に詰め込まれている。米国版にはボーナス・トラックとして「What’s So Funny ‘Bout Peace, Love and Understanding」を収録。彼はニック・ロウのこのすばらしい曲を、長い間愛されるアンセムに仕立て上げた。

 

82位 : ジェネシス『Selling England By the Pound (月影の騎士) 』

プログレッシヴ・ロックの代表的なアルバムである『Selling England By the Pound』はジェネシスの最も壮大な作品だ。「Dancing With the Moonlit Knight」では、ピーター・ガブリエルが歌う空想的な詩とスティーヴ・ハケットによる画期的なタッピング・ギター・ソロが見事に調和している。

「Cinema Show」と「Firth of Fifth」の間奏は、プログレッシヴ・ロックに括られる作品の中でも指折りの雄大さをもつ演奏だ。一方で「The Battle of Epping Forest (エピング森の戦い) 」ではガブリエルのシュールなユーモアが炸裂している。

 

81位 : TV オン・ザ・レディオ『Return to Cookie Mountain』

このバンドは溢れるほどのアイディアを持っていて、本作ではこれでもかとそのすべてを試している。本アルバムは聴き尽くせないほどの音と、人間の根源的な不安感に溢れ、思わず没入して聞き込んでしまう作品だ。そんな体験を彼らは昔ながらの音楽アルバムというフォーマットに落とし込んでみせた。

アルバムの中で最も不気味な曲「I Was a Lover」で幕が上がり不安を掻き立てられると、聴き手はシングル「Wolf Like Me」のようなキャッチーな楽曲を探し求めてしまう。

 

80位 : ホール『Live Through This』

いわく付きの人物という一生拭えないイメージが付く以前、コートニー・ラヴはロック史上でも有数のアルバムを残した。『Live Through This』は一聴したところ、オルタナティヴ・ポップのサウンドが魅力的な心地よい作品に仕上がっているが、それによって彼女の率直でフェミニスト的な歌詞がより受け入れられやすくなっている。彼女のヴォーカルには、そんな甘さの中に毒を持っているような感じがよく表現されている。

 

79位 : ザ・ホワイト・ストライプス『White Blood Cells』

ジャック・ホワイトとメグ・ホワイトは、アングラ系のファンが熱狂する生々しさを持ちながら、ツェッペリンを愛好するような人たちをも唸らせる音圧を十分に兼ね備えていた。世界中に一大旋風を巻き起こしたのも頷ける。これほど本能的な化学反応を起こすツーピース・バンドは今までに存在しなかった。

また本作の収録曲は、ぞくぞくさせるようなブルース・ロックから「We’re Going to Be Friends」のようなバブルガム・ミュージック・タッチのポップ・ソングまで、彼らがどんな音楽も奏でられることを証明している。

 

78位 : ザ・ドアーズ『The Doors (ハートに火をつけて) 』

1967年を迎えた初週に本作がリリースされてからというもの、それ以降のロックはいわば<何でもあり>になった。ジャズの要素を取り入れつつ、ビート・ジェネレーションの影響下にある陶酔的な詩を前面に出したドアーズの音楽がそれを決定づけたのだ。

このデビュー・アルバムは驚くほどの多様性に富んでおり、ウィリー・ディクスンとベルトルト・ブレヒトの楽曲のカヴァー・ヴァージョンまで収録されている。A面は性欲の解放を歌った「Light My Fire (ハートに火をつけて) 」で終わり、B面は現代の黙示録である「The End」で締めくくられている。

 

77位 : PJ・ハーヴェイ『Rid of Me』

PJ・ハーヴェイのセカンド・アルバム『Rid of Me』は前作に引き続きブルースを基調としたアルバムだったが、同作の楽曲には彼女のありのままの、個人的な色合いがより強く感じられる。

「50 Ft. Queenie」や「Rub Til It Bleeds」、前アルバムと同名の「Dry」など楽曲で彼女は、恋愛関係に潜む陰を大胆に見つめている。プロデューサーであるスティーヴ・アルビニの手腕もあり、あまりに鮮烈な作品に仕上がった。

 

76位 : ザ・ポリス『Synchronicity』

ポリスの5作目にして最後のアルバムでは、彼らのトレードマークであったレゲエのグルーヴがぐっと影を潜めた。だがそのころには彼らのサウンドが明確に確立されており、「Tea in the Sahara (サハラ砂漠でお茶を) 」のような繊細な楽曲でさえ彼ららしさを感じ取れる。

B面はポリス解散後のスティングの音楽性を先取りしたようなものだが、A面にはバンドの奇抜な創造性が至るところで見られる。ヒット・シングルに<屈辱的に股間を蹴られる / humiliating kick in the crotch>などといったフレーズが使われた例はこれまでに (そして恐らくこれからも) 思い浮かばない。

 

75位 : ラヴ『Forever Changes』

ラヴが1967年リリースにしたこの傑作は、ほかのサイケデリック・ロックの名盤とは明らかに一線を画している。凝ったサウンド・エフェクトもなく、自由にかき鳴らしたようなジャムもなければ、エレキ・ギターもわずかにしか使われていない。

サイケデリックな要素というのは、すべてアーサー・リーの頭の中にあった。彼の書く歌詞は常に空想的で掴みどころがなく、メロディは一度聴いたら忘れられない。そして「You Set The Scene」は人間存在について歌ったロック・ソングの中でも最高峰の1曲だ。

 

74位 : シン・リジィ『Jailbreak (脱獄) 』

シン・リジィは、アメリカでは一発屋で終わってしまったことが今でも不思議でならないほど、魅力溢れるバンドだった。だがイギリスでは、フィル・ライノットのスラングや方言を用いた詩とこのバンド特有のギターのハーモニーがしっかりと受け入れられた。

そんな彼らの最高傑作『Jailbreak』の中でも、「The Boys Are Back in Town (ヤツらは町へ) 」と「Cowboy Song」は特にすばらしい。それに加えて、彼らは出身地であるアイルランドのルーツ・ミュージックを取り入れる術も心得ており、この秘密兵器は「Emerald」で印象的に用いられている。

 

73位 : R.E.M『Murmur』

長年に渡る活動の中で幾度もピークを迎えるR.E.Mだが、長年愛される彼らのデビュー・アルバムはそのサウンドを決定付けるものだった。彼らは繊細さ、アメリカ南部的な匂い、騒々しいリッケンバッカーといった (1983年当時は) 時代遅れだったものを取り入れてそのサウンドを完成させた。

