1984年全英のオールスターが集結し375万枚売り上げたバンド・エイドの「Do They Know It’s Christmas」
1984年、とあるレコーディング・スタジオがイギリスのポップ・スターで埋め尽くされた。後にバンド・エイドとして知られることになるこの集団は、ボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロの共作による楽曲「Do They Know It’s Christmas」のレコーディングのために駆けつけたのだ。イギリス国内だけでも375万枚という売り上げを記録し、1980年代を代表する1曲になった作品だ。
「Do They Know It’s Christmas」は、1984年11月25日にロンドンのサーム・ウェスト・スタジオでレコーディングされた。エチオピアの飢餓に苦しむ窮状を知ったボブ・ゲルドフの苛立ちに対し、イギリスの音楽界が極めて異例の形で団結したのだ。当初の彼の願いは、この大義のために、このオール・スター・シングルで7万ポンド程度を集めることができればというものだった。しかし実際は、資金を集めるための特別なイベントが全国的に広がり、収益は1年間で800万ポンドにまで膨らんだのだった。
「Do They Know It’s Christmas」でフィーチャーされたポール・ヤングやボーイ・ジョージ、そしてU2のボノといった大スターたちのソロ・パートは作品のハイライトとして輝きを放った。また、その場に相応しくないように思えるアーティストや意外な顔触れも参加している。ボブ・ゲルドフが所属するフォノグラムのレーベル仲間達、ソウル・ポップのヒットメーカーであるクール・アンド・ザ・ギャング、同じくアメリカからのソウル・クロスオーヴァー・グループ、シャラマーのメンバーであるジョディ・ワトリー、そして当時最先端のエレクトロニック・バンドであったヘヴン17に在籍のグレン・グレゴリーなどだ。
既に他の予定があったせいでレコーディングに加わることができなかったポール・マッカートニーやデヴィッド・ボウイのような大物は、このシングルのB面のトラックにメッセージを提供した。あの年、イギリスで最もビッグな新人グループだったフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのホリー・ジョンソンも同様で、やはりにメッセージをレコーディングしている。フィル・コリンズがドラムを叩いていることや、デュラン・デュランのジョン・テイラーがベースを弾いていることなども忘れられるべきではないだろう。
「Do They Know It’s Christmas」は12月半ばにイギリスのヒットチャートの1位になり、その後1月に入っても勢いは衰えず、5週間トップを走り続けた。その後様々なライヴ・エイド関連の作品やイベントが行われる中、このオリジナル・ヴァージョンは翌年のクリスマスに再び3位にまで上昇する。その頃にはこのムーブメントがアメリカにも波及しており、USA・フォー・アフリカによる「We Are The World」が生まれることになった。ボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロの作品は、1989年、2004年、2014年の大々的なアニヴァーサリー時に新たなオール・スターによって繰り返しレコーディングされている。
Written by Paul Sexton
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