ボン・ジョヴィ『Slippery When Wet』:バンドの人生を変えた1986年の名盤

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1983年の結成から、少なくとも最初の3年間、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)は国際的なスーパースターではなかった。彼らの1984年のセルフタイトル・デビュー・アルバムはアメリカで43位に入り、「Runaway(夜明けのランナウェイ)」と「She Don’t Know Me(愛は蜃気楼)」の2曲が、ささやかに全米シングル・チャート入りを果たしただけだった。

2枚目のアルバム『7800° Fahrenheit』は前作のチャートよりもたった6位高いだけの結果となり、シングルの2曲「Only Lonely」と「In And Out Of Love」もチャートでは2曲とも低い結果となった。

ニュージャージー出身のロッカーたちのすべてを変えたのは、1986年8月18日にレコード店に登場したアルバム『Slippery When Wet(ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)』だった。大きな、テーマ・ソングのようなシングル曲たちに加速されたそのアルバムは、ボン・ジョヴィの名前を地元のみならず世界中にも知らしめることになった。

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8月はマンハッタンの周りをヨットで回ることに始まった。ボン・ジョヴィのマネージャー、ドク・マギーの結婚式にモトリー・クルーやラットといったドクが他に担当していたバンドのメンバーたちと一緒に彼らも出席した。その後、当時アメリカ音楽市場で非常に力を持っていたMTVから、ボン・ジョヴィ代表曲となる「You Give Love A Bad Name(禁じられた愛)」のビデオをアルバムがリリースされるまでにローテーションに追加するという嬉しいニュースが入った。

その一週間後、「You Give Love A Bad Name」は全米ロック・トラックにチャート入りし、イギリスのトップ40にも登場。9月初旬には全米シングル・チャートを上昇していた。雑誌には「ハード・ロックで、ハスキーで、攻撃的」と総じて簡素なレヴューが並んだ。だがBillboard誌が書いた『Slippery When Wet』のレヴューは感情があふれんばかりのものだった。「バンドをずっと存続させることができる群を抜いて力強いアルバム」と彼らは評し、そして彼らの言ったことは当たっていた。

ボン・ジョヴィがスコーピオンズやオジー・オズボーン、デフ・レパードたちと一緒にモンスターズ・オブ・ロック・ツアーでヨーロッパの大勢の観衆に向けたライブを行ったあと、彼らのシングルとアルバムは同時にチャートを急上昇。アルバムはアメリカのチャートで10月、非連続的に8週間首位を獲得、最終的にはこの国だけで1,200万枚の売上を記録。「You Give Love…」は11月に1位になり、次に続いた「Livin’ On A Prayer」は1987年の2月に 4週間1位を獲得した。その後、「Wanted Dead Or Alive」も大きなトップ10ヒット曲となった。

その数年後、『Slippery…』のアルバムの成功についてギタリストのリッチー・サンボラはNME誌に、ビジュアルの力を見くびらなかったことだとこう語った。

「僕が思うにビデオが大きく関係していたと思う。あのアルバムより前に作られた5本のビデオは、僕らの人物像を捕らえていない内容だったんだ。僕らが何者なのか、アメリカのロック・バンドなんだということを知っていたのは、実際に僕らのライヴを見に来た人だけだったんだ。だからそれからはビデオの中で自分達が誰なのかを伝えることにした。僕らのアイデンティティを分かり易く伝えるために内容をシンプルにして、力強いサビを書き、僕ら自身がビデオ制作の主導権を握ることにしたんだ」

Written by Paul Sexton



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