記憶に残る佳曲を作る才能は既に開花しており (アコースティックなサウンドの「Perfect Circle」を聴いてみてほしい) 、「Radio Free Europe」は1980年代のアンダーグラウンド・シーンを牽引するスローガンのような存在になった。またマイケル・スタイプのヴォーカルは発音の聞き取りづらさを指摘されることもあるが、彼の歌詞の詩的なイメージは誰にでも感じ取れるだろう。

 

72位 : メガデス『Rust in Peace』

デイヴ・ムステイン率いるメガデスは、この時すでに10年近い活動期間を誇り、世間の注目を集めていた。だが『Rust in Peace』は、ギタリストのマーティ・フリードマンが加入して全盛期のラインナップが揃った最初の作品として特筆に値するだろう。

また、個人的な恐怖や、政治への不信、それに少しだけスーパーヒーロー・フィクションの要素を織り込んだムステインの世界観にもここでさらに磨きがかけられた。トリッキーな構成と根底を流れる怒りが特徴的な「Holy Wars…The Punishment Due」はスラッシュ・メタルの最高傑作に数えられる作品だ。

 

71位 : スリーター・キニー『Dig Me Out』

スリーター・キニーは社会やセクシュアリティに関して鮮烈なメッセージを残そうとしていたし、ロックンロール史を代表するバンドにもなろうとしていた。そして彼女たちはこの3作目のアルバムでその両方を成し遂げた。

悲しみや不満に満ちてもいるが、同時にこれほど爽快な作品も当時はめずらしいほどだった。それに加えて、コリン・タッカーとキャリー・ブラウンスタインのコンビネーションは、シンガーとギタリストの理想形といえよう。

 

70位 : クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ『Songs for the Deaf』

2002年のロックには衝撃的な作品が求められていたが、それを世に送り出したのがジョシュ・オムだった。作曲や制作の面で大胆にも奇をてらって作られた本作は、音楽を愛する男たちが楽しみ半分に作り上げたアルバムだ。だが他方で、この作品に詰め込まれたたくさんのフックや魅力的なリフは、十分に大衆ウケするものだった。特にドラマーとして参加したデイヴ・グロールの力強い演奏がアルバム全体を通してすばらしい。

 

69位 : グレイトフル・デッド『Workingman’s Dead』

サイケデリアを前面に押し出したアルバム4作をリリースしたあと、グレイトフル・デッドは大変身を遂げ、この『Workingman’s Dead』で”コズミック・アメリカーナ”というジャンルを発明した (控えめに表現しても、完成させたと言っていい) 。

「New Speedway Boogie」のグルーヴ感や叡智に満ちた「Casey Jones」の歌詞、「Uncle John’s Band」の深遠さは、彼らの熱心なファン (デッドヘッド) でなくても感じられるだろう。本作は5ヶ月後にリリースされた、甲乙付けがたい重要作『American Beauty』と合わせてひとつの作品とみなすべきだろう。

 

68位 : サウンドガーデン『Superunknown』

シアトルのアンダーグラウンド・シーンで活動していたサウンドガーデン。プロデューサーのマイケル・バインホーンが彼らのサイケデリックな部分を上手く引き出して、このハード・ロックの記念碑的な作品が生まれた。

『Superunknown』はそのサウンドの重厚さに見合ったエモーショナルな力を持っているが、それはクリス・コーネルのヴォーカルによるところが大きい。中でも「Black Hole Sun」と「The Day I Tried to Live」の表現力はヘヴィ・ロックの楽曲としてこれ以上ないものだ。

 

67位 : アーケイド・ファイア『Funeral』

プレップ・スクール (予備校) で結成されたグループの中でアーケイド・ファイアは恐らく史上最高のバンドだろう。彼らは現代のロックが魂を失いつつあったころにデビューを果たした。

ウィン・バトラーの訴えかけるようなリード・ヴォーカルが人々の心を鷲づかみにする『Funeral』は純粋な感情の爆発のような作品だった。だがよく聴いてみると、楽器隊の演奏にもいかに多くの要素が詰まっているか分かる。準コンセプト・アルバムともいうべきこの『Funeral』は、決死の叫びであり、その行き着く先には希望がある。

 

66位 : アークティック・モンキーズ『AM』

ナイトクラブ・シーンから抜け出したアークティック・モンキーズはより思慮深く、より優れたバンドになった。彼らは荒削りな激しさも残したまま、電子音を取り入れたり、表現豊かなポップ・ソングを作ったりすることもできるまでに成長したのだ。

『AM』は作曲者アレックス・ターナーとしての個人的な転換点になった。同作には、さらにバンドに多大な影響を及ぼしてきた詩人、ジョン・クーパー・クラークのレパートリーのカヴァー・ヴァージョンも収録されている。グループは、ここでようやくその敬意を公然と示すことが出来たのである。

 

65位 : ベティ・デイヴィス『They Say I’m Different』

<私は変わっているらしい>という題名どおり『They Say I’m Different』には1970年代初期にしてはあまりにも多くの要素が含まれていた。画期的なロックとファンクの融合や性に関する刺激的な歌詞、ベティ・デイヴィスの派手なヴォーカルや強い女性像など、思いつく限り先進性に満ちている。もしもこのアルバムがリリース時に正当な評価を受けていたら、ロックの歴史は大きく変わっていただろう。

 

64位 : ラッシュ『Moving Pictures』

ラッシュの作品群の中で最も愛されている『Moving Pictures』は、初期のスリーピース・ロックの時代と後の重厚なプログレッシヴ・ロックの時代の中間に位置するアルバムだ。アリーナを揺るがす「Tom Sawyer」からレゲエにインスピレーションを受けた「Vital Signs」に至るまで、すべてのトラックに発見の喜びがある。

また小さなスリルの中に大きな野望を表現した「Red Barchetta (赤いバーチェッタ) 」は、ラッシュのひとつの到達点であるといえよう。

 

63位 : ザ・ゴーゴーズ『Beauty and the Beat』

ゴーゴーズのデビュー・アルバム『Beauty and the Beat』は、全員女性のメンバーが自ら演奏とほとんどの楽曲の作曲を手がけ、チャートの1位を獲得したアルバムとして歴史に名を残す作品だ。

