ビートルズの新ドキュメンタリー映画『The Beatles : Get Back』について現時点で判明している事柄
ピーター・ジャクソンが監督を務めるザ・ビートルズの新たなドキュメンタリー映画『The Beatles : Get Back』は、バンドの新たな一面を明らかにする。これまでに判明していることを紹介しよう。
<関連記事>
・ザ・ビートルズのルーフトップ・ライヴ:バンド最後の公でのパフォーマンス
・『Let It Be』はどうやってできたのか:ゲット・バック・セッションと屋上ライヴ
2019年初頭、アップル・コアとウィングナット・フィルムズは新しいビートルズのドキュメンタリーの制作を発表した。その作品『The Beatles : Get Back』は1969年の「Get Back」及び『Let It Be』のレコーディング中に撮影された約55時間の未公開映像を基に制作されるという。
その後数ヶ月もの間、ビートルズのファンはアカデミー賞を受賞したピーター・ジャクソンが監督を務める同作について熱心な予想が飛び交った。最初の発表から1年以上が経って、更なる情報が明らかになってきた。当初2020年9月4日の予定だった『The Beatles : Get Back』の公開は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で2021年8月27日に延期となった。バラエティ誌は、新しい公開日は配給会社のディズニーから6月12日の金曜日にアナウンスされたと報じている。
公開が待たれる中ではあるが、『The Beatles : Get Back』について現在判明していることを紹介しよう。
1. バンドのメンバー/関係者の全面的な協力を得て制作
ポール・マッカートニーとリンゴ・スターは同作を絶賛しており、ジョン・レノンの未亡人であるオノ・ヨーコとジョージ・ハリスンの未亡人であるオリヴィア・ハリスンも企画への全面協力を表明している。
2. 彼らのありのままの姿を公開
「まるでタイム・マシーンで1969年に戻ったみたいなんです。スタジオに座って、4人の友人が優れた音楽を生み出すのを見ているような感じです」
と、ピーター・ジャクソンは話している。使用される映像はもともとマイケル・リンゼイ・ホッグが監督した1970年のドキュメンタリー映画『Let It Be』の素材として撮影されたものだ。そこには最終作を構成する楽曲のスタジオでのリハーサルやレコーディングの模様が克明に記録されていた。ジャクソン監督により見直されたこれらの記録は、ビートルズのレコーディング・スタジオにおける仕事ぶりを捉えた唯一の映像ということになる。
3. 有名な“ルーフトップ・コンサート”の模様を完全収録
1969年1月30日、ビートルズはサヴィル・ロウにあるスタジオの屋上でのサプライズ・パフォーマンスを披露した。このライヴの映像は長年に亘りさまざまなかたちで使用されてきたが、その全編が公開されたことはなかった。ジャクソン監督の『The Beatles : Get Back』では、42分に及ぶ映像の全編が使用される予定だ。
4. 新たな音源も公開
55時間の映像に加え、ジャクソン監督は、総尺140時間に及ぶ音源の提供も受けている。アルバムに選ばれなかった楽曲の一部は、『The Beatles (White Album)』や『Abbey Road』『Let It Be』と同時期にレコーディングされた未発表音源やデモを収めた『The Beatles : Anthology 3』 (1996年のリリース) に収録されているが、公式にリリースされていない音源はほかにまだ数多く残されている。
また、映画では各メンバーがソロ・アーティストに変わっていく様子も垣間見える。『Let It Be』から漏れた楽曲の多くは、やがてメンバーのソロ・アルバムに収められることになる。ポール・マッカートニーの作品「Teddy Boy」は1970年にリリースされたマッカートニーのソロ・デビュー作『McCartney』に収録され、ジョージ・ハリスンの「Hear Me Lord」と「Isn’t It A Pity」はハリスンの1970年のアルバム『All Things Must Pass』で陽の目を見ている。一方、ジョン・レノンについては、1971年のアルバム『Imagine』に収録されることになる「Gimme Some Truth (真実が欲しい) 」と「Oh My Love」の制作過程が捉えられている。
5. メンバーの本当の関係性が明らかに
リンゼイ・ホッグ監督の映画は、ビートルズのレコーディングの様子を詳細に捉えた一方、スタジオでの緊迫した空気感を明らかにし、多くの場面で解散間際のバンドの姿が収められていた。他方『The Beatles : Get Back』では、その映像を俯瞰で捉えており、バンドが共に過ごした時間をまったく違った方法で描いている。
近年、『The Howard Stern Show』でのインタビューで、ポール・マッカートニーは以下のように語っている。
「僕たちは間違いなく楽しんでいました。お互いを尊敬していたし、みんなでひとつになって音楽を作っていた。それが明らかになるのは嬉しいですね」
同じくリンゴ・スターは語っている。
「僕たちは何時間も何時間も、ただゴキゲンで音楽をやっていた……すごく楽しかったし、ピーターはそんな僕たちの姿を見せてくれると思います。今度の映画は愛と平和に満ち溢れているはずです。実際、僕たちはそんな状況でやっていたわけだからね」
ジャクソン監督自身もこうコメントしている。
「一般に語られていることと現実は大きく違っていました。解散の18ヶ月前にマイケル・リンゼイ・ホッグが撮影した映像や音源をすべて見直すと、そこには歴史的に重要なすばらしい資料が詰まっていました。確かに衝突する瞬間もありましたが、長年思い描かれてきたような仲違いはありませんでした」
同作の一部を観賞したバラエティ誌はこうレビューしている。
「今作はビートルズが最後に残した1970年の映画『Let It Be』と違った、明るい作品になる。グループの解散を中心に描いた『Let It Be』は暗く悲観的な作品だった。新しい映画はそれとはまったく違う。マッシュルーム・カットの4人のメンバーが笑ってふざけ合う姿を描いている」
Written By Sophie Smith
- ザ・ビートルズ アーティスト・ページ
- ザ・ビートルズ関連記事
- ピーター・ジャクソン監督によるビートルズの新ドキュメンタリー映画
- リンゴ・スターが、ドキュメンタリー映画『Get Back』について語る
- ザ・ビートルズのルーフトップ・ライヴ:バンド最後の公でのパフォーマンス
- 『Let It Be』はどうやってできたのか:ゲット・バック・セッションと屋上ライヴ