初めて全英シングル1位になったブルースの曲はローリング・ストーンズ
1964年11月13日の金曜日、ザ・ローリング・ストーンズはイギリスにおける5枚目のシングルをリリースした。そしてこのシングルで、やがて彼らは2度目のチャート首位を獲得する。これはブルースの楽曲だったが、ブルースのレコードがイギリスのシングル・チャートの首位に立ったのは初めてのことだった。
その曲「Little Red Rooster」はウィリー・ディクスンが作ったブルースの有名曲で、1961年にハウリン・ウルフがチェス・レーベルのためにレコーディングしたヴァージョンがオリジナルだった。そのウルフのヴァージョンでは、ギターの名手ヒューバート・サムリンがスライド・ギターの古典的なリフを奏でている。
ミック・ジャガーは、1964年11月に以下のように語っている。「いろんな人が、”Little Red Rooster”のテンポが遅すぎると言ってる。でも俺たちは、いつも何かのパターンに従って行動しなきゃいけないのか? 俺たちとしては、ただ趣向を変えて、いい感じのストレートなブルースをシングルにしてみようと思っただけだが、それが何か問題だっていうのか? あのレコードは踊るのにもピッタリだ。もちろん踊る相手によるけどね。チャーリーのドラミングのおかげで、ダンスにちょうどいい出来映えになってる」。
ウルフのオリジナル・ヴァージョンとストーンズのヴァージョンを比べてみると、それら2種のヴァージョンが好対照を成していることがわかる。ウルフが唸り声を挙げているのに対し、ミックは猫のようにゴロゴロ喉を鳴らしている。とはいえ、結局どちらもブルースにとって一番肝心なもの……つまりセックスについて歌っている。
ストーンズは、このカヴァーを1964年9月2日にロンドンのリージェント・サウンド・スタジオで録音した。このときのレコーディングでは、B面の「Off The Hook」も合わせて録音されている。その3日後、ストーンズは4度目となるイギリスでのパッケージ・ツアーに出発。このときのツアーには、兄妹ソウル・デュオ、イネス&チャーリー・フォックス (前の年に「Mockingbird」が全米チャートのトップ10に入るヒットとなった) が参加していた。このイギリス・ツアーが終わり、シングル「Little Red Rooster」が発表されるまであいだ、ストーンズは2度目の全米ツアーをこなしていた。イギリスに帰国したのは、シングルの発表から数日後のことだった。
「Little Red Rooster」は、12月に1週間だけ全英チャートの首位に立った。この曲が首位に立った週、BBCは音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』へのストーンズの出演を拒否。もしBBCとのトラブルに巻き込まれていなければ、この曲はもっと大きなヒットになっていたかもしれない 。アメリカではロンドン・レーベルがこのシングルの発売を見送り、ストーンズは不快感を持った。この曲には露骨に性的な雰囲気があふれていたので、レーベル側はアメリカのラジオ局から放送禁止処分を受ける可能性が高いと判断したのかもしれない。
発売当時、ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌にはこんな記事が載った。「これがもしストーンズの録音でなかったら、ヒットする見込みはあまりなかったかもしれない。なぜなら、これはさほど売れ線の曲ではないからだ。しかし先行予約の枚数から考えると、これが大ヒットになることは間違いない」ブルースのレコードが全英シングル・チャートの首位に立つのは、これが初めてだった。
Written By Richard Havers