また、純粋に楽しめる作品でもあり、シャーロット・キャフィー、ジェーン・ウィードリン、キャシー・バレンタインの3人はカリフォルニア・ポップの良い部分をすべて取り入れて一流のソングライターとしての実力を示した。中でも「We Got the Beat」と「Our Lips Are Sealed (泡いっぱいの恋) 」は時を越えて色褪せることがない。

 

62位 : ザ・ストロークス『Is This It?』

アルバム『Is This It?』でストロークスは新しい時代のニューヨーク・パンクを提示した。主にカーズ、ストゥージズ、ヴェルヴェッツといった過去のバンドのいいとこ取りをした彼らの楽曲は、常に味わい深くて短く (すべて4分以下) 、それでいて決して平坦ではない。2001年の後半にその真価が認められ始め、ニューヨークという街がその独自の姿勢を失わないことを思い出させてくれる格好の作品となった。

 

61位 : モーターヘッド『Ace of Spades』

バンドのリーダーであり首謀者のレミーは<モーターヘッドはヘヴィー・メタルではない。ロックンロールだ>と常に主張していた。だからこそパンクスもメタルヘッズも彼らを支持したのかもしれない。いや、あるいは単に彼らがあまりにも楽しい存在だったからもしれない。

本作はモーターヘッドの長い歴史においても、「We Are the Road Crew」「The Chase is Better Than the Catch」、そしてタイトル・トラックの「Ace of Spades」といった最も多くのアンセムを収録した作品だ 。それに、<生き急ぎ、若くして死ぬ>というよりは<もっと生き急ぎ、老いてから死ぬ>というモーターヘッドの哲学を示したよい例でもある。

 

60位 : ブロンディ『Parallel Lines (恋の平行線) 』

1970年代の多くのパンクスたちと同様、ブロンディは昔ながらのAMラジオを聴いて育った世代で、そのすべてを愛していた。この3枚目のアルバムで彼女たちは世界クラスのポップ・バンドになったが、このころにはパンク、ディスコ、ブリル・ビルディング・ポップやプログレッシヴ・ロック (「Fade Away & Radiate」にはロバート・フリップが参加) に至るまで何でもこなす余裕があった。

『Parallel Lines』からは3つのヒット・シングルが生まれたが、軽く見積もっても、ほかにもヒット曲になり得る佳曲が6曲はあるアルバムだ。

 

59位 : ジョイ・ディヴィジョン『Closer』

イアン・カーティスは圧倒的な影響力を持った本作を残し、この世を去っている。ダークで物悲しく、それでいてダンサブルというポスト・パンクの特徴を確立したアルバムだ。『Closer』にジョイ・ディヴィジョンの代表的なシングルは1曲も収録されていない。しかし、ここで表現された音世界は、近づき難いようで、同時に人々を惹きつけて止まない。

 

58位 : キッス『Alive! (地獄の狂獣 キッス・ライヴ) 』

もしこの時代に育っていたら、『Alive!』はバイブルだっただろう。そして事実そんな風に育った未来のスーパースターたちが数多くいたのだ。初期のキッスはアンセムと確固たる主張を二枚看板にしていたが、ここに収録されている楽曲はアリーナを沸かせるものばかりだ。白塗りのメイクを施したグループの熱い叫びが聴ける数少ないライヴ・アルバムのひとつである。

 

57位 : ZZトップ『Tres Hombres』

シンセサイザーやミュージック・ビデオを導入する以前、ZZトップはテキサスに根付いた小さな古き良きバンドだった。無駄を省いた『Tres Hombres』の味わい深いサウンドからは、トリオならではの化学反応や、優れたフレーズを生み出すビリー・ギボンズの才能、彼らのルーツである堅実なブルースを感じられる。また「La Grange」ではジョン・リー・フッカーのそれを彷彿させるグルーヴで年季の入ったロック・ファンをも唸らせてしまう。

 

56位 : ソニック・ユース『Daydream Nation』

『Daydream Nation』はソニック・ユースが残してきたアルバムの中で、それまでで最もキャッチーで、同時に最もアイディアに溢れた作品だった。ちょっとした大作「Teen-Age Riot」はキム・ゴードンによるいささか不気味な台詞で始まり、それからギターがかき鳴らされて予想に反して楽しげなフックに移り変わる。大音量と発明が詰まったこの2枚組アルバムは、全体として、ジェットコースターに乗っているかのような気分を味合わせてくれる作品になっている。

 

55位 : トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ『Damn the Torpedoes (破壊) 』

ヒットしてもおかしくなかった楽曲ばかりの2枚のアルバム (「Breakdown」も「American Girl」も当時は大きなヒットにはなっていない) をリリースしたあと、トム・ペティと、ペティ率いるハートブレイカーズはついに奥の手を使うことに決めた。

ジミー・アイオヴィンをプロデューサーに迎え、音量を上げて、すべて曲に最後の演奏かのような気合いを込めたのだった。「Refugee (逃亡者) 」と「Don’t Do Me Like That (危険な噂) 」が幸先よくヒットを記録する一方、「ルイジアナ・レイン」のような隠れた名曲に支えられ、『Damn the Torpedoes (破壊) 』は車を走らせる旅にぴったりのアルバムになった。

 

54位 : デレク・アンド・ザ・ドミノス『Layla and Other Assorted Love Songs (いとしのレイラ) 』

失恋でブルースマンが落ちぶれることはない。エリック・クラプトンも、ミューズであるパティ・ハリスンに手が届かないことを悟ったとき、この象徴的な作品を生み出した。

彼のギター・ヒーローとしての実力は至る所で発揮されているが、クラプトンのソロ・パートでも、デュアン・オールマンとの競演でも、ギターが活躍する部分はどれも、まるで心の叫びが聞こえてくるかのようだ。だがグループとこの唯一のスタジオ・アルバムの影の立役者は、キーボード・プレイヤーのボビー・ウィットロッで、そのウィットロックによるハーモニーが作品に深い陰影をもたらしている。

 

53位 : バッド・ブレインズ『Bad Brains』

バッド・ブレインズはハードコア・ムーヴメントにさらなる可能性を見出した。アフリカ系アメリカ人のラスタファリアンである彼らは、そこにポジティヴでスピリチュアルなものを取り入れることが出来ると考えたのだ。それにも関わらず、彼らの楽曲にはほかのバンドに劣らぬ速さと怒りがある。

また彼らほど早くから、ヘヴィー・メタルの要素やほとんどポップとも言えるほどキャッチーなコーラスを取り入れたハードコア・バンドはめずらしかった。

 

52位 : レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン『Rage Against the Machine』

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンはいくつかの意味で画期的なグループだったが、特にヒップ・ホップを取り入れたロック・バンドとしては史上最強と言えるだろう。代表曲の「Bullet in the Head」と「Killing in the Name」では狙って議論を巻き起こし、歌詞はあえてさまざまな解釈が出来るようなものにしてある。最初から最後まで闘争的な作品であり、トム・モレロは本作で現代のギター・ヒーローとしての座を確立したといえるだろう。

 

51位 : トーキング・ヘッズ『Remain in Light』

フェラ・クティとジェームス・ブラウンを愛した技巧派ロック・バンドは数多くいたが、1980年時点でトーキング・ヘッズよりもその影響をうまく昇華させたバンドはいなかった。『Remain in Light』で聴くことのできる音楽はロックとも言い切れないし、ファンクとも言い切れない。

同作はデヴィッド・バーンのあまりに魅力的な歌詞で包まれた、新たな発明だったのだ。本作はプロデューサーとしてのブライアン・イーノの代表作のひとつでもあるが、これを最後に彼はバンドと袂を分かつことになる。

 

50位 : ザ・キュアー『Disintegration』

ポップな作風の『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』で異例の成功を収めた後、ロバート・スミスは180度方向転換した。このころLSDにも手を出していたと言われる彼は、キュアーをそのルーツであるゴシックに回帰させた。結果として完成した本作は、バンド史上最もダークで斬新なものになり、さらに予想に反してバンドの最高傑作となった。

 

49位 : メタリカ『Master of Puppets (メタル・マスター) 』

ファースト・アルバムと、続く2作目でスラッシュ・メタルを完璧に彼らのものにしたメタリカは、いよいよ壮大さを手にしようとしていた。もちろん凄まじいラウドさは据え置きだ。緊密に構成された「Battery」や「Welcome Home (Sanitarium) 」といったトラックでは、ジャンルの垣根を越えてアコースティックな演奏やプログレッシヴ・ロックの複雑さといった要素をまとめ上げている。

歌詞の面では、社会問題への意識や普遍的な恐怖心を歌っている。また本作は、メタリカが有り余るほど備えている「力」という概念をゆるやかなテーマにしている。

 

48位 : リズ・フェア『Exile in Guyville』

1990年代のインディ・シーンの不思議なことのひとつは、このようなすばらしいアルバムがどこからともなく現れたことだ。リズ・フェアの楽曲には、至るところにポップなフックが散りばめられていて、無邪気で率直な印象を受ける。だが彼女は常にリスナーたちよりも一枚上手だった。

例えば、本作はリズ・フェアによる、ローリング・ストーンズの『Exile on Main Street (メイン・ストリートのならず者) 』に対する本心からのオマージュだったのかどうか、誰にも分からなかった。だがいずれにせよ、この『Exile in Guyville』が、1990年代を代表する傑作であることに変わりはない。

 

47位 : オールマン・ブラザーズ・バンド『At Fillmore East』

ロック・ミュージックの歴史上、『At Fillmore East』ほど即興演奏が多く、かつ完成度の高いライヴ・アルバムがほかにあるだろうか?デュアン・オールマンとディッキー・ベッツの魔法のようなギター・プレイや、グレッグ・オールマンのソウルフルなヴォーカルについては語り尽くされているが、バンドの秘密兵器である、目眩くツイン・ドラムの相互作用も忘れてはいけない。

彼らはフィルモア・イーストにおける歴史的な同公演でヘッドライナーこそ務めてはいないが (ジョニー・ウィンターが務めた) 、これ以降単なる<スペシャル・ゲスト>では終わらない大物バンドになった。

 

46位 : U2『Achtung Baby』

世界的な人気を誇るバンドが、人々の予測を完全に裏切るというのはそうあることではない。革新的なエレクトロニック・サウンドを採用した『Achtung Baby』は、U2を再定義するとともに5つもの印象深いシングル曲を残した。また、本作を引っ提げてのZoo TV・ツアーはコンセプト・ライヴとしてのロック・ツアーの価値を高めるものだった。

 

45位 : ザ・リプレイスメンツ『Let It Be』

リプレイスメンツのすばらしい所は、ステージで優れたパフォーマンスを披露する一方、レコーディング・スタジオでも歴史に残る名曲を作れたことだ。このころのポール・ウェスターバーグの曲には自信喪失や共感、強い希望といった要素がみられるが (「I Will Dare」にはこのすべてがある) 、それでいて彼らは少々の遊び心を加えることまでできた。

 

44位 : ヴァン・ヘイレン『Van Halen (炎の導火線) 』

史上最高のパーティー・ソング・アルバムのひとつに数えられて然るべき、ヴァン・ヘイレンのデビュー・アルバム『Van Halen (炎の導火線) 』は随所に聴けるテクニカルなパフォーマンスとその純粋な姿勢によってハード・ロックの価値を高めた。

1978年にアルバムがリリースされるやいなや、当時のギタリストたちは「Eruption (暗闇の爆撃) 」で披露される妙技を解明するために自室に駆け込んだものだ。それどころか、今でもそうしたギター小僧は後を絶たない。

 

43位 : ボン・ジョヴィ『Slippery When Wet (ワイルド・イン・ザ・ストリーツ) 』

ブルース・スプリングスティーンがニュージャージーから抜け出すために生きているすべての人々の声を代弁したとしたら、ボン・ジョヴィはそこに留まっているたちを代表したといえるだろう。

ロック・アルバムとしての彼らの最高傑作である本作には3つの大ヒット曲があるが、「Livin’ on a Prayer」は以降彼らの得意分野となる、ストリートでの生活を歌った楽曲だ。もちろん、ラジオでのオン・エアにうってつけのキャッチーなフックも備わっている。

 

42位 : ピクシーズ『Doolittle』

成り行きでバンド名を付けた彼らのアルバムは、リスナーを直感的に興奮させながら同時に頭を混乱させる。ピクシーズはインディー・ロックでも指折りにキャッチーなメロディに乗せて、身体切断や奇妙なセックス、実験所の猿などについて歌ってみせた。ピクシーズのサウンドを拝借した重要バンドは多くいるが、ブラック・フランシスの叫びのようないたずら心は誰にも真似できない。

 

41位 : ビキニ・キル『The First Two Records』

ライオット・ガール運動の旗手であったビキニ・キルは、パンクが約束した「解放」を実現させた。だがこの作品は単に音楽に乗せたフェミニストの政見放送ではない。激しく、そして新たな可能性を探ったパンク・ロックであり、真実の叫びでもある。この重要作は革命を呼びかけるところから始まり、着実に準備を進め、実際に革命を起こしている。

 

40位 : ブラック・サバス『Paranoid』

ファースト・アルバムのようなキラー・リフもそのままに、本作でブラック・サバスは軍事兵器から趣味の悪い靴を履いた男たちに至るまで、さまざまな社会悪に目を向けた。3分に収まる数少ない (モーターヘッド以前の) ヘヴィー・ロックの傑作である表題曲「Paranoid」はパンク・メタルにも影響を与えた。隠れた名曲である「Hand of Doom」は、メタル史上最も力強い反ヘロイン・ソングと言っていいだろう。

 

39位 : クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル『Willie and the Poor Boys』

『Willie and the Poor Boys』はCCRことクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルが残した唯一のコンセプト・アルバムであり、ジョン・フォガティが持っていた社会問題への意識が前面に出た作品だった。

また同作は、両面がまったく同じ構成で作られたアルバムでもある。各面は、両A面で発表された名シングル曲 (「Down on the Corner」と「Fortunate Son」) で始まり、痛烈な題材を扱ったロック・ナンバー、次にカントリーやフォークのカヴァー・ソング、インストゥルメンタル・ナンバーへと続いて、最後にやや長めでトーンの暗い楽曲が配置され、アルバム全体に深みを与えている。

 

38位 : デフ・レパード『Hysteria』

『Hysteria』は当時の最新技術を取り入れた1980年代スタイルのハード・ロックの最高の到達点である。スタジオ技術の進展とバンドの勢いが見事に共存した作品といえるだろう (プロデューサーのマット・ランジは究極の勤勉家で、スタジオに篭りっぱなしの人間だった) 。

デフ・レパードは本作に文字通り心血を注ぎ、ドラマーのリック・アレンは実際、制作中に事故で片腕を失っている。それでも彼らはどうにか明るさを保ち続け、ロック・ミュージックの歴史に残る偉大なアルバムを生み出した。

 

37位 : パティ・スミス『Horses』

この画期的なアルバムは、パンクと詩情がぶつかり合って生まれた。それはまるでアルチュール・ランボーとカンニバル&ザ・ヘッドハンターズが出会ったかのようでもある。

デビュー・アルバムのオープニング・ナンバーとして、ここでパティ・スミスが歌う「Gloria」ほど力強くアーテイストの意思を示した楽曲は少ないだろう。今では作品そのものに劣らず有名な、ロバート・メイプルソープが撮影したアルバム・カヴァーのポートレートも本作に華を添えている。

 

36位 : マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン『Loveless』

音楽アルバムというよりはむしろ没入感のある聴覚体験といえるような『Loveless』は、シューゲイザーの流行を形作り、同時に超越するものだった。官能的なギターとヴォーカルが成す重層的なサウンドのおかげで、夢を見たりベッドの上で何かする際のお供にはこの上ない作品だ。当然、ロック・アルバムの最高峰にそびえたつアルバムと断言できる。

 

35位 : ニール・ヤング『After the Goldrush』

ニール・ヤングは、アコースティック・ギターで優しく私的なアルバムを作ったかと思えば、クレイジー・ホースを呼んでパンク・ムーヴメントを牽引することもあった (あるいはグランジ、あるいはメタルなどその時々の流行の先駆者だった) 。そして『After the Goldrush』で彼はその両方を巧みにやってのけた。

「Only Love Can Break Your Heart」では優しく聴き手の心を揺さぶり、「Southern Man」では痛烈な題材を歌い上げた。そんな風にテイストの異なった楽曲が同居したアルバムが、この『After the Goldrush』である。

 

34位 : グリーン・デイ『American Idiot』

『Dookie』の大きな成功が、結果的にグリーン・デイのさらなる野望に火を点けた。彼らはポップ・パンクの枠を越えて、アメリカを代表するバンドになりたいと望むようになったのだ。だがそれにしても、彼らが『American Idiot』であまりに巨大な一歩を踏み出した。

ノリのよさと風刺性を兼ね備えた壮大な楽曲群は驚きをもって迎えられた。彼らは優れたバラードである「Wake Me Up When September End」のような作品も作ってみせたが、それは彼らの飽くなき挑戦の賜物だった。

 

33位 : ジャニス・ジョプリン『Pearl』

悲しいことにジャニス・ジョプリンの実力が真に発揮された本作が、彼女の最後の作品になってしまった。ついに彼女に相応しい腕を持ったフル・ティルト・ブギー・バンドを結成したジャニスは、ビッグ・ブラザー時代のアシッド・ブルースから脱却。よりルーツ・ミュージックに近いアプローチで、自身がソウルフルかつ多才なシンガーであることを見せつけた。

ヒットこそしなかったが、「Get It While You Can」は彼女の人生を象徴した1曲。彼女が若くして亡くならなければ我々に届けてくれるはずだった作品の数々に、今はただ思いを馳せよう。

 

32位 : ジョン・レノン『John Lennon/Plastic Ono Band (ジョンの魂) 』

ビートルズ解散後、少なくとも3人がその1年以内に華々しい所信表明といえるアルバムを発表した。だがジョン・レノンはこの機会にビートルズと1960年代を葬り去ろうとした。その目的は達成されたものの、まだ楽曲にはビートルズらしい魔力が少しだけ残っていた。陰鬱でカタルシスを感じさせる楽曲と並んで、美しい楽曲もいくつか収録されているというあたり、この『Plastic Ono Band (ジョンの魂) 』の特徴でもある。

 

31位 : スティーリー・ダン 『Aja (彩 [エイジャ] ) 』

フィルム・ノワール風のロマンスと知的なユーモア溢れるアルバムに、愛好するジャズ風のアレンジを詰め込むというのは、ウォルター・ベッカーとドナルド・フェイゲンによるすばらしいアイディアだった。

「Deacon Blue」では、ロック・バンドが書いたと思えないほどジャズマンに寄り添った描写がなされている。一方で「I Got the News」で歌われているる男女関係にまつわる短いジョークは、ロック史上類を見ないほど面白い。またその優れたサウンドから、『Aja (彩 [エイジャ] ) 』はドラムの音を何週間も追求し続けることが必ずしも悪いとは限らないと証明してみせた。

 

30位 : AC/DC『Back in Black』

悲劇の克服、元リード・ヴォーカルのボン・スコットへの相応しい追悼、盛大な大騒ぎ、ファン層の倍増、そのすべてを同時にやってのけたグループがほかにいるだろうか?

AC/DCの『Back in Black』はクラシック・ロックを代表する最高傑作のひとつであり、ここに収録されている「You Shook Me All Night Long」は歴史に残る名曲だ。

 

29位 : ザ・フー『Who’s Next』

ザ・フーはこの『Who’s Next』によって真に伝説的な存在になった。「Baba O’Riley」や「Won’t Get Fooled Again (無法の世界) 」は、以降数十年間のアリーナ・ロックの基盤を築いたといってもよいだろう。だがそれ以外にも、ピート・タウンゼントの精神世界へ憧れや、「Goin’ Mobile」の軽快な陽気さ、そしてジョン・エントウィッスルの恒例のブラック・ジョークといった要素もしっかり詰まったアルバムだ。

 

28位 : デヴィッド・ボウイ『The Rise & Fall of Ziggy Stardust & the Spiders from Mars』

一面的に見れば、本作はコンセプト・アルバムの傑作である。デヴィッド・ボウイはパンセクシュアルな異世界のロック・スターというキャラクターを作り出し、彼自身がそれに扮した。だがもっと実際的に述べるなら、これはボウイが数年に渡って実験していたさまざまな音楽的スタイルをすべて取り入れた作品だといえよう。

キャバレー・ミュージック、ボブ・ディラン風のフォーク・ロック、プログレッシヴ・ロックの原型といえる要素、ローリング・ストーンズを想起させる力強いロックなど、すべてをひとつにまとめてボウイはロックの歴史にあっても屈指の傑作を生み出した。

 

27位 : ラモーンズ『Ramones (ラモーンズの激情) 』

1976年にリリースされるやいなや、このアルバムはロックンロールの概念を何もかも覆してしまった。それまでのロックンロールは、これほど荒削りで挑戦的で楽しいものではないはずだった。

パンク・ムーヴメントはここから始まったが、当時ラモーンズの意外な賢さに気付いた人は少なかった。ぴったり10単語で、歌われているキャラクターと場面を伝える曲 (「I Don’t Wanna Walk Around With You」) を書くなどということは、誰にでも出来ることではない。

 

26位 : クイーン『A Night at the Opera (オペラ座の夜) 』

このような壮大でシンフォニックな作品をレコーディングし、それにマルクス兄弟の作品から取ったタイトルをつけて茶化すというのは実に1975年のクイーンらしい。元マネージャーについて書いたこの上なく意地の悪い曲 (「Death on Two Legs」) で始まり、『A Night at the Opera (オペラ座の夜) 』はメタルからクラシック風のものまで何でも収録されている。

ロック・オペラの名曲「Bohemian Rhapsody」はアルバムのクロージング・トラックの前に配されているが、この壮大な楽曲の次のトラックが務まるものはほとんどなかったからだろう。

 

25位 : ピンク・フロイド『Dark Side of the Moon (狂気) 』

『Dark Side of the Moon (狂気) 』は文字通り人間の狂気と疎外感を題材にしている。セールス面でも完成度の面でもロック史に残る名盤だ。レコーディングの1年前からライヴ・ツアーをしていたこともあって、ピンク・フロイドの即興演奏のスキルとスタジオ技術は本作で最高点に達している。

「Money」で聴くことができるデヴィッド・ギルモアによるすばらしいギター・ソロは、それだけでバンドのファンを新たに増やしたほどだ。

 

24位 : ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ『The Velvet Underground & Nico』

1967年にすべてのヒッピーを驚愕させた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー作は前衛的なノイズ・ミュージック (これは次作『White Light/White Heat』で披露されている) 以外のヴェルヴェット・アンダーグラウンドのすべてが詰め込まれたアルバムだ。

刺激的で、美しい楽曲も多い本作で、愛とヘロインは同列に扱われている。ルー・リードが生み出すダークで危険そうなキャラクター達は、まるで信頼できる親友のようにリスナーにその秘密を打ち明けてくれる。

 

23位 : エルトン・ジョン『Goodbye Yellow Brick Road (黄昏のレンガ路) 』

伝説的な映画スターたちからインスピレーションを得た本作で、エルトン・ジョンは真に伝説的なロック・スターになったといえよう。ハリウッドを舞台にしたファンタジーというテーマは、彼とバーニー・トーピンの想像力を掻き立てるこの上ないものだった。彼の音楽的探究心が最も発揮された作品で、歌詞は詩的なものから露骨できわどいものまで幅広い。

 

22位 : ブルース・スプリングスティーン『Born to Run (明日なき暴走) 』

人それぞれにスプリングスティーンのお気に入りのアルバムがあるだろう。だが『Born to Run (明日なき暴走) 』はそれらすべての中でも最も神話的な作品だ。「Thunder Road (涙のサンダーロード) 」の大脱走で始まり、高速道路の最終地点のような「Jungleland」で終わる壮大な旅の物語がそこには描かれている。この作品を無視しては、スプリングスティーンのコンサートは、さらに言えば、ヤング・アダルト世代の人生も完結しない。

 

21位 : バディ・ホリー&ザ・クリケッツ『The ‘Chirping’ Crickets』

『The ‘Chirping’ Crickets』はフル・アルバムとしてまとめられた最初期のロック作品だ。同作の隠れた名トラック (ロイ・オービソン、チャック・ウィリス、リトル・リチャードのカヴァー) はバンドのルーツを明らかにしつつ、ほかのヒット曲に歴史的文脈を与えている。そのヒット曲というのはもちろん「Not Fade Away」「Oh Boy」「That’ll Be the Day」という揺るがぬ名曲たちだ。

 

20位 : セックス・ピストルズ『Never Mind the Bollocks (勝手にしやがれ!!) 』

エリザベス女王の即位25周年の夏にリリースされた本作からのシングル群は、イギリス中を席巻した。特に「God Save the Queen」は王室の式典に混乱を巻き起こしたほどだった。

また『Never Mind the Bollocks (勝手にしやがれ!!) 』』には、内部分裂も時間の問題だった短命のセックス・ピストルズのライヴ定番曲がほとんど網羅されている。オリジナルのピストルズは、パンク・バンドながら出来の悪い曲をひとつもリリースすることがなかったのだ。

 

19位 : イギー&ザ・ストゥージズ『Raw Power (ロー・パワー [淫力魔人] ) 』

時を経て物事の見方が変わるのは面白いことだ。リリースされた当時の『Raw Power (ロー・パワー [淫力魔人] ) 』は、決してほめ言葉ではなくパンク・レコードと呼ばれていた。メインストリームで受け入れられるには乱暴すぎたし、恐ろしい感じがしたからだ。だが今聴くと、イギー・ポップの歌詞の思慮深さや、ギターの多重録音の秀逸さ (ボウイは見栄を張るためにレコーディングに参加したわけではないことが分かる) 、イギーとジェームズ・ウィリアムソンが生み出したキラー・リフ/チューンの多さに驚嘆するだろう。要するに、ロック史上に残る名盤として愛される理由がちゃんとあったのだ。

 

18位 : ファンカデリック『Maggot Brain』

『Maggot Brain』の表題曲はジョージ・クリントンが生み出した傑作のひとつとして正当に評価されている。彼による破滅の予言のようなモノローグと、エディ・ヘイゼルの重厚なギター・ソロはヒッピーたちが面食らうようなものだった。

しかし忘れてはならないのは、アルバムとしても傑作であるということだ。目立たない楽曲の中にも注目に値するものがいくつかある。例えばアフロ・キューバ調のリズム、スタジオの技術によって増したアシッド感が特徴的な「Wars of Armageddon」は、目も眩むような10分間に世界の終末を表現した秀作である。

 

17位 : アイク&ティナ・ターナー『River Deep-Mountain High』

フィル・スペクターがプロデュースしたタイトル・トラックはおそらくポップ界最大の失敗作だ。そのほとばしる情熱は、ヒット・チャートに入るには激し過ぎたのだ。結果的に、当初『River Deep-Mountain High』はイギリスでしかリリースされなかった。

だが本作にはあといくつかのスペクターによる楽曲 (ビートルズとラモーンズはともかく、彼の最後の傑作がここにいくつかある) と、アイクが手がけたタフなロック/R&Bソングも収録された。ティナが終始嘆いていたのは言うまでもない。

 

16位 : レディオヘッド『OK Computer』

この作品におけるレディオヘッドの功績は、重層的なコンセプト・アルバムを現代に復活させたことだ。リスナーはヘッドホンを使って耳を傾け、すべての音楽的な仕掛けに思いを巡らせ、そして作品が示す現代的な疎外感に浸るように設計されている。商業性に縁のない本作から生まれた同バンドの (少なくとも本国イギリスにおける) 大ヒット・シングルは、今でも色褪せない名曲だ。

 

15位 : プリンス&ザ・レヴォリューション『Purple Rain』

本作をリリースした1984年、ピークに達していたプリンスはもはや超人といっても差し支えなかった。「Let’s Go Crazy」はまるでファンキーさを増したラモーンズ、表題曲はまるで現代化されたヘンドリックスだ。

「When Doves Cry (ビートに抱かれて) 」ではベースを使わずクラシックなポップ・シングルを、「The Beautiful Ones」ではゴージャスなバラードを容易くこなしてみせた。また、アルバム全体を通して、ワイルドなセクシーさと街で最高のパーティのような雰囲気が感じられるだろう。

 

14位 : ザ・クラッシュ『London Calling』

1979年のクラッシュは、単に”重要なバンド (Only Band That Matters) “というだけでなく、間違いなくロックというカテゴリーの中で最も野心的なバンドだった。彼らはレゲエから昔ながらのR&B、ロカビリー、ヴォーカル・ジャズ、モータウンまで、好んだサウンドをすべて取り入れようとし、それらを力強いパンク・ロックのフォーマットに落とし込んだ。

そして何よりも、この2枚組アルバムはストラマーとジョーンズから成る作曲チームのカリスマ性を世に知らしめた。特にそれを助けたのは、パンクの最も決定的なスローガンである表題曲、そして思いがけずヒット・シングルとなった珠玉の「Train in Vain」だろう。

 

13位 : フリートウッド・マック『Rumours (噂) 』

フリートウッド・マックは人間関係の問題からスタジオでの災難といったすべてを乗り越えて、肩の力の抜けた完璧なポップ・ソングを集めたこの『Rumours (噂) 』を完成させた。

リスナーたちは、音楽自体だけでなくメンバーたち、クリスティン・マクヴィー、ジョン・マクヴィー、ミック・フリートウッド、リンジー・バッキンガム、そしてスティーヴィー・ニックスの裏話にも魅了されたものだ。今日では、バンド内のカップルが破局すれば必ずフリートウッド・マックと比較されるほどである。

 

12位 : レッド・ツェッペリン『IV』

このレッド・ツェッペリンの4作目にして無題のスタジオ・アルバムは、彼らのすべてが最高点に達した作品だ。彼らの最もハードなロック・ナンバー、最もヘヴィーなブルース、最も快いフォーク・ソング (サンディ・デニーをアメリカのリスナーに紹介した曲も含む) 、そしてあの「Stairway to Heaven (天国への階段) 」が収録されている。

ロバート・プラントは神格化されつつあったし、ジョン・ボーナムとジョン・ポール・ジョーンズは文字通り世界中を揺るがすリズム・セクションだった。そしてジミー・ペイジについては、言うまでもないだろう。

 

11位 : ザ・ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』

ブライアン・ウィルソンは、レッキング・クルーの最高のパフォーマンスもあって、ポップ・ソングのアレンジを別次元まで洗練させた。だが『Pet Sounds』を本当に不朽の傑作たらしめたのは、歌の透きとおるような美しさと普遍性を持つ楽曲群だろう。そこには、希望に溢れて始まった若者同士の交際関係が、やがて荘厳で悲しい最後を迎えるまでの過程が描かれている。

 

10位 : ザ・ローリング・ストーンズ『Exile on Main Street (メイン・ストリートのならず者) 』

『Exile on Main Street (メイン・ストリートのならず者) 』は、ダーティで乱雑な、ローリング・ストーンズ全盛期の作品だ。ブルース、カントリー、ゴスペルなどの要素を取り入れた本作は、幾多の徹夜でのレコーディング作業により作られたが、当人たちは見えない何かに突き動かされていた。

『Exile on Main Street』はとりわけブルース専門家の作品といっても差し支えない内容のアルバムであり、歴史上稀に見るロックの名盤でもある。

 

9位 : ガンズ・アンド・ローゼズ『Appetite for Destruction』

ガンズ・アンド・ローゼズと『Appetite for Destruction』は危険さと楽しさを持った本来のヘヴィー・ロックを蘇らせた。そしてスラッシュとアクセル・ローズはすぐに時代の寵児となった。本作はタフなストリート生活についての歌詞に満ちているが、そんな中で彼らはグループの個性をゆがめることなく不朽のラヴ・ソング (適示するまでもなく、「Sweet Child o’Mine」のことである) もものにしているのだからまったく驚かされる。

 

8位 : ジェリー・リー・ルイス『Live at The Star Club, Hamburg』

1964年、ジェリー・リー・ルイスのキャリアは行き詰っていた。また、このステージで彼のバック・バンドを務めたのはブリティッシュ・インヴェイジョンの中でも比較的知名度の低かったザ・ナッシュヴィル・ティーンズだった。だがルイスは、自作曲でもほかのアーティストのヒット曲のカヴァー・ヴァージョンでも暴れ回り、圧倒的なパフォーマンスを聴かせている。また、ラフなブレイク・ダウンと荒れ狂うようなフィナーレが特徴的な「Whole Lotta Shakin’ Goin’ On」の決定版ともいえるヴァージョンもここに収録されている。

 

7位 : ボブ・ディラン『Highway 61 Revisited (追憶のハイウェイ61) 』

これはボブ・ディランがエレキ・ギターやキーボードを中心に据えた最初の作品であり、以前の作品のようなバラッド・ナンバーが収録されることもなかった。本作で彼の超現実的な言葉遊びは飛躍を遂げ、カヴァー・ジャケットで彼がライダース・ジャケットを着用していることも象徴的だ。この『Highway 61 Revisited (追憶のハイウェイ61) 』には彼の重要な楽曲がぎっしり詰まっている。もしも仮に、あの「Like A Rolling Stone」が収録されていなかったとしても、ロックの歴史に残る最高のアルバムのひとつとして広く認知されていたに違いない。

 

6位 : エルヴィス・プレスリー『From Elvis in Memphis』

すばらしいバンドや志を共にするプロデューサーを迎え、彼の才能に相応しい楽曲を用意してエルヴィス・プレスリーをスタジオに入れることは容易いように思える。だが実際は、兵役からの復帰後には本作を含めてほんの数回しか実現しなかった。ミュージシャン生命をかけたパフォーマンスをするため一歩踏み出した彼は、テレビ・スペシャル『’68s comeback』で得た成功をさらに揺るぎないものにするかのように、今なお偉大なロック・アルバムとして名高いこの『From Elvis in Memphis』を生み出した。

 

5位 : ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス『Electric Ladyland』

ジミ・ヘンドリックスが残したアルバムに、出来の悪いものはひとつとして見当たらないが、わけても、LP2枚組としてリリースされたはこの『Electric Ladyland』は、アルバムというフォーマットを利用してリアルな体験を作り出した傑作だ。長めの楽曲がふたつあるが、ひとつは深夜に聴きたいような落ち着いたブルース、もうひとつはリスナーを音楽的なトリップに誘う大作だ。そしてそれ以外にも、メタルの原型というべきものや優雅なR&B、ニュー・オーリンズ風のロックン・ロール、そしてディランのカヴァーの最高峰に位置する「All Along the Watchtower (見張り塔からずっと) 」が収録されている。

 

4位 : ニルヴァーナ『Nevermind』

『Nevermind』の与えた文化的な衝撃は、メンバー自身が意図していたよりも、あるいは望んでいたよりも遥かに大きなものだった。だが蓋を開けてみれば、その収録曲はリード・シングル「Smells Like Teen Spirit」を筆頭に史上最高峰のアルバムとしての評価にふさわしいだけの力強いものばかりだったと分かる。

カート・コバーンの歌詞は実に鋭く、その歌い方は実に人々の心に訴えかけるものがあったし、加えて彼らのドラマーは (もちろん今では誰もが分かっているが) 前途有望なミュージシャンだった。ブッチ・ヴィグの巧みなプロデュースについては言うまでもないだろうが、その手法はグランジ時代のスタンダードとして確立された。

 

3位 : ザ・ビートルズ『The Beatles (The White Album) 』

『Revolver』はロックを代表する名盤として名高いし、『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』は数え切れないほどのバンドをサイケデリックなサウンドの追求に向かわせた。だが『The Beatles (The White Album) 』も、大胆に何もかもを取り入れた2枚組アルバムというスタイルで、これまた多くのグループに模倣された。だが本家ほど多様なスタイルを取り入れたバンドはほかにいない。

プロテスト・ソング、ヴォードビル風の風変わりな曲、童謡、力強いロック・ナンバー、耳なじみの良い子守唄、そして実験的なサウンド・コラージュなど枚挙にいとまがないが、今挙げた一連の楽曲は、アルバム全体のほんの一部 (D面) の収録曲に過ぎないのである。

 

2位 : チャック・ベリー『The Great Twenty-Eight』

ロック・シングルの巨匠であるチャック・ベリーの決定盤を挙げるならばこのベスト・アルバム以外にないだろう。間に合わせの捨て曲や知名度の低い曲というのはここには一切ない。

デビュー・シングルの「Maybelline」からマージービート・バンドが愛した「I Wanna Be Your Driver」まで、収録曲のすべてが後の世代の規範となったのだ。ロックン・ロールの聖典というものがあるとするならば、まさにこの作品のことだろう。

 

1位 : リトル・リチャード『17 Grooviest Original Hits』

後世の偉大なロック・アルバムの数々も本作なしではあり得なかった。「Boo-Hoo-Hoo-Hoo」や「Send Me Some Lovin’ (愛しておくれ) 」といった比較的知名度の低いトラックを聴くと、リトル・リチャードがロックン・ロールに取り入れたルーツはゴスペルとブルースだったことがよくわかる。

だが「Tutti Frutti」や「Long Tall Sally (のっぽのサリー) 」には、これ以上ワイルドなロックはほかに存在しないだろうと思わされる。

このリストに載せるべきアルバムが抜けていたとしてら、是非のコメント欄で教えてください。

Written By Brett Milano



 

 